- フリップフロップは「1ビットの記憶回路」と言われても、何を記憶しているのかわからない
- RS, JK, D, T の違いが多すぎて、どれがどれだか区別できない
- 「禁止状態」って何?なぜJKには禁止がないの?
- 状態遷移表を見ても、Qn と Qn+1 の関係がピンとこない
- フリップフロップが「何を記憶する回路」なのかを信号機のたとえで直感理解
- RS・JK・D・Tの4種類の動作を状態遷移表で完全整理
- RSの「禁止状態」とJKの「トグル動作」の違いを明確に理解
- 試験で狙われる正誤問題のひっかけポイントを一覧化
フリップフロップは、電験三種・機械科目の「情報」分野で繰り返し出題される頻出テーマです。R03年、R05年など複数回出題実績があります。
出題パターンは「この入力を与えたとき、出力Qはどうなるか?」という動作の理解を問うものが中心です。つまり、4種類のフリップフロップの動作を正確に覚えているかどうかで合否が分かれます。
この記事では、4種類すべてを「信号機の切り替え」というイメージで統一的に解説します。そのあとに状態遷移表で動作を完全整理するので、一度手を動かせば試験本番で困ることはなくなります。
目次
そもそもフリップフロップとは?|「1ビットの記憶装置」
前回の記事で学んだ論理ゲート(AND, OR, NOTなど)は、入力が変わった瞬間に出力も変わる「組み合わせ回路」でした。入力を外すと出力も消えます。記憶がないのです。
一方、フリップフロップは入力を外しても、最後に設定された状態を保持し続ける回路です。つまり「記憶」ができる。これを「順序回路」と呼びます。
組み合わせ回路
記憶なし
出力は今の入力だけで決まる。
入力が消えれば出力も消える。
例:AND, OR, NOT ゲート
順序回路(フリップフロップ)
記憶あり
出力は今の入力 + 前の状態で決まる。
入力が消えても状態を保持し続ける。
例:RS, JK, D, T フリップフロップ
イメージ:「信号機」で考える
交差点の信号機を思い浮かべてください。信号機は「赤」か「青」のどちらかの状態を保持しています。ボタン(入力)を押すと青→赤、赤→青と切り替わりますが、ボタンを離しても状態はそのまま維持されますよね。
フリップフロップも同じです。「0(赤)」か「1(青)」のどちらかの状態を保持しています。入力信号に応じて状態が切り替わりますが、入力がなくなっても最後の状態を維持し続けます。
🚦 信号機とフリップフロップの対応
| 信号機 | フリップフロップ | 用語 |
| 🔴 赤信号 | Q = 0 | リセット状態 |
| 🟢 青信号 | Q = 1 | セット状態 |
| 「青にしろ」ボタン | セット入力(S) | Q を 1 にする |
| 「赤にしろ」ボタン | リセット入力(R) | Q を 0 にする |
フリップフロップには2つの出力があります。Q(現在の状態)とQ(Qの反転)です。Q=1ならQ=0、Q=0ならQ=1。常に逆の関係です。試験問題ではQ側の値を聞かれることがほとんどです。

① RSフリップフロップ|最も基本的な「セット・リセット」回路
RS(Set-Reset)フリップフロップは、すべてのフリップフロップの原型です。2つの入力S(セット)とR(リセット)で、出力Qの状態を切り替えます。
動作を信号機で理解する
🟢 S=1, R=0(「青にしろ」ボタンだけ押す)
→ 信号が青(Q=1)に切り替わる。= セット
🔴 S=0, R=1(「赤にしろ」ボタンだけ押す)
→ 信号が赤(Q=0)に切り替わる。= リセット
⏸️ S=0, R=0(どちらも押さない)
→ 信号は前の状態を維持する。= 保持
⚠️ S=1, R=1(両方同時に押す)
→ 「青にしろ」と「赤にしろ」を同時に押す → 矛盾! = 禁止
RSフリップフロップの状態遷移表(特性表)
| S | R | Qn+1(次の状態) | 動作 |
|---|---|---|---|
| 0 | 0 | Qn(変化なし) | ⏸️ 保持 |
| 0 | 1 | 0 | 🔴 リセット |
| 1 | 0 | 1 | 🟢 セット |
| 1 | 1 | 不定(禁止) | ⚠️ 使ってはいけない |
S=1, R=1 のとき、Q と Q が両方とも同じ値になってしまい、「Qの反転がQ」というルールが崩壊します。だから「禁止」。使ってはいけない入力の組み合わせです。「RSフリップフロップにはS=R=1の禁止状態がある」は、電験三種の正誤問題で必ず確認されるポイントです。

