- 係数表のA2、D3、D4の意味がわからない
- どの係数をどの公式で使うのか混乱する
- 係数表の読み方がいまいちピンとこない
- A2・D3・D4それぞれの役割と使いどころ
- 係数表の正しい読み方(サンプルサイズnとの対応)
- X̄-R管理図の公式と係数の関係
目次
結論:係数は「3σの管理限界線」を簡単に計算するための道具
いきなり結論からお伝えします。A2・D3・D4は、管理限界線(UCL・LCL)を手計算で求めるための「便利な変換係数」です。
本来、管理限界線は「平均±3σ」で計算します。しかし、工程のσ(標準偏差)を直接求めるのは大変です。そこで、範囲R(最大値−最小値)から間接的にσを推定し、さらに計算を簡略化するために係数が用意されているのです。
係数表は「面倒な計算を1回の掛け算で済ませる」ためのショートカットです。係数の値自体を覚える必要はありません。表を引けばOKです。
係数表とは?まず全体像を見てみよう
X̄-R管理図を作るとき、必ず登場するのがこの係数表です。サンプルサイズ(n)ごとに、使う係数の値が決まっています。
| n(サンプルサイズ) | A2 | D3 | D4 |
|---|---|---|---|
| 2 | 1.880 | - | 3.267 |
| 3 | 1.023 | - | 2.575 |
| 4 | 0.729 | - | 2.282 |
| 5 | 0.577 | - | 2.115 |
| 6 | 0.483 | - | 2.004 |
| 7 | 0.419 | 0.076 | 1.924 |
n≦6のとき、D3は「-」(使わない)と表示されます。これはR管理図の下限(LCL)が0以下になってしまうためです。範囲Rは必ず0以上なので、下限を0とするか、LCLを設けないことが一般的です。

A2・D3・D4、それぞれの役割を理解する
係数が3つあるのは、それぞれ使う場所が違うからです。X̄管理図用とR管理図用で分かれています。
📊 A2:X̄管理図の管理限界に使う
A2は、X̄(平均値)管理図のUCLとLCLを計算するときに使います。
UCL = X̿ + A2 × R̄
CL = X̿(総平均)
LCL = X̿ − A2 × R̄
X̿:群ごとの平均値の総平均 / R̄:範囲の平均
A2は「R̄(範囲の平均)から、X̄のバラつき幅を計算するための変換係数」です。本来は「3σ÷√n」のような計算が必要ですが、A2を使えば「A2×R̄」の1回の掛け算で済みます。
📊 D3・D4:R管理図の管理限界に使う
D3とD4は、R(範囲)管理図のLCLとUCLを計算するときに使います。
UCL = D4 × R̄
CL = R̄(範囲の平均)
LCL = D3 × R̄(n≦6のときは設けないか0)
D4は上限係数、D3は下限係数です。R̄に掛けるだけで、範囲のバラつきの管理限界が求まります。
| 係数 | 使う管理図 | 計算する線 | 公式 |
|---|---|---|---|
| A2 | X̄管理図 | UCL・LCL | X̿ ± A2×R̄ |
| D4 | R管理図 | UCL(上限) | D4×R̄ |
| D3 | R管理図 | LCL(下限) | D3×R̄ |
A2 → Average(平均)のX̄管理図に使う
D3・D4 → Range(範囲)のDispersion(バラつき)を見るR管理図に使う
D3 → 下(3は下向きの形)、D4 → 上(4は上向きの形)…と無理やり覚える方法もあります。

係数表の読み方:4ステップで迷わない
係数表の使い方は、実はとてもシンプルです。以下の4ステップで進めれば、絶対に間違えません。
📋 Step 1:サンプルサイズ(n)を確認する
まず、1つの群(サブグループ)に含まれるデータの個数を確認します。これが「n」です。
例えば「毎日5個サンプリングして測定」なら、n=5です。「1時間に3個抜き取り」ならn=3です。
よくある間違いが、「nを群の数(サブグループの個数)」と勘違いすることです。nは1つの群の中のサンプル数です。20群あっても、各群が5個ずつなら、n=5です。
📋 Step 2:係数表からnの行を探す
係数表の左端にnの値が並んでいます。自分のnに該当する行を見つけましょう。
📋 Step 3:必要な係数を読み取る
X̄管理図を作るならA2を、R管理図を作るならD3とD4を読み取ります。
【例】n=5のとき
・A2 = 0.577(X̄管理図のUCL・LCL計算用)
・D3 = -(R管理図のLCLは設けない)
・D4 = 2.115(R管理図のUCL計算用)
📋 Step 4:公式に代入して計算する
読み取った係数を、管理限界線の公式に代入します。
【例】n=5、X̿=50.0、R̄=4.0 のとき
X̄管理図:
UCL = 50.0 + 0.577 × 4.0 = 50.0 + 2.31 = 52.31
LCL = 50.0 − 0.577 × 4.0 = 50.0 − 2.31 = 47.69
R管理図:
UCL = 2.115 × 4.0 = 8.46
LCL = 設けない(D3が-のため)

よくある間違いと注意点
係数表を使うときに、やりがちな間違いをまとめました。試験前にチェックしておきましょう。
❌ 間違い①:nの値を取り違える
最も多い間違いです。「群の数」と「群内のサンプル数」を混同してしまうパターンです。
「25群、各群5個のデータ」のとき、n=25としてしまう
→ 正解はn=5(1群あたりのサンプル数)
❌ 間違い②:係数を入れ替えてしまう
D3とD4を逆に使ったり、A2をR管理図に使ってしまったりする間違いです。
R管理図のUCLをD3×R̄で計算してしまう
→ 正解はD4×R̄(D4が上限、D3が下限)
❌ 間違い③:D3が「-」のときの処理
n≦6のとき、D3は「-」です。このとき、「0を代入する」のか「LCLを設けない」のか、問題文の指示を確認しましょう。
・問題で特に指示がなければ「LCLは設けない」または「LCL=0」と記載
・R(範囲)は必ず0以上なので、マイナスにはならない
なぜこの係数になるのか?(発展)
「A2=0.577って、どこから出てきた数字?」と疑問に思った方もいるでしょう。実は、これらの係数には統計学的な導出過程があります。
簡単に言うと、「範囲Rから標準偏差σを推定し、さらに3σの管理限界を計算する」という複数のステップを、1つの係数にまとめたものです。
この導出原理を理解すると、係数の意味がより深くわかります。興味がある方は、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ:係数表は「便利なショートカット」
- A2:X̄管理図のUCL・LCL計算に使う(X̿ ± A2×R̄)
- D4:R管理図のUCL計算に使う(D4×R̄)
- D3:R管理図のLCL計算に使う(D3×R̄)※n≦6は「-」
- nは「群内のサンプル数」であり、「群の数」ではない
- 係数の値を暗記する必要はない(表を引けばOK)
係数表は、一見すると「謎の数字の羅列」に見えます。しかし、その正体は「複雑な計算を省略するための便利ツール」です。
使い方さえ覚えてしまえば、あとは表を引いて公式に代入するだけ。X̄-R管理図の計算が、グッと楽になります。
「なぜこの係数になるのか」をもっと深く知りたい方は、関連記事で導出原理を解説していますので、ぜひ読んでみてください。
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