- 「除湿(ドライ)のほうが冷房より電気代が安い」と、なんとなく信じている
- 冷房と除湿、結局どっちを使えば節約になるのか分からない
- ネットで調べたら「安い」とも「高い」とも書いてあって、混乱している
- 冷房と除湿、電気代が安いのは結局どっちなのか
- 「除湿が高い場合」がある本当の理由(カギは除湿の"種類")
- あなたのエアコンがどっちの方式か、リモコンで見分ける方法
「除湿のほうが電気代が安いはず」——そう思って使っていたら、実は逆に高くついていた。じつは、これはよくある勘違いです。
なぜこんな逆転が起きるのか。理由はとてもシンプルで、ひとことで言うと「除湿には種類があるから」です。この記事では、水道や料理のたとえを使いながら、その仕組みを一つずつやさしく解説していきます。
冷房と除湿の電気代は、除湿の「種類」で逆転します。弱冷房除湿(じゃくれいぼうじょしつ=弱い冷房で湿気をとる方式)なら冷房より安く、再熱除湿(さいねつじょしつ=冷やした空気を温め直す方式)なら冷房より高くつきます。「除湿=節約」は思い込みで、あなたのエアコンがどちらの方式かで答えが真逆になります。ちなみに、近ごろのエアコンの多くは"安いほう"の弱冷房除湿です。
目次
そもそも冷房と除湿は何が違う?
電気代の話に入る前に、まず「冷房」と「除湿」がそれぞれ何をしているのかを整理しましょう。ここがあいまいだと、電気代の話も腑に落ちないからです。
ざっくり言うと、こういう違いです。
❄️ 冷房
おもな目的は「温度を下げる」こと。部屋の空気をしっかり冷やして、気温そのものを下げます。
結果として湿気も少し減りますが、あくまで「涼しくする」のが主役です。
💧 除湿(ドライ)
おもな目的は「湿気(しっけ)を減らす」こと。空気中の水分を取り除いて、ジメジメを解消します。
温度を下げるのは"おまけ"なので、冷房ほどはガンガン冷えません。
冷房は「暑さ」を、除湿は「ジメジメ」を退治する係だと考えると分かりやすいです。同じエアコンでも、力を入れる場所が違うのです。
つまり、冷房と除湿は「似ているけど狙いが違う」機能です。そして電気代の差は、この「狙いの違い」から生まれてきます。

じつは除湿には「2つの方式」がある
ここが、この記事でいちばん大事なところです。ゆっくり読んでください。
同じ「除湿」ボタンでも、エアコンの中でやっている仕事は、じつは大きく2種類に分かれます。それが弱冷房除湿と再熱除湿です。この2つは、電気代がまるで違います。
① 弱冷房除湿(じゃくれいぼうじょしつ)=安いほう
弱冷房除湿は、名前のとおり「弱めの冷房」で湿気をとる方式です。エアコンが空気を軽く冷やして、そのとき出てくる水分を取り除き、少しヒンヤリした空気をそのまま部屋に戻します。
冷房を"手加減して弱く動かしている"だけなので、消費する電気は冷房よりも少なくてすみます。3つのモードの中でいちばん安いのがこれです。
② 再熱除湿(さいねつじょしつ)=高いほう
再熱除湿は、少しややこしいことをします。まず空気をしっかり冷やして水分を取り除き(ここまでは同じ)、そのあと冷えすぎた空気をわざわざ温め直してから部屋に戻すのです。
「再熱」とは「もう一回、熱を加える」という意味。こうすることで、部屋を寒くしすぎずにジメジメだけを取れます。梅雨や肌寒い日にはとても快適です。ただし——温め直すために追加の電気を使うので、3つの中でいちばん高いのがこの方式です。
お風呂を「熱くしすぎたから、水を足してぬるくする」ような感じです。せっかく沸かしたお湯を、わざわざ冷ます。ムダに感じますよね。再熱除湿は「せっかく冷やした空気を、わざわざ温め直す」ので、その分だけ余計に電気を食うのです。
つまり、ひとくちに「除湿」と言っても、安い除湿(弱冷房)と高い除湿(再熱)があるということ。だから「除湿は安い」とも「除湿は高い」とも言えて、ネットの情報が食い違って見えるのです。

