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こんな経験はありませんか?
「電圧制御と界磁制御の違いは?」と問われて、どちらも「速度を変える方法」としか言えない
「弱め界磁」という言葉は知っているが、なぜ界磁を弱めると速度が上がるのか説明できない
始動抵抗器をなぜ段階的に減らしていくのか、理由がわからない
○ この記事でわかること
回転速度の基本式 n = (V − IaRa)/(kΦ) から「何を変えるか」で3つの制御法が導ける仕組み
電圧制御・界磁制御・抵抗制御の特徴・長所・短所の違い
「基底速度以下は電圧制御、以上は界磁制御」が瞬時にわかるフローチャート
始動抵抗器法の仕組みと段階的に減らす理由
直流電動機の速度制御は、電験三種の機械科目で毎年のように出題される最重要テーマ です。「どの制御法か答えよ」という穴埋め問題だけでなく、「この説明は正しいか」という正誤問題でも問われます。この記事では、基本式から制御法を「導く」順番 で解説します。丸暗記不要です。
結論|まず30秒でわかる答え
直流電動機の速度は n=(V−IaRa)/(kΦ) で決まり、変え方は3つです。端子電圧 V を変える電圧制御 (定格速度以下・定トルク)、界磁電流で磁束 Φ を変える界磁制御 (弱め界磁で定格速度以上・定出力)、電機子回路に抵抗を入れる抵抗制御 (簡単だが損失が大きい)です。始動時は逆起電力が0なので、始動抵抗で電流を抑えます。
まず「回転速度の式」を押さえる:ここから3つの制御法が全部導ける
直流電動機の速度制御法は、回転速度nの式を見れば全部わかります 。式の中の何を変えるかで、3つの制御法に分かれているだけです。
直流電動機の基本式
逆起電力:E = V − IaRa
かつ:E = kΦn (k:定数、Φ:磁束、n:回転速度)
∴ n =
V − IaRa
kΦ
この式の分子(V − IaRa) と分母(kΦ) のどこを変えるかで、速度制御の方法が決まります。
試験で使える暗記ポイント
「nの式の分子(V)を変える→電圧制御」「分母(Φ)を変える→界磁制御」「分子のRaを変える→抵抗制御」。式を見ながら考えれば、暗記しなくても導けます。
速度の式n=(V−IaRa)/kΦから3つの制御法が導ける
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界磁制御を計算で確かめる|磁束を80%にすると何 min⁻¹ になる?
「弱め界磁で速度が上がる」を、数字で確かめます。電験三種では、令和2年度 機械 問1で他励電動機の弱め界磁の考え方が、令和3年度 機械 問2で端子電圧と界磁を変えたときのトルクの計算が出ています。
例題 :他励直流電動機が、端子電圧 V=200V、電機子抵抗 Ra=0.2Ω、電機子電流 Ia=50A、回転速度 n=1,200min⁻¹ で運転している。負荷トルクを一定のまま、界磁を弱めて磁束を80%にしたときの回転速度を求める(電機子反作用とブラシの電圧降下は考えない)。
手順1 はじめの逆起電力 :E=V−IaRa=200−50×0.2=190V
手順2 弱めたあとの電機子電流 :トルク T=kΦIa が一定なので、Φ が0.8倍なら Ia は1÷0.8=1.25倍。Ia'=50×1.25=62.5A
手順3 弱めたあとの逆起電力 :E'=200−62.5×0.2=187.5V
手順4 回転速度 :E=kΦn より n は E÷Φ に比例する。n'=1,200×(187.5÷190)÷0.8 ≒ 1,480min⁻¹
磁束を2割減らすと、速度は約1.23倍に上がりました。電機子電流も50A から62.5A に増えるので、弱め界磁で使えるのは電機子電流が定格を超えない範囲までです。
界磁抵抗器の役割と、界磁回路を開いてはいけない理由
界磁制御では、界磁巻線に直列に入れた界磁抵抗器 で界磁電流 If を調整します。抵抗を大きくすると If が減って Φ が減り、速度が上がります。界磁回路の電流は電機子電流より小さいので、抵抗での損失が小さいのが利点です。
ただし、運転中に界磁回路が切れて Φ がほとんど0になると、n=(V−IaRa)/(kΦ) の分母が0に近づき、速度が危険なほど上がるおそれがあります。分巻・他励の電動機で界磁回路にヒューズやスイッチを入れないのはこのためです。
つまり 弱め界磁では「Φ が下がる → 同じトルクを出すため Ia が増える → n は E÷Φ に比例して上がる」。界磁回路が切れると暴走のおそれがあるので、界磁回路は開かない。
