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- シャント抵抗が何をする部品なのか、ひとことで知りたい
- 抵抗値は何mΩにすればいいのか、定格電力はどれだけ要るのか迷う
- TCRやケルビン接続が、精度にどう効くのかわからない
- シャント抵抗の仕組みと、ローサイド・ハイサイドの違い
- 抵抗値・定格電力・TCR・許容差・ケルビン接続の5つの選び方
- 10Aの設計例と、実装でつまずくところ
- 条件を入れるだけの選定計算ツール
シャント抵抗とは、電流の通り道に直列に入れた小さな抵抗(数mΩ〜数十mΩ)で、両端に出る電圧V=I×Rを測って電流を知るための部品です。選ぶときは、最大電流で50〜100mVほど出る抵抗値にし、発熱P=I²Rの2倍以上の定格(温度のディレーティング後)をとり、温度による抵抗値の変化(TCR)と許容差で精度を確かめ、10mΩ以下なら4端子のケルビン接続にします。

シャント抵抗とは?電流を電圧に変えて測る部品
電流は、そのままでは測れません。そこで、通り道に小さな抵抗を入れ、両端に出る電圧から電流を逆算します。この抵抗がシャント抵抗です。オームの法則V=I×Rで、10mΩに10Aが流れれば100mVが出ます。この電圧をアンプで大きくし、マイコンのADCで読みます。
抵抗が大きいほど電圧は読みやすくなりますが、そのぶん回路の電圧を食い、熱(P=I²R)も出ます。そのため、シャント抵抗はふつう数mΩ〜数十mΩと、とても小さな値です。川の流れに小さな水車を入れて、その回り方で流量を知るようなものです。水車が大きすぎると、流れそのものをじゃましてしまいます。
「シャント(shunt)」は「わき道・分流」という意味です。電験などで出てくる電流計の分流器もシャントと呼ばれ、電流計と並列につないで電流の大部分をわきに流し、測れる範囲を広げます。この記事のシャント抵抗は、電子回路で電流を検出する部品のほうです。
電流計の分流器の計算
ローサイドとハイサイド|どこに入れる?
| 入れる場所 | よいところ | 注意するところ |
|---|---|---|
| ローサイド(負荷とGNDの間) | 電圧が0V近くなので、ふつうのアンプで測れて安く簡単 | 負荷のGNDが少し浮く。負荷の先での地絡(GNDへのもれ)は見えない |
| ハイサイド(電源と負荷の間) | 負荷のGNDはそのまま。地絡やショートも検出できる | 電源電圧が乗った所で測るので、同相電圧の高い専用の電流センスアンプが要る |
シャント抵抗のほかに、CT・ホール素子・ロゴスキーコイルといった電流の測り方もあります。どれを使うかは、電流検出方式の比較の記事にまとめています。
シャント・CT・ホール素子の比較

選び方①|抵抗値は「検出電圧」と「発熱」のバランスで決める
目安は、最大電流のときの検出電圧が50〜100mVになる抵抗値です。多くの電流センスアンプの入力にちょうどよく、発熱もおさえられる落としどころです。
最大電流10A、目標100mV → R=0.1V÷10A=10mΩ。発熱は P=10²×0.01=1W。
抵抗値を小さくしすぎると、こんどはアンプの入力オフセット電圧が効いてきます。オフセット1mVのアンプで検出電圧が10mVしかなければ、それだけで10%の誤差です。検出電圧は、アンプのオフセットの50倍以上を目安にします。
選び方②|定格電力は、温度で下がる分を見こんで2倍以上
データシートの定格電力は、ふつう周囲(端子部)の温度が低いときの値です。温度が上がると熱を逃がしにくくなるので、使える電力は下がります。これをディレーティングといいます。
たとえば「70℃までは定格どおり、それより上は155℃で0になるまで直線に下がる」製品なら、85℃では 2W×(155−85)÷(155−70)≒1.65W しか使えません。1Wの発熱に対して1.65倍の余裕なので、2倍以上をとるなら3W品にします。ディレーティングのカーブは製品ごとにちがうので、必ずデータシートで確かめます。
起動時の突入電流や短絡のときのように、一瞬だけ大きな電流が流れる場合は、データシートのパルス耐量(短時間過負荷)の規格で確かめます。記載がなければメーカーに確認します。
定格ギリギリで使ってはいけない理由

選び方③④|TCRと許容差で精度を確かめる
TCR(抵抗温度係数)は、温度が1℃変わったときに抵抗値がどれだけ変わるかで、単位はppm/℃です。100ppm/℃なら、1℃で0.01%変わります。シャント抵抗は自分の発熱で温度が上がるので、TCRがそのまま誤差になります。
| TCR | 温度が100℃上がったときの変化(10mΩ) | 誤差 |
|---|---|---|
| 100ppm/℃ | 10mΩ×100×10⁻⁶×100=0.1mΩ | 1% |
| 50ppm/℃ | 0.05mΩ | 0.5% |
| 25ppm/℃ | 0.025mΩ | 0.25% |
許容差(公差)は、工場から出たときの抵抗値のばらつきです。±1%なら10mΩの品は9.9〜10.1mΩの間にあります。許容差は最初から決まった誤差、TCRは温度で動く誤差です。電流検出の精度は、許容差・TCRによる変化・アンプの誤差を合わせて考えます。まず±1%で計算し、足りなければ±0.5%に上げるのが、コストのむだが少ない進め方です。
| 用途 | TCRの目安 | 許容差の目安 |
|---|---|---|
| 過電流保護(おおまかでよい) | 100〜300ppm/℃ | ±1〜5% |
| モーター制御・電源の制御 | 50〜100ppm/℃ | ±1% |
| バッテリー監視・計測 | 25ppm/℃以下 | ±0.5%以下 |
抵抗器の5大パラメータの読み方