なぜ再熱除湿だけ、そんなに高いの?
「温め直すから高い」——たしかにその通りなのですが、もう一歩だけ踏み込むと、もっとスッキリ納得できます。
ポイントは、再熱除湿が「エネルギーを2回使っている」という点です。
まず、電気を使って空気を冷やす(水分を取り除くため)。
次に、また電気(や熱)を使って、その空気を温め直す(寒くしすぎないため)。
「冷やす」と「温める」で、正反対の仕事を続けてやっている。だから電気をたくさん使う。
車でたとえるなら、アクセルを踏んで加速したあと、すぐにブレーキで減速するようなものです。加速にもガソリンを使い、そのエネルギーをブレーキで捨てる。ムダが多いですよね。再熱除湿もこれと同じで、冷やしたエネルギーを温めで打ち消しているのです。
エアコンが空気を冷やしたり温めたりできるのは「ヒートポンプ」という仕組みのおかげです。この仕組みがわかると、なぜ再熱除湿が電気を食うのかがもっと腑に落ちます。くわしくは記事末の「次に読むべき記事」で紹介しています。
つまり、再熱除湿が高いのは「快適さと引きかえに、あえてムダな仕事をしている」から。逆に弱冷房除湿は、そのムダがないぶん安い、というわけです。

3モードの電気代を、実際に計算してみる
では、実際にどれくらい差が出るのか、数字で見てみましょう。電気代の計算式はとてもシンプルです。
電気代 = 消費電力(kW)× 時間(h)× 電気の単価(円)
ここでは、冷房の消費電力を0.8kW(一般的な家庭用エアコンの一例)、電気の単価を1kWhあたり31円として計算します。
除湿の消費電力は、これまでの目安として弱冷房除湿は冷房のおよそ3分の1、再熱除湿は冷房のおよそ1.35倍とされています。この目安を使って、冷房を基準に計算していきます。
まず「冷房 1時間」を計算
式に数字を入れます。0.8(kW)× 1(時間)× 31(円)= 約24.8円。冷房を1時間つけると、およそ25円ということですね。
次に除湿の2つを計算
弱冷房除湿は冷房の約3分の1なので、24.8円 ÷ 3 = 約8.3円。再熱除湿は冷房の約1.35倍なので、24.8円 × 1.35 = 約33.5円。これを表にまとめると、こうなります。
| モード | 1時間 | 1日(8時間) | 1ヶ月(8時間×30日) |
|---|---|---|---|
| 弱冷房除湿 いちばん安い |
約8.3円 | 約66円 | 約1,990円 |
| 冷房 まんなか |
約24.8円 | 約198円 | 約5,950円 |
| 再熱除湿 いちばん高い |
約33.5円 | 約268円 | 約8,040円 |
この数字はあくまで「一例」です。消費電力や電気の単価は機種・契約・使い方でまったく変わります。正確な数字は、お使いのエアコンの取扱説明書やカタログで確認してください。ここで大事なのは「金額そのもの」ではなく、弱冷房除湿→冷房→再熱除湿の順で高くなるという並び順です。
1ヶ月で見ると、いちばん安い弱冷房除湿といちばん高い再熱除湿では約6,000円もの差が出ています。同じ「除湿」でこれだけ違うのですから、「除湿だから安い」と決めつけるのは危険だとわかりますね。

じつは、今のエアコンの多くは"安いほう"
ここまで読んで「再熱除湿こわい……うちのエアコン、高いほうだったらどうしよう」と不安になった方へ。安心してください。あまり知られていないのですが、じつは近年のエアコンでは再熱除湿はどんどん減っています。
理由は、メーカー同士の「省エネ競争」です。エアコンは「1年間でどれだけ電気を使うか」を示す数字(省エネ性能)で比べられることが多く、電気を食う再熱除湿を積んでいると、その数字が悪く見えてしまいます。そこで多くのメーカーが、電気の少ない弱冷房除湿を中心にするようになったのです。
とくに価格が手ごろな「普及モデル」のエアコンは、そのほとんどが弱冷房除湿だけを積んでいます。再熱除湿は、上位モデルや一部メーカーの機種に残っている、という状況です。
つまり、あなたのお家のエアコンが標準的なモデルなら、除湿を使っても冷房より安い可能性のほうが高いということ。「除湿は安い」という昔からのイメージは、今のエアコンでは意外と正しいことも多いのです。
ただし、これはあくまで「多い」という傾向の話。確実に知るには、次の章で自分のエアコンを見分けてみましょう。

