- 「4層基板」って聞くけど、層って何が重なってるの?
- 「プリプレグ」「コア」って言葉が出てくるけど、何のこと?
- 基板の中身がどうなっているのか、想像がつかない
- 多層基板を横から切ったときの中の構造
- 「コア」と「プリプレグ」がそれぞれ何の材料なのか
- その2つを重ねて、どうやって基板になるのか
「4層基板」「6層基板」という言葉はよく聞きますよね。でも、その“層”が何でできているのかは、なかなか説明されません。はじめてだと、まったく想像がつかなくて当然です。この記事では、基板を横から切った断面を見ながら、中身をひとつずつやさしく解説します。
多層基板は「コア」と「プリプレグ」という2種類の材料を、銅箔(どうはく=うすい銅のシート)と交互に重ねて作られています。コアは両面に銅が付いた硬い“芯”の板、プリプレグは熱を加えると接着剤になる“のり”のシートです。この2つを積み重ねて熱と圧力で固めることで、何層もの配線を持つ基板ができあがります。
目次
そもそも多層基板とは?1層・2層との違い
まず、多層基板が何なのかをはっきりさせましょう。多層基板とは、配線を入れる層が何枚も重なっている基板のことです。
基板の表面には、電気を流すための配線(銅の道)が走っています。シンプルな基板なら、配線は片面か両面だけ。でも、部品がたくさん載る複雑な機器だと、配線が混み合って入りきらなくなります。
1層基板は「平屋(片面だけ)」、2層基板は「2階建て(両面)」、多層基板は「マンション(何階もある)」のイメージです。土地(基板のサイズ)が同じでも、階を増やせばたくさんの部屋(配線)を入れられますよね。多層基板は、配線という“道路”を立体的に何階にも分けて通すしくみなのです。
層を増やすのは、配線を増やすためだけではありません。ノイズ(電気的なじゃま)を減らすために、まるごと1層を「電気の帰り道(GND層)」や「電源層」に使う、という目的もあります。だから高性能な機器ほど、層が多くなる傾向があります。
多層基板=配線の層が何枚も重なった基板。平屋からマンションへ、と階を増やすイメージです。では、その“各階”はどんな材料でできているのか、次で中身を見ていきましょう。

基板の「断面」を見てみる(全体像)
では、4層基板を横から切ったら、中はどうなっているのでしょうか。じつは、いくつかの材料がきれいに重なってできています。外側から順に並べると、こんな構成です。
銅箔(表面の配線になる)
プリプレグ(層をくっつける接着シート)
コア(両面に銅が付いた、硬い芯の板)
プリプレグ(反対側の接着シート)
銅箔(裏面の配線になる)
真ん中にあるしっかりした「芯のパン」がコア。それをくっつける「のり(マヨネーズ)」がプリプレグ。そして外側を覆う「表面のパン」が銅箔です。具材(配線)を挟みながら、何層にも重ねたサンドイッチ——それが多層基板の正体です。
多層基板は「コア」と「プリプレグ」と「銅箔」が交互に重なった構造です。とくに主役になるのが、芯のコアと、のりのプリプレグ。この2つを次のブロックでくわしく見ていきます。

コア材とは?基板の「芯」になる硬い板
まずはコアから。コアとは、両面に銅箔が貼られた、硬いガラスエポキシ(ガラスの布に樹脂をしみこませて固めた材料)の板のことです。基板の“骨格”にあたる部分です。
コアは、すでにしっかり固められた(完全に硬化した)状態です。グニャグニャしておらず、カチッとした1枚の板になっています。だから、基板全体の形を支える役目を持っています。
コアの中身は3層構造
コアを横から見ると、「銅/絶縁体(ガラスエポキシ)/銅」という3層のサンドイッチになっています。真ん中の絶縁体が電気を通さない土台で、その上下に配線になる銅が貼られています。
多層基板を作るときは、このコアの銅にあらかじめ配線パターンを作っておき、それを“すでに完成した1階分”として積み重ねに使います。
コアは、建物でいう「鉄骨」です。しっかりした骨組みがあるから、その上に階を積み増しできます。サンドイッチなら「一番しっかりした土台のパン」。基板の形と強さを支える、頼れる存在です。
コア=両面に銅が付いた、完全に固まった硬い板。基板の骨格であり、配線をすでに持っている“完成済みの1階分”です。

プリプレグとは?熱で接着剤になるシート
次はプリプレグです。これがこの記事のもう1つの主役。プリプレグとは、ガラス布に樹脂を“半分だけ”しみこませて、半硬化(はんこうか=中途半端に固めた状態)にしたシートのことです。
プリプレグは英語の「pre-impregnated(プリ・インプレグネイテッド=あらかじめ含浸=しみこませた)」を縮めた言葉です。つまり「あらかじめ樹脂をしみこませたもの」という意味。名前のとおりの材料です。
このプリプレグ、常温ではそこそこ硬いシートですが、熱と圧力をかけると溶けて流れ出します。そして冷えると、しっかり固まります。この性質を利用して、層と層をくっつける“のり”として使うのです。
トーストにのせたチーズを思い出してください。冷たいうちは固形ですが、温めると溶けてとろけ、具とパンをくっつけます。そして冷めるとまた固まりますよね。プリプレグもこれと同じ。熱で溶けてくっつき、冷えて固まる——だから「半硬化」という難しそうな状態も、チーズだと思えば一発で理解できます。
さらにプリプレグには、もう1つ大事な役目があります。それは絶縁(ぜつえん=電気を通さないこと)です。上の層の配線と下の層の配線が、勝手につながってしまっては困ります。プリプレグが間に入ることで、層どうしをくっつけつつ、電気的にはきちんと分けてくれるのです。
プリプレグ=半分だけ固めた“のり”のシート。熱と圧力で溶けて層をくっつけ、冷えて固まり、そのまま絶縁の役目も果たします。チーズやホットボンドをイメージすればOKです。

