回路設計

ノイズとは?電気回路のノイズの意味と発生の仕組み・対策の考え方を図解|計算ツール付き

ノイズとは何かを表すアイキャッチ。オシロスコープの直流の線に、いらないトゲと波が乗っている

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 「ノイズ対策」とよく聞くけれど、ノイズとは何なのかもやもやしている
  • 「その配線はノイズを拾うよ」と言われても、何を拾うのかイメージできない
  • EMI・EMS・EMCがどれがどれだかまざる
この記事でわかること
  • ノイズの意味と、ノイズが生まれる3つの仕組み
  • ノイズの大きさを計算するツール
  • 伝導ノイズと放射ノイズ、EMI・EMS・EMCの関係
  • 発生源・経路・受ける側の3段階の対策
結論|まず30秒でわかる答え

ノイズとは、電気回路では、目的の信号や電源以外の、いらない電圧や電流の変化のことです。電流や電圧が急に変わると、配線のインダクタンスや、配線どうしのあいだの小さな静電容量・相互インダクタンスを通して、まわりの回路に「欲しくない電気」が生まれます。ノイズは電線を伝わる(伝導ノイズ)か空間を飛ぶ(放射ノイズ)かで広がり、発生源・伝わる道・受ける側の3か所で対策します。

ノイズとは何かを表すアイキャッチ。オシロスコープの直流の線に、いらないトゲと波が乗っている

ノイズとは?「欲しくない電気」のこと

5Vの直流電源をオシロスコープで見ると、まっすぐなはずの線にギザギザ(リプル)や、鋭いトゲ(スパイク)が乗っています。これがノイズです。

静かなカフェで本を読んでいるとき、隣の人の電話や外の工事の音は「ノイズ」です。でも電話をかけている本人にとって、その声は大事な「信号」です。電気のノイズも同じで、ある回路にとっての信号が、別の回路にとってはノイズになります。ノイズは特別な物質ではなく、「その回路にとっていらない変化」という関係の名前です。

見え方中身主な原因
リプルスイッチングの周期でくり返す小さな波電源の平滑が足りない
スパイク・リンギング切りかえの瞬間の鋭いトゲと、そのあとの揺れ配線のインダクタンスと急な電流の変化
外から来るノイズ静電気・雷サージ・ほかの機器の電磁波ケーブルや空間から入る
ランダムなノイズ部品の中で生まれる小さなゆらぎ(熱雑音など)抵抗や半導体そのもの。微小な信号を測るときに効く

この記事では、パワエレや基板設計でいちばん問題になる、電流や電圧の急な変化から生まれるノイズを中心に説明します。

ノイズをカフェにたとえた図。隣の人の電話が読書のじゃまになるように、となりの回路の信号が自分の回路にとってはノイズになる

ノイズが生まれる3つの仕組み

3つに共通するのは「急な変化」です。電流の変化の速さdI/dtと、電圧の変化の速さdV/dtが大きいほど、ノイズは大きくなります。

仕組み何が起きる式対策の向き
① 配線のインダクタンス電流が急に変わると、配線の小さなコイル成分に電圧が出るV = L × dI/dt配線を短く(L↓)、切りかえをゆるやかに
② 磁界による結合(相互誘導)電流の変化でできる磁界が、近くの配線のループに電圧を生むV = M × dI/dtループの面積を小さく、配線を離す
③ 電界による結合(浮遊容量)電圧が急に変わると、配線どうしの小さな容量を通して電流が流れこむI = C × dV/dt配線を離す(C↓)、GNDでへだてる

ノイズの大きさの計算ツール

① 配線のインダクタンスで出るノイズ電圧 V=L×dI/dt
② 浮遊容量から流れこむノイズ電流 I=C×dV/dt

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

10nHは、基板の配線ならおよそ1cmほどです。そこに10Aを10nsで切りかえると10Vものノイズ電圧が出ます。400Vを20nsで切りかえるスイッチの配線と、1pFだけ容量でつながった信号線には20mAが流れこみ、1kΩなら20Vにもなります。どちらも、配線の短さや距離がノイズの大きさを決めることを示しています。

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ノイズが生まれる3つの仕組みの図。配線のインダクタンスでV=L×dI/dt、磁界の結合、浮遊容量でI=C×dV/dt

ノイズの伝わり方と、EMI・EMS・EMC

ノイズは電線を通って伝わるか(伝導ノイズ)、空間を電磁波として飛ぶか(放射ノイズ)のどちらかで広がります。

種類伝わり方規格で見る周波数(目安)たとえ
伝導ノイズ電源線・信号線を通る150kHz〜30MHz排水管を通って隣の部屋に流れこむ汚水
放射ノイズ空間を電磁波として飛ぶ30MHz以上壁ごしに聞こえる隣の部屋の大声

