- 「基礎絶縁」「強化絶縁」「二重絶縁」…似たような言葉が多すぎて混乱する
- 安全規格の絶縁要求、どれを適用すればいいかわからない
- 「機能絶縁」と「基礎絶縁」の違いって何?
- 設計で「強化絶縁が必要」と言われたけど、具体的に何をすればいい?
- 5種類の絶縁(機能・基礎・付加・二重・強化)の違いと関係性
- 「城の防御」で例える直感的なイメージ
- IEC規格(IEC 62368-1等)での具体的な要求事項
- 実務の設計でどの絶縁を選ぶべきかの判断基準
電気機器を設計していると、必ず出てくるのが「絶縁」の話です。「この部分は強化絶縁が必要」「二重絶縁構造にしてください」——こんな指示を受けても、そもそも絶縁の種類がわからないと対応できませんよね。
絶縁の種類は、IEC(国際電気標準会議)の安全規格で定義されています。代表的なものとして、IEC 61140(感電保護の基本概念)、IEC 62368-1(AV・IT機器の安全規格)、IEC 60950-1(旧IT機器安全規格)などがあります。
この記事では、5種類の絶縁について「城の防御」に例えながら、誰でも直感的に理解できるよう徹底解説します。
絶縁は「感電から人を守る」ための最も基本的な手段です。商用電源(AC100V〜240V)は人体に致命的なダメージを与える可能性があります。適切な絶縁設計がなければ、製品は安全認証を取得できず、販売することもできません。
目次
絶縁の全体像|5種類の絶縁を俯瞰する
まず、5種類の絶縁の全体像を把握しましょう。絶縁は大きく「感電保護が目的」のものと「回路動作が目的」のものに分かれます。
5種類の絶縁の分類
【感電保護を目的としない絶縁】
回路の正常動作のためだけに存在する絶縁
【感電保護を目的とする絶縁】
感電保護の1重目の防壁
基礎絶縁に追加する2重目の防壁
基礎絶縁+付加絶縁の組み合わせ
単層で二重絶縁と同等の保護を実現
絶縁の関係性を図解
5種類の絶縁の関係性を整理すると、以下のようになります。
🔗 絶縁の関係性
基礎絶縁 + 付加絶縁 = 二重絶縁
(2つの独立した絶縁層で構成)
強化絶縁 = 二重絶縁と同等の保護性能
(単層だが、より厳しい要求をクリア)
機能絶縁 ≠ 感電保護
(安全の観点ではカウントされない)
感電保護のためには、「二重絶縁」または「強化絶縁」のどちらかが必要です。基礎絶縁だけでは不十分で、必ず追加の保護手段(付加絶縁 or 保護接地)が求められます。

「城の防御」で絶縁をイメージする
絶縁の種類を理解するには、「城の防御」に例えるとわかりやすいです。城(人間)を敵(危険な電圧)から守る防壁として考えてみましょう。
機能絶縁 = 城内の仕切り壁
機能絶縁のイメージ
城の内部にある仕切り壁のようなもの。部屋と部屋を分けて、城内の秩序を保つ役割があります。しかし、外敵(危険な電圧)が攻めてきたときに人を守る役割はありません。
電気回路での意味
- 回路が正常に動作するために必要な絶縁
- 同じ安全区域内の部品間を分離
- 感電保護としてはカウントされない
- 例:二次回路内の信号線間の絶縁
基礎絶縁 = 城の外壁(1重目の防壁)
基礎絶縁のイメージ
城を守る最初の外壁です。敵の侵入を防ぐ最低限の防御ラインですが、この壁が破られたら、城内の人は直接危険にさらされます。1重の壁だけでは完全な安全は保証されません。
電気回路での意味
- 危険な電圧と人が触れる部分を分離
- 感電保護の最初の防壁
- 故障すると感電の危険がある
- 追加の保護手段が必須(付加絶縁 or 保護接地)
基礎絶縁は「1重の防壁」に過ぎません。安全規格では、基礎絶縁だけの保護は認められておらず、必ず「付加絶縁」または「保護接地(アース)」を追加する必要があります。
付加絶縁 = 城の内壁(2重目の防壁)
付加絶縁のイメージ
外壁(基礎絶縁)の内側に作る2重目の内壁です。万が一、外壁が破られても、この内壁が人を守ります。外壁とは独立して機能するため、どちらか一方が壊れても安全が保たれます。
電気回路での意味
- 基礎絶縁が故障した場合のバックアップ
- 基礎絶縁とは物理的に独立している
- 単独では使用されない(常に基礎絶縁とセット)
- 基礎絶縁+付加絶縁=二重絶縁

