電気のしくみ(暮らしと現場)

WとWhの違い|電力と電力量を「速さと距離」で図解

WとWhの違い。電力と電力量を「速さと距離」

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

こんな疑問、ありませんか?
  • 「電気代の検針票にある "kWh" って、家電に書いてある "W" と何が違うの?」
  • 「モバイルバッテリーの "Wh" と "mAh" の関係がよくわからない」
  • 「ワットとワットアワー、似てるけど何が違うんだ…?」
○ この記事を読むとわかること
  • WとWhの違いが「車の速さと距離」のたとえで一発でわかる
  • 電気代がなぜ「Wh(kWh)」で決まるのか
  • 「W大きい家電=電気代が高い」とは限らない理由

電気の世界には、よく似た2つの単位があります。それがW(ワット)とWh(ワットアワー)です。たった「h」が付くか付かないかの違いですが、意味はまったく別物です。

そしてこの違いは、毎月の電気代に直結する大事な話です。この記事では、図とたとえ話だけでスッキリ理解できるように、ゼロから解説していきます。

結論:Wは「勢い」、Whは「総量」

先に答えを言ってしまいます。WとWhの違いは、ひとことでこうです。

ここだけ覚えればOK
・W(ワット)=今この瞬間に使っている電気の勢い
・Wh(ワットアワー)=ある時間に使った電気の総量

そして、この2つは1つの式でつながっています。

WとWhの関係
Wh = W × 時間(h)
つまりWhは、Wに「使った時間」をかけたものです。そして、電気代はWhで決まります。

なぜそうなるのか?「車の速さと距離」でイメージすると、驚くほどスッキリわかります。

WhはWに時間をかけたものであることを示す図。電力(W)×時間(h)=電力量(Wh)
Wh=W×時間:電力に時間をかけると電力量

W=速さ、Wh=距離で考える

WとWhの関係は、車の「速さ」と「距離」にそっくりです。これがいちばんわかりやすいたとえです。

W(ワット)=速さ

今この瞬間、どれくらいの勢いで電気を使っているか。車でいう「時速○○km」の速度メーター。

Wh(ワットアワー)=距離

ある時間で合計どれだけ電気を使ったか。車でいう「走った距離」の走行距離メーター。

車を考えてみてください。速さ(時速)が同じでも、長く走れば走るほど距離は伸びていきます。時速60kmで1時間走れば60km、2時間走れば120km。

電気もまったく同じです。Wが同じでも、長く使えば使うほどWh(総量)は増えていきます。だから「W × 時間 = Wh」になるのです。

WとWhを車の速さと距離にたとえた図。速さ60km/hがWにあたり、走った距離がWhにあたるので、速さが同じでも長く走れば距離は伸びる
Wは速さ、Whは距離

実際に計算!ドライヤーを15分使うと?

さっそく「Wh=W×時間」を使って計算してみましょう。1200Wのドライヤーを15分使った場合です。

計算の前に大事なルール
「時間」は「時(h)」の単位にそろえる必要があります。15分は1時間の4分の1なので、0.25時間(h)に直します。
STEP 1

時間を「時(h)」に直す。15分 = 0.25時間(h)

STEP 2

公式に当てはめる。Wh = W × 時間 = 1200W × 0.25h

STEP 3

計算する。1200 × 0.25 = 300Wh

1200W × 0.25h = 300Wh(=0.3kWh)

ドライヤーを15分使うと、300Wh(0.3kWh)の電気を消費する、というわけです。最後に出てきた「kWh」については、次のブロックで説明します。

ドライヤーの電力量の計算の図。1200Wのドライヤーを15分(0.25h)使うと、1200W×0.25h=300Wh(0.3kWh)
1200Wのドライヤーを15分使うと300Wh

電気代でよく見る「kWh」とは?

電気代の検針票を見ると、「Wh」ではなく「kWh(キロワットアワー)」という単位が使われています。この「k(キロ)」は、ただ「1000倍」を意味するだけです。

kWhの関係
1kWh = 1000Wh

たとえば1mが1000mmなのと同じ感覚です。数が大きくなって扱いづらいので、1000をまとめて「k」で表しているだけ。先ほどの300Whは、0.3kWhと書けます。

そして、ここがいちばん大事なところです。電気代は、この「kWh」に単価をかけて計算されます。

電気代の決まり方
電気代 = kWh × 単価(約31円)
電力会社は「電気をどれだけの量(kWh)使ったか」で料金を決めています。Wではなく、Whで決まるのです。
検針票の金額は「kWh × 単価」だけではない
毎月の電気料金は、おもに次の3つを足したものです。
① 基本料金:契約アンペアなどで決まる固定の料金。電気を使わなくてもかかる(くわしくは分電盤とは?の契約アンペアの節)
② 電力量料金:使った電気の量(kWh)× 単価。使い方で変わるのはここ
③ 燃料費調整額・再エネ賦課金:使ったkWhに応じて足される(燃料費調整額は差し引かれる月もある)
家電1台ぶんの電気代を見積もるときは、②の「消費電力(kW)× 使用時間(h)× 単価」で計算します。
kWhと電気代の図。1kWh=1000Whで1m=1000mmと同じ考え方、電気代=kWh×単価(約31円)
電気代はkWh×単価で決まる

