試作基板にダイオードを実装した。電源を入れた瞬間、「プシュッ」とイヤな音とともに煙が…。
原因はダイオードの向きが逆。先輩から「カソードのマーク見なかったの?」と呆れられた。
……そもそも「カソード」と「アノード」、どっちがどっちだっけ。回路図記号の▷|の向きを毎回考え込んでしまう。実物パッケージのどこを見れば向きがわかるのかも自信がない。
- 「カソード」と「アノード」、どっちがプラス側か毎回迷う
- 回路図の▷|の記号、矢印の向きが直感的に理解できない
- 実物のダイオードのどこに「向き」が書いてあるかわからない
- テスターで向きを判定する方法を知りたい
- カソード・アノードの覚え方を「水道の蛇口」で完全理解
- 回路図記号の向きを直感的に読み取る方法
- 実物パッケージのマークと向きの見分け方(5パターン)
- テスターでの向き判定の手順
結論:カソードは「マイナス側」、アノードは「プラス側」
先に結論を言います。これだけ覚えれば、もう向きで迷うことはありません。
| アノード(Anode) | → プラス(+)側。電流が入ってくる端子。記号「A」 |
| カソード(Cathode) | → マイナス(−)側。電流が出ていく端子。記号「K」 |
ダイオードは「電気の一方通行」。電流はアノード → カソードの向きにしか流れません。
逆向きに電圧をかけても電流は流れない(=絶縁状態)が、限度を超えるとブレークダウンして壊れます。向きを間違えると煙が出るのはそのためです。
電流は「アノード→カソード」の一方通行。逆向きに繋ぐと壊れる。

覚え方:水道の蛇口で完全イメージ
カタカナの「アノード」「カソード」が覚えにくいですよね。水道の蛇口で考えるとスッキリします。
🚰 ダイオード = 一方通行の蛇口
ダイオードを「水道の蛇口」、電流を「水」だとイメージしてください。
アノード(入口)
水(電流)が入ってくる側。水源(電池の+端子)につながっている蛇口の元栓。
カソード(出口)
水(電流)が出ていく側。下流(電池の−端子)につながっている蛇口の蛇口口。
💡 覚え方のコツ「アから始まる方が前」
「ア」ノード=ABC順でアが先=電流の入口(+側)
「カ」ソード=後ろ=電流の出口(−側)
あるいは、「カソード=かえり道(−側に帰る)」と覚えてもOK。

回路図記号「▷|」の読み方
ダイオードの回路図記号は「▷|」。この向きの意味を、一度しっかり理解しておきましょう。
アノード(A) カソード(K)
●──────▷|──────●
(+側) (−側)
→
電流の流れる向き
🎯 記号の覚え方:矢印は「電流の進む向き」
記号の▷(三角形)は矢印そのもの。矢印の根本(広い側)が入口=アノード、矢印の先(尖った側)が出口=カソードです。
三角形 = 電流の方向
三角の底辺側がアノード、頂点側がカソード。電流は底辺から頂点に向かって流れる。
縦棒 = 通せんぼの壁
三角の頂点に付いてる縦棒は「逆方向の通せんぼ」を表す。これがカソード側にあるのが目印。
「縦棒の方がカソード」とだけ覚えればOK。回路図で迷ったら、縦棒の側を−(マイナス)につなぐと覚えておきましょう。

実物のダイオードはどこを見ればわかるの?
回路図はわかった。でも実物のダイオードを手に持ったとき、どこが「カソード側」かすぐ判断できますか?
答えは簡単。「カソード側にマークが付いている」のがルールです。パッケージ別に見ていきましょう。
① リード品(円筒形):白い帯
アノード カソード
───●═════════║●───
↑
この白い帯が目印!
★ 円筒形のダイオード(1N4007、1N4148など)には、カソード側に白いラインが印刷されています。これが世界共通のルール。
② SMD品(チップタイプ):白い帯または「K」マーク
┌──────────┐
[A]│███████ ║ │[K] ← この帯のある側がカソード
└──────────┘
★ 表面実装ダイオードも基本は同じ。本体表面のカソード側に白い帯または「K」の刻印があります。小さくて見えにくい場合は拡大鏡を使いましょう。
③ LED:足の長さで判別
●●●
(LED)
│ │
長 短
│ │
A K
アノード カソード
(+側) (−側)
★ LED(発光ダイオード)も実はダイオードの仲間。新品のLEDは足が長い方がアノード(+側)、短い方がカソード(−側)。
さらに、本体内部を覗き込むと、大きい電極(皿状の方)がカソードになっています。