二重絶縁 = 外壁+内壁の2重構造
二重絶縁のイメージ
外壁(基礎絶縁)と内壁(付加絶縁)の2重構造です。敵が外壁を突破しても、内壁がまだ残っています。2つの独立した防壁があるため、1つが壊れても人は守られます。
電気回路での意味
- 基礎絶縁+付加絶縁の組み合わせ
- 2つの絶縁は物理的に独立(同時故障しにくい)
- どちらか一方が故障しても感電しない
- クラスII機器(アース不要)の要件
🔲 二重絶縁のシンボルマーク
二重四角マーク
二重絶縁(クラスII)の製品には、四角の中に四角のマークが表示されます。このマークがある製品は、アース(接地)なしで安全に使用できます。
例:電動ドリル、ヘアドライヤー、ノートPCの充電器など
強化絶縁 = 超頑丈な1枚壁
強化絶縁のイメージ
物理的には1枚の壁ですが、その壁が非常に頑丈で、2重の壁と同等の防御力を持っています。特殊な素材と厳しい品質管理で、単層でも二重絶縁と同じ安全性を実現しています。
電気回路での意味
- 単層で二重絶縁と同等の保護を提供
- より厳しい試験要件をクリア
- 構造上、2層に分けられない場合に採用
- 例:フォトカプラ、絶縁トランスの一体型絶縁
強化絶縁は「1層なのに2層分の性能」を持つ特別な絶縁です。そのため、基礎絶縁や付加絶縁よりも厳しい耐圧試験・沿面距離・空間距離が要求されます。単に厚くすればいいわけではなく、絶縁材料の選定から製造管理まで、高いレベルが求められます。

5種類の絶縁を徹底比較
5種類の絶縁を表で比較してみましょう。
比較表:5種類の絶縁
| 絶縁の種類 | 目的 | 感電保護 | 層数 | 単独使用 | 城の例え |
|---|---|---|---|---|---|
| 機能絶縁 | 回路動作 | なし | — | — | 城内の仕切り壁 |
| 基礎絶縁 | 感電保護 | 1重 | 1層 | 不可 | 城の外壁 |
| 付加絶縁 | 感電保護 | 1重 | 1層 | 不可 | 城の内壁 |
| 二重絶縁 | 感電保護 | 2重 | 2層 | 可 | 外壁+内壁 |
| 強化絶縁 | 感電保護 | 2重相当 | 1層 | 可 | 超頑丈な1枚壁 |
試験要件の比較(AC250Vの場合の例)
絶縁の種類によって、要求される耐圧試験電圧や沿面距離が異なります。
| 絶縁の種類 | 耐圧試験電圧(目安) | 沿面距離(目安) |
|---|---|---|
| 機能絶縁 | 規定なし〜低い | 動作電圧に依存 |
| 基礎絶縁 | 1500V AC | 2.5mm〜 |
| 付加絶縁 | 1500V AC | 2.5mm〜 |
| 二重絶縁 | 3000V AC(合計) | 5.0mm〜(合計) |
| 強化絶縁 | 3000V AC | 5.0mm〜 |
上記は目安であり、実際の要求値は適用規格(IEC 62368-1、IEC 60950-1等)、動作電圧、汚損度、絶縁材料のグループなどによって異なります。設計時は必ず適用規格を確認してください。

各絶縁の詳細解説
ここからは、各絶縁についてより詳しく解説していきます。
① 機能絶縁(Functional Insulation)
機能絶縁の定義
機器の正常な動作のためにのみ必要な絶縁
特徴
- 感電保護を目的としない(安全目的ではない)
- 回路の正常動作のために存在する
- 同じ安全区域内(例:二次側回路内)の部品間を分離
- 安全認証の絶縁評価ではカウントされない
具体例
- 二次回路内のICパッケージの絶縁
- 信号線間の絶縁被覆
- 低電圧回路内のコンデンサの絶縁
- 同一電位の導体間の絶縁
機能絶縁は「感電保護」という観点では存在しないものとして扱われます。たとえ物理的に絶縁があっても、一次-二次間などの安全上重要な箇所には、別途「基礎絶縁」以上の絶縁が必要です。
② 基礎絶縁(Basic Insulation)
基礎絶縁の定義
感電に対する基本的な保護を与える絶縁
特徴
- 感電保護の最初の防壁
- 危険な充電部と人が触れられる部分を分離
- この絶縁が故障すると感電の危険がある
- 単独では使用不可(追加保護が必須)
追加保護の方法(どちらかが必要)
- 付加絶縁を追加 → 二重絶縁構造(クラスII)
- 保護接地(アース)を追加 → クラスI構造
具体例
- 電源トランスの一次巻線と鉄心の間の絶縁
- ACコードの被覆
- 一次回路と接地可能な金属筐体の間の絶縁

