📋 この記事で分かること
- 管理図の「異常」とは何か?がイメージでわかる
- 8つの異常判定ルールをすべて図解で理解できる
- QC検定でどのルールがよく出るかがわかる
- 異常を見つけたら次に何をすべきかがわかる
「管理図の見方は分かったけど、どうなったら"異常"なの?」
「線を超えたらダメ…は分かるけど、他にも見るポイントがあるって本当?」
そんな疑問を抱えていませんか?
実は、管理図の異常判定には「8つの公式ルール」があるんです。
これはJIS規格でも定められていて、QC検定でも超頻出の内容。「管理限界線を超えたら異常」は誰でも知っていますが、残りの7つのルールを知らないと、試験で点を落としてしまいます。
☕ 身近なたとえで理解しよう
あなたは学校の保健室の先生だとします。毎朝、生徒たちの体温を測っています。「38℃を超えたら発熱」はすぐ分かりますよね?
でも、実は他にも「おかしいな」と気づくパターンがあるんです:
- 「この子、ずっと平熱より高めだな…」(片側に偏り続けている)
- 「毎日少しずつ体温が上がってる…」(傾向がある)
- 「やたら上がったり下がったり激しいな…」(バラつきすぎ)
管理図も同じ。「線を超えていなくても異常の兆候がわかる」のが、8つのルールの力です!
目次
管理図の「異常」とは何か?
まず、管理図における「異常」の定義を確認しましょう。
📖 定義
異常(管理外れ)とは、工程が管理状態にないことを示すパターンのこと。偶然では起こりにくい「意味のある変化」が起きていると判断できる状態を指します。
管理図の線は「偶然のバラつきの範囲」を示しています。つまり、「偶然では起こりにくいことが起きた」=「何か原因がある」と判断するのが異常判定の考え方です。
🎯 ゾーンABC を理解しよう
8つのルールを理解するには、まず「ゾーン」の概念を押さえる必要があります。
管理図は、中心線(CL)と上方・下方管理限界線(UCL・LCL)の間を3つのゾーンに分けて考えます:

| ゾーン | 範囲 | イメージ | 正規分布での確率 |
|---|---|---|---|
| ゾーンA | 2σ~3σ | 🔴 危険ゾーン | 片側 約2.1% |
| ゾーンB | 1σ~2σ | 🟠 注意ゾーン | 片側 約13.6% |
| ゾーンC | CL~1σ | 🟢 安全ゾーン | 片側 約34.1% |
上下対称なので、ゾーンは全部で6つあります。中心に近いほど「正常」、外側ほど「異常の可能性が高い」と覚えましょう。
8つの異常判定ルール一覧
それでは、いよいよ本題の8つの異常判定ルールを見ていきましょう!
まずは一覧表で全体像を把握してから、一つずつ詳しく解説します。
| ルール | パターン | 検出する異常 | QC検定頻出度 |
|---|---|---|---|
| ① | 1点が管理限界線の外側 | 突発異常 | ⭐⭐⭐ |
| ② | 9点が連続して中心線の片側 | シフト(偏り) | ⭐⭐⭐ |
| ③ | 6点が連続して増加or減少 | トレンド(傾向) | ⭐⭐⭐ |
| ④ | 14点が連続して交互に増減 | 周期変動 | ⭐⭐ |
| ⑤ | 3点中2点がゾーンA以遠 | バラつき増大 | ⭐⭐ |
| ⑥ | 5点中4点がゾーンB以遠 | 小シフト | ⭐⭐ |
| ⑦ | 15点が連続してゾーンC内 | 層別の混入 | ⭐ |
| ⑧ | 8点が連続してゾーンC外 | 混合分布 | ⭐ |
💡 覚え方のコツ:ルール①〜③はQC検定でほぼ毎回出題されます。まずはこの3つを完璧にしましょう!
ルール①:1点が管理限界線の外側 🚨
📌 どんなルール?
ルール①の定義
1点でもUCL(上方管理限界線)またはLCL(下方管理限界線)の外側に出たら異常
これは最も基本的で、誰もが知っているルールです。管理限界線は「偶然のバラつきで起こりうる範囲」を示していますから、その外に出るのは「偶然では考えにくい」ということ。
☕ たとえ話で理解
体温測定で言えば、「38℃を超えた!」というのがこれ。たった1回でも明らかに高熱なら、すぐに「何かおかしい」と分かりますよね。
工場では、製品の寸法が急に規格外になった、不良品が突然増えた、などがこのパターンです。
🔍 何が起きている?
- 突発的な異常が発生している可能性が高い
- 例:機械の故障、材料の不良、作業ミス、測定ミス
- すぐに原因を調査すべき「緊急事態」