選び方⑤|10mΩ以下ならケルビン接続(4端子)
2端子の抵抗では、電流を流す道と電圧を測る道が同じ端子を使います。そのため、はんだやランド、パターンのわずかな抵抗まで電圧に乗ってしまいます。シャント抵抗が数十mΩなら気になりませんが、数mΩだと、この余計な抵抗が無視できなくなります。
ケルビン接続(4端子)は、太い電流の端子と、細い電圧を測る端子を分けた方式です。電流はセンス線にほとんど流れないので、抵抗そのものの電圧だけを測れます。目安は、10mΩ以下で推奨、5mΩ以下ではほぼ必須、50mΩ以上なら2端子でも問題ないことが多いです。2端子品を使う場合も、センス線はメーカーが推奨するパッドの内側から、2本をそろえて引き出します。
シャント抵抗の種類
| 項目 | 厚膜チップ | 金属板(メタルストリップ) | 薄膜チップ |
|---|---|---|---|
| TCR(目安) | 100〜300ppm/℃ | 25〜75ppm/℃ | 10〜50ppm/℃ |
| 定格電力(目安) | 〜2W程度 | 数W以上もある | 〜1W程度 |
| コスト | 安い | 中くらい | やや高い |
| 向いている用途 | 過電流保護、コスト重視 | 大電流、車載・モーター制御 | 高精度の計測 |
数字は一般的な目安で、製品によってちがいます。迷ったら「安さなら厚膜、大電流なら金属板、精度なら薄膜」で候補をしぼり、データシートで確かめます。
厚膜・薄膜・金属板の違い

シャント抵抗の選定計算ツール
最大電流と条件を入れてください。抵抗値・発熱・その温度で使える定格・誤差の合計を出します(ディレーティングは、開始温度から最高温度まで直線に下がるとして計算します)。
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
設計例|DC-DCコンバータの過電流保護(10A)
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① 最大電流 | 10A(過電流を判定したい電流) |
| ② 抵抗値 | 100mV÷10A=10mΩ |
| ③ 定格電力 | P=1W。基板85℃で2倍の余裕をとるため、3W品(85℃で約2.5W) |
| ④ 精度 | 厚膜100ppm/℃、ΔT=100℃で1%。許容差±1%と合わせて約2%。過電流保護の±5%に収まる |
| ⑤ 接続 | 10mΩなのでケルビン接続が望ましい。2端子品ならセンス線をパッドの内側から引く |
実装でつまずくところ
計算が正しくても、実装で精度がくずれることがよくあります。いちばん多いのは、2端子の低抵抗品で、センス線を抵抗の外側(はんだの外)から引いてしまうことです。数mΩのはんだやランドの抵抗が検出電圧に乗り、計算では1%のはずが、実機で数%ずれます。
もう1つは熱起電力です。種類のちがう金属の接合部に温度差があると、小さな電圧が出ます(ゼーベック効果)。シャントの片側だけが熱くなると、この電圧がDCのずれとして残ります。2本のセンス線を対称・等長に引き、両側の温度をそろえると効果があります。
品質保証の立場では、なぜその定格・TCR・許容差を選んだのかを、ディレーティングの計算とマージンを含めて残しておくと、客先の監査でそのまま根拠になります。
系統誤差・偶然誤差と不確かさ

シャント抵抗選びでよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 抵抗値は大きいほど精度が上がる | 発熱と電圧の損失がふえる。50〜100mVが目安 |
| 小さいほど安全 | 小さすぎるとアンプのオフセットで誤差が大きくなる |
| 定格電力は25℃の値で比べる | 使う温度でのディレーティング後の値で、2倍以上 |
| 許容差だけ見ればよい | 自己発熱によるTCRの変化も足して考える |
| 2端子でも電圧の取り方は自由 | 低抵抗ほど、どこから電圧を取るかが誤差になる |

回路や基板の設計経験は、メーカーをはじめ多くの企業で求められています。今の職場で経験を積むのも、より広く経験を活かせる職場を探すのも、ひとつの道です。エンジニア向けの転職支援サービスでは、経験を棚卸ししながら求人を探せます。
よくある質問
- シャント抵抗=電流の通り道に入れ、V=IRで電流を測る小さな抵抗
- 抵抗値は最大電流で50〜100mVが目安。小さすぎるとアンプのオフセットが効く
- 定格電力は、ディレーティング後でP=I²Rの2倍以上
- 精度は許容差+TCR(自己発熱)+アンプの誤差で考える
- 10mΩ以下はケルビン接続。ローサイドは簡単、ハイサイドは地絡も見える

パワーエレクトロニクスの全体を、図でつかみたいときに向いています。パワーエレクトロニクスを、カラーの図解で解説した本です。
回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
次に読むべき記事
シャント抵抗が決まったら、その電圧を使って回路を守る、過電流保護の設計に進みましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。