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よくある質問
Q. 界磁制御とは何ですか?
A. 界磁電流を変えて磁束を変え、直流電動機の速度を調整する方法です。界磁を弱めると、定格速度より上まで速度が上がります。
Q. 弱め界磁でなぜ速度が上がる?
A. 逆起電力 E=kΦn がほぼ電源電圧に釣り合うまで回転が上がるためです。Φ が小さいほど、同じ E に必要な n が大きくなります。
Q. 電圧制御と界磁制御の違いは?
A. 電圧制御は定格速度以下を定トルクで、界磁制御は定格速度以上を定出力で制御します。実際の機械では両方を組み合わせます。
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3つの速度制御法:比較一覧
詳細を説明する前に、まず3つの方法の全体像を表で把握しておきましょう。試験直前の見直しにも使えます。
項目
① 電圧制御
② 界磁制御
③ 抵抗制御
変える量
端子電圧 V
磁束 Φ(界磁電流 If)
電機子回路の抵抗 R
速度範囲
基底速度以下
基底速度以上
基底速度以下
効率
○ 高い
○ 高い
× 低い(抵抗損失)
設備コスト
高い
安い
最も安い
速度調整率
○ 良い(安定)
○ 良い
× 悪い(負荷変動で速度変化)
主な用途
精密速度制御 電気機関車・圧延機
高速運転 送風機・ポンプ
簡易な速度制御 クレーン・巻上機
電圧制御・界磁制御・抵抗制御の比較表
① 電圧制御:基底速度以下を滑らかに制御する
仕組みと速度への影響
端子電圧Vを下げると、逆起電力Eとの差(V − E)が減り、電機子電流Iaが一時的に変化しますが、最終的には回転速度nが下がる方向で落ち着きます。
【電圧制御の動作メカニズム】
V を下げる
→ (V − IaRa) が減る
→ n =(V − IaRa)/ kΦ が小さくなる
→ 回転速度 n が低下
ワード・レオナード法とチョッパ制御
ワード・レオナード法(従来)
電動機で回す別の直流発電機の出力電圧を変えて、電動機の端子電圧を可変にする方式。設備が大規模になるが、なめらかな制御が可能。製鉄所の圧延機などに使用されてきた。
サイリスタ ・チョッパ制御(現代)
サイリスタ(またはIGBT)で電圧を高速ON/OFFし、平均電圧を変化させる方式。ワード・レオナード法より小型・高効率で現在の主流。電気自動車にも応用される。
電圧制御の特徴まとめ
○ 基底速度(定格電圧・定格界磁での速度)以下を制御 ○ 磁束Φを一定に保つため、トルク一定 のまま速度を変えられる ○ 効率が高く、速度調整率が良い 設備コストが高い
電圧制御:回転数は電源電圧に比例する
② 界磁制御:「弱め界磁」で基底速度以上に上げる
界磁制御は、3つの中で最も「なぜ?」が問われやすい制御法です。「界磁を弱めるとなぜ速度が上がるのか」 を式から説明できるようにしておきましょう。
「弱め界磁で速度が上がる」理由
【界磁制御の動作メカニズム】
界磁抵抗器でIfを減らす
→ 磁束 Φ が減る
→ 逆起電力 E = kΦn が一時的に減る
→ (V − E) が増える → Ia が増える → トルク T = kΦIa が…
→ Φが減ってもIaが増える → 回転速度 n が上昇 して新しい平衡点へ
→ n = (V − IaRa) / kΦ で分母Φが小さい → n が大きくなる
現場の声(たとえ話)
界磁制御は「自転車のギアチェンジ」に似ています。軽いギア(弱め界磁)に変えると、ペダルは重くなるが回転数(ケイデンス)が上がる。重いギア(強め界磁)では、1漕ぎの力は大きいが回転数は低い。電動機も同じで、界磁を弱めるとトルクは下がるが回転速度が上がります。