パッケージ別カソードマーク早見表
よく使うダイオードパッケージのマーク位置を一覧にまとめました。
| パッケージ | カソード側のマーク | 代表型番 |
|---|---|---|
| 円筒リード(DO-41) | 白い帯 | 1N4007、1N4148 |
| SMD(SOD-123) | 白い帯 | 1N4148W |
| SMD(SMA/SMB/SMC) | 白い帯 | S1M、SS14 |
| TO-220(パワー用) | データシート確認 | MUR1560 |
| LED(リード品) | 足が短い側 / 内部の大きい電極 | 汎用5mm LED |
| ブリッジダイオード | パッケージに「+」「−」「〜」表記 | D3SBA60 |
TO-220などの大きいパッケージは「裏面の金属タブがカソード」が多いですが、必ずデータシートで確認してください。逆に組み込むと、放熱板(GND)に高電圧が直結する大事故になります。

マークが消えた…テスターで向きを判定する方法
古いダイオードや、はんだ付け作業でマークが焼けて消えてしまったとき。そんなときはデジタルマルチメーター(テスター)で判定できます。
🔧 ダイオードチェックモードを使う
ほとんどのテスターには「ダイオードチェックモード」があります(記号は「→|」のマーク)。これに切り替えて、以下の手順で判定します。
テスターのダイヤルを「→|」マーク(ダイオードチェック)に合わせる。
赤プローブを片方の足に、黒プローブをもう片方の足に当てる。
0.5〜0.7V程度の値が表示されたら、赤プローブ側がアノード(+)、黒プローブ側がカソード(−)。
逆向きでは「OL」(オーバーロード=無限大)と表示される。
プローブを入れ替えて、本当に「片方向だけ通る」ことを確認。両方向で値が出る場合はダイオードが短絡(壊れている)している。
表示される0.5〜0.7Vは、シリコンダイオードの順方向電圧降下(Vf)そのものです。ショットキーダイオードなら0.2〜0.4Vくらいに低くなります。
両方向OLならオープン故障、両方向で0Vや極端に低い値なら短絡故障です。

もし向きを間違えたら何が起きる?
「向きを間違えたら壊れる」とよく聞きますが、実際は使い方によって結果が変わります。
パターンA:動かないだけ
- 整流回路で向きが逆 → 出力が出ない
- LEDが点灯しない
- でも、即座に壊れることは少ない
→ 救済可能
パターンB:煙が出る
- 逆電圧がVRRM(耐圧)を超える
- ブレークダウンして大電流が流れる
- パッケージが焦げる・破裂する
→ 即廃棄
⚠️ 特に危ない3つのケース
高電圧(AC100Vなど)が逆方向にかかると、一瞬で破裂する。最も危険なパターン。
モータやリレーの逆起電力吸収用。向きを間違えるとサージ電圧でICが壊れる二次被害も。
4個のダイオードのどれか1個でも逆向きだと、AC直結状態になり煙が出る。
「電源を入れた瞬間にダイオードが弾けて、パッケージの破片が飛んできた」というのは、エンジニアあるある。安全メガネは伊達じゃないので、初通電時は必ず着用しましょう。

基板に実装するときの3つのチェック
ダイオードを基板に取り付けるとき、必ず以下の3点を確認してください。
基板の白いシルク印刷には、ダイオードの記号「▷|」が印刷されています。「|」(縦棒)側=カソードに、ダイオードの白い帯を合わせて実装します。
シルクが薄くて見えないとき、ランド(はんだ付けする金属パッド)の形を見ましょう。SMD品はカソード側が四角、アノード側が丸になっていることが多いです(ただし基板設計者次第)。
電源を入れる前に、ダイオード周辺を目視チェック。白い帯がシルクの縦棒側に揃っているか必ず確認。テスターでの導通チェックもおすすめ。
量産工程の自動マウンタでは、テープリールにダイオードが正しい向きで巻かれていれば自動的に正しい向きで実装されます。しかし手はんだ・試作時の手付けでは、人間が向きを間違えやすいので要注意。実装後、電源を入れる前のダブルチェックが命を救います。

よくある質問
はい、あります。双方向TVSダイオードやバリスタなどは、+−両方向に対して同じように動作するので、向きを気にする必要がありません。記号も対称形(◇のような形)になっています。
ツェナーダイオードも普通のダイオードと同じく「アノード→カソード」の向きを持っています。ただし、ツェナーは「逆方向の降伏電圧」を利用するので、カソードを+側、アノードを−側に繋いで使うのが基本。記号は▷|の縦棒の両端が折れた形(Z形)です。
ギリシャ語が語源です。
アノード(Anode)=「ana(上へ)+ hodos(道)」=「上に登る道」=電子の入る道
カソード(Cathode)=「kata(下へ)+ hodos(道)」=「下に降りる道」=電子の出る道
電子の流れと電流の流れが逆向きなのでややこしいですが、「電流の入口=アノード」と覚えればOK。
海外メーカーのデータシートでは英語表記が普通です。
Anode = A = アノード = +側
Cathode = K(またはC)= カソード = −側
※Cathodeの略号として「C」ではなく「K」が使われることが多いです(コンデンサのCと混同を避けるため)。