③ 付加絶縁(Supplementary Insulation)
付加絶縁の定義
基礎絶縁の故障時に感電保護を与える、基礎絶縁に追加した独立の絶縁
特徴
- 基礎絶縁が故障した場合のバックアップ
- 基礎絶縁とは物理的に独立している
- 基礎絶縁と同等の性能が要求される
- 単独では使用しない(常に基礎絶縁とセット)
具体例
- 電動工具の外側プラスチックケース(内側の基礎絶縁に加えて)
- トランスの二次巻線を覆う追加の絶縁チューブ
- 二次回路と外部接触可能部の間の追加絶縁
付加絶縁が基礎絶縁と「独立」しているとは、一方の故障がもう一方に影響しないことを意味します。例えば、同じ絶縁材料の内部で2層に分けただけでは、材料の劣化で両方が同時に故障する可能性があるため、「独立」とは認められません。
④ 二重絶縁(Double Insulation)
二重絶縁の定義
基礎絶縁と付加絶縁の両方から成る絶縁
特徴
- 基礎絶縁+付加絶縁の組み合わせ
- 2つの絶縁は物理的に独立
- どちらか一方が故障しても感電しない
- 保護接地(アース)が不要(クラスII機器)
クラスII機器とは
二重絶縁または強化絶縁によって感電保護を行う機器を「クラスII機器」と呼びます。アース線が不要なため、2芯の電源コードで使用できます。
具体例
- 電動ドリル、電動ドライバーなどの電動工具
- ヘアドライヤー、ヘアアイロン
- ノートPCの充電器(ACアダプター)
- スマートフォンの充電器
二重絶縁の考え方は「単一故障安全」です。どんな製品でも、絶縁は経年劣化や外的要因で故障する可能性があります。1重の絶縁だけでは、その絶縁が壊れた瞬間に人が危険にさらされます。
二重絶縁では、「1つ目の絶縁が壊れても、2つ目が守ってくれる」という冗長構造を持たせています。これにより、1つの故障だけでは感電事故が起きない設計になっています。

⑤ 強化絶縁(Reinforced Insulation)
強化絶縁の定義
二重絶縁と同等の感電保護レベルを与える単一の絶縁システム
特徴
- 物理的には単一の絶縁(1層)
- 二重絶縁と同等の保護性能を持つ
- より厳しい試験要件(耐圧、沿面距離など)
- 基礎絶縁や付加絶縁として分離できない
なぜ強化絶縁が必要か?
構造上、2つの独立した絶縁層を設けることが困難または不可能な場合があります。例えば、絶縁トランスの一次-二次間や、フォトカプラの内部絶縁など。このような場合、単層でも二重絶縁と同等の信頼性を持つ「強化絶縁」が使われます。
具体例
- 絶縁型DC-DCコンバータの内部絶縁
- フォトカプラ(光絶縁素子)の一次-二次間絶縁
- 絶縁トランスの一次巻線-二次巻線間の絶縁
- デジタルアイソレータの内部絶縁
二重絶縁と強化絶縁の違い
二重絶縁と強化絶縁は、感電保護レベルは同等ですが、構造が異なります。
二重絶縁
2つの独立した層で構成
物理的に分離可能
強化絶縁
(単一層だが高性能)
単一の層で構成
基礎・付加に分離不可
強化絶縁は、単に「厚い絶縁」というわけではありません。以下のような厳しい要求をクリアすることで、二重絶縁と同等の信頼性を担保しています:
・耐圧試験:二重絶縁と同じ試験電圧(基礎+付加の合計値)
・沿面距離・空間距離:二重絶縁と同じ距離要求
・材料の品質:より厳格な絶縁材料の選定
・製造管理:高い品質管理レベル