② JKフリップフロップ|RSの「禁止」を解消した改良版
RSフリップフロップの最大の弱点は「S=R=1が禁止」であることでした。JKフリップフロップは、この問題を解消した改良版です。入力の名前がSとRからJとKに変わっていますが、基本的な動作はRSと同じです。
RSとの違い:J=K=1で「トグル」する
RSでは「両方1」が禁止でしたが、JKでは「両方1」のとき出力が反転します。これを「トグル(toggle)」と呼びます。
信号機のたとえで言うと──
🟢 J=1, K=0 → 青にする(セット)── RSのS=1, R=0と同じ
🔴 J=0, K=1 → 赤にする(リセット)── RSのS=0, R=1と同じ
⏸️ J=0, K=0 → 変化なし(保持)── RSのS=0, R=0と同じ
🔄 J=1, K=1 → 今の色を反転(青なら赤へ、赤なら青へ)── これが新機能「トグル」
JKフリップフロップの状態遷移表(特性表)
| J | K | Qn+1(次の状態) | 動作 |
|---|---|---|---|
| 0 | 0 | Qn(変化なし) | ⏸️ 保持 |
| 0 | 1 | 0 | 🔴 リセット |
| 1 | 0 | 1 | 🟢 セット |
| 1 | 1 | Qn(反転) | 🔄 トグル |
上3行はまったく同じです。違いは4行目(両方1)のとき。RSは「禁止」、JKは「トグル(反転)」。試験ではこの1行の違いを入れ替えて出題します。「JKフリップフロップにはS=R=1のような禁止状態がある」→ ×(誤り)。これがド定番のひっかけです。

③ Dフリップフロップ|「入力をそのまま記憶する」最もシンプルな回路
Dフリップフロップの「D」は「Data(データ)」の頭文字です。RS や JK が2つの入力で「セット・リセット」を操作するのに対し、Dフリップフロップは入力が1つだけ。しかもその動作は驚くほどシンプルです。
動作:「クロックが来た瞬間の入力Dを、そのまま出力Qにコピーする」
これだけです。D=1ならQ=1になり、D=0ならQ=0になります。「入力をそのまま記憶する」。信号機で言えば「ボタンの色がそのまま信号の色になる」イメージです。
| D | Qn+1(次の状態) | 動作 |
|---|---|---|
| 0 | 0 | 🔴 入力0を記憶 |
| 1 | 1 | 🟢 入力1を記憶 |
Qn+1 = D
これ以上シンプルな式はありません
動作が単純で「入力=次の出力」だから、設計時にミスが起きにくい。レジスタ(データを一時保存する装置)やシフトレジスタの構成要素として、コンピュータの内部で大量に使われています。禁止状態もないので安全です。
「クロック」とは?
Dフリップフロップの説明で「クロックが来た瞬間に」と書きました。クロック(CLK)とは、回路全体のタイミングを揃える「心臓の鼓動」のような信号です。
フリップフロップは、このクロックの立ち上がりエッジ(0→1に変わる瞬間)または立ち下がりエッジ(1→0に変わる瞬間)でのみ動作します。クロックが変化しない間は、入力が変わっても出力は変わりません。これにより、回路全体が同期して動作できるのです。
「Dフリップフロップは、入力Dが変化した瞬間に出力が変わる」→ ×(誤り)。出力が変わるのはクロックのエッジの瞬間です。入力Dが変わっても、クロックが来るまで出力は変わりません。

④ Tフリップフロップ|「押すたびに反転する」トグル専用回路
Tフリップフロップの「T」は「Toggle(トグル=切り替え)」の頭文字です。実はJKフリップフロップのJ=K=1の動作だけを取り出した、最もシンプルな「反転回路」です。
動作:「T=1ならひっくり返す、T=0ならそのまま」
| T | Qn+1(次の状態) | 動作 |
|---|---|---|
| 0 | Qn(変化なし) | ⏸️ 保持 |
| 1 | Qn(反転) | 🔄 トグル(反転) |
信号機で言えば、「切替ボタン」が1つだけあるイメージです。ボタンを押す(T=1)たびに赤↔青が入れ替わります。ボタンを押さなければ(T=0)そのまま。
JKフリップフロップのJ入力とK入力を結線して1つにしたものがTフリップフロップです。J=K=TとすればJKの特性表がそのままTの特性表になります。T=0のときJ=K=0で保持、T=1のときJ=K=1でトグル。これは正誤問題で出ます。
Tフリップフロップの最重要な用途:カウンタ(分周器)
Tフリップフロップの入力Tを常に1にして、クロック信号を入力すると何が起きるでしょうか?クロックが来るたびに出力が反転します。つまり入力クロックの半分の周波数の信号が出力されます。これが分周器(カウンタ)の原理です。
クロック入力(CLK):
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └
出力Q(T=1で毎回反転):
┌───┐ ┌───┐ ┌───┐ ┌───┐
┘ └───┘ └───┘ └───┘ └──
出力Qの周波数は、クロックの半分(1/2)になる
このTフリップフロップを複数段つなげると、1/4、1/8…と周波数を分割できます。これがバイナリカウンタの仕組みです。

