- 「GNDは全部繋げばいいんでしょ?」と思っていたら、ノイズが出た…
- パワーGNDと信号GNDの「分離」って、どこで分けるの?
- 1点アース、スター接続…言葉は知ってるけど、具体的にどうやるの?
- ベタGNDを分割したら、かえってノイズが増えた…なぜ?
- GNDが「ただの0V」ではない理由を「川の流れ」で直感理解
- パワーGNDと信号GNDを分離すべき理由と具体的な方法
- 1点アース・スター接続の正しいやり方
- ベタGNDの分割とGNDスリットの危険性
- 実際の設計で使えるチェックリスト
「GNDなんて、全部繋げば0Vでしょ?」
この考え方が、ノイズ問題の元凶になっていることが非常に多いです。
実は、GND(グランド)は単なる「0Vの基準点」ではありません。
「電流の帰り道」であり、その引き方次第でノイズが激増することも、激減することもあるのです。
この記事では、GNDパターン設計の核心を「川の流れ」のイメージで徹底的にわかりやすく解説します。
目次
GNDの本当の役割|「0V」ではなく「電流の帰り道」
回路図と現実の違い
回路図では、GNDは「▽」マークで表され、すべて同じ電位(0V)として扱われます。
しかし、現実の基板では話が違います。
どこに繋いでも同じ
電流が流れると電位差が発生する!
GNDに電流が流れると電位差が生まれる
GNDパターンも「導体」です。導体には必ず抵抗(R)とインダクタンス(L)があります。
ここに電流が流れると、オームの法則により電圧降下が発生します。
つまり、GNDは「0V」ではなく、「電流の帰り道」として電位が変動しているのです。
パワー回路の大電流がGNDに流れると、GND電位が「揺れる」。
この揺れが信号回路に伝わると、誤動作やノイズの原因になる。
「川の流れ」でイメージするGND設計
GNDを「川」に例えてみる
GNDの設計を理解するために、「川の流れ」に例えてみましょう。
| 電気の世界 | 川の例え |
|---|---|
| GNDパターン | 川(水の帰り道) |
| パワー回路の電流 | 工場排水(汚い水) |
| 信号回路の電流 | 飲料水(きれいな水) |
| IC(マイコン等) | 魚(きれいな水が必要) |
悪い設計:汚い水ときれいな水を混ぜる
(パワー回路)
(IC誤動作)
↓
同じ川で生活する魚(IC)が汚染される
↓
魚が病気になる = IC が誤動作する
良い設計:川を分けて、最後に合流
(パワーGND)
⭐
(信号GND)
魚が住む池は別の川(信号GND)で管理
↓
最後の1点でだけ合流させる = 汚染が広がらない!
「分けて、1点で繋ぐ」
これがGND設計の最も重要な原則です。

パワーGNDと信号GNDの分離|なぜ分けるのか?
パワー回路と信号回路の違い
まず、パワー回路と信号回路の電流の性質の違いを理解しましょう。
| パワー回路 | 信号回路 | |
|---|---|---|
| 電流の大きさ | 大きい(数A〜数十A) | 小さい(mA〜μA) |
| 電流の変化 | 急激(高dI/dt) | 緩やか |
| ノイズ | 発生源(加害者) | 影響を受ける(被害者) |
| 例 | MOSFET、モータードライバ | マイコン、オペアンプ、ADC |
GNDを共有すると何が起こるか?
パワーGNDと信号GNDを「同じパターン」で共有すると、以下の問題が発生します。
→ 信号回路の「基準電位」が揺れる → ADCの読み取り誤差、マイコン誤動作
→ 通信エラー、クロック乱れ、リセット誤発生
→ ICの内部ロジックが一瞬だけ誤った電位を認識 → 誤動作
分離すべきGNDの種類
回路の規模や用途によりますが、一般的に以下のGNDを分離することを検討します。
| GNDの種類 | 対象回路 | 特徴 |
|---|---|---|
| パワーGND (PGND) |
MOSFET、IGBTモータードライバ、電源回路 | 大電流、高ノイズ |
| デジタルGND (DGND) |
マイコン、ロジックIC、通信IC | 中電流、クロックノイズ |
| アナログGND (AGND) |
オペアンプ、ADC/DAC、センサー | 微小電流、ノイズに敏感 |
「ノイズの加害者」と「被害者」を分けるのが基本的な考え方。
パワー回路は「加害者」、信号回路は「被害者」です。

1点アース(シングルポイントグラウンド)|合流は「1点だけ」
1点アースとは?
1点アースとは、分離したGNDを「たった1点」でのみ接続する方法です。
川の例えで言えば、「排水用の川」と「きれいな川」を、最後の1カ所でだけ合流させるイメージです。
なぜ「1点」でなければならないのか?
もし複数点で接続すると、GND間に「ループ」が形成されます。
║ ║
╚══════╝
↑ GNDループが形成 ↑
→ アンテナとして電磁波を放射
→ EMI問題が発生
├── 基準点
信号GND ──────┘
↑ ループなし ↑
→ ループがないのでアンテナにならない
→ EMI問題を回避
1点アースの接続ポイントはどこにする?
1点アースの「1点」をどこに設定するかは、非常に重要です。
原則:「電源の入口」に近い場所
具体的には:
・電源コネクタの直近
・入力コンデンサ(バルクコンデンサ)の直近
・電源ICのGNDピンの直近
1点アースは低周波(〜数百kHz)で有効な手法です。
高周波(MHz以上)では、配線のインダクタンスが無視できなくなり、
ベタGND(グランドプレーン)の方が効果的な場合があります。