📘 参考書籍のご紹介
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機器のクラス分類と絶縁の関係
電気機器は、感電保護の方式によってクラス0〜クラスIIIに分類されます。絶縁の種類と密接に関係しているので、合わせて理解しておきましょう。
機器のクラス分類
| クラス | 保護方式 | 絶縁の種類 | 接地(アース) | 電源コード |
|---|---|---|---|---|
| クラス0 | 基礎絶縁のみ | 基礎絶縁 | なし | 2芯 |
| クラスI | 基礎絶縁+保護接地 | 基礎絶縁 | 必要 | 3芯 |
| クラスII | 二重絶縁 or 強化絶縁 | 二重 or 強化 | 不要 | 2芯 |
| クラスIII | SELV(安全特別低電圧) | 機能絶縁 | 不要 | — |
各クラスの詳細
クラス0
基礎絶縁のみで、追加保護なし。日本を含む多くの国で禁止されています。故障時に感電リスクが高いため。
クラスI
基礎絶縁+保護接地。故障時はアースに電流が流れ、ブレーカーが落ちる。金属筐体の機器に多い。
クラスII
二重絶縁または強化絶縁。アース不要で2芯コードで使用可能。電動工具、家電製品に多い。
クラスIII
SELV(安全特別低電圧:通常DC60V以下)で動作。電圧自体が安全なため、絶縁による保護は不要。
クラスI(接地式):金属筐体の大型機器、据え置き機器、工場設備など。接地工事が前提の環境で使用。
クラスII(二重絶縁):ポータブル機器、手持ち工具、家電製品など。どこでも使える汎用性が必要な製品に最適。

実務での絶縁設計|AC-DCコンバータの例
実際の製品設計で、どの絶縁を適用するか見てみましょう。AC-DCコンバータ(ACアダプター)を例に解説します。
AC-DCコンバータの絶縁箇所
AC-DCコンバータには、複数の絶縁箇所があります。それぞれに適切な絶縁の種類を選定する必要があります。
📍 AC-DCコンバータの絶縁箇所
① 一次側 ↔ 二次側(最重要!)
強化絶縁または二重絶縁が必要
AC電源(危険電圧)と出力(人が触れる可能性)を分離
② 一次側 ↔ 筐体(接地可能な場合)
クラスI機器:基礎絶縁+保護接地
クラスII機器:二重絶縁または強化絶縁
③ 二次側 ↔ 筐体
二次側がSELV(安全特別低電圧)なら機能絶縁でOK
SELV以外なら基礎絶縁以上が必要
④ 二次側回路内の部品間
機能絶縁(感電保護は不要)
回路動作のための絶縁
一次-二次間の絶縁を実現する部品
AC-DCコンバータで一次-二次間の強化絶縁を実現するために、以下の部品が使われます。
絶縁トランス
一次巻線と二次巻線の間に強化絶縁。電力を伝達しながら絶縁を確保。
フォトカプラ
光で信号を伝達。フィードバック信号の絶縁に使用。強化絶縁対応品あり。
デジタルアイソレータ
磁気や容量結合で信号を伝達。高速通信に対応。強化絶縁対応品あり。
フォトカプラやデジタルアイソレータを選定する際は、「強化絶縁対応」かどうかを必ず確認してください。データシートに「Reinforced Insulation」「5000Vrms for 1 minute」などの記載がある製品を選びましょう。安価な汎用品は強化絶縁に対応していないことがあります。

沿面距離と空間距離
絶縁設計では、「絶縁材料の選定」だけでなく、「距離」も重要です。沿面距離と空間距離について理解しておきましょう。
沿面距離(Creepage Distance)
沿面距離とは?
絶縁物の表面に沿った、2つの導電部間の最短距離
なぜ重要か?
絶縁物の表面には、ホコリや湿気が付着することがあります。これらが導電性を持つと、絶縁物の表面を伝って電流が流れる(トラッキング現象)可能性があります。沿面距離を十分に確保することで、このリスクを低減します。
空間距離(Clearance)
空間距離とは?
空気中を通る、2つの導電部間の最短距離
なぜ重要か?
電圧が高いと、空気中を通って放電(スパーク)が起きることがあります。空間距離を十分に確保することで、空気中の絶縁破壊を防ぎます。
沿面距離と空間距離のイメージ
🏔️ 山で例えると…
沿面距離
山の表面を歩いて、A地点からB地点まで行く距離。山を登って下りる必要があるため、直線より長くなる。
空間距離
山を無視して空中を飛んで、A地点からB地点まで行く距離。直線距離なので最短。
絶縁の種類と距離要求
絶縁の種類によって、要求される沿面距離・空間距離が異なります。
| 絶縁の種類 | 沿面距離の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 基礎絶縁 | X mm | 規格・電圧・汚損度により決定 |
| 付加絶縁 | X mm | 基礎絶縁と同等 |
| 二重絶縁 | 2X mm(合計) | 基礎+付加の合計 |
| 強化絶縁 | 2X mm | 二重絶縁と同等の距離 |
基板上で沿面距離を確保するのが難しい場合、以下のテクニックが使われます:
・スロット(溝)を入れて沿面距離を延長
・絶縁バリア(リブ)を立てて距離を稼ぐ
・コーティングで絶縁物の汚損を防ぐ

