機械科目の解説

直流電動機の種類と特性|分巻・直巻・複巻の速度-トルク曲線を一目で比較

😣 こんな経験はありませんか?
  • 「分巻」「直巻」「複巻」── 名前は知ってるけど、何が違うのか説明できない
  • 速度-トルク曲線を4本並べられても、どれがどれか区別がつかない
  • 過去問で「直巻電動機を無負荷で運転すると危険な理由を述べよ」と出て、答えに詰まった
✅ この記事でわかること
  • 直流電動機4種類の等価回路をHTML図解で完全理解
  • 4種の速度-トルク曲線を1枚のグラフイメージで一目比較
  • 「直巻は無負荷で暴走する」理由を公式1行で直感的に説明
  • 試験で狙われる正誤問題の頻出パターン3選

直流電動機の種類と特性は、機械科目の正誤問題・穴埋め問題で毎年のように出題されるテーマです。

でも安心してください。直流電動機の種類は、たった1つの違いで分類されています。

その違いとは──「界磁巻線をどこに繋ぐか」。これだけです。

この1つの違いさえ理解すれば、等価回路も速度-トルク曲線も全部つながります。この記事で、一気にスッキリさせましょう。

分類の基準はたった1つ──「界磁巻線をどこに繋ぐか」

直流電動機の分類は、電機子巻線と界磁巻線の接続方法の違いだけで決まります。

第1回で学んだ通り、直流機には「電機子(回転するコイル)」と「界磁(磁界を作るコイル)」の2つがあります。この2つを電源に対してどう繋ぐかで、4種類に分かれます。

🔌 界磁巻線の繋ぎ方で4種類に分類

🔋🔋
他励(たれい)
界磁を別の電源から供給
🔋
分巻(ぶんかん)
界磁を電機子と並列に接続
➡️
直巻(ちょっかん)
界磁を電機子と直列に接続
🔀
複巻(ふくまき)
分巻+直巻のハイブリッド
🔑 覚え方のコツ

名前がそのまま接続方法を表しています。
巻 = 分かれている = 並列接続
巻 = まっすぐ一直線 = 直列接続
巻 = 複数ある = 分巻+直巻の両方

では、4種類それぞれの等価回路と特性を見ていきましょう。

4種類の等価回路を図解で比較する

各種類の等価回路を、同じレイアウトで並べて比較します。「どこが同じで、どこが違うか」に注目しながら見てください。

① 他励電動機 ── 界磁を「別電源」から供給

【他励電動機の等価回路】
電機子側(電源V)
V = E + Ra × Ia
┌─ Ra ─ E(逆起電力)─┐
V                               Ia
└──────────────────────┘
界磁側(別電源Vf
Vf = Rf × If
別電源で独立制御

最大の特徴:界磁電流 If を電機子とは完全に独立して制御できる。

メリット:速度制御が最も精密。

用途:工作機械、圧延機など精密な速度制御が必要な現場。

② 分巻電動機 ── 界磁を電機子と「並列」に接続

【分巻電動機の等価回路】
電源 V(共通)
電機子
Ra + E
Ia
界磁
Rf
If
V = E + RaIa  I = Ia + If

最大の特徴:界磁に電源電圧 V がそのまま掛かるため、If(≈ V/Rf)はほぼ一定磁束Φもほぼ一定

メリット:負荷が変わっても速度がほとんど変化しない(定速度特性)。

用途:ポンプ、ファン、コンベアなど一定速度が求められる用途。

③ 直巻電動機 ── 界磁を電機子と「直列」に接続

【直巻電動機の等価回路】
電源 V
┌─ Rs(界磁)─ Ra(電機子)─ E ─┐
V                       Ia = If = I ↓     
└─────────────────────────────┘
V = E + (Ra + Rs) × I