あなたのエアコンはどっち?見分け方
結局のところ、電気代の答えは「お使いのエアコンが弱冷房除湿か再熱除湿か」で決まります。だから、まずは自分のエアコンを確認するのがいちばん確実です。見分ける方法は、おもに3つあります。
リモコンのボタン名を見る。「除湿」「ドライ」とだけ書いてあれば、弱冷房除湿のことが多いです。一方、「カラッと除湿」「さらら除湿」など、独自の名前が付いていたら再熱除湿の可能性があります。
取扱説明書やカタログで確認する。「再熱除湿」「弱冷房除湿」という言葉が書いてあるかを探します。これがいちばん確実です。手元になければ、メーカーの型番でネット検索してもOKです。
実際に除湿を使って、体感でチェックする。除湿中に「ちゃんと涼しくなる/少しヒンヤリする」なら弱冷房除湿。「涼しくならず、温度がほとんど変わらない」なら再熱除湿の可能性があります。
ボタン名だけで100%判断はできません。メーカーによって呼び方はバラバラで、外の気温に合わせて2つの方式を自動で切り替える機種もあります。迷ったら、STEP2の取扱説明書・カタログで確認するのが確実です。
つまり、まずはリモコンをチラッと見て、あやしければ説明書で裏を取る。これで、あなたの家の除湿が「安いほう」か「高いほう」かがハッキリします。

「安いから除湿」で選ぶと、逆に損することも
ここまでの話だと「じゃあ、いちばん安い弱冷房除湿を使えば正解だね」と思うかもしれません。でも、ここに落とし穴があります。
弱冷房除湿は「弱い運転」なので、真夏のギラギラに暑い日に使っても、思ったほど涼しくなりません。ジメジメは取れても、暑さ自体はあまり引かないのです。すると、こうなります。
「除湿は安いから」と、真夏に弱冷房除湿を使う。
でも暑さが引かず、我慢してダラダラ長時間つけっぱなしにする。
結局しびれを切らして冷房に切り替え、トータルの電気代は高くつく。おまけに暑い時間を我慢して不快。
これでは「安物買いの銭失い」です。電気代の"単価"だけを見て選ぶと、こういう失敗が起きます。大事なのは、その日の気候に合わせて使い分けることです。
かんたんな使い分けの目安
❄️ 冷房を使う日
- とにかく暑い(真夏・日中)
- 気温が高くて汗が止まらない
- 一刻も早く涼しくなりたい
💧 除湿を使う日
- 気温は低いけどジメジメする(梅雨)
- 寝るとき、冷えすぎたくない
- 洗濯物を部屋干ししたい
湿度と暑さの関係は「汗」で考えるとわかりやすいです。湿気が多いと汗が乾かず、体に熱がこもってムシムシ暑く感じます。逆に湿気が少ないと汗がスッと乾いて、涼しく感じます。だから「気温は高くないのにムシ暑い日」は、除湿で湿気を取るだけでグッと快適になるのです。
つまり、いちばん賢いのは「暑い日は冷房、ジメジメの日は除湿」と使い分けること。安さだけで一択にしないのが、本当の節約への近道です。

よくある質問
まとめ:除湿の"種類"で答えが変わる
- 冷房と除湿の電気代は、除湿の「種類」で逆転する
- 安い順は 弱冷房除湿 → 冷房 → 再熱除湿
- 再熱除湿が高いのは「冷やして温め直す」ムダな仕事をするから
- 近年のエアコンは、安い弱冷房除湿が主流になっている
- 自分の方式は、リモコン名+取扱説明書で確認できる
- 安さだけで選ばず「暑い日は冷房・ジメジメの日は除湿」で使い分ける
「除湿のほうが安い」というイメージは、半分正解で半分間違い。カギは、あなたのエアコンがどの方式かにありました。まずはリモコンをのぞいてみて、自分の家のエアコンがどっちなのか確かめてみてください。
そして、電気の仕組みをもう少し知ると、こうした節約の話がぐっとわかりやすくなります。次の記事で、電気代の考え方をさらに深めていきましょう。

自動車部品メーカーで電気設計・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて電気を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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再熱除湿が電気を食う理由の根っこ、「冷やす・温める」の仕組みがわかります。