機械科目の解説

【電験三種・機械】4機の比較表|直流機・誘導機・同期機・変圧器の構造と特性を一目で整理

😣 こんな経験はありませんか?
  • 直流機と誘導機の等価回路、どっちがどっちだったか混同する
  • 「同期速度」は誘導機にも同期機にも出てくるけど、何が違うの?
  • 鉄損と銅損、どの機器でも出てくるけど、効率が最大になる条件は全部同じ?
  • 変圧器は「回転しない」のに、なぜ4機の仲間に入っているの?
  • 個別には勉強したけど、横断的に比較する問題が出ると全然解けない
✅ この記事でわかること
  • 直流機・誘導機・同期機・変圧器の共通点と相違点を比較表で一目整理
  • 構造・原理・等価回路・損失・速度制御・用途を横断的に比較
  • 各機器の詳細解説記事へのリンクを完備(このページがハブ=地図の役割)

電験三種・機械科目の配点の約6〜7割を占めるのが「4機」です。直流機、誘導機(誘導電動機)、同期機(同期発電機・同期電動機)、変圧器——この4つの電気機器を総称して「4機」と呼びます。

個別の記事でそれぞれの機器を深掘りしていますが、R06年(上期)問7のように「4機を横断的に比較する正誤問題」が出題されることがあります。このタイプの問題は、各機器を個別に理解しているだけでは解けません。「共通点」と「相違点」を並べて比較する視点が必要です。

この記事は、4機の学習の「地図」です。まず全体像をつかんでから、気になる機器の詳細記事に飛んでください。

4機の全体像|なぜこの4つがセットなのか

まず「なぜ変圧器が4機に含まれるのか?」という疑問に答えます。変圧器は回転しません。モーターでも発電機でもありません。しかし変圧器は、電磁誘導の原理で動作する電気機器という点で他の3つと共通しています。

実は4機すべてに共通するのは「電流が流れるコイル」と「磁束」が存在すること。この2つの相互作用で、電圧を変換したり、回転力を生み出したり、電気を発電したりしています。

🔄

直流機

直流で回転
整流子+ブラシ
電動機 / 発電機

🌀

誘導機

交流で回転
滑りで動作
電動機がメイン

同期機

交流で回転
同期速度で回る
発電機がメイン

🔌

変圧器

回転しない
電圧を変換
静止器

💡 4機の共通点(試験で問われる)
① すべて電磁誘導の原理を利用している
② すべて鉄心(コア)巻線(コイル)で構成されている
③ すべて鉄損(ヒステリシス損+渦電流損)と銅損(I²R損)が発生する
効率が最大になる条件:鉄損 = 銅損(全機器共通!)
⚠️ R06上期 問7タイプの正誤問題
「4機に共通する特性」として、上記の①〜④が正しいかどうかを問う問題です。特に④の「効率最大条件 = 鉄損=銅損」は、変圧器でも誘導機でも同期機でも直流機でも同じ。「〇〇機では効率最大条件が異なる」→ ×(誤り)のひっかけが定番です。

構造の比較|何が回転し、何が固定されているか

4機の最大の違いは「構造」です。何が回転するか、磁束をどうやって作るかが機器ごとに異なります。

項目 直流機 誘導機 同期機 変圧器
電源 直流 交流(三相) 交流(三相) 交流
固定子
(ステータ)
界磁
(磁束を作る)
固定子巻線
(回転磁界を作る)
電機子巻線
(電圧が誘導される)
1次巻線+2次巻線
(同じ鉄心に巻く)
回転子
(ロータ)
電機子
(電圧が誘導される)
かご形 or 巻線形
(誘導電流が流れる)
界磁
(磁束を作る)
なし
(回転部がない)
特徴的な部品 整流子+ブラシ かご形導体
(またはスリップリング)
スリップリング
(界磁への給電用)
鉄心(コア)
(磁気結合)
⚠️ 最頻出の構造ひっかけ
「直流機の電機子は固定子側にある」→ ×(誤り)。直流機の電機子は回転子側です。一方、同期機の電機子は固定子側にあります。直流機と同期機では、「電機子」と「界磁」の位置がになっている点が超重要です。
💡 なぜ同期機は「界磁が回転」するのか?
大型の同期発電機では、電機子に大電流が流れます。この大電流をスリップリングで取り出すのは困難。そこで小電流で済む界磁側を回転子にして、大電流が流れる電機子を固定子にしています。これを「回転界磁形」と呼びます。

