- 「架空地線」「避雷器」「アークホーン」の3つが出てきて、どれが何を守っているのかごちゃごちゃになる
- 「雷サージ」と「開閉サージ」の違いがよくわからない
- 正誤問題で「避雷器は電線への直撃雷を防ぐ」と出されて、○か✕か迷った
- 送電線に発生する2種類の異常電圧(雷サージ・開閉サージ)の違い
- 架空地線・避雷器・アークホーンが「それぞれ何を守っているか」
- 試験で狙われる正誤問題パターンと秒で解ける判定ポイント
電験三種・電力科目の送電分野では、「雷害対策」の正誤問題がほぼ毎年出題されます。架空地線・避雷器・アークホーンの3つは名前が似ていて混同しやすいですが、実は「守る場所」と「防ぐ方法」がまったく違います。
この記事では、まず異常電圧の種類を整理した上で、3つの防護設備を「鉄塔の図」の中で位置づけながら解説します。最後に試験での正誤パターンをまとめるので、試験直前の確認にも使ってください。
目次
異常電圧とは?|送電線を脅かす2つのサージ
異常電圧=通常の運転電圧を大きく超える過電圧
送電線は通常、決められた電圧(例えば66kV、154kV、275kVなど)で運転されています。この通常電圧を大きく超える過電圧が突発的に発生することがあり、これを異常電圧と呼びます。
異常電圧は大きく2種類に分かれます。
外部異常電圧(外雷)
| 原因 | 雷(かみなり) |
| 別名 | 雷サージ(雷インパルス) |
| 電圧の大きさ | 非常に高い(数百万V級も) |
| 持続時間 | 極めて短い(数μs~数十μs) |
| 特徴 | 波頭が急峻。系統の外部から侵入する |
内部異常電圧
| 原因 | 遮断器の開閉、地絡事故など |
| 別名 | 開閉サージ(スイッチングサージ) |
| 電圧の大きさ | 運転電圧の2~4倍程度 |
| 持続時間 | 比較的長い(数ms~数十ms) |
| 特徴 | 系統の内部で発生する。フェランチ効果もこの一種 |
雷サージ=電圧は非常に高いが、持続時間は極めて短い(μs単位)
開閉サージ=電圧は雷ほどではないが、持続時間が長い(ms単位)
この「電圧の大きさ」と「持続時間」の違いが正誤問題で問われます。
【電験三種・電力】フェランチ効果と調相設備|進相コンデンサ・分路リアクトルの役割を完全図解 →
フェランチ効果は「内部異常電圧」の一種。軽負荷時の電圧上昇メカニズムを詳しく知りたい方はこちら。

雷が送電線を襲うメカニズム|直撃雷と誘導雷
送電線の雷害対策を理解するには、まず「雷がどうやって送電線にダメージを与えるか」を知る必要があります。雷の攻撃パターンは3種類あります。
攻撃パターン①:直撃雷(電線への直撃)
(絶縁破壊)
雷が直接電力線に落ちるパターン。最も深刻。がいしに異常電圧がかかり、がいし表面で放電(フラッシオーバ)が発生する。
攻撃パターン②:逆フラッシオーバ(鉄塔への直撃)
逆方向フラッシオーバ
雷が鉄塔(またはアーム)に落ちて、鉄塔の電位が急上昇。がいしの電圧耐力を超えて、鉄塔側から電線側へ逆方向に放電する。対策として塔脚接地抵抗を低くすることが重要。
攻撃パターン③:誘導雷
木に落雷
電線に過電圧が誘起
雷が送電線の近くに落ち、その急激な電流変化が電磁誘導で電線に過電圧を誘起する。直撃雷ほどではないが、低圧系統に影響を与える。
高圧送電線の雷害対策としては、①電力線への直撃雷を防ぐことと、②鉄塔に雷が落ちたときの逆フラッシオーバを防ぐことが中心テーマです。③の誘導雷は主に低圧系統の問題なので、電力科目ではあまり深く問われません。

雷害対策の全体像|「防ぐ → 逃がす → 守る」の3段構え
送電線の雷害対策は、1つの設備だけで完結するものではありません。「雷を防ぐ → 侵入した雷を逃がす → 機器を守る」という3段階の防御ラインで構成されています。
架空地線(GW)
鉄塔の最上部に張った電線。雷を架空地線に誘導し、電力線への直撃雷を防ぐ「避雷針」の役割。
埋設地線・塔脚接地抵抗の低減
鉄塔に落ちた雷電流を速やかに大地に逃がす。塔脚接地抵抗を低くするほど逆フラッシオーバを防げる。
避雷器(LA)・アークホーン
防ぎきれなかった雷サージが侵入してきたとき、異常電圧を一定値以下に抑えて機器を保護する最後の砦。
雷害対策は「傘 → 排水溝 → 長靴」にたとえると覚えやすいです。
架空地線=傘(雨=雷を直接受け止める)
塔脚接地=排水溝(受けた雨水を速やかに地面に流す)
避雷器・アークホーン=長靴(それでも侵入してきた水から足を守る)