【保存版】4種類のフリップフロップ比較表
ここまでの4種類を1枚の比較表に集約します。特性方程式は試験で式の正誤を問われるポイントなので、合わせて覚えてください。
| FF名 | 入力 | 特性方程式 | 動作まとめ | 禁止状態 | 用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| RS | S, R | Qn+1 = S + R·Qn (S·R=0 の条件下) |
S=1でセット、R=1でリセット、 S=R=0で保持 |
あり (S=R=1) |
基本回路。 ラッチ回路 |
| JK | J, K | Qn+1 = J·Qn + K·Qn | RSと同じ + J=K=1でトグル | なし | 万能FF。 カウンタ回路 |
| D | D | Qn+1 = D | 入力Dをそのまま記憶 | なし | レジスタ。 データ保持 |
| T | T | Qn+1 = T ⊕ Qn (XOR) |
T=1で反転、T=0で保持 | なし | 分周器。 カウンタ |
・JKはRSの改良版(禁止状態をトグルに変更)
・TはJKの特殊版(J=K=Tとしたもの)
・DはJKの特殊版(J=D, K=Dとしたもの)
つまりJKフリップフロップが「万能」で、D と T はJKの入力を制限した特殊ケースです。

タイミングチャートの読み方|入力と出力の時間的な変化を追う
電験三種では、フリップフロップのタイミングチャートを読む問題が出ます。タイミングチャートとは、クロック信号と入力・出力の時間変化を横軸に並べたグラフです。
読み方の手順:「クロックのエッジで縦に線を引く」
クロック信号の立ち上がりエッジ(↑)の位置に縦の点線を引く
各エッジの直前の入力値を確認する(エッジの瞬間にサンプリングされる値)
その入力値を特性表に当てはめて、次のQn+1を決定する
計算例:Dフリップフロップのタイミングチャート
初期状態Q=0、クロックの立ち上がりエッジで動作するDフリップフロップに、以下のD入力を与えた場合の出力Qを求めます。
| クロック↑ | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 |
|---|---|---|---|---|---|
| D(入力) | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 |
| Q(出力) | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 |
DフリップフロップはQn+1 = D なので、入力Dの値がそのまま1クロック後のQに現れるだけです。Dフリップフロップのタイミングチャートは最もシンプルなので、ここで手順を掴んでおきましょう。
出力Qが変化するタイミングを「入力が変化した瞬間」と勘違いすることです。出力が変化するのはクロックのエッジの瞬間だけ。入力が途中で変わっても、次のクロックエッジまでは出力に反映されません。これを理解していないとタイミングチャートの問題で全滅します。

4種のフリップフロップの関係|「JKが万能」である理由
4種類のフリップフロップは、バラバラに存在しているのではなく「親子関係」があります。JKフリップフロップの入力の接続方法を変えるだけで、他の3種類を実現できます。
S·R=0で使う
・「JKフリップフロップのJ入力とK入力を接続するとTフリップフロップになる」→ ○
・「DフリップフロップはJKフリップフロップのJ=D, K=Dとしたものである」→ ○
・「RSフリップフロップの禁止状態を解消したのがJKフリップフロップである」→ ○

正誤問題で狙われる「ひっかけポイント」総整理
| No. | ひっかけ選択肢の例 | 正誤 | 正しい知識 |
|---|---|---|---|
| 1 | RSフリップフロップは、S=R=1のとき出力がトグルする | × | S=R=1は禁止(不定)。トグルするのはJK |
| 2 | JKフリップフロップには、RSのような禁止状態がある | × | JKには禁止状態がない。J=K=1ではトグル |
| 3 | Dフリップフロップの出力は、入力Dが変化した瞬間に変わる | × | クロックのエッジで変化する。入力変化時ではない |
| 4 | TフリップフロップのT=0のとき、出力は反転する | × | T=0では保持。反転するのはT=1のとき |
| 5 | フリップフロップは組み合わせ回路の一種である | × | フリップフロップは順序回路。記憶機能がある |
| 6 | JKフリップフロップのJ入力とK入力を接続するとDフリップフロップになる | × | J=K=TでTフリップフロップになる。DにするにはJ=D, K=D |
| 7 | Tフリップフロップを複数段接続すると分周器(カウンタ)として使える | ○ | 正しい。T=1で毎回反転→周波数が1/2になる |
PLCのプログラムでラダー図を書くとき、「セット(SET)」と「リセット(RST)」の命令を使いますよね。あれはまさにRSフリップフロップの動作です。ラダー図を書いたことがある方は「SETで出力ONを保持、RSTでOFFに戻す」と考えれば、フリップフロップの動作がイメージしやすいはずです。

まとめ
📝 この記事のポイント
✅ フリップフロップは「1ビットの記憶回路」。論理ゲートの「組み合わせ回路」とは異なる「順序回路」
✅ RS-FF:S=1でセット、R=1でリセット。S=R=1は禁止(不定)
✅ JK-FF:RSと同じ動作 + J=K=1でトグル(反転)。禁止状態がない
✅ D-FF:入力Dをそのまま記憶。Qn+1 = D。最もシンプル
✅ T-FF:T=1で反転、T=0で保持。JKのJ=K=Tとしたもの。分周器に使う
✅ JKが万能FF。D、T、RSはすべてJKから派生する
✅ 出力が変化するのはクロックのエッジの瞬間であり、入力変化の瞬間ではない
フリップフロップの問題は、4種類の動作の違いを正確に覚えていれば確実に得点できます。特に「RSの禁止状態」「JKのトグル」「DとTの違い」は正誤問題の定番です。この記事の比較表とひっかけポイント一覧を試験前に見返してください。
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