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- 「ノイズ対策」とよく聞くけれど、ノイズとは何なのかもやもやしている
- 「その配線はノイズを拾うよ」と言われても、何を拾うのかイメージできない
- EMI・EMS・EMCがどれがどれだかまざる
- ノイズの意味と、ノイズが生まれる3つの仕組み
- ノイズの大きさを計算するツール
- 伝導ノイズと放射ノイズ、EMI・EMS・EMCの関係
- 発生源・経路・受ける側の3段階の対策
ノイズとは、電気回路では、目的の信号や電源以外の、いらない電圧や電流の変化のことです。電流や電圧が急に変わると、配線のインダクタンスや、配線どうしのあいだの小さな静電容量・相互インダクタンスを通して、まわりの回路に「欲しくない電気」が生まれます。ノイズは電線を伝わる(伝導ノイズ)か空間を飛ぶ(放射ノイズ)かで広がり、発生源・伝わる道・受ける側の3か所で対策します。

ノイズとは?「欲しくない電気」のこと
5Vの直流電源をオシロスコープで見ると、まっすぐなはずの線にギザギザ(リプル)や、鋭いトゲ(スパイク)が乗っています。これがノイズです。
静かなカフェで本を読んでいるとき、隣の人の電話や外の工事の音は「ノイズ」です。でも電話をかけている本人にとって、その声は大事な「信号」です。電気のノイズも同じで、ある回路にとっての信号が、別の回路にとってはノイズになります。ノイズは特別な物質ではなく、「その回路にとっていらない変化」という関係の名前です。
| 見え方 | 中身 | 主な原因 |
|---|---|---|
| リプル | スイッチングの周期でくり返す小さな波 | 電源の平滑が足りない |
| スパイク・リンギング | 切りかえの瞬間の鋭いトゲと、そのあとの揺れ | 配線のインダクタンスと急な電流の変化 |
| 外から来るノイズ | 静電気・雷サージ・ほかの機器の電磁波 | ケーブルや空間から入る |
| ランダムなノイズ | 部品の中で生まれる小さなゆらぎ(熱雑音など) | 抵抗や半導体そのもの。微小な信号を測るときに効く |
この記事では、パワエレや基板設計でいちばん問題になる、電流や電圧の急な変化から生まれるノイズを中心に説明します。

ノイズが生まれる3つの仕組み
3つに共通するのは「急な変化」です。電流の変化の速さdI/dtと、電圧の変化の速さdV/dtが大きいほど、ノイズは大きくなります。
| 仕組み | 何が起きる | 式 | 対策の向き |
|---|---|---|---|
| ① 配線のインダクタンス | 電流が急に変わると、配線の小さなコイル成分に電圧が出る | V = L × dI/dt | 配線を短く(L↓)、切りかえをゆるやかに |
| ② 磁界による結合(相互誘導) | 電流の変化でできる磁界が、近くの配線のループに電圧を生む | V = M × dI/dt | ループの面積を小さく、配線を離す |
| ③ 電界による結合(浮遊容量) | 電圧が急に変わると、配線どうしの小さな容量を通して電流が流れこむ | I = C × dV/dt | 配線を離す(C↓)、GNDでへだてる |
ノイズの大きさの計算ツール
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
10nHは、基板の配線ならおよそ1cmほどです。そこに10Aを10nsで切りかえると10Vものノイズ電圧が出ます。400Vを20nsで切りかえるスイッチの配線と、1pFだけ容量でつながった信号線には20mAが流れこみ、1kΩなら20Vにもなります。どちらも、配線の短さや距離がノイズの大きさを決めることを示しています。
寄生インダクタンスとリンギング
隣の配線にノイズが飛び移るクロストーク

ノイズの伝わり方と、EMI・EMS・EMC
ノイズは電線を通って伝わるか(伝導ノイズ)、空間を電磁波として飛ぶか(放射ノイズ)のどちらかで広がります。
| 種類 | 伝わり方 | 規格で見る周波数(目安) | たとえ |
|---|---|---|---|
| 伝導ノイズ | 電源線・信号線を通る | 150kHz〜30MHz | 排水管を通って隣の部屋に流れこむ汚水 |
| 放射ノイズ | 空間を電磁波として飛ぶ | 30MHz以上 | 壁ごしに聞こえる隣の部屋の大声 |
伝導ノイズには、行きと帰りが逆向きに流れるノーマルモード(ディファレンシャルモード)と、行きも帰りも同じ向きに流れて大地へ戻るコモンモードがあります。
| 用語 | 意味 | 立場 |
|---|---|---|
| EMI(エミッション) | 機器がまわりに出すノイズ(電磁妨害) | 加害者 |
| EMS(イミュニティ) | まわりのノイズに耐える力(電磁感受性) | 被害者 |
| EMC | 出しすぎず、耐えられる状態(電磁両立性) | 共存 |
製品を売るためのEMCの規格(CEマーキング、VCCI、FCCなど)では、出すノイズの試験(エミッション)と、耐える試験(イミュニティ)の両方に合格する必要があります。
伝導ノイズと放射ノイズの見分け方と対策
EMC対策をしないと製品が売れない理由

ノイズ対策の考え方|発生源・経路・受ける側の3か所で止める
| 段階 | 考え方 | 主な手段 |
|---|---|---|
| ① 発生源で抑える | そもそも生まない(いちばん効く) | スナバ回路、ゲート抵抗で切りかえをゆるやかに、ループを小さく |
| ② 経路で断つ | 伝わる道をふさぐ | フィルタ、シールド、配線の距離とGNDの引き方 |
| ③ 受ける側で守る | 入ってきても壊れない・誤動作しない | パスコン、TVSダイオード、差動信号 |
パワエレはノイズを生みやすい
パワエレ回路は、高い電圧・大きな電流を、速く切りかえて電力を変換します。大電流の切りかえはdI/dtを、高電圧の切りかえはdV/dtを大きくし、切りかえの回数が多いほどノイズのエネルギーが特定の周波数に集まります。効率を上げようと切りかえを速くするほどノイズが増える、というかねあいがあるので、設計の最初からノイズを考えておく必要があります。
スイッチングノイズとループ面積の関係

ノイズでよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| ノイズは外から入ってくるもの | 自分の回路の切りかえが、いちばんのノイズ源になることが多い |
| 電圧が低いからノイズは小さい | 大事なのは大きさより変化の速さ(dI/dt・dV/dt) |
| あとからフィルタを足せば直る | 発生源で抑えるのがいちばん安くよく効く。設計の最初に考える |
| GNDは0Vでどこでも同じ | GNDも配線なので、電流が流れれば電圧が出てノイズの通り道になる |
| オシロで見えたものが全部ノイズ | プローブのGNDリードが長いと、測り方そのものがノイズを拾う |
GNDは0Vの線ではなく電流の帰り道

よくある質問
- ノイズ=目的以外の、いらない電圧・電流の変化
- 生まれる仕組みは3つ:L×dI/dt、磁界の結合、C×dV/dt
- カギは「急な変化」。dI/dtとdV/dtが大きいほど大きい
- 伝わり方は伝導(電線)と放射(空間)
- EMI=出す、EMS=耐える、EMC=両立
- 対策は発生源・経路・受ける側。発生源がいちばん効く

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メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。