- CpとCpkの値を見て、「平均」と「ばらつき」のどちらを改善すべきかわからない
- Cp = Cpk のとき、何が問題なのか判断できない
- Cp > Cpk のとき、なぜ「平均を改善」になるのか理屈がわからない
- 「かたより度k」という言葉は知っているけど、使い方がピンとこない
- CpとCpkの違いを「的当てゲーム」でイメージする方法
- かたより度kの公式と、その意味
- Cpk = (1−k) × Cp という関係式の使い方
- CpとCpkの値から「改善ポイント」を一発で見抜く判断フロー
工程能力指数CpとCpkを計算したあと、こんな経験はありませんか?
「Cp = 0.90、Cpk = 0.90 か…。どちらも1未満だから工程能力不足なのはわかる。でも、平均とばらつき、どっちを改善すればいいの?」
あるいは、
「Cp = 2.27、Cpk = 0.72 って、Cpは高いのにCpkは低い。これって結局、何が悪いの?」
実は、CpとCpkの「関係性」を見れば、改善すべきポイントは一発でわかります。
この記事では、「かたより度k」という概念を使って、CpとCpkの関係から「平均を直すべきか、ばらつきを直すべきか」を判断する方法を、初心者向けにやさしく解説します。
目次
まずは復習:CpとCpkは「何を見ているか」が違う
改善ポイントを見抜く前に、CpとCpkの違いを改めて整理しておきましょう。
🎯 Cpは「ばらつき」だけを見ている
Cpの公式を思い出してください。
Su:上限規格、SL:下限規格、σ̂:標準偏差(ばらつき)
この式には「平均(μ̂)」が登場しません。つまり、Cpは「データが規格幅に対してどれだけ散らばっているか」だけを評価しています。
平均が規格の中心にあろうが、端に寄っていようが、Cpの値は変わりません。
🎯 Cpkは「ばらつき」と「平均のずれ」の両方を見ている
一方、Cpkの公式はこうです。
μ̂:平均値
Cpkの式には「平均(μ̂)」が入っています。つまり、Cpkは「ばらつき」だけでなく、「平均が規格の中心からどれだけずれているか」も評価しているのです。
📊 CpとCpkの違いを表で整理
| 指標 | 何を評価するか | 平均のずれを考慮するか |
|---|---|---|
| Cp | ばらつきのみ | ❌ しない |
| Cpk | ばらつき+平均のずれ | ✅ する |
CpとCpkの違いは、「平均のずれを考慮するかどうか」です。この違いを利用すれば、「改善すべきは平均かばらつきか」を判断できます。

「かたより度k」を理解する──的当てゲームでイメージ
CpとCpkの関係を理解するカギは、「かたより度k」という指標です。
これを「的当てゲーム」でイメージしてみましょう。
🎯 的当てゲームで考える
ダーツの的をイメージしてください。
- 的の中心 = 規格の中心(理想の値)
- 矢が刺さった位置 = 実際の製品データ
- 矢の散らばり具合 = ばらつき(σ)
- 矢の中心と的の中心のずれ = かたより(平均のずれ)
パターンA:矢が的の中心に集まっている(k = 0)
矢がすべて的の真ん中付近に刺さっている状態。これは「平均が規格の中心にある」ことを意味します。
このとき、かたより度 k = 0 です。
パターンB:矢がまとまっているが、中心からずれている(k > 0)
矢は小さくまとまっているけど、的の中心ではなく右上に集中している状態。これは「ばらつきは小さいが、平均がずれている」ことを意味します。
このとき、かたより度 k > 0 です。
📐 かたより度kの公式
かたより度kは、次の式で計算します。
M = (Su + SL) / 2 :規格の中心
μ̂:データの平均
d = (Su − SL) / 2 :規格幅の半分
つまり、kは「平均が規格の中心からどれだけずれているか」を0〜1の範囲で表した指標です。
| kの値 | 意味 |
|---|---|
| k = 0 | 平均が規格の中心にピッタリ(かたよりなし) |
| 0 < k < 1 | 平均が規格の中心からずれている |
| k = 1 | 平均が規格の上限または下限と一致(最悪) |

CpとCpkをつなぐ魔法の公式:Cpk = (1−k) × Cp
ここからが本題です。CpとCpkには、次の関係式が成り立ちます。
この式は、「Cpkは、Cpから"かたより分"を引いたもの」という意味です。
🔢 3つのパターンで理解する
パターン①:k = 0 のとき(かたよりなし)
k = 0 を式に代入すると:
Cpk = (1 − 0) × Cp = Cp
つまり、平均が規格の中心にあるとき、Cp = Cpk になります。
パターン②:k = 0.5 のとき(中程度のかたより)
k = 0.5 を式に代入すると:
Cpk = (1 − 0.5) × Cp = 0.5 × Cp
Cpkは、Cpの半分になります。
パターン③:k = 1 のとき(最大のかたより)
k = 1 を式に代入すると:
Cpk = (1 − 1) × Cp = 0
平均が規格の限界値と一致すると、Cpkは0になります。いくらばらつきが小さくても(Cpが高くても)、平均がずれていると工程能力は失われます。
この公式から、「Cp = Cpk ならば k = 0(平均のずれなし)」という関係がわかります。これが改善ポイントを見抜くカギです!
🔄 逆算でkを求める
CpとCpkの値がわかれば、かたより度kを逆算できます。
この式を使えば、CpとCpkの値を見るだけで、平均のずれ具合を数値で把握できます。

