回路設計

シャント抵抗とは?仕組みと選び方(抵抗値・定格電力・TCR・ケルビン接続)|計算ツール付き

シャント抵抗とは何かを表すアイキャッチ。基板の上の小さなシャント抵抗に電流が流れ、両端の電圧をアンプで読む

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • シャント抵抗が何をする部品なのか、ひとことで知りたい
  • 抵抗値は何mΩにすればいいのか、定格電力はどれだけ要るのか迷う
  • TCRやケルビン接続が、精度にどう効くのかわからない
この記事でわかること
  • シャント抵抗の仕組みと、ローサイド・ハイサイドの違い
  • 抵抗値・定格電力・TCR・許容差・ケルビン接続の5つの選び方
  • 10Aの設計例と、実装でつまずくところ
  • 条件を入れるだけの選定計算ツール
結論|まず30秒でわかる答え

シャント抵抗とは、電流の通り道に直列に入れた小さな抵抗(数mΩ〜数十mΩ)で、両端に出る電圧V=I×Rを測って電流を知るための部品です。選ぶときは、最大電流で50〜100mVほど出る抵抗値にし、発熱P=I²Rの2倍以上の定格(温度のディレーティング後)をとり、温度による抵抗値の変化(TCR)と許容差で精度を確かめ、10mΩ以下なら4端子のケルビン接続にします。

シャント抵抗とは何かを表すアイキャッチ。基板の上の小さなシャント抵抗に電流が流れ、両端の電圧をアンプで読む
シャント抵抗は両端の電圧から電流を読む

シャント抵抗とは?電流を電圧に変えて測る部品

電流は、そのままでは測れません。そこで、通り道に小さな抵抗を入れ、両端に出る電圧から電流を逆算します。この抵抗がシャント抵抗です。オームの法則V=I×Rで、10mΩに10Aが流れれば100mVが出ます。この電圧をアンプで大きくし、マイコンのADCで読みます。

抵抗が大きいほど電圧は読みやすくなりますが、そのぶん回路の電圧を食い、熱(P=I²R)も出ます。そのため、シャント抵抗はふつう数mΩ〜数十mΩと、とても小さな値です。川の流れに小さな水車を入れて、その回り方で流量を知るようなものです。水車が大きすぎると、流れそのものをじゃましてしまいます。

「シャント(shunt)」は「わき道・分流」という意味です。電験などで出てくる電流計の分流器もシャントと呼ばれ、電流計と並列につないで電流の大部分をわきに流し、測れる範囲を広げます。この記事のシャント抵抗は、電子回路で電流を検出する部品のほうです。

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ローサイドとハイサイド|どこに入れる?

入れる場所よいところ注意するところ
ローサイド(負荷とGNDの間)電圧が0V近くなので、ふつうのアンプで測れて安く簡単負荷のGNDが少し浮く。負荷の先での地絡(GNDへのもれ)は見えない
ハイサイド(電源と負荷の間)負荷のGNDはそのまま。地絡やショートも検出できる電源電圧が乗った所で測るので、同相電圧の高い専用の電流センスアンプが要る

シャント抵抗のほかに、CT・ホール素子・ロゴスキーコイルといった電流の測り方もあります。どれを使うかは、電流検出方式の比較の記事にまとめています。

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シャント・CT・ホール素子の比較

シャント抵抗の仕組みの図。10Aが10mΩのシャント抵抗を流れると、V=I×Rで100mVの電圧が出る。負荷とGNDの間に入れるローサイドと、電源と負荷の間に入れるハイサイドがある
10Aが10mΩを流れると100mV:ローサイドとハイサイド

選び方①|抵抗値は「検出電圧」と「発熱」のバランスで決める

目安は、最大電流のときの検出電圧が50〜100mVになる抵抗値です。多くの電流センスアンプの入力にちょうどよく、発熱もおさえられる落としどころです。

計算例

最大電流10A、目標100mV → R=0.1V÷10A=10mΩ。発熱は P=10²×0.01=1W。

抵抗値を小さくしすぎると、こんどはアンプの入力オフセット電圧が効いてきます。オフセット1mVのアンプで検出電圧が10mVしかなければ、それだけで10%の誤差です。検出電圧は、アンプのオフセットの50倍以上を目安にします。

選び方②|定格電力は、温度で下がる分を見こんで2倍以上

データシートの定格電力は、ふつう周囲(端子部)の温度が低いときの値です。温度が上がると熱を逃がしにくくなるので、使える電力は下がります。これをディレーティングといいます。

