機械科目の解説

【電験三種】変圧器の損失と効率|鉄損・銅損・最大効率条件を完全マスター

😰 こんな悩みはありませんか?

  • 鉄損と銅損、どっちがどっちか混乱する…
  • 効率の計算式が覚えられない
  • 「最大効率のとき鉄損=銅損」ってなぜ?
  • 無負荷損と負荷損の違いがわからない

変圧器は電圧を変換する便利な機械ですが、100%完璧ではありません

入力したエネルギーの一部は、「熱」として逃げてしまいます

この「逃げたエネルギー」が損失であり、「届いたエネルギーの割合」が効率です。

✅ この記事の結論

変圧器の損失は「鉄損」と「銅損」の2種類だけ。
鉄損は一定、銅損は電流で変わる。
鉄損 = 銅損のとき、効率が最大になる!

🔥 変圧器の損失は「2種類だけ」

変圧器で発生する損失は、実はたった2種類しかありません。

それが「鉄損」「銅損」です。

名前の通り、「鉄」と「銅」で発生する損失です。シンプルですよね。

💡 超シンプルな覚え方

心で発生 →
線(コイル)で発生 →

名前そのまま!これだけ覚えればOK。

🔴 鉄損(無負荷損)― 負荷がなくても発生する損失

📚 鉄損(Iron Loss)

鉄心で発生する損失。電圧をかけるだけで発生する。
別名:無負荷損(負荷がなくても発生するから)
記号:Pi または W₀

🤔 なぜ「無負荷損」と呼ぶの?

変圧器に電圧をかけると、たとえ何も接続していなくても(無負荷)、鉄心に磁束が発生します。

この磁束を作る過程で、鉄心が熱くなります。これが鉄損です。

つまり、電圧さえかかっていれば、負荷の大小に関係なく一定の損失が発生するのです。

📊 鉄損の内訳(2種類)

鉄損は、さらに2つの成分に分けられます。

① ヒステリシス損

鉄心の磁化の向きが行ったり来たりするときのロス。

交流は1秒間に50回(50Hz)向きが変わるので、その度にエネルギーを消費する。

② 渦電流損

鉄心の中に渦巻き状の電流が発生し、熱になるロス。

対策として、鉄心を薄い鉄板の積層構造にしている。

🧲 磁石で例えると…

磁石を「N→S→N→S…」と何度もひっくり返すと、だんだん熱くなりますよね。

交流は1秒間に50回も向きが変わるので、鉄心の磁化も50回ひっくり返ります。

これが鉄損の正体です。

🔴 鉄損の特徴

負荷に関係なく一定(電圧が一定なら変わらない)
・だから「無負荷損」とも呼ばれる
無負荷試験で測定できる

🟠 銅損(負荷損)― 電流が流れると発生する損失

📚 銅損(Copper Loss)

コイル(銅線)の抵抗で発生する損失。I²R損とも呼ばれる。
別名:負荷損(電流=負荷が増えると増えるから)
記号:Pc または Wc

🤔 なぜ「負荷損」と呼ぶの?

銅損は、コイルに電流が流れるときに発生します。

負荷(接続された機器)が大きいほど電流が増え、銅損も増えます。

逆に、無負荷(何も接続していない)なら電流がほぼ流れないので、銅損もほぼゼロです。

📐 銅損の公式

Pc = I²R

I:電流[A] | R:コイルの抵抗[Ω]
電流の2乗に比例する!

ここで重要なのは「2乗」という部分です。

電流が2倍になると、銅損は4倍になります。
電流が3倍になると、銅損は9倍になります。

🔌 電気ストーブで例えると…

電気ストーブの電熱線は、電流が流れると熱くなりますよね。

変圧器のコイルも同じです。銅線に電流が流れると熱が発生します。

電流が多いほど、発熱も大きくなります(I²に比例)。

🟠 銅損の特徴

電流の2乗に比例して増える
・負荷が大きいほど銅損も大きい
短絡試験で測定できる

📊 鉄損と銅損の比較

項目 鉄損 Pi 銅損 Pc
発生場所 鉄心 コイル(銅線)
別名 無負荷損 負荷損
負荷との関係 一定(変わらない) I²に比例して増える
測定方法 無負荷試験 短絡試験
内訳 ヒステリシス損+渦電流損 I²R損

📈 全損失 = 鉄損 + 銅損

変圧器の全損失は、鉄損と銅損を足し合わせたものです。

📐 全損失の公式

W = Pi + Pc = W₀ + I²R

W:全損失 | Pi(W₀):鉄損 | Pc:銅損

この式からわかることは…

全損失の特徴

無負荷時:銅損≒0なので、全損失≒鉄損
負荷が増えると:銅損が急激に増える
全損失=一定の鉄損+増える銅損

⚡ 効率η ― 入力の何%が出力になるか?

変圧器の効率(η:イータ)とは、入力したエネルギーのうち、何%が出力として使えるかを表す値です。

📚 効率(Efficiency)

出力エネルギー ÷ 入力エネルギー × 100%
記号:η(イータ) | 単位:%
一般的な変圧器の効率:95〜99%(非常に高い!)

📐 効率の計算式

効率の計算式は、いくつかの書き方があります。どれも同じ意味です。

📐 効率の公式(3パターン)

① η = (出力 / 入力) × 100%

② η = 出力 / (出力 + 損失) × 100%

③ η = (入力 − 損失) / 入力 × 100%

試験でよく使うのは②の形です。

🌟 最重要公式

η = P₂ / (P₂ + Pi + Pc) × 100%

P₂:出力[W] | Pi:鉄損 | Pc:銅損

💴 お金で例えると…

100万円を投資して、98万円のリターンがあったら、効率は98%。

変圧器も同じで、100Wの電力を入れて98Wが出力されたら、効率98%。
残りの2Wは「損失」として熱になって消えたことになります。

🧮 効率の計算例

📝 例題

【条件】
・出力:10kW
・鉄損:100W
・銅損:150W

【計算】
η = P₂ / (P₂ + Pi + Pc) × 100%
η = 10,000 / (10,000 + 100 + 150) × 100%
η = 10,000 / 10,250 × 100%
η = 97.6%

この変圧器は、入力したエネルギーの97.6%を出力として届けられるということです。非常に効率が良いですね!

🏆 最大効率の条件 ― 鉄損 = 銅損

さて、ここからが試験で超頻出のポイントです。

変圧器の効率が最大になるのは、鉄損と銅損が等しいとき!

⭐ 最大効率の条件(超重要!)

Pi = Pc(鉄損 = 銅損)

🤔 なぜ「鉄損=銅損」で最大効率になる?

これは直感的にはわかりにくいですよね。なぜ「等しいとき」なのでしょうか?

まずは、損失の特徴を思い出してください。

鉄損 Pi

負荷が変わっても
一定

銅損 Pc

電流の2乗に比例して
増える

つまり、負荷を変えると…

  • 負荷が小さいとき:銅損が小さい → 鉄損 > 銅損
  • 負荷が大きいとき:銅損が大きい → 鉄損 < 銅損
  • ある負荷のとき:ちょうど 鉄損 = 銅損 になる!

数学的に証明すると、この「鉄損=銅損」のときに効率が最大になることがわかります。

⚖️ シーソーで例えると…

シーソーの左側に「鉄損」、右側に「銅損」を乗せるイメージ。

・右側(銅損)が軽いと、シーソーは左に傾く → 効率は最大ではない
・右側(銅損)が重いと、シーソーは右に傾く → 効率は最大ではない
ちょうど釣り合ったとき(鉄損=銅損)→ 効率が最大!

📐 最大効率時の負荷率を求める公式

最大効率になる負荷(負荷率)を求める公式もあります。

📐 最大効率時の負荷率

m = √(Pi / Pcn)

m:負荷率 | Pi:鉄損 | Pcn:定格負荷時の銅損

銅損は負荷率の2乗に比例するので、Pc = m² × Pcn です。
これが鉄損と等しくなるとき(Pi = m² × Pcn)を解くと、上の式が出てきます。

🧮 最大効率の計算例

📝 例題

【条件】
・定格容量:100kVA
・鉄損 Pi = 400W
・定格負荷時の銅損 Pcn = 1,600W

【問1】最大効率時の負荷率は?
m = √(Pi / Pcn) = √(400 / 1,600) = √0.25 = 0.5(50%)

【問2】最大効率時の出力は?
P₂ = 100kVA × 0.5 = 50kW(力率1の場合)

【問3】最大効率は?
最大効率時、鉄損=銅損なので、損失 = 400 + 400 = 800W
η = 50,000 / (50,000 + 800) × 100% = 98.4%

📝 試験対策のポイント

・「最大効率の条件は?」→ 鉄損=銅損(即答できるように!)
・最大効率は定格負荷より軽い負荷で達成されることが多い
・鉄損と銅損の比から、最大効率時の負荷率を計算できる

📊 公式まとめ

項目 公式
鉄損(無負荷損) Pi = 一定(負荷に関係なし)
銅損(負荷損) Pc = I²R = m² × Pcn
全損失 W = Pi + Pc
効率 η = P₂ / (P₂ + Pi + Pc) × 100%
最大効率の条件 Pi = Pc(鉄損 = 銅損)
最大効率時の負荷率 m = √(Pi / Pcn)

📝 まとめ:変圧器の損失と効率

☕ 今日のおさらい

  • 鉄損:鉄心で発生。負荷に関係なく一定(無負荷損)
  • 銅損:コイルで発生。電流の2乗に比例(負荷損)
  • 全損失:W = 鉄損 + 銅損
  • 効率:η = 出力 / (出力 + 損失) × 100%
  • 最大効率の条件鉄損 = 銅損(超重要!)
  • 最大効率時の負荷率:m = √(Pi / Pcn)

変圧器の損失と効率は、試験でも実務でも非常に重要なテーマです。

特に「鉄損=銅損で最大効率」は必ず覚えてください!

次の記事では、これらの損失を実際に測定する「変圧器の試験」について学びます。

💪

損失と効率、マスターできましたか?
「鉄損=銅損で最大効率」を合言葉に、次へ進みましょう!

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