【ケーススタディ①】Cp = Cpk のとき:ばらつきを改善せよ
それでは、具体的な数値で考えてみましょう。
📊 ケース①のデータ
| 特性 | Cp | Cpk |
|---|---|---|
| 重量 | 0.90 | 0.90 |
🔍 分析してみよう
Step 1:CpとCpkを比較する
Cp = 0.90、Cpk = 0.90 なので、Cp = Cpk です。
Step 2:かたより度kを計算する
k = 1 − (Cpk / Cp) = 1 − (0.90 / 0.90) = 1 − 1 = 0
Step 3:診断結果
- k = 0 → 平均は規格の中心にある(平均のずれなし)
- Cp = 0.90 < 1.00 → ばらつきが大きい(工程能力不足)
🛠️ 改善すべきポイント
平均は問題ないので、「ばらつき」を小さくすることに集中すべきです。
具体的には:
- 製造条件のばらつき要因を特定する(4M分析)
- 設備の精度を上げる
- 作業の標準化を徹底する
- 原材料のばらつきを抑える
「Cp = Cpk = 0.90 で両方低いから、平均もばらつきも改善が必要」と考えがちですが、これは間違いです。Cp = Cpk ということは、平均のずれはゼロです。改善すべきは「ばらつき」だけです。

【ケーススタディ②】Cp > Cpk のとき:平均を改善せよ
次に、CpとCpkが異なるケースを見てみましょう。
📊 ケース②のデータ
| 特性 | Cp | Cpk |
|---|---|---|
| 厚み | 2.27 | 0.72 |
🔍 分析してみよう
Step 1:CpとCpkを比較する
Cp = 2.27、Cpk = 0.72 なので、Cp >> Cpk(Cpの方がずっと大きい)です。
Step 2:かたより度kを計算する
k = 1 − (Cpk / Cp) = 1 − (0.72 / 2.27) = 1 − 0.317 ≈ 0.68
Step 3:診断結果
- k = 0.68 → 平均が規格の中心から大きくずれている
- Cp = 2.27 > 1.67 → ばらつきは十分に小さい(優秀)
🛠️ 改善すべきポイント
ばらつきは問題ないので、「平均」を規格の中心に近づけることに集中すべきです。
具体的には:
- 設備の設定値(温度、圧力など)を調整する
- 工程の狙い値を見直す
- 測定器の校正を確認する
平均を調整するだけで、Cpkは大幅に改善します。ばらつきを小さくする(難しい)よりも、平均を調整する(比較的簡単)方が効率的です。
Cpが高いのにCpkが低い場合、「もったいない状態」です。ばらつきは十分小さいのに、平均がずれているせいで工程能力が発揮できていません。平均を調整するだけで、工程能力は劇的に向上します。

【判断フローチャート】改善ポイントを一発で見抜く
ここまでの内容を、判断フローチャートにまとめました。
📋 CpとCpkから改善ポイントを判断するフロー
🔍 CpとCpkを比較する
↓
Cp = Cpk の場合
↓
k = 0(かたよりなし)
↓
✅ 平均はOK!
❌ ばらつきを改善せよ
Cp > Cpk の場合
↓
k > 0(かたよりあり)
↓
✅ ばらつきはOK!
❌ 平均を改善せよ
📊 判断基準の早見表
| CpとCpkの関係 | かたより度k | 平均の状態 | ばらつきの状態 | 改善ポイント |
|---|---|---|---|---|
| Cp = Cpk | 0 | ✅ 中心にある | ❌ 要確認 | ばらつき |
| Cp > Cpk | > 0 | ❌ ずれている | ✅ 問題なし | 平均 |
「Cp = Cpk なら、平均は問題ナシ!」
CpとCpkが等しいということは、「平均のずれ」という減点要素がゼロということ。だから問題はばらつきだけ。

まとめ:CpとCpkの関係から改善ポイントを見抜く
この記事の内容を整理します。
- Cpは「ばらつき」だけを評価、Cpkは「ばらつき+平均のずれ」を評価
- かたより度kは、平均が規格中心からどれだけずれているかを示す指標(0〜1)
- Cpk = (1 − k) × Cp という関係式が成り立つ
- Cp = Cpk のとき、k = 0 → 平均のずれなし → 改善すべきは「ばらつき」
- Cp > Cpk のとき、k > 0 → 平均がずれている → 改善すべきは「平均」
CpとCpkの値を見たときに、「両方低いから両方改善」と短絡的に考えないことが重要です。
特に、Cp = Cpk のときは「平均は規格の中心にある」ことを意味します。この場合、平均を調整しても効果はありません。ばらつきを小さくすることに集中すべきです。
逆に、Cpが高いのにCpkが低い場合は、平均を調整するだけで大幅な改善が見込めます。ばらつきを小さくする(難しい・コストがかかる)よりも効率的です。
CpとCpkの関係を理解していると、「どこに改善リソースを投入すべきか」を正しく判断できます。限られた時間と予算で最大の効果を出すために、この判断基準をマスターしておきましょう。
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