- 部品表(BOM)に「チップ抵抗 1kΩ 1%」としか書いていないけど、厚膜と薄膜のどっちにすればいいの?
- 先輩に「その用途なら金属板抵抗にしろ」と言われたけど、理由がわからない…
- DigiKeyやMouserで抵抗を検索すると種類が多すぎて、何を基準に選べばいいのか途方に暮れる
- 抵抗器の全体像 ── 7種類を「ファミリーツリー」で一発整理
- 厚膜・薄膜・金属板の決定的な違いを「製造方法」と「性能」の2軸で理解
- パワエレ設計の6つの用途別に「結局どの抵抗を使えばいいか」を即決できるフローチャート
回路設計で最も多く使う部品は何か? ── 答えは抵抗器です。基板1枚に数十個から数百個が載るのに、「抵抗は抵抗でしょ?」と深く考えずに選定していませんか。
実は抵抗器には「厚膜」「薄膜」「金属板」「カーボン」「巻線」……と多くの種類があり、どれを選ぶかで回路の精度・ノイズ・信頼性が大きく変わります。特にパワーエレクトロニクス設計では、電流検出のシャント抵抗に厚膜を使ってしまい、温度ドリフトで電流値がズレるという失敗が後を絶ちません。
この記事では、抵抗器の全種類を「家系図」のように整理し、パワエレ設計の実務で「この用途にはこの抵抗」と即決できるようになるところまで解説します。コンデンサの種類を学ぶ際の姉妹記事と合わせて、受動部品の基礎をここで固めてしまいましょう。
【入門】コンデンサの種類と特徴|電解・セラミック・フィルムの違いと「どこに何を使うか」完全ガイド →
目次
そもそも抵抗器は回路で何をしている? ── 6つの役割
種類の話に入る前に、「抵抗が回路のどこで、何のために使われているか」を押さえておきましょう。これを知っておくだけで、後半の「用途別の選び方」がスッと入ってきます。
抵抗器の役割は、大きく分けると6つあります。
| # | 役割 | どんな場面? | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| ① | 電流制限 | LEDに流す電流を20mAに抑える、突入電流を制限する | 電流制限抵抗の計算方法 → |
| ② | 分圧 | DC-DCコンバータの帰還(FB)電圧を作る、ADCの入力範囲に合わせる | 分圧回路の計算と抵抗値の決め方 → |
| ③ | プルアップ/プルダウン | デジタル信号線のHigh/Low状態を安定させる | プルアップ抵抗の計算方法 → |
| ④ | 電流検出(シャント) | 回路に流れる電流をオームの法則(V=IR)で電圧に変換して測る | シャント抵抗の選び方 → |
| ⑤ | ゲート駆動 | MOSFETのスイッチング速度を調整し、リンギングを抑える | ゲート抵抗の決め方 → |
| ⑥ | ダンピング・終端 | 信号波形のリンギング(振動)を抑え、反射を防ぐ | ダンピング抵抗・フェライトビーズ → |
抵抗器の種類を選ぶとき、まず「①〜⑥のどの役割で使うか?」を明確にしてください。役割が違えば、求められる性能(精度・発熱・ノイズ・コスト)がまったく違うからです。この記事の後半で、役割別の選定ガイドを用意しています。

抵抗器の「ファミリーツリー」── 7種類を1枚で整理
抵抗器は、分類のしかたによって「素材別」「形状別」「製造法別」などさまざまに分岐します。ここでは、パワエレ設計の実務で実際に選択肢に上がる7つの種類に絞って、ファミリーツリー(家系図)として整理しました。
📦 面実装(チップ)型の内訳:
📦 リード(スルーホール)型の内訳:
量産基板のほとんどは「面実装(チップ)型」で埋め尽くされています。設計の90%以上は厚膜チップ・薄膜チップ・金属板チップの3種類から選ぶ作業です。リード型は試作やパワー系の一部でまだ現役ですが、メインの選定ステージはチップ型の3兄弟だと思ってください。