📘 構造をもっと詳しく知りたい方はこちら

動作原理の比較|何が回転力を生んでいるか

4機はすべて「電磁誘導」を利用していますが、回転力(トルク)を生み出す仕組みはそれぞれ異なります。

項目 直流機 誘導機 同期機 変圧器
動作原理 フレミングの左手の法則
(電磁力F=BIL)
アラゴの円板の原理
(回転磁界と誘導電流)
磁石の吸引・反発
(同期速度で回転)
相互誘導
(ファラデーの法則)
回転速度 電圧・界磁で調整
(連続可変)
同期速度より遅い
N = Ns(1-s)
常に同期速度
Ns = 120f/p
回転しない
滑り(s) 概念なし あり(s>0)
s=0だとトルク=0
s=0
(常に同期)
概念なし
主な用途 電動機:クレーン、EV
発電機:減少傾向
産業用モーターの90%
ポンプ、ファン、コンベア
発電所の発電機
力率改善用電動機
電圧の昇降圧
送電・配電・家庭用
⚠️ 誘導機と同期機の「速度」の違いが超頻出
・誘導機:同期速度より遅い(滑りs > 0)。滑りがないと回転磁界との速度差がなくなり、誘導電流が流れず、トルクが出ない。
・同期機:常に同期速度ぴったり(s = 0)。負荷が増えても速度は変わらず、代わりに負荷角δが変化する。

「誘導機は同期速度で回転する」→ ×(誤り)。これは正誤問題の最頻出ひっかけです。

📘 動作原理をもっと詳しく知りたい方はこちら

等価回路の比較|「なぜ似ているのか」を理解する

4機の等価回路は一見バラバラに見えますが、実は「変圧器の等価回路がベース」になっています。誘導機の等価回路は変圧器の二次側に「負荷抵抗」を加えたもの。同期機は逆起電力と同期インピーダンスで表現。直流機は最もシンプルで抵抗と逆起電力だけです。

項目 直流機 誘導機 同期機 変圧器
等価回路の
構成要素
V = E + RaIa
(逆起電力E+電機子抵抗)
変圧器+可変抵抗
r₂'(1-s)/s
V = E₀ + jXsI
(同期インピーダンス)
1次巻線抵抗+漏れリアクタンス
+励磁回路
変圧器との
関係
直接の関係なし
(直流回路)
変圧器の2次側に
負荷抵抗を追加
逆起電力E₀ +
同期リアクタンスXs
基本形
(すべての原型)
等価回路で
求めるもの
電機子電流Ia
トルクT
二次電流I₂'
トルクT、出力P
電機子電流Ia
出力P、負荷角δ
二次電圧V₂
電圧変動率ε
💡 「誘導機の等価回路=変圧器の発展形」が理解のカギ
誘導機の固定子(ステータ)は変圧器の1次側、回転子(ロータ)は2次側に相当します。違いは、2次側が回転すること。回転を「滑りs」で表現した抵抗 r₂'(1-s)/s が等価回路に加わります。変圧器の等価回路が理解できていれば、誘導機の等価回路は自然に理解できます。

📘 等価回路をもっと詳しく知りたい方はこちら

損失と効率の比較|4機に共通する「鉄損と銅損」

4機すべてに鉄損(鉄心で発生するヒステリシス損+渦電流損)と銅損(巻線の抵抗で発生するI²R損)が存在します。そして効率が最大になる条件も共通しています。

項目 直流機 誘導機 同期機 変圧器
鉄損
(固定損)
電機子鉄心で発生
(負荷に無関係)
固定子鉄心で発生
(負荷に無関係)
固定子鉄心で発生
(負荷に無関係)
鉄心で発生
(負荷に無関係)
銅損
(可変損)
電機子巻線 I²Ra
(負荷に比例して増加)
1次+2次巻線 I²r
(負荷に比例して増加)
電機子巻線 I²Ra
(負荷に比例して増加)
1次+2次巻線 I²r
(負荷に比例して増加)
機械損 あり
(軸受摩擦、風損)
あり
(軸受摩擦、風損)
あり
(軸受摩擦、風損)
なし
(回転部がない)
効率最大条件 鉄損 = 銅損(固定損 = 可変損)のとき、効率が最大になる ← 4機すべて共通!
📐 効率の公式(全機器共通の考え方)

η =
出力
出力 + 損失(鉄損+銅損+機械損)