たとえば「70℃までは定格どおり、それより上は155℃で0になるまで直線に下がる」製品なら、85℃では 2W×(155−85)÷(155−70)≒1.65W しか使えません。1Wの発熱に対して1.65倍の余裕なので、2倍以上をとるなら3W品にします。ディレーティングのカーブは製品ごとにちがうので、必ずデータシートで確かめます。

起動時の突入電流や短絡のときのように、一瞬だけ大きな電流が流れる場合は、データシートのパルス耐量(短時間過負荷)の規格で確かめます。記載がなければメーカーに確認します。

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定格ギリギリで使ってはいけない理由

シャント抵抗の抵抗値と定格電力の図。抵抗値は読みやすさと発熱のバランスで、検出電圧50〜100mVが目安。定格電力は温度が上がると下がるので、発熱の2倍以上をとる
抵抗値は検出電圧50〜100mV、定格電力は発熱の2倍以上

選び方③④|TCRと許容差で精度を確かめる

TCR(抵抗温度係数)は、温度が1℃変わったときに抵抗値がどれだけ変わるかで、単位はppm/℃です。100ppm/℃なら、1℃で0.01%変わります。シャント抵抗は自分の発熱で温度が上がるので、TCRがそのまま誤差になります。

TCR温度が100℃上がったときの変化(10mΩ)誤差
100ppm/℃10mΩ×100×10⁻⁶×100=0.1mΩ1%
50ppm/℃0.05mΩ0.5%
25ppm/℃0.025mΩ0.25%

許容差(公差)は、工場から出たときの抵抗値のばらつきです。±1%なら10mΩの品は9.9〜10.1mΩの間にあります。許容差は最初から決まった誤差、TCRは温度で動く誤差です。電流検出の精度は、許容差・TCRによる変化・アンプの誤差を合わせて考えます。まず±1%で計算し、足りなければ±0.5%に上げるのが、コストのむだが少ない進め方です。

用途TCRの目安許容差の目安
過電流保護(おおまかでよい)100〜300ppm/℃±1〜5%
モーター制御・電源の制御50〜100ppm/℃±1%
バッテリー監視・計測25ppm/℃以下±0.5%以下
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シャント抵抗のTCRと許容差の図。許容差は出荷時のずれで±1%、TCRは温度で動くずれで100ppm/℃×100℃で1%、合わせて約2%にアンプの誤差が加わる
許容差とTCRを足すと誤差は約2%

選び方⑤|10mΩ以下ならケルビン接続(4端子)

2端子の抵抗では、電流を流す道と電圧を測る道が同じ端子を使います。そのため、はんだやランド、パターンのわずかな抵抗まで電圧に乗ってしまいます。シャント抵抗が数十mΩなら気になりませんが、数mΩだと、この余計な抵抗が無視できなくなります。

ケルビン接続(4端子)は、太い電流の端子と、細い電圧を測る端子を分けた方式です。電流はセンス線にほとんど流れないので、抵抗そのものの電圧だけを測れます。目安は、10mΩ以下で推奨、5mΩ以下ではほぼ必須、50mΩ以上なら2端子でも問題ないことが多いです。2端子品を使う場合も、センス線はメーカーが推奨するパッドの内側から、2本をそろえて引き出します。

シャント抵抗の種類

項目厚膜チップ金属板(メタルストリップ)薄膜チップ
TCR(目安)100〜300ppm/℃25〜75ppm/℃10〜50ppm/℃
定格電力(目安)〜2W程度数W以上もある〜1W程度
コスト安い中くらいやや高い
向いている用途過電流保護、コスト重視大電流、車載・モーター制御高精度の計測

数字は一般的な目安で、製品によってちがいます。迷ったら「安さなら厚膜、大電流なら金属板、精度なら薄膜」で候補をしぼり、データシートで確かめます。

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厚膜・薄膜・金属板の違い

ケルビン接続とシャント抵抗の種類の図。4端子のケルビン接続は電流の端子と電圧を測る端子を分け、10mΩ以下で推奨。種類は厚膜は安い、金属板は大電流、薄膜は高精度
ケルビン接続と、厚膜・金属板・薄膜の使い分け

シャント抵抗の選定計算ツール

最大電流と条件を入れてください。抵抗値・発熱・その温度で使える定格・誤差の合計を出します(ディレーティングは、開始温度から最高温度まで直線に下がるとして計算します)。

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

設計例|DC-DCコンバータの過電流保護(10A)