よくある質問(FAQ)
Q1:強化絶縁と二重絶縁、どちらを選べばいい?
A:構造によって決まります。
・物理的に2層に分けられる場合 → 二重絶縁
・構造上、2層に分けられない場合 → 強化絶縁
例えば、フォトカプラの内部絶縁は物理的に2層に分けられないため、強化絶縁として設計されています。どちらも感電保護のレベルは同等なので、実現しやすい方を選んでください。
Q2:「基礎絶縁+保護接地」と「二重絶縁」、安全性に差はある?
A:安全規格上は同等の保護レベルです。
どちらも「単一故障安全」の考え方に基づいています。
・クラスI(基礎絶縁+接地):絶縁が壊れても、アースに電流が流れてブレーカーが落ちる
・クラスII(二重絶縁):1層が壊れても、もう1層が守ってくれる
ただし、接地が確実に行われることが前提のクラスIに対し、クラスIIは接地不要で使えるため、ポータブル機器にはクラスIIが適しています。
Q3:機能絶縁しかない箇所は、感電しても問題ない?
A:その箇所が「安全な電圧」であれば問題ありません。
機能絶縁は、SELV(安全特別低電圧)の回路内で使われます。SELVは通常DC60V以下(またはAC42.4V以下)で、人体に危険を及ぼさない電圧レベルです。
この電圧範囲であれば、たとえ絶縁が壊れて人が触れても感電事故にはなりません。そのため、機能絶縁で十分とされています。
Q4:絶縁材料は何を使えばいい?
A:用途と環境に応じて選定します。
・プラスチック(樹脂):ケース、絶縁バリアなど
・ゴム・シリコン:電線被覆、パッキンなど
・セラミック・ガラス:高温・高電圧環境
・テープ・チューブ:追加絶縁の補強
重要なのは、絶縁材料がCTI(比較トラッキング指数)や難燃性(UL94等級)の要求を満たしているかどうかです。
Q5:耐圧試験で何Vかければいい?
A:絶縁の種類と動作電圧によって決まります。
一般的な目安(AC250V入力機器の場合):
・基礎絶縁:1500V AC(1分間)
・付加絶縁:1500V AC(1分間)
・二重絶縁:3000V AC(1分間)※基礎+付加の合計
・強化絶縁:3000V AC(1分間)
ただし、これは目安であり、実際の試験電圧は適用規格を確認してください。

設計チェックリスト
絶縁設計で確認すべきポイントをチェックリストにまとめました。
✅ 絶縁設計チェックリスト
【絶縁箇所の特定】
- □ 一次側(危険電圧)と二次側の境界を特定した
- □ 人が触れる可能性のある部分を特定した
- □ 接地可能な金属部分を特定した
【絶縁の種類の決定】
- □ 各絶縁箇所に必要な絶縁の種類(機能/基礎/付加/二重/強化)を決定した
- □ クラスI or クラスII のどちらで設計するか決定した
【距離の確認】
- □ 必要な沿面距離を規格表から確認した
- □ 必要な空間距離を規格表から確認した
- □ 基板パターン上で距離を確保した
【部品の選定】
- □ 絶縁トランスは強化絶縁対応品か確認した
- □ フォトカプラ/アイソレータは強化絶縁対応品か確認した
- □ 安全規格認証を取得している部品を選定した
【試験の準備】
- □ 耐圧試験の条件(電圧、時間)を確認した
- □ 絶縁抵抗試験の条件を確認した
まとめ
絶縁の種類について、5つの絶縁を「城の防御」に例えながら徹底解説しました。
📌 この記事のポイント
- 機能絶縁:回路動作のため。感電保護としてはカウントされない
- 基礎絶縁:感電保護の1重目。単独では使用不可
- 付加絶縁:基礎絶縁に追加する2重目。バックアップの役割
- 二重絶縁:基礎+付加の2層構造。クラスII機器の要件
- 強化絶縁:単層で二重絶縁と同等の保護。より厳しい要件
- 機能絶縁 = 城内の仕切り壁(敵からは守らない)
- 基礎絶縁 = 城の外壁(1重目の防壁)
- 付加絶縁 = 城の内壁(2重目の防壁)
- 二重絶縁 = 外壁+内壁の2重構造
- 強化絶縁 = 超頑丈な1枚壁(2重と同等の強度)
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💡 絶縁設計の心得
絶縁設計は「人の命を守る」ための設計です。コストや実装面積の制約から絶縁を妥協したくなることもありますが、安全に関わる部分は絶対に妥協してはいけません。
迷ったときは、必ず安全規格を確認し、必要であれば認証機関に相談してください。「これで大丈夫かな?」という不安を抱えたまま製品を出荷することだけは、避けましょう。