📘 損失と効率をもっと詳しく知りたい方はこちら

誘導機のトルクと出力の関係がわからない…
トルクと出力の関係|P₂:P:Pc = 1:(1-s):s を完全マスター →

速度制御と始動法の比較|「どうやって回すか」「どうやって止めるか」

項目 直流機 誘導機 同期機 変圧器
速度制御法 ①電圧制御
②界磁制御
③抵抗制御
①周波数制御(VVVF)
②極数切替
③二次抵抗制御
④電圧制御
速度制御しにくい
(常に同期速度)
周波数を変えるしかない
該当なし
(タップ切替で電圧調整)
始動法 始動抵抗器で
電機子電流を制限
①直入れ始動
②Y-Δ始動
③始動補償器
④インバータ始動
自力始動できない
→始動用誘導電動機
→インバータで始動
該当なし
(突入電流に注意)
特筆事項 分巻:定速度特性
直巻:変動速度特性
無負荷で暴走注意
Y-Δ始動で
始動電流が1/3
始動トルクも1/3
乱調(ハンチング)
脱調に注意
V曲線(力率調整)
励磁突入電流
(定格の数十倍)
並行運転の条件
⚠️ 同期機の「自力始動できない」が正誤問題で狙われる
同期電動機は、停止状態から交流電源を投入しても自力では回り出しません。回転磁界の回転速度(同期速度)にいきなり追従できないからです。始動には補助的な手段(始動用巻線・インバータなど)が必要です。「同期電動機は直入れ始動で始動できる」→ ×(誤り)

📘 速度制御・始動法をもっと詳しく知りたい方はこちら

試験と種類の比較|無負荷試験・短絡試験・特性試験

4機にはそれぞれ「特性を知るための試験」が存在します。これらの試験名と目的を混同させる正誤問題が出ます。

試験 直流機 誘導機 同期機 変圧器
無負荷試験 無負荷特性
(E vs If
無負荷試験
(鉄損+機械損を測定)
無負荷飽和曲線
(E₀ vs If
無負荷試験
(鉄損+励磁電流を測定)
短絡試験 拘束試験
(回転子を固定=s=1)
三相短絡試験
(短絡比Ksを求める)
短絡試験
(銅損+%Zを測定)
試験の目的 界磁電流と
起電力の関係を把握
等価回路の
定数を決定
同期インピーダンスXs
と短絡比Ksを決定
鉄損・銅損・%Z
を分離して測定

📘 試験の詳細をもっと知りたい方はこちら

各機器の完全攻略マップ|ここから全記事にアクセスできます

各機器には、1記事で全体像を掴める「完全攻略マップ(ロードマップ)」記事があります。まだ個別の機器を深掘りしていない方は、ここから始めてください。

🔄

直流機シリーズ

構造→起電力→種類→速度制御→計算パターンまで全9記事

🌀

誘導機シリーズ

原理→滑り→等価回路→始動法→速度制御→用語辞典まで全11記事

同期機シリーズ

構造→等価回路→出力→特性→V曲線→並行運転→計算パターンまで全8記事

🔌

変圧器シリーズ

原理→基本式→等価回路→損失→試験→三相結線→並行運転まで全11記事

正誤問題で狙われる「4機横断のひっかけポイント」総整理

No. ひっかけ選択肢の例 正誤 正しい知識
1 誘導電動機は同期速度で回転する × 同期速度より遅い(滑りs > 0)
2 直流機の電機子は固定子側にある × 直流機の電機子は回転子側。同期機と逆
3 変圧器には機械損が発生する × 変圧器に回転部はない。機械損なし
4 同期電動機は直入れ始動で始動できる × 同期機は自力始動できない。補助手段が必要
5 効率が最大になる条件は機器ごとに異なる × 鉄損=銅損のとき効率最大。全機器共通
6 直巻直流電動機は無負荷で運転すると危険である 正しい。無負荷で界磁電流が減り暴走する
7 同期発電機の並行運転には、電圧・周波数・位相・相順を一致させる必要がある 正しい。並行運転の5条件(+波形一致)
📘 同期発電機の並行運転の条件が気になる方はこちら
同期発電機の並行運転|5つの条件と横流・同期化力を完全図解 →

まとめ

📝 この記事のポイント

✅ 4機すべてに共通:電磁誘導の原理鉄心+巻線の構造鉄損+銅損の発生
✅ 効率最大条件は鉄損=銅損(4機すべて共通)
✅ 直流機の電機子は回転子、同期機の電機子は固定子(位置が逆)
✅ 誘導機は同期速度より遅く回転(滑りs > 0)、同期機は常に同期速度
✅ 同期電動機は自力始動できない。直巻直流電動機は無負荷で暴走
✅ 誘導機の等価回路は変圧器の発展形
✅ 変圧器は回転しないが、電磁誘導の原理で動作する静止器として4機に含まれる

4機の横断比較問題は、個別の知識だけでは解けません。「共通する原理は何か」「各機器の固有の特徴は何か」を表で整理して、違いを明確にしておくことが重要です。各機器の詳細が気になったら、この記事に貼られたリンクから個別の解説記事に飛んでください。この記事が、あなたの4機学習の「地図」になれば幸いです。

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