最大の特徴:界磁電流 = 電機子電流(If = Ia = I)。負荷電流が変わると磁束Φも変わる

メリット:低速で大トルクを発生(始動トルクが大きい)。

⚠️ 危険:無負荷にすると暴走する(後述)。

用途:電車、クレーン、エレベータなど大きな始動トルクが必要な用途。

④ 複巻電動機 ── 分巻+直巻のハイブリッド

【複巻電動機の等価回路】
電源 V
電機子
Rs(直巻界磁)
+ Ra + E
Ia
分巻界磁
Rf
If
分巻の安定性 + 直巻の大トルク

最大の特徴:分巻界磁(並列)と直巻界磁(直列)の両方を持つ。

メリット:分巻の「速度安定性」と直巻の「大始動トルク」のいいとこ取り

用途:圧延機、プレス機など、安定した速度と大きな始動トルクの両方が求められる用途。

4種の違いを一覧表で整理する

4種の等価回路を見た後は、違いだけを抜き出して1枚の表で比較すると頭に入ります。

比較項目 他励 分巻 直巻 複巻
界磁の接続 別電源 並列 直列 並列+直列
If と Ia の関係 独立 独立
(If ≈ V/Rf で一定)
If = Ia 分巻分は独立
直巻分は Ia と同じ
負荷変動時のΦ ほぼ一定 ほぼ一定 負荷と共に変化 やや変化
速度特性 定速度 定速度 変速度 両者の中間
始動トルク
無負荷運転 安全 安全 ⚠️ 危険(暴走) 安全
代表的な用途 工作機械 ポンプ
コンベア
電車
クレーン
圧延機
プレス機
💡 試験対策のコツ
正誤問題では「分巻と直巻の入れ替え」が定番のひっかけです。「定速度 = 分巻」「変速度&大トルク = 直巻」「無負荷危険 = 直巻」の3セットを暗記するだけで多くの問題に対応できます。

速度-トルク曲線を「公式」から理解する

速度-トルク曲線を丸暗記するのではなく、第2回で導出した公式から「なぜその形になるか」を理解しましょう。理屈がわかれば、曲線の形は一生忘れません。

出発点:速度 N の式を導く

電動機の等価回路の基本式は:

V = E + Ra Ia

ここで E = kEΦN なので、N について解くと:

📐 速度の式
N =
V − Ra Ia
kE Φ

この式がすべての速度-トルク曲線の出発点です。分巻と直巻でΦの振る舞いが違うから、曲線の形が変わるのです。

分巻電動機の場合 ── Φ は一定

分巻では If ≈ V/Rf で一定なので、Φ もほぼ一定です。

すると速度の式は:

N =
V − Ra Ia
kE Φ(一定)
≈ 定数 − (小さな定数)× Ia

Ra は非常に小さい値なので、Ia が増えても N はわずかしか下がりません。これが「ほぼ水平な直線」= 定速度特性になる理由です。

直巻電動機の場合 ── Φ は Ia に比例

直巻では If = Ia なので、磁気飽和前では Φ ∝ Ia(磁束は電流に比例)です。

すると速度の式は:

N ≈
V
kE × (定数 × Ia)
1
Ia

速度 N は電流 Ia反比例します。これが「急カーブで下がる双曲線」の形になる理由です。

そしてここから、直巻の「危険な性質」が見えてきます。

「直巻は無負荷で暴走する」── 公式1行で完全理解

直巻電動機の最も危険な性質であり、試験で最も出題されるポイントがこれです。

⚠️ 直巻電動機は無負荷運転してはならない

その理由は、速度の式 1行で説明できます。

N ∝
1
Φ
1
Ia
負荷を外すと

電動機が回すべき負荷がなくなる → Ia が小さくなる

Ia が小さくなると

直巻では If = Ia なので → Φ も小さくなる

Φ が小さくなると

N ∝ 1/Φ なので → 速度 N が跳ね上がる

結果

回転数が際限なく上がり → 遠心力で機械が破壊される(暴走)

分巻電動機(安全)

負荷を外しても If ≈ V/RfΦは変わらない
→ N はわずかに上がるだけ
暴走しない

⚠️

直巻電動機(危険)

負荷を外すと Ia 減少 → If 減少 → Φ が激減
→ N ∝ 1/Φ で速度が無限に上昇
暴走・破壊の危険

⚠️ 試験でよく出る問い方
「直巻電動機をベルト駆動してはならない理由を述べよ」──答えは「ベルトが切れると無負荷状態になり暴走するため」。直巻は負荷を確実に直結(歯車結合など)する必要があります。