チップ抵抗の「3兄弟」── 厚膜・薄膜・金属板を徹底比較
実務で最も悩むのが、「厚膜」「薄膜」「金属板」のどれを使うかです。3つの違いを理解するカギは「製造方法」にあります。製造方法が違うから、得意分野が違う。まずは1枚の比較表で全体像をつかんでから、それぞれの特徴を掘り下げていきましょう。
| 比較項目 | 🟢 厚膜チップ | 🔵 薄膜チップ | 🔴 金属板チップ |
|---|---|---|---|
| 製造方法 | スクリーン印刷で厚く塗る(数μm〜数十μm) | 真空蒸着・スパッタで薄く成膜(数十nm〜数百nm) | 金属の板(バルク材)をエッチングで加工 |
| たとえるなら | ペンキをローラーで厚く塗る | 金箔をミクロン単位で貼り付ける | 鉄板を型抜きして使う |
| 許容差(精度) | ±1% 〜 ±5% | ±0.05% 〜 ±1% | ±0.5% 〜 ±1% |
| TCR(温度係数) | ±100 〜 ±200 ppm/℃ | ±5 〜 ±25 ppm/℃ | ±15 〜 ±50 ppm/℃ |
| ノイズ | 大きい(電流雑音あり) | 小さい | 小さい |
| 抵抗値の範囲 | 1Ω 〜 10MΩ(広い) | 10Ω 〜 1MΩ | 0.5mΩ 〜 100mΩ(超低抵抗) |
| パルス耐性 | 強い(膜が厚い) | 弱い(膜が薄くて焼けやすい) | 強い(金属の塊) |
| コスト(目安) | ◎ 最安(0.1〜0.5円/個) | △ 厚膜の2〜5倍 | △ 厚膜の5〜20倍 |
| 主な用途 | プルアップ、LED電流制限、ゲート抵抗、分圧(汎用) | オペアンプ帰還、ADC基準、精密分圧 | シャント抵抗(電流検出) |
| 一言でまとめると | 安くて万能な「量産の主力」 | 精密回路の「スナイパー」 | 大電流を見張る「番人」 |
たとえば基準温度25℃で10kΩの抵抗が、60℃の環境で使われるとします。
・厚膜(TCR = 100ppm/℃の場合):10,000 × 100 × 10-6 × (60−25) = 35Ω のズレ(0.35%)
・薄膜(TCR = 10ppm/℃の場合):10,000 × 10 × 10-6 × (60−25) = 3.5Ω のズレ(0.035%)
ズレが10倍違います。分圧回路やオペアンプの帰還抵抗で精度が求められる場所では、この差が致命的になることがあります。

🟢 厚膜チップ抵抗 ── 回路の90%はコレで足りる
厚膜チップ抵抗の構造と特徴
厚膜チップ抵抗は、セラミック基板の上に金属とガラスの混合ペースト(メタルグレーズ)をスクリーン印刷して焼き付ける製造方法で作られます。印刷で作れるため、生産性が非常に高く、世界で最も多く使われている抵抗器です。
たとえて言うなら、「版画」のように一気に大量生産できるのが厚膜の強みです。ただし、印刷ゆえに抵抗体の膜厚にバラつきが生じやすく、精度やTCRは薄膜に比べて劣ります。
厚膜チップ抵抗が得意な用途
一言でいうと、「精度がそこまで重要でない場所全般」です。具体的には以下のような用途で使われます。
オペアンプのゲイン設定抵抗や、精密ADCの基準分圧回路では、TCRの大きさが無視できません。温度変化が±20℃程度ある環境で0.1%以下の精度が必要な場合は、薄膜チップを選びましょう。また、シャント抵抗(電流検出)に厚膜を使うのも、TCRによるドリフトで検出精度が悪化するため避けるのが基本です。

🔵 薄膜チップ抵抗 ── 精密回路の「スナイパー」
薄膜チップ抵抗の構造と特徴
薄膜チップ抵抗は、セラミック基板の上に真空蒸着やスパッタリングという方法で、ニッケル-クロム(Ni-Cr)合金などの金属をナノメートル単位の極薄の膜として形成します。その後、レーザーで精密にトリミング(削り)して、狙い通りの抵抗値に仕上げます。
たとえるなら、厚膜が「ペンキのローラー塗り」なら、薄膜は「金箔を一枚一枚、真空の中で丁寧に貼り付ける」イメージです。手間もコストもかかりますが、出来上がりの精度は段違い。TCR(温度係数)は厚膜の10分の1以下に抑えられます。
薄膜チップ抵抗が得意な用途
薄膜は膜が非常に薄い(数十nm)ため、ESDやサージなどの瞬間的な大電流で膜が焼けて断線するリスクがあります。ゲート抵抗やスナバ回路など、パルス性の大電流が流れる場所には不向きです。そのような場所には、膜が厚い「厚膜」を使いましょう。

🔴 金属板(メタルプレート)チップ抵抗 ── 大電流を見張る「番人」
金属板チップ抵抗の構造と特徴
金属板(メタルプレート)チップ抵抗は、厚膜や薄膜のように「膜を基板に付ける」のではなく、銅合金やマンガニンなどの金属板そのものをエッチング加工して抵抗体にするという、まったく異なるアプローチです。
たとえるなら、厚膜や薄膜が「壁にペンキを塗る」のに対して、金属板は「鉄板を切り出して使う」イメージ。金属の塊なので熱に強く、超低抵抗値(0.5mΩ〜)の領域を実現できます。
金属板チップ抵抗が「シャント抵抗」として使われる理由
パワエレ設計で金属板チップ抵抗が最も活躍するのが、電流検出(シャント抵抗)用途です。シャント抵抗には3つの条件が求められます。
超低抵抗値(mΩオーダー)── 電力損失(I²R)を最小限にする
低TCR(温度で抵抗値が変わらない)── 温度が上がっても検出精度を維持する
大電流を流せる(定格電力が高い)── モーターや電源ラインの数十Aに耐える
金属板チップ抵抗は、この3つの条件をすべて満たす唯一の存在です。KOAの「TLRシリーズ」やROHMの「PMRシリーズ」が代表的な製品です。