伝導ノイズには、行きと帰りが逆向きに流れるノーマルモード(ディファレンシャルモード)と、行きも帰りも同じ向きに流れて大地へ戻るコモンモードがあります。

用語意味立場
EMI(エミッション)機器がまわりに出すノイズ(電磁妨害)加害者
EMS(イミュニティ)まわりのノイズに耐える力(電磁感受性)被害者
EMC出しすぎず、耐えられる状態(電磁両立性)共存

製品を売るためのEMCの規格(CEマーキング、VCCI、FCCなど)では、出すノイズの試験(エミッション)と、耐える試験(イミュニティ)の両方に合格する必要があります。

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ノイズの伝わり方とEMCの図。電線を通る伝導ノイズと空間を飛ぶ放射ノイズがあり、EMI(出す)とEMS(耐える)を両立した状態がEMC

ノイズ対策の考え方|発生源・経路・受ける側の3か所で止める

段階考え方主な手段
① 発生源で抑えるそもそも生まない(いちばん効く)スナバ回路、ゲート抵抗で切りかえをゆるやかに、ループを小さく
② 経路で断つ伝わる道をふさぐフィルタ、シールド、配線の距離とGNDの引き方
③ 受ける側で守る入ってきても壊れない・誤動作しないパスコン、TVSダイオード、差動信号

パワエレはノイズを生みやすい

パワエレ回路は、高い電圧・大きな電流を、速く切りかえて電力を変換します。大電流の切りかえはdI/dtを、高電圧の切りかえはdV/dtを大きくし、切りかえの回数が多いほどノイズのエネルギーが特定の周波数に集まります。効率を上げようと切りかえを速くするほどノイズが増える、というかねあいがあるので、設計の最初からノイズを考えておく必要があります。

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ノイズ対策の3段階の図。発生源で抑える、経路で断つ、受ける側で守る。発生源で抑えるのがいちばん効く

ノイズでよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
ノイズは外から入ってくるもの自分の回路の切りかえが、いちばんのノイズ源になることが多い
電圧が低いからノイズは小さい大事なのは大きさより変化の速さ(dI/dt・dV/dt)
あとからフィルタを足せば直る発生源で抑えるのがいちばん安くよく効く。設計の最初に考える
GNDは0Vでどこでも同じGNDも配線なので、電流が流れれば電圧が出てノイズの通り道になる
オシロで見えたものが全部ノイズプローブのGNDリードが長いと、測り方そのものがノイズを拾う
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GNDは0Vの線ではなく電流の帰り道

ノイズのよくある間違いの図。ノイズは自分の回路が出すことが多い、大きさは変化の速さが決める、対策は設計の最初に、GNDも配線

よくある質問

Q. 電気のノイズとは簡単にいうと?

A. 目的の信号や電源以外の、いらない電圧や電流の変化です。その回路にとって欲しくない電気のことです。

Q. ノイズの原因は?

A. 電流や電圧の急な変化です。配線のインダクタンス、磁界による結合、浮遊容量を通してノイズが生まれます。

Q. 伝導ノイズと放射ノイズの違いは?

A. 伝導ノイズは電線を通って、放射ノイズは空間を電磁波として飛んで伝わります。規格で見る周波数もちがいます。

Q. EMIとEMSの違いは?

A. EMIは機器が出すノイズ(加害者)、EMSは外からのノイズに耐える力(被害者)です。両方を満たすとEMCです。

Q. ノイズ対策でいちばん効くのは?

A. 発生源で抑えることです。電流ループを小さくし、切りかえの速さを調整すれば、あとの対策が少なくてすみます。

Q. なぜスイッチング電源はノイズが多い?

A. 高い電圧と大きな電流を速く切りかえるので、dI/dtとdV/dtが大きくなり、3つの仕組みのすべてが強く働くからです。

まとめ
  • ノイズ=目的以外の、いらない電圧・電流の変化
  • 生まれる仕組みは3つ:L×dI/dt、磁界の結合、C×dV/dt
  • カギは「急な変化」。dI/dtとdV/dtが大きいほど大きい
  • 伝わり方は伝導(電線)と放射(空間)
  • EMI=出す、EMS=耐える、EMC=両立
  • 対策は発生源・経路・受ける側。発生源がいちばん効く
ノイズのまとめの図。いらない電気の変化、急な変化で生まれる、伝導と放射で伝わる、発生源で抑える
キャリア
設計の経験を、次のキャリアに活かすなら

回路や基板の設計経験は、メーカーをはじめ多くの企業で求められています。今の職場で経験を積むのも、より広く経験を活かせる職場を探すのも、ひとつの道です。エンジニア向けの転職支援サービスでは、経験を棚卸ししながら求人を探せます。

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この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

ノイズの問題は、実際のトラブル事例から学ぶと対策の引き出しが増えます。現場でよく起こる67のEMCのトラブル事例を通して、ノイズが出るしくみと対策を解説した本です(森北出版)。

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「電気回路のノイズ」を、実際の基板設計のテクニックとあわせて身につけたい人に向いています。CQ出版『トランジスタ技術SPECIAL』の、プリント基板設計の実用的なテクニックを集めた号です。

S
シラス
電験三種 / QC検定1級 / パワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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