数字で実感!エアコンの1か月の電気代

「W → Wh → kWh → 電気代」の流れを、身近なエアコンで最後まで計算してみましょう。600Wのエアコンを、1日8時間、30日間使った場合です。

W
600W
→
Wh
×時間
→
kWh
÷1000
→
電気代
×単価
STEP 1

1か月の使用時間を出す。8h × 30日 = 240時間(h)

STEP 2

Whを計算する。600W × 240h = 144,000Wh

STEP 3

kWhに直す。144,000Wh ÷ 1000 = 144kWh

STEP 4

電気代を出す。144kWh × 31円 = 約4,464円/月

ここがポイント
「600W」だけを見ても、電気代は1円も出せません。Whに直して、はじめて「約4,464円」という金額が見えてくるのです。
エアコンの月間電気代の計算ステップの図。消費電力600Wで1日8時間×30日=240h、600W×240h=144,000Wh=144kWh、144×31円で約4,464円/月
エアコン600Wを1日8時間使うと月約4,464円

つまずき注意!「W大きい=電気代高い」は間違い

よくある勘違い
「Wが大きい家電ほど電気代が高い」と思っていませんか?これは間違いです。電気代を決めるのはWではなく、Wh(W×時間)だからです。

高Wでも短時間しか使わない家電と、低Wでも長時間動き続ける家電を比べてみましょう。

家電 消費電力(W) 使う時間 1日のWh
ドライヤー 1200W(高い) 15分(0.25h) 300Wh
冷蔵庫 100W(低い) 24時間 2400Wh

驚きの結果です。Wだけ見ればドライヤー(1200W)の方が冷蔵庫(100W)の12倍も大きい。でも実際の消費量(Wh)は、長時間動く冷蔵庫の方が8倍も大きいのです。

これが「W大きい=電気代高い、とは限らない」の正体です。電気代を考えるときは、必ず「W × 使う時間」で見る必要があります。

Wが大きくても電気代が高いとは限らないことを示す図。1200Wのドライヤーを15分使うと1日300Wh、100Wの冷蔵庫を24時間使うと1日2400Whで、冷蔵庫の電力量が8倍
Wが小さくても長時間使えば電力量は大きい

モバイルバッテリーの「mAh」と「Wh」

モバイルバッテリーには「10000mAh」のような表記があります。この「mAh(ミリアンペアアワー)」も、Whと深い関係があります。

mAhは「電池にためられる電気の量」を表しますが、これにバッテリーの電圧(ふつう3.7V)をかけると、Whに変換できます。

mAh → Wh の変換
10000mAh = 10Ah(アンペアアワー)
10Ah × 3.7V = 37Wh

この「Wh」が大事なのは、飛行機への持ち込み制限がWhで決まっているからです。一般的に、モバイルバッテリーは100Wh以下なら問題なく機内に持ち込めます。37Whならまったく問題ありません。

豆知識
旅行前にモバイルバッテリーのWhを確認しておくと安心です。本体や箱に「○○Wh」と書かれていることが多いですよ。
モバイルバッテリーのmAhをWhに変換する図。10000mAh=10Ahに、リチウムイオン電池の標準電圧3.7Vをかけると37Whで、飛行機は100Wh以下ならOK
10000mAhは3.7Vをかけて約37Wh

家電のラベルの見方|「消費電力」と「年間消費電力量」

家電のラベルやカタログには、似たような言葉が2つ並んでいます。これも「WとWh」の違いそのものです。

消費電力(W)

動いている間の「瞬間の勢い」。たとえば「消費電力1200W」。

年間消費電力量(kWh)

1年間で使う電気の「総量」。たとえば「年間消費電力量 300kWh」。

この2つは、まったくの別物です。「消費電力(W)」は瞬間の勢い、「年間消費電力量(kWh)」は1年で使う総量。電気代を比較したいときは、「年間消費電力量(kWh)」を見るのが正解です。

冷蔵庫やエアコンを買うときは、Wの大きさよりも「年間消費電力量(kWh)」を見比べると、本当に省エネな製品が選べます。

家電ラベルの見方の図。消費電力1200Wは瞬間の勢い、年間消費電力量300kWhは1年の総量で、電気代を比べるなら年間消費電力量を見る
電気代を比べるなら年間消費電力量(kWh)を見る
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

電気回路の基本があいまいなときは、入門書で土台を固めておくと理解が進みます。電気回路の基本を、つまずいている人向けにやさしく解説した入門書です(オーム社)。

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「WとWh」を、工場の設備保全や生産技術の仕事で使う知識につなげたい人に向いています。設備保全や生産技術で働く電気エンジニアが、1年目に押さえたい基本をカラーの図解でまとめた本です(技術評論社)。

まとめ:Wは速さ、Whは距離

○ この記事のポイント
  • W(ワット)=今この瞬間の電気の勢い。車の「速さ」。
  • Wh(ワットアワー)=ある時間に使った電気の総量。車の「距離」。
  • Wh = W × 時間(h)で計算する。1kWh=1000Wh。
  • 電気代は「kWh × 単価(約31円)」で決まる。WではなくkWh。
  • W大きい家電が電気代も高いとは限らない。「使う時間」が重要。

WとWhの違いがわかると、検針票も家電のラベルも、すっきり読めるようになります。次は、実際の電気代の計算方法や、家電ごとの電気代を詳しく見ていきましょう。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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