架空地線(GW)|鉄塔の最上部で雷を受け止める「避雷針」
架空地線=電力線の「上」に張った裸電線
架空地線(Ground Wire:GW)は、鉄塔の最上部に張られた電線です。電力を送るための電線ではなく、雷を自分に誘導して電力線を守るための防護専用の電線です。建物の屋上にある「避雷針」と同じ原理です。
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遮蔽角とは?|架空地線が「守れる範囲」
架空地線の真下から電力線までの角度を遮蔽角(しゃへいかく)と呼びます。この角度が小さいほど(架空地線が電力線の真上に近いほど)、電力線への直撃雷を防ぐ効果が高くなります。
遮蔽角が小さい → 架空地線が電力線をしっかり覆う → 遮蔽効果が高い(雷が電力線に到達しにくい)
遮蔽角が大きい → 架空地線から電力線が「はみ出す」 → 遮蔽効果が低い(雷が電力線に直撃する可能性UP)
一般的には遮蔽角30°以下が推奨されます。超高圧系統では0°(負の遮蔽角)にすることもあります。
・鉄塔の最上部に設置される裸電線
・電力線への直撃雷を防ぐのが役割(避雷針の原理)
・遮蔽角が小さいほど遮蔽効果が高い
・架空地線自体は鉄塔を通じて接地されており、受けた雷電流を大地に逃がす
・光ファイバー複合架空地線(OPGW)として通信線を兼ねるものもある

アークホーン|がいしを守る「身代わりの放電ポイント」
アークホーンとは何か?
アークホーンは、がいしの両端に取り付けられた金属の角(ホーン=角)のことです。雷サージによってフラッシオーバ(放電)が発生するとき、がいし本体ではなくアークホーン間で放電させることで、がいしの損傷を防ぎます。
アークホーンは「がいし専用のボディガード」
アークホーンの気間(ホーン間の距離)は、がいし連の絶縁耐力よりわずかに低く設定されています。そのため、異常電圧が来たときにがいし本体がフラッシオーバする前に、アークホーン間で先に放電が起きます。
・がいしの両端に取り付ける金属電極
・フラッシオーバ(放電)の際にがいし本体を守るのが役割
・アーク(放電)の発生点を「がいし表面」から「ホーン間の空気中」に誘導する
・構造が簡単で安価。保守も容易
・雷サージの電圧を下げる機能はない(放電場所を変えるだけ)
アークホーンは「放電をがいしから離す」だけで、異常電圧を吸収・制限する機能はありません。一方、次に説明する避雷器は「異常電圧を一定値以下にクランプする」機能を持っています。この違いは試験で超頻出です。

避雷器(LA)|異常電圧を「一定値以下」に抑える最終防衛
避雷器とは何か?
避雷器(Lightning Arrester:LA)は、送電線や変電所に侵入した雷サージの電圧を一定値(制限電圧)以下に抑える装置です。架空地線やアークホーンで防ぎきれなかった異常電圧に対する最後の砦として、主に変電所の入口に設置されます。
動作原理|酸化亜鉛(ZnO)の非直線性
現在主流の避雷器は酸化亜鉛(ZnO)素子を使用した「ギャップレス避雷器」です。ZnO素子は以下のような特殊な性質を持っています。
通常の電圧のとき
ZnO素子は高い抵抗値(ほぼ絶縁体)
→ 電流はほとんど流れない
→ 送電に影響しない
異常電圧(雷サージ)のとき
ZnO素子は急激に抵抗値が低下
→ 大電流を地面に逃がす
→ 電圧を制限値以下にクランプ
(電流≒0)
(電流増大)
(大電流を
地面へ)
・主に変電所の入口に設置(変圧器を保護するため)
・異常電圧を制限電圧以下にクランプする(電圧を吸収・制限する機能がある)
・現在は酸化亜鉛(ZnO)ギャップレス避雷器が主流
・通常時は電流がほぼ流れないので、送電に影響しない
・電力線への直撃雷を防ぐ機能はない(それは架空地線の仕事)
「避雷器は電力線への直撃雷を防ぐ装置である」→ ✕
避雷器の役割は「侵入してきた雷サージの電圧を制限する」こと。直撃雷を防ぐのは架空地線。名前に「避雷」とあるので混同しやすいですが、避雷器は雷を「避ける」のではなく、侵入した雷の「電圧を抑える」装置です。