界磁制御の特徴と注意点
速度範囲
基底速度(定格)以上〜最高許容速度まで。電圧制御と組み合わせると広範囲の速度制御が可能。
長所
界磁回路は電流が小さい(Ifは小さい)→ 損失が少なく効率が高い。制御機器も小型・安価。
短所・注意点①
Φを弱めすぎると危険。 Φが非常に小さくなると n = (V − IaRa)/(kΦ) の分母が極端に小さくなり、速度が急上昇(暴走)する。最低限の磁束(最大界磁抵抗)は必ず制限が必要。
短所・注意点②
Φを弱めると電機子反作用が相対的に強くなる 。整流が悪化しやすい。
出力の特性
界磁制御では出力P ≒ 一定 (定出力制御)。速度が上がるとトルクが下がるが出力は変わらない。電圧制御は定トルク、界磁制御は定出力と覚える。
界磁制御(弱め界磁):磁束を減らすと速度が上がる
③ 抵抗制御:最も安価だが効率が悪い
抵抗制御:直列抵抗で回転速度を下げる
抵抗制御は、電機子回路に可変抵抗Rを直列接続して回転速度を下げる方法です。最もシンプルな制御法ですが、抵抗での電力損失が大きく効率が悪い という決定的な欠点があります。
【抵抗制御の動作メカニズム】
電機子回路に抵抗Rを直列接続
→ 式が n = (V − Ia(Ra + R)) / kΦ になる
→ (Ra + R) が増える → 分子が減る
→ 回転速度 n が低下
○ 長所
設備が単純で安価
追加する抵抗器だけでよい
特別な電源装置が不要
× 短所
抵抗での電力損失 Ia²R が大きく非効率
速度調整率が悪い(負荷が変わると速度が大きく変動)
低速ほど効率が悪化する
なぜ速度調整率が悪いか
n = (V − Ia(Ra + R)) / kΦ の Ia は負荷によって変わります。直列抵抗Rが大きいほど、負荷電流Iaの変化が回転速度nに与える影響が大きくなります。たとえるなら、ブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいる状態。踏む力(負荷)が少し変わるだけで速度が大きく変わります。
試験の正誤問題でよく出るひっかけ
「抵抗制御は効率が良い」→ 誤り (抵抗損失があるため効率は悪い)
「抵抗制御で基底速度以上に上げられる」→ 誤り (抵抗制御は速度を下げる方向のみ)
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抵抗制御は回転数を下げられるが熱損失で効率が悪い
「どの制御法をいつ使うか」フローチャート
試験では「この状況に最適な速度制御法はどれか」という選択問題も出ます。次のフローチャートで整理しておきましょう。
▼
基底速度(定格速度)より 上げたい?下げたい?
基底速度より上げたい
▼
② 界磁制御 (弱め界磁)
界磁抵抗を増やしてIfを減らす Φ↓ → n↑ 定出力制御
基底速度より下げたい
▼
効率・精度が重要か?
○ 重要
① 電圧制御
Vを下げる 定トルク制御 高効率・高コスト
簡易・安価でよい
③ 抵抗制御
直列抵抗追加 低効率・低コスト 一時的使用向き
「電圧制御+界磁制御」の組み合わせが最強
実用的な直流電動機では、基底速度以下:電圧制御(定トルク)+ 基底速度以上:界磁制御(定出力) を組み合わせます。広い速度範囲を高効率で制御できるため、電気機関車や工作機械の主軸に使われています。
速度制御法を選ぶフロー:基底速度より上げるなら界磁制御
始動法:始動抵抗器法|なぜ段階的に減らすのか
始動時の問題:過大電流
直流電動機を始動させる(スイッチを入れる)直後、大電流が流れて巻線を焼損させる危険 があります。なぜかを式で確認します。
【始動直後に起きること】
始動直後は n = 0
→ 逆起電力 E = kΦ × 0 = 0 (逆起電力がない!)