コアとプリプレグの違い(この記事の核)
ここまでで、コアとプリプレグがそれぞれ何かわかりました。いよいよ、いちばん知りたい「2つの違い」を正面から整理しましょう。じつは両方とも、ガラスエポキシという同じ材料系からできています。違うのは「固め方」と「役割」です。
コア(芯材)
- 役割:基板の骨格(芯)
- 固め方:完全に固まっている
- 銅箔:両面にあり
- 配線:すでに持っている
プリプレグ(接着層)
- 役割:層をくっつける“のり”
- 固め方:半分だけ固めた状態
- 銅箔:なし
- 配線:持たない(接着+絶縁)
| くらべる点 | コア | プリプレグ |
|---|---|---|
| 役割 | 芯材(骨格) | 接着層(のり) |
| 固め方 | 完全に硬化済み | 半硬化(中途半端) |
| 銅箔 | 両面にあり | なし |
| 機能 | 配線を持つ | 層を貼り合わせ・絶縁する |
同じガラスエポキシでも、コアは「完全に固めて配線を持つ芯」、プリプレグは「半分だけ固めて層をくっつけるのり」。固め方と役割がちがう、と覚えれば十分です。

どう積み重ねて4層基板になる?組み立ての流れ
材料がわかったので、最後に「どうやって組み立てるか」を見てみましょう。4層基板を例に、ステップで追っていきます。
コアの両面に、内側の配線パターンを作る(これで2層ぶんの配線ができる)。
コアの上と下に、プリプレグ(のりのシート)を重ねる。
さらにその外側に、表面になる銅箔を重ねる。
全部まとめて熱と圧力でプレス。プリプレグが溶けて固まり、一体化する。
これで、内側2層(コアの配線)+外側2層(表面の銅箔)の、合わせて4層基板が完成します。式のように書くと「コア1枚+プリプレグ2枚+外側銅箔2枚」という組み合わせです。
層を増やしたいときは、コアやプリプレグの枚数を増やします。たとえば6層なら、コアを増やしたり、コアとプリプレグの組み合わせを増やしたりして、階を積み増しするイメージです。基本の考え方は4層と同じです。
コアを芯にして、上下にプリプレグと銅箔を重ね、熱と圧力でギュッと固める。これが多層基板の作り方です。層を増やすときは、この組み合わせを足していくだけです。

知っておくと役立つこと(実務のポイント)
最後に、設計や製造を考えるときに役立つ知識を少しだけお伝えします。コアとプリプレグの理解が、実務でどう活きるかが見えてきます。
プリプレグの枚数で「厚み」と「絶縁距離」が決まる
プリプレグは、厚みや枚数を選べます。多く重ねれば、層と層の間が厚くなります。これによって、基板全体の厚さや、層どうしの絶縁距離(電気を通さない間隔)が決まります。だからプリプレグは、ただの“のり”ではなく、設計の調整役でもあるのです。
「層構成を決める」とは、組み合わせを決めること
2層・4層・6層と層数を決めることは、言いかえれば「コアとプリプレグをどう組み合わせるか」を決めることです。この記事で中身がわかった今、層構成の話もスッと理解できるはずです。
「何層にするか」の決め方は 基板の層構成の決め方|2層・4層・6層をどう使い分けるか でくわしく解説しています。この記事の自然な次の一歩です。
コアもプリプレグも樹脂を使うため、熱に弱い一面があります。樹脂が柔らかくなる温度(Tg)や、温度で基板が反る話とも深く関わります。気になる方は 基板のガラス転移温度(Tg)とは? もあわせてどうぞ。
プリプレグの枚数で厚みと絶縁が決まり、コアとの組み合わせで層構成が決まります。中身がわかれば、設計の話も一気に身近になります。

よくある質問(FAQ)
まとめ:コア=芯、プリプレグ=のり
- 多層基板=配線の層が何枚も重なった基板(平屋→マンションのイメージ)。
- コア=両面に銅が付いた、完全に固まった硬い芯の板。配線を持つ骨格。
- プリプレグ=半分だけ固めた“のり”のシート。熱で溶けて層をくっつけ、絶縁もする。
- 違いは「固め方(完全 vs 半硬化)」と「役割(芯 vs のり)」。材料系はどちらもガラスエポキシ。
- コアの上下にプリプレグと銅箔を重ね、熱と圧力でプレスして一体化させる。
これで、多層基板の中身がスッキリ見えましたね。「コア=芯、プリプレグ=のり」と覚えれば、もう断面図も怖くありません。次の一歩として、「では何層にすればいいのか」を学ぶと、基板設計の全体像がつかめます。下の記事へどうぞ。

自動車部品メーカーで電気設計・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて電気を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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