こんにちは、シラスです。
実験計画法(Design of Experiments)は、エンジニアにとって最強の武器ですが、学ぶべき項目が多くて迷子になりがちです。
「直交表の使い方はどこ?」
「計算が合わない時はどうする?」
そんな方のために、このブログの実験計画法に関する全記事を、「学ぶべき順序」で整理しました。
このロードマップに沿って進めば、基礎理論から実務レベルの応用まで、体系的にマスターできます。
目次
Step 1:【入門編】実験計画法の基礎と分散分析
まずは「実験とは何か?」という哲学と、データのバラつきを分解する「分散分析」の計算手順を固めます。
1. 実験を始める前に知っておくこと
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実験計画法とは?効率よく成果を出すための実験設計の基本
なぜ「総当たり実験」はダメなのか?最小のコストで最大の情報を得るための考え方を解説します。 -
【なぜダメ?】全数試験が現実的でない理由と効率的な検査方法
「全部調べれば確実」という思い込みを捨て、サンプリング(抜き取り)で品質を保証するロジックを学びます。 -
フィッシャーの3原則:ランダム化・反復・局所管理
実験の失敗を防ぐための「3つの鉄則」。なぜランダムにするのか?なぜ繰り返すのか?をカレーの味見で解説。 -
因子と水準とは何か?
実験条件を決めるための基礎用語。「オムライスの具材」を例に、因子と水準の違いをクリアにします。 -
誤差とは?偶然誤差と系統誤差の違い
「実験結果が毎回ズレる」のはなぜか?制御できないノイズ(誤差)とどう付き合うべきかを解説します。
2. 一元配置実験と分散分析(ANOVA)
「1つの条件を変えて白黒つける」最も基本的な実験です。計算の流れはここでマスターしましょう。
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一元配置実験とは?「たった1つの条件」を変えて白黒つける基本形
「温度だけ変えたらどうなる?」最もシンプルな実験を通して、分散分析の全体像を掴みます。 -
総平方和(ST)の計算|データの「全エネルギー」を数値化せよ
分散分析の第一歩。データのバラつき全体を「ホールケーキ」に例えて数値化する手順を解説。 -
群間平方和(SA)と群内平方和(Se)の分解
バラつきの塊を「温度の効果」と「ただの誤差」にスパッと切り分ける、解析のクライマックスです。 -
分散分析表(ANOVA)の完成|一元配置版
計算した数値を表にまとめ、最終的な「F値(シグナル対ノイズ比)」を算出するまでを完全ガイド。 -
F検定の判定|その差は「意味のある差」か?
F分布表を使って、「この結果は偶然ではない(有意である)」と結論づけるための判定方法です。
3. 二元配置実験と交互作用(重要!)
条件を2つに増やすと、「相性(交互作用)」という魔物が現れます。
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二元配置実験とは?2つの要因を同時に調べる実験方法
「温度」と「材料」を同時に変えるメリットとは?効率化の第一歩を踏み出します。 -
交互作用とは?グラフが交差する本当の意味と「相乗効果」の正体
「AとBを組み合わせたら結果が悪化した…」そんな謎現象を解明する、実験計画法の最重要概念。 -
「交絡」の恐怖|データに騙されるな!要因が混ざり合う現象
「アイスが売れると事故が増える?」見せかけの相関(擬似相関)に騙されないための防衛術。 -
「分散をプールする」とは?t検定と実験計画法をつなぐ直感的イメージ
「効果のない因子を誤差に混ぜる(プーリング)」ことで、検定の精度を上げるテクニック。
Step 2:【実践編】直交表の仕組みと割り付け
エンジニアの実務本丸です。実験回数を劇的に減らすパズル(割り付け)を極めましょう。
1. 直交表の基礎(L8, L16)
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直交表(L8)の仕組み図解|なぜ「間引き」しても正しい結果が出るのか?
128回の実験をたった8回に減らせる数学的理由。「直交性(バランス)」の魔法を視覚的に解説。 -
線点図の正体|なぜ点と線?「L4」で学ぶ、一番やさしい割り付け入門
「どの列にどの因子を入れる?」複雑な割り付けパズルを解くための地図(線点図)の読み方。
2. 特殊な直交表とテクニック
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L12直交表の特徴|交互作用を「犠牲」にして最強の効率を手に入れる
「細かいことはいいから、とにかくたくさんの因子を調べたい!」初期検討(スクリーニング)に最適な最強の表を紹介。 -
ダミー水準法とは?3水準の因子をL8(2水準系)に無理やり入れる裏技
「温度は2条件だけど、材料は3種類ある…」そんな現場の困ったを解決する、割り付けの応用テクニック。 -
多水準作成法とは?L8直交表で「4水準」を作るテクニック
直交表の2列を合体させて、より細かい条件設定(4段階など)を実現する方法。
Step 3:【応用編】複雑な実験デザインと解析
現場では「温度を変えにくい」「実験日が変わる」といった制約があります。それらを乗り越えるための応用技です。
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枝分かれ実験(Nested Design)とは?「入れ子構造」のデータを正しく解析する方法
「A工場の1号機」と「B工場の1号機」は別物。親子関係のあるデータを正しく扱うための注意点。 -
ラテン方格法とは?「数独」の配置で実験回数を1/3にする古典的テクニック
3つの因子をパズルのように配置して、実験回数を極限まで減らす古典的な手法。 -
乱塊法とは?実験条件にばらつきがあるときの設計法
「実験日が違う」などの環境ノイズをブロック化して排除し、実験精度を上げる技術。 -
分割法とは?複雑な条件を整理するための実験設計
「温度炉の温度は頻繁に変えられない」といった現場の制約に対応するための、実験順序の工夫。 -
応答曲面法とは?最適条件を探すための実験設計
「だいたいこの辺が良い」から「ピンポイントでここが最高!」を見つけるための、地図作りの技術。
計算の舞台裏(理論)
「なぜそう計算するのか?」数式の意味を深く理解したい人向け。
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平均平方の期待値をスッと理解!初心者でも迷わない考え方
F検定の分母に何を持ってくるべきか?その理論的根拠となる期待値の計算。 -
修正項(CT)とは?T²/Nの式を完全図解
平方和の計算で必ず出てくる「謎の引き算」の意味を、図解で直感的に理解します。 -
母平均の推定(一元配置)|点推定と区間推定
「で、結局強度はいくつになるの?」最適な条件での実力を95%信頼区間で予測する方法。 -
残差の検討(残差分析)|データに変なクセはないか?
解析結果を信じていいのか?データの「健康診断」を行って、異常値やクセを見抜く手順。
「記事を読んだけど、自分の課題にどう当てはめたらいいか分からない…」
そんな時は、基礎(Step 1)に戻ってみるか、フィッシャーの3原則を見直してみてください。
実験の設計図さえ正しければ、あとはデータが答えを教えてくれます。
📚 実験計画法の「挫折」を救う2冊
「数式を見た瞬間に本を閉じた」
そんな経験がある私だからこそ推せる、厳選のバイブルです。