→ Ia = (V − E) / Ra = V / Ra
→ Raは非常に小さい(0.数Ω)
→ Ia = 定格電流の 10〜20倍 の過電流が流れる
過電流の2つの害
①電機子巻線の過熱・焼損 ②過大なトルクT = kΦIaによる機械的衝撃(ギア・カップリングの破損)
始動抵抗器法の仕組み
始動時に電機子回路へ大きな始動抵抗Rsを直列接続し、電流を制限します。回転が上がってきたら段階的にRsを減らしていきます。
始動直後
Rs を最大にする → Ia = V/(Ra + Rs) に制限 始動電流 ≒ 定格電流の 1.5〜2倍以下に抑える
加速中
n が上がる → E = kΦn が増える → (V − E) が減る → Ia が自然に減る Ia が小さくなったタイミングで Rs を段階的に短絡(減らす)
定常運転
Rs = 0(全部短絡)→ 通常の Ia = (V − E)/Ra での運転 逆起電力Eが大きくなりIaが自動的に適切な値になる
始動時の電流制限の考え方
目標始動電流 Ia(start) ≒ 定格電流 × 1.5〜2倍
Ia(start) = V / (Ra + Rs)
∴ Rs = V/Ia(start) − Ra
例:V = 100V、Ra = 0.5Ω、Ia(start)上限 = 20A の場合 Rs = 100/20 − 0.5 = 5 − 0.5 = 4.5Ω
誘導電動機の始動法との比較
誘導電動機にもY-Δ始動・始動補償器などの始動法があります。直流電動機の「始動抵抗器法」は、誘導電動機の「直列抵抗始動」に相当するシンプルな方法です。
始動抵抗器法:始動時は抵抗を最大にして電流を抑える
試験の穴埋め・正誤問題パターン集
穴埋めパターン① ─ 制御法の分類
「直流電動機の速度を基底速度以上に上げるには( )制御を用い、基底速度以下に下げるには( )制御が効率的である」
→ 界磁 / 電圧
穴埋めパターン② ─ 弱め界磁
「界磁制御では界磁電流を( )して磁束を( )させることで回転速度を( )させる。この方式を( )制御という」
→ 減少 / 減少(弱め)/ 上昇 / 弱め界磁
穴埋めパターン③ ─ 始動抵抗器
「始動時に電機子回路へ( )を直列接続することで始動電流を制限する。回転数の上昇とともに逆起電力Eが( )するため、抵抗を段階的に( )していく」
→ 始動抵抗器(始動抵抗) / 増加 / 短絡(減少)
正誤問題パターン ─ よく出るひっかけ
問題文
正誤
ポイント
「抵抗制御は効率が良い」
× 誤
抵抗での Ia²R 損失で効率は悪い
「界磁制御で基底速度以下に制御できる」
× 誤
界磁制御は基底速度以上。以下は電圧制御
「電圧制御では定トルク特性が得られる」
○ 正
Φ一定のまま V を変えるため T = kΦIa でトルク一定
「始動時は逆起電力が大きいため始動電流が大きい」
× 誤
始動直後は n = 0 なので E = 0。逆起電力がないから大電流
「界磁制御で界磁電流を増やすと速度が上がる」
× 誤
Φ増大 → n の分母増 → 速度は下がる。上げるのは弱め界磁
直流電動機の速度制御と始動の正誤問題まとめ
直流機マスターへの道|全9ステップの全体像
直流機の学習は、以下の9ステップで進めるのが最速です。順番を絶対に飛ばさないでください 。前のステップを理解していないと、次の記事でつまずきます。特に電機子反作用は「飛ばすと後で必ず詰む」最重要ポイントです。
SERIES|直流機マスターシリーズ
全9ステップ
1
直流機の構造と原理|電機子・界磁・整流子の役割<
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2
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3
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本番試験で得点する実践編。頻出5パターンを途中式まで完全に追える形で解説
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9
直流機の完全攻略マップ|全8記事を最短ルートで学ぶロードマップ
最後の総復習。全体像を俯瞰して「自分の弱点」を見つけ出すまとめページ
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まとめ:「nの式の何を変えるか」で全部導ける
この記事のまとめ
基本式
n = (V − IaRa) / kΦ ── 分子のVかRa、分母のΦを変える方法が3種類の制御法
① 電圧制御
V↓ → n↓。基底速度以下・定トルク・高効率。サイリスタチョッパが現代の主流
② 界磁制御
Φ↓(弱め界磁)→ n↑。基底速度以上・定出力。Φを弱めすぎると暴走に注意
③ 抵抗制御
R↑ → n↓。基底速度以下・安価・低効率。速度調整率が悪く一時的用途向き
始動法
始動時はE = 0 → 過電流。始動抵抗器を直列接続して制限。nが上がりEが増えたら段階的に短絡
組み合わせ
電圧制御(基底速度以下・定トルク)+ 界磁制御(基底速度以上・定出力)が実用最強
速度制御法は「n = (V − IaRa)/(kΦ) の何を変えるか」という1本の式から全部導けます。式を見ながら「Vを変える→電圧制御」「Φを変える→界磁制御」と考える習慣をつけると、穴埋め問題も正誤問題もどちらも対応できます。
この記事の理解を深める本と道具
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