ルール②:9点が連続して中心線の片側 📊
📌 どんなルール?
ルール②の定義
9点以上が連続して中心線(CL)の同じ側(上側だけ、または下側だけ)にある
各点が中心線の上に来るか下に来るかは、本来50:50のはず。9回連続で同じ側に来る確率は、コイン投げで9回連続で表が出る確率と同じで、なんと約0.2%しかありません。
☕ たとえ話で理解
体温測定で言えば、「ここ2週間ずっと平熱より高めだな…」という状態。38℃は超えていないけど、ずっと36.8℃〜37.2℃をウロウロしている。これは「微熱が続いている」という異常サインですよね。
🔍 何が起きている?
- 平均値がシフトしている(ずれている)可能性
- 例:機械の調整がずれた、材料ロットが変わった、作業者が変わった
- 「連」(れん:run)が発生していると表現される
📝 QC検定のポイント:「連の長さ」を問う問題が出ます。「9」という数字を覚えておきましょう。7点や8点では異常とは言いません(ただし注意は必要)。

ルール③:6点が連続して増加または減少 📈
📌 どんなルール?
ルール③の定義
6点以上が連続して増加し続ける、または減少し続ける
正常な工程では、データは上がったり下がったりをランダムに繰り返します。6回連続で同じ方向に動くのは、偶然とは考えにくい「傾向」が発生している証拠です。
☕ たとえ話で理解
体温測定で言えば、「毎日0.1℃ずつ体温が上がっている…」という状態。今日36.5℃、明日36.6℃、明後日36.7℃…。まだ熱は出ていないけど、このままだと確実に発熱しますよね。
🔍 何が起きている?
- トレンド(傾向)が発生している
- 例:工具の摩耗、温度の徐々な上昇、材料の劣化
- 放置すると、いずれ管理限界線を超える「予兆」
💡 試験対策:「傾向」「トレンド」という言葉と「6点連続」をセットで覚えましょう。増加でも減少でも異常です。

ルール④:14点が連続して交互に増減 〰️
📌 どんなルール?
ルール④の定義
14点以上が連続して交互に増減する(上→下→上→下→…)
データが上がったら次は下がる、下がったら次は上がる…という「ギザギザパターン」が14回も続くのは、明らかに不自然です。
☕ たとえ話で理解
教室の温度が「暑い→寒い→暑い→寒い…」を繰り返しているような状態。エアコンの設定がおかしいか、センサーが壊れているか、何かしらの原因がありそうですよね。
🔍 何が起きている?
- 周期的な変動が発生している
- 例:午前と午後で違う作業者、2台の機械を交互に使用、温度変化の影響
- データの取り方自体に問題がある可能性も

ルール⑤:3点中2点がゾーンAまたはその外側 ⚠️
📌 どんなルール?
ルール⑤の定義
連続する3点のうち2点以上がゾーンA(中心線の同じ側)またはその外側にある
ゾーンAは「危険ゾーン」でしたよね。この領域に点が来る確率は片側約2.1%しかありません。それが3点中2点も来るのは、かなり珍しいこと。
☕ たとえ話で理解
サイコロを3回振って、2回とも「6」が出たようなもの。1回なら偶然かもしれませんが、2回も続くと「このサイコロ、おかしくない?」と思いますよね。
🔍 何が起きている?
- バラつきが大きくなっているか、平均がシフトし始めている
- まだ管理限界線は超えていないが、「警告サイン」
- 早めに対処すれば、ルール①(限界線超え)を防げる
ルール⑥:5点中4点がゾーンBまたはその外側 📍
📌 どんなルール?
ルール⑥の定義
連続する5点のうち4点以上がゾーンB(中心線の同じ側)またはその外側にある
ルール⑤と似ていますが、こちらはゾーンB(注意ゾーン)が基準。ゾーンAほど危険ではないけれど、「小さなシフト」を検出するためのルールです。
🔍 何が起きている?
- 小さな平均シフトが始まっている可能性
- ルール②(9点連続)ほど明確ではないが、「兆候」が見える
- 早期警戒のためのルール