まとめ:「縦棒の側がカソード」だけ覚えればOK
今回の内容を整理します。
- アノード = +側(電流の入口)、カソード = −側(電流の出口)
- 電流はアノード→カソードの一方通行
- 回路図記号「▷|」の縦棒の側がカソード
- 実物パッケージはカソード側に白い帯が世界共通ルール
- LEDは足が短い側がカソード
- マークが消えたらテスターのダイオードチェックモードで判定
- 実装時はシルクの縦棒側と本体の白帯を合わせる
これでもう、ダイオードの向きで悩むことはありません。「縦棒の側がカソード(−)」。この1つだけ覚えておけば、回路図でも実物でもパッと判断できます。
次は、ダイオードの性能パラメータを読めるようになりましょう。データシートの読み方を覚えれば、自分で部品選定ができるエンジニアに一歩近づけます。

次に読むべき記事
「縦棒の側がカソード」を押さえたら、次はそのダイオードを自分で選べるようになる段階です。向きがわかっても、Vfやtrrが読めなければ部品表は作れません。全体の位置関係を先に整理しておきましょう。
◆ ダイオード攻略の全体像 ◆
向き(カソード・アノード)がわかる
▼
PN接合・電流の正体
▼
Vf・trr・IR・耐圧
▼
整流・SBD・FRD・ツェナー・TVS
▼
直並列・保護回路・実装
BEST 3まずはこの3本(推奨順)
Aなぜ一方通行なのか(原理・基礎)
向きの丸暗記から抜け出すための土台です。ここを理解すると応用が効きます。
ダイオードの中身で何が起きているのか。すべての半導体部品の出発点です。
「アノード=電子の入る道」の語源が混乱を招く理由が、これでスッキリします。
この記事で使った「水道の蛇口」のたとえを、さらに深く掘り下げています。
ダイオード以外の基本部品も整理。回路図が読めるようになる第一歩です。
電気を使える形に変換する技術の全体像|整流・変圧・インバータを5分で理解
ダイオードが「整流」という仕事の中でどこを担当しているかがわかります。
Bデータシートが読めるようになる
この記事で出てきた「0.7V」や「VRRM(耐圧)」の正体を、1つずつ解き明かします。
まずはこの全体像から。英語の表だけの資料でも怖くなくなります。
ダイオードのVf(順方向電圧降下)とは?|0.7Vの正体と損失計算
テスターで表示された0.5〜0.7Vが何なのか。発熱計算にも直結します。
逆回復時間(trr)とは?シャッターの閉まる遅さで全て決まる
一方通行の切り替えには「遅れ」があります。高速動作で効いてくる指標です。
ダイオードのリーク電流(IR)とは?|温度上昇で増える「逃げ道」の正体
逆向きは完全な絶縁ではありません。わずかに漏れる電流の話です。
【最重要】ディレーティングとは?|部品を定格ギリギリで使ってはいけない理由
耐圧を守っていても壊れる理由。部品選定の作法として必ず押さえたい話です。
Cダイオードの種類を使い分ける
「ダイオード」とひと口に言っても用途別に別物です。FAQで触れた種類も解説しています。
「カソードを+側に繋ぐ」という逆転の発想を、回路例つきで解説します。
ショットキーバリアダイオード(SBD)とは?低Vf高速の物理
Vfが0.2〜0.4Vと低い理由。テスター判定の数値が変わる理由もここにあります。
スイッチング電源で1N4007を使ってはいけない理由がわかります。
FAQで触れた「双方向タイプ」の実物です。向きを気にしない部品の使い道。
「+」「−」「〜」表記の読み方。4個組みの向き間違いを防ぐ知識です。
迷ったときの判断基準。用途別に選び方を整理しました。
EVや太陽光で主役になりつつある新素材。トレンドを押さえておきましょう。
D回路に組み込むときの実践知識
記事で触れた「フリーホイールダイオード」や直並列接続の実務ノウハウです。
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2個並べても電流は半分になりません。Vfのバラつきが招く熱暴走の話です。
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向き合わせの基準になるシルク。その役割と限界を知っておきましょう。
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【完全マップ】測定器の全体像|オシロ・テスタ・電力計・LCR・ネットアナの使い分け早見表
テスターの次に覚える測定器を整理。「何で測るか」の判断力が上がります。
◆ どれから読むか迷ったら
▶ 明日、部品表(BOM)を作らないといけない
データシートの読み方 → 整流ダイオードの選び方 の2本で、型番を自分で決められるようになります。
▶ もう二度と煙を出したくない
ディレーティング と シルク印刷の読み方 が効きます。定格の余裕と実装前確認が命綱です。
▶ そもそも仕組みから納得したい
PN接合の原理 → 電流の正体は電子の流れ の順で、暗記が不要になります。