スター接続|中心から放射状に伸ばす
スター接続とは?
スター接続は、1点アースを発展させた方法です。
中心の1点から、各GNDへ「放射状」に配線を伸ばすことで、GND間の干渉を防ぎます。
基準点
各GND配線は共有部分がない
スター接続 vs デイジーチェーン接続
GNDの接続方法には「スター接続」と「デイジーチェーン接続」があります。
デイジーチェーンはNGです。
・パワーの電流がデジタル・アナログのGNDを通過
・上流のノイズが下流に伝わる
・GNDが「共通インピーダンス」になる
・各段のGNDは独立
・上流のノイズが下流に伝わらない
・共通インピーダンスがない
「数珠つなぎはダメ、放射状にする」
デイジーチェーン(数珠つなぎ)は楽だけど、ノイズ的には最悪。
手間がかかっても、スター接続を心がけましょう。

ベタGNDの分割|「分けても繋がる」の罠
ベタGND(グランドプレーン)とは?
ベタGNDとは、基板の一面(または内層)をGNDで「ベタ塗り」したものです。
高周波回路では、最もリターンパスのインピーダンスが低くなるため、非常に効果的です。
・リターンパスのインピーダンスが最小
・電流は「行き」の真下を最短距離で帰れる
・シールド効果がある
・熱伝導にも貢献
ベタGNDを「分割」するケース
パワー回路と信号回路を分離するために、ベタGNDを分割することがあります。
ただし、この分割には重大な注意点があります。
分割する際の重要ルール
| ルール | 説明 |
|---|---|
| ①必ず接続点を設ける | 分割しても、1点で必ず接続する。完全に分離してはいけない。 |
| ②接続点は電源入口付近 | 電源コネクタやバルクコンデンサの近くで接続。 |
| ③信号線は分割線をまたがない | 最重要!信号線が分割線をまたぐと、リターンパスが途切れる。 |
| ④分割は最小限に | 不必要に分割すると、かえって問題が増える。 |
「GNDを分離したから安心」と思って、接続点を設けるのを忘れるケース。
完全に分離してしまうと、GND間の電位差が不定になり、かえってノイズが増えることがあります。

GNDスリットの危険|「またぐな!」が絶対ルール
GNDスリットとは?
GNDスリットとは、ベタGND上の「隙間」や「切り込み」のことです。
GND分割のためにわざと入れる場合もありますが、部品配置やビアの影響で意図せず発生することもあります。
信号線がGNDスリットをまたぐと何が起こるか?
これがGND設計で最も危険なNGです。
════════════════════════
ベタGND
════════════════════════
リターン ←←←←←←←←←
(信号線の真下を最短で帰る)
→ ループ面積が最小
→ ノイズ発生なし ✅
═══════ ═══════════
GND スリット GND
═══════ ═══════════
リターン ←←←↓ ↑←←←←
└──→──┘
(スリットを迂回して大回り!)
→ ループ面積が巨大化
→ ノイズ爆増 ❌
アンテナになる
ノイズ電圧発生
反射・リンギング
スリットを避ける設計のコツ
| 対策 | 説明 |
|---|---|
| ①信号配線を先に決める | GND分割の前に、重要な信号線のルートを決め、スリットと交差しないように設計。 |
| ②やむを得ずまたぐ場合 | スリット部分にブリッジ(小さなGND接続)を設けて、リターンパスを確保。 |
| ③DRC(デザインルールチェック) | CADのルールチェック機能で、GND上を通過しない配線を検出。 |
| ④ビアの配置に注意 | 大量のビアがGNDプレーンに意図しないスリットを作ることがある。 |
「スリットをまたぐくらいなら、GNDを分割しない方がマシ」
中途半端な分割は、分割しないより悪い結果を招くことがあります。
実践チェックリスト|GND設計の確認ポイント
GND分離のチェック
| ✓ | チェック項目 | 重要度 |
|---|---|---|
| ☐ | パワーGNDと信号GNDは分離されているか? | ★★★ |
| ☐ | 分離したGNDは1点で接続されているか? | ★★★ |
| ☐ | 接続点は電源入口付近に設定されているか? | ★★☆ |
| ☐ | GND配線はスター接続になっているか?(デイジーチェーンになっていないか?) | ★★☆ |
ベタGND・スリットのチェック
| ✓ | チェック項目 | 重要度 |
|---|---|---|
| ☐ | 信号線がGNDスリットをまたいでいないか? | ★★★ |
| ☐ | 高速信号線の直下にベタGNDが確保されているか? | ★★★ |
| ☐ | ビアの密集が意図しないスリットを作っていないか? | ★★☆ |
| ☐ | やむを得ずスリットをまたぐ場合、ブリッジを設けたか? | ★★☆ |
まとめ|GNDは「分けて、1点で繋ぐ」
この記事では、GNDパターン設計の核心を「川の流れ」のイメージで解説しました。
- GNDは「0V」ではなく「電流の帰り道」として電位が変動する
- パワーGNDと信号GNDは分離する(加害者と被害者を分ける)
- 1点アース:分離したGNDは「たった1点」で接続
- スター接続:中心から放射状に配線(デイジーチェーンはNG)
- ベタGND分割:必ず接続点を設ける、完全分離はNG
- GNDスリット:信号線がまたぐと致命的(ループ面積爆増)
GND設計は「繋げば終わり」ではありません。
「電流がどこを流れて帰るか」を常に意識して、ノイズ電流と信号電流が混ざらない設計を心がけましょう。
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