架空地線・アークホーン・避雷器の完全比較表
3つの防護設備を1つの表にまとめます。「何を」「どこで」「どうやって」守るかの違いを明確にしてください。
| 比較項目 | 架空地線(GW) | アークホーン | 避雷器(LA) |
|---|---|---|---|
| 設置場所 | 鉄塔の最上部 | がいしの両端 | 主に変電所の入口 |
| 守る対象 | 電力線 (直撃雷から) |
がいし (フラッシオーバの損傷から) |
変圧器等の機器 (異常電圧から) |
| 防護の原理 | 雷を自分に誘導して電力線への直撃を防ぐ | 放電場所をホーン間に限定してがいし表面を守る | 異常電圧を制限電圧以下にクランプ |
| 電圧を下げる 機能 |
なし | なし | あり ◎ |
| 主な素子 | 鋼撚線 / ACSR (OPGW含む) |
金属電極 (角=ホーン形状) |
酸化亜鉛(ZnO) ギャップレス方式 |
| 防御レベル | 第1防御 「防ぐ」 |
第2防御 「守る(がいし)」 |
第3防御 「守る(機器)」 |
架空地線=傘(雷が直接体に当たらないようにする)
アークホーン=ヘルメット(当たっても頭=がいしを守る)
避雷器=防弾チョッキ(衝撃=電圧を吸収して内臓=変圧器を守る)

その他の雷害対策|試験で問われる関連知識
架空地線・アークホーン・避雷器の3つが主役ですが、正誤問題ではそれ以外の対策も問われることがあります。以下の4つも押さえておきましょう。
塔脚接地抵抗の低減
鉄塔に雷が落ちると、雷電流が鉄塔を通じて大地に流れます。このとき鉄塔の塔脚接地抵抗が高いと、鉄塔の電位が急上昇し、逆フラッシオーバが発生します。塔脚接地抵抗を低くすることで、鉄塔の電位上昇を抑え、逆フラッシオーバを防ぎます。
・埋設地線(カウンターポイズ):鉄塔の足元から地中に電線を放射状に埋設して接地抵抗を下げる
・深打ち接地棒:深い位置まで接地棒を打ち込む
がいしの増結(絶縁強化)
懸垂がいしの連結個数を増やすことで、がいし連全体の絶縁耐力を高め、フラッシオーバしにくくする方法です。特に雷が多い地域(多雷地域)で採用されます。
2回線送電・自動再閉路
雷による事故は一過性のものが多く(雷が過ぎ去ればフラッシオーバも消滅する)、一度遮断器をトリップした後に自動的に再投入する自動再閉路方式が広く使われています。2回線送電と組み合わせることで、送電の信頼性を高めます。
「自動再閉路方式が有効なのは、雷による事故が一過性だから」という理由を理解しておけば、正誤問題で対応できます。永久故障(断線など)には再閉路は効果がありません。

電験三種で狙われる正誤問題パターン6選
パターン①:避雷器の役割の入れ替え(超頻出)
問題文:「避雷器は、電力線への直撃雷を防ぐために設置される」
→ ✕:避雷器は「侵入した雷サージの電圧を制限する」装置。直撃雷を防ぐのは架空地線。
パターン②:架空地線の設置位置
問題文:「架空地線は、鉄塔の最上部に設置され、電力線への直撃雷を防止する」
→ ○:これが架空地線の定義そのもの。
パターン③:遮蔽角の大小
問題文:「架空地線の遮蔽角を大きくするほど、遮蔽効果が高くなる」
→ ✕:遮蔽角は小さいほど遮蔽効果が高い。「角度が小さい=架空地線が電力線の真上に近い」とイメージ。
パターン④:避雷器の素子
問題文:「現在の避雷器には酸化亜鉛(ZnO)素子が使用されており、ギャップレス構造が主流である」
→ ○:ZnOギャップレス避雷器が現在の標準。
パターン⑤:アークホーンの機能
問題文:「アークホーンは、雷サージの電圧を制限するためにがいしに取り付けられる」
→ ✕:アークホーンは電圧を制限する機能はない。「フラッシオーバの発生場所をがいし表面からホーン間に誘導して、がいしの損傷を防ぐ」のが役割。電圧を制限するのは避雷器。
パターン⑥:逆フラッシオーバ
問題文:「塔脚接地抵抗を低減することは、逆フラッシオーバの防止に有効である」
→ ○:塔脚接地抵抗が低いほど、鉄塔に落雷したときの電位上昇が小さくなり、逆フラッシオーバが起きにくくなる。
STEP 1:「直撃雷を防ぐ」→ 架空地線の仕事。避雷器ではない。
STEP 2:「電圧を制限する」→ 避雷器(LA)の仕事。アークホーンではない。
STEP 3:「がいしを守る」→ アークホーンの仕事。
STEP 4:「逆フラッシオーバ」→ 塔脚接地抵抗の低減が対策。
STEP