手順内容
① 最大電流10A(過電流を判定したい電流)
② 抵抗値100mV÷10A=10mΩ
③ 定格電力P=1W。基板85℃で2倍の余裕をとるため、3W品(85℃で約2.5W)
④ 精度厚膜100ppm/℃、ΔT=100℃で1%。許容差±1%と合わせて約2%。過電流保護の±5%に収まる
⑤ 接続10mΩなのでケルビン接続が望ましい。2端子品ならセンス線をパッドの内側から引く

実装でつまずくところ

計算が正しくても、実装で精度がくずれることがよくあります。いちばん多いのは、2端子の低抵抗品で、センス線を抵抗の外側(はんだの外)から引いてしまうことです。数mΩのはんだやランドの抵抗が検出電圧に乗り、計算では1%のはずが、実機で数%ずれます。

もう1つは熱起電力です。種類のちがう金属の接合部に温度差があると、小さな電圧が出ます(ゼーベック効果)。シャントの片側だけが熱くなると、この電圧がDCのずれとして残ります。2本のセンス線を対称・等長に引き、両側の温度をそろえると効果があります。

品質保証の立場では、なぜその定格・TCR・許容差を選んだのかを、ディレーティングの計算とマージンを含めて残しておくと、客先の監査でそのまま根拠になります。

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系統誤差・偶然誤差と不確かさ

シャント抵抗の設計例の図。最大電流10A、抵抗値10mΩ、定格3W品で85℃で約2.5W、精度約2%、ケルビン接続が望ましい
シャント抵抗の設計例:10A・10mΩ・3W品

シャント抵抗選びでよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
抵抗値は大きいほど精度が上がる発熱と電圧の損失がふえる。50〜100mVが目安
小さいほど安全小さすぎるとアンプのオフセットで誤差が大きくなる
定格電力は25℃の値で比べる使う温度でのディレーティング後の値で、2倍以上
許容差だけ見ればよい自己発熱によるTCRの変化も足して考える
2端子でも電圧の取り方は自由低抵抗ほど、どこから電圧を取るかが誤差になる
シャント抵抗のよくある間違いの図。抵抗値は50〜100mVが目安、定格は使う温度で2倍、許容差にTCRの変化も足す、電圧はパッドの内側から取る
シャント抵抗のよくある間違いと正しい選び方
キャリア
設計の経験を、次のキャリアに活かすなら

回路や基板の設計経験は、メーカーをはじめ多くの企業で求められています。今の職場で経験を積むのも、より広く経験を活かせる職場を探すのも、ひとつの道です。エンジニア向けの転職支援サービスでは、経験を棚卸ししながら求人を探せます。

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よくある質問

Q. シャント抵抗とは簡単にいうと?

A. 電流の通り道に入れた小さな抵抗です。両端の電圧V=I×Rを測って、流れている電流を知ります。

Q. 抵抗値はどうやって決める?

A. 最大電流で50〜100mVが出る値が目安です。10Aなら10mΩで、発熱は1Wになります。

Q. 定格電力はどれだけ要る?

A. 発熱P=I²Rの2倍以上を、データシートの25℃の値ではなく、使う温度でのディレーティング後の値でとります。

Q. ケルビン接続は必要?

A. 10mΩ以下なら推奨、5mΩ以下ではほぼ必須です。はんだやパターンの抵抗の影響を消せます。

Q. TCRはどれくらいがよい?

A. 過電流保護なら100ppm/℃前後でも足ります。計測やバッテリー監視は25ppm/℃以下が目安です。

まとめ
  • シャント抵抗=電流の通り道に入れ、V=IRで電流を測る小さな抵抗
  • 抵抗値は最大電流で50〜100mVが目安。小さすぎるとアンプのオフセットが効く
  • 定格電力は、ディレーティング後でP=I²Rの2倍以上
  • 精度は許容差+TCR(自己発熱)+アンプの誤差で考える
  • 10mΩ以下はケルビン接続。ローサイドは簡単、ハイサイドは地絡も見える
シャント抵抗のまとめの図。V=IRで電流を測る、50〜100mVで抵抗値を決める、定格は温度を見て2倍、10mΩ以下は4端子
シャント抵抗のまとめ:V=IRと抵抗値・定格・4端子
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パワーエレクトロニクスの全体を、図でつかみたいときに向いています。パワーエレクトロニクスを、カラーの図解で解説した本です。

おすすめの道具

回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーで回路設計・生産技術(品質改善)の実務

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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