速度-トルク曲線を一目で比較する

ここまでの理屈を踏まえて、4種の速度-トルク曲線を1つのグラフイメージにまとめます。

⚡ 直流電動機の速度-トルク特性

横軸:トルク T →  縦軸:↑ 速度 N

N ↑
T →
他励
分巻
複巻
直巻
⚠️ 直巻は
T→0で
N→∞
種類 曲線の形 公式からの説明
他励 / 分巻 ほぼ水平の直線 Φ一定 → N = (V − RaIa) / kΦ。Raが小さいためNはほぼ変わらない。
直巻 急カーブ(双曲線) Φ ∝ Ia → N ∝ 1/Ia。電流が小さいほど速度が急上昇。無負荷で暴走。
複巻 緩やかに下がる直線 分巻界磁でベースのΦを確保しつつ、直巻界磁で負荷に応じたΦ変化が加わる。両者の中間特性。

試験で狙われる正誤問題の頻出パターン3選

ここまでの知識で対応できる、実際の試験で出題されるパターンを3つ紹介します。

パターン①:名前と特性の「すり替え」

❌ 誤りの選択肢(よくある例)

分巻電動機は、負荷が増加するとトルクが急激に増大する特性を持つ」

✅ 正しい知識

「負荷が増加するとトルクが急激に増大する」のは直巻の特性。分巻は「ほぼ一定速度」が特徴。

パターン②:無負荷運転の安全性

❌ 誤りの選択肢(よくある例)

直巻電動機は、無負荷で安定して運転できる」

✅ 正しい知識

直巻電動機は無負荷にすると暴走の危険があるため、必ず負荷を直結して使う。ベルト駆動は禁止。

パターン③:用途と種類の対応

❌ 誤りの選択肢(よくある例)

「電気鉄道の主電動機には、速度が安定している分巻電動機が使われている」

✅ 正しい知識

電車には直巻電動機が使われる(大きな始動トルクが必要なため)。分巻はポンプやコンベアなど定速度が必要な用途。

💡 3パターンの攻略法
正誤問題は「分巻と直巻のすり替え」がほとんどです。以下の3セットを暗記しておけば、ほぼ全問対応可能です。

① 定速度 = 分巻(他励)
② 大始動トルク+暴走危険 = 直巻
③ 電車・クレーン = 直巻、ポンプ・コンベア = 分巻

直流機シリーズ 全8記事のロードマップ

第3回 ← 今ここ

直流電動機の種類と特性|分巻・直巻・複巻の速度-トルク曲線を一目で比較

第4回

直流発電機の種類と外部特性|他励・分巻・直巻・複巻を一覧整理

第5回

電機子反作用とは?|磁束の歪みと減磁作用を図解で完全理解

第6回

直流電動機の速度制御と始動法|電圧制御・界磁制御・抵抗制御を比較

第7回

直流機の計算パターン完全網羅|過去問5パターンを途中式なしで解説

第8回

ブラシレスDCモータとは?|永久磁石+インバータで「整流子いらず」

まとめ

📐 この記事のまとめ
  • 直流電動機の分類基準は「界磁巻線の繋ぎ方」だけ(別電源 / 並列 / 直列 / 両方)
  • 分巻:Φ一定 → 定速度特性(ほぼ水平な曲線)。ポンプ・コンベアに使用。
  • 直巻:Φ ∝ Ia → 変速度特性(双曲線)。始動トルク大。電車・クレーンに使用。
  • 直巻は無負荷運転厳禁:N ∝ 1/Φ → 負荷が外れるとΦ→0、N→∞で暴走。
  • 複巻:分巻+直巻のハイブリッド。両者の中間特性。
  • 正誤問題は「分巻と直巻のすり替え」が定番のひっかけパターン。

次回の第4回では、今回の「電動機」と対になる「直流発電機の種類と外部特性」を解説します。電動機との対比で整理するので、今回の内容がしっかり入っていれば、次回はサクッと理解できるはずです。

📚 次に読むべき記事

📘 【第2回】直流機の誘導起電力とトルク|E=kΦNの公式を導出から計算例まで →

今回の速度-トルク曲線の根拠となる公式を導出しています。

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