リード型抵抗の4種類 ── 「古い」けど、まだ現役の場面あり
量産基板ではチップ型が主流ですが、試作・評価・大電力用途ではリード(スルーホール)型がまだまだ活躍しています。4種類の違いをサッと押さえておきましょう。
| 種類 | 抵抗体の材質 | 精度 | 定格電力 | 主な用途 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 🟤 カーボン皮膜 | 炭素 | ±5% | 1/8W〜2W | 電子工作、試作、趣味 | 最も安い。カラーコードで抵抗値を読む |
| 🟣 金属皮膜(キンピ) | Ni-Cr合金 | ±1%〜±0.1% | 1/4W〜2W | 計測回路、オーディオ | リード型で最も精度が高い |
| 🟠 酸化金属皮膜 | 酸化スズなど | ±5% | 1W〜5W | 中電力回路、ヒューズ代替 | 難燃性。過負荷で断線→安全装置として機能 |
| ⬜ 巻線 / セメント | Ni-Cr線など | ±5%〜±1% | 5W〜50W | 放電抵抗、ブリーダ、突入電流制限 | コイル構造のためインダクタンスを持つ。高周波には不向き |
リード型のカーボン皮膜と金属皮膜は見た目がよく似ていますが、カラーコードの帯の本数で見分けられます。カーボン皮膜は4本(±5%)、金属皮膜は5本(±1%)が一般的です。本体の色も、カーボンは茶色系、キンピは青系であることが多いです。

用途別フローチャート ── 「結局どの抵抗?」を即決する
ここまでの内容を1枚のフローチャートにまとめました。回路設計で「どの種類の抵抗を使うか」迷ったら、このフローに従ってください。
→ NO:次の質問へ ▼
→ YES(5W以上):⬜ 巻線抵抗 / セメント抵抗
→ NO:次の質問へ ▼
→ NO:次の質問へ ▼
実務では、まず基板上の全抵抗を「厚膜チップ ±1%」で仮置きしてBOMを作り、そこから精度が足りない箇所だけ薄膜に置き換え、電流検出だけ金属板に置き換えるという進め方が効率的です。最初からすべてを薄膜にするとコストが数倍に跳ね上がるので、「必要な場所だけグレードを上げる」のが設計のコツです。

抵抗器を選ぶときの5つのチェックポイント
種類(厚膜 or 薄膜 or 金属板)が決まったら、具体的な製品をデータシートから選定します。このとき確認すべき5つのパラメータを一覧にしました。各パラメータの詳細は、次の記事で計算例付きで解説しています。
抵抗器のデータシートの読み方|抵抗値・定格電力・TCR・許容差の5つのパラメータを図解 →
E系列とは?抵抗値が中途半端な理由|E12・E24・E96の一覧表と選び方 →
ディレーティングとは?抵抗の定格電力の何%で使うべきか|発熱計算と信頼性設計 →

まとめ ── 抵抗器の選び方は「3ステップ」で即決できる
→ 電流制限?分圧?プルアップ?電流検出?ゲート駆動?ダンピング?
ステップ2:フローチャートで種類を決める
→ mΩオーダー → 金属板 / 高精度が必要 → 薄膜 / それ以外 → 厚膜
ステップ3:5つのパラメータで具体的な製品を選ぶ
→ 抵抗値(E系列)→ 許容差 → 定格電力 → TCR → チップサイズ
この記事で抵抗器の全体像をつかめたら、次は「具体的にどう選定するか」を掘り下げていきましょう。以下の記事は、すべてこの記事と連携した「抵抗器シリーズ」です。実務で必要になったものから読んでください。
📚 抵抗器シリーズ ── 次に読むべき記事
種類が決まったら、次はデータシートから具体的な製品を選ぶ。チップサイズ一覧表つき。
「なぜ4.7kΩや9.1kΩ?」の疑問が解決。E24にない値を2個の抵抗で作る方法も。
パワエレ設計者必見。スイッチング速度とリンギングのトレードオフを計算で解決。
「とりあえず10kΩ」を卒業。VIL/VIHマージンの計算方法がわかる。
DC-DCのFB抵抗をE24系列から最適に選ぶ方法を計算例で解説。
最も基本的な「V=IR」の応用。LED→突入電流→ゲート電流と段階的に。
「1/4W抵抗に1/4Wを流してよいか?」→ ダメ。その根拠を車載/産業機器/民生別に解説。
💬 この記事を読んでいるあなたへ。毎日データシートとBOMとにらめっこしながら、「このままこの設計を続けていていいのかな」とふと思うことはありませんか。もしそう感じているなら、こちらの記事も読んでみてください。