ルール⑦:15点が連続してゾーンC内 🎯
📌 どんなルール?
ルール⑦の定義
15点以上が連続して上下両側のゾーンC内にある
「えっ、中心付近にあるのは良いことじゃないの?」と思いますよね。でも、「良すぎる」のも異常なんです。
☕ たとえ話で理解
テストで30人の生徒全員が「75点〜85点の間」に収まったとしたら…?むしろ不自然ですよね。「カンニングがあったのでは?」「何か仕組まれている?」と疑いたくなります。
🔍 何が起きている?
- 層別された複数の母集団が混在している可能性
- 例:2種類の材料をブレンド、複数の設備のデータを混ぜている
- または、管理限界線の計算が間違っている可能性
💡 ポイント:一見「安定している」ように見えますが、バラつきが小さすぎるのは不自然。データの取り方や管理限界の計算を見直しましょう。
ルール⑧:8点が連続してゾーンCの外側 🌀
📌 どんなルール?
ルール⑧の定義
8点以上が連続して両側のゾーンCを避けている(中心付近に来ない)
ルール⑦とは逆で、「中心に来なさすぎる」のが問題。データが上と下に分かれてしまい、真ん中がスカスカな状態です。
☕ たとえ話で理解
テストの点数が「90点以上」と「60点以下」ばかりで、70〜80点台がほとんどいない…という状態。クラスが「できる組」と「できない組」に分かれてしまっている証拠です。
🔍 何が起きている?
- 混合分布が発生している(2つ以上のグループが混在)
- 例:性能の異なる2台の機械、2人の作業者のデータが混在
- データの層別が必要なサイン
📝 ルール⑦と⑧の違い:
⑦ = 中心に集まりすぎ(バラつき小さすぎ)
⑧ = 中心を避けすぎ(バラつき大きすぎ or 混合)
どちらも「正規分布らしくない」パターンです。

🎯 QC検定での出題ポイント
8つのルールをすべて覚えるのは大変ですが、試験対策としては優先順位をつけることが重要です。
📊 頻出度ランキング
| 優先度 | ルール | キーワード | 覚え方 |
|---|---|---|---|
| 🥇 最頻出 | ①1点が限界線外 | 突発異常 | これは常識! |
| 🥈 超頻出 | ②9点連続片側 | 連・シフト | 「く(9)しで かたづけ」 |
| 🥉 頻出 | ③6点連続傾向 | トレンド | 「む(6)かって トレンド」 |
| よく出る | ④⑤⑥ | 周期・警告 | 14, 3/2, 5/4 |
| たまに出る | ⑦⑧ | 層別・混合 | 15, 8 |
✅ 試験で出るパターン
- 管理図のグラフを見て「異常かどうか」を判定させる問題
- 「どのルールに該当するか」を選ばせる問題
- 「9点連続」「6点連続」などの数字を穴埋めさせる問題
- ルールの名称(連、トレンドなど)を問う問題
異常を見つけたら、次に何をする?
異常を発見しても、「見つけて終わり」では意味がありません。大切なのは次のアクションです。
🔧 異常発見後のステップ
- 記録する:いつ、どんな異常が起きたかを記録
- 原因を調査する:4M(人・機械・材料・方法)の観点で分析
- 対策を実施する:原因を取り除く
- 効果を確認する:対策後のデータで改善を確認
- 標準化する:再発防止のため、手順を見直す
管理図は「異常を見つけるツール」であり、その後のPDCAサイクルを回すことで初めて品質改善につながります。

❓ よくある質問(FAQ)
Q1. 8つのルール、全部覚えないとダメ?
QC検定対策としては、ルール①②③を完璧にして、④⑤⑥の数字を覚えれば十分です。⑦⑧は「こんなのもある」程度でOK。実務では状況に応じて使い分けます。
Q2. どのルールが一番重要?
ルール①(限界線超え)が最重要です。これは「すぐに対処すべき緊急事態」を示すからです。他のルールは「兆候」や「警告」であり、対処の緊急度が異なります。
Q3. 複数のルールに同時に該当したらどうする?
複数該当は「かなり深刻な異常」のサイン。例えば「限界線を超え、かつ連続して片側」なら、単なる突発ではなく、根本的な問題がある可能性が高いです。優先して原因調査を行いましょう。
Q4. なぜ「9」点?「6」点?数字の根拠は?
統計的に「偶然では起こりにくい確率」を基準に決められています。9点連続片側の確率は約0.2%、6点連続増加の確率も非常に低いため、「有意な変化」と判断できます。JIS規格で標準化されています。
📝 まとめ
✅ この記事のポイント
- 管理図の異常判定には8つの公式ルールがある
- ルール①②③が超頻出(1点外・9点片側・6点傾向)
- ゾーンA/B/Cの概念を理解すると、⑤⑥⑦⑧も分かる
- 異常を見つけたら原因調査→対策→効果確認が大切
- QC検定では数字(9, 6, 14, 3/2, 5/4, 15, 8)を暗記!
管理図は「異常を見つける」だけでなく、「異常になる前に兆候をつかむ」ことができる優れたツールです。8つのルールをマスターして、試験でも実務でも活躍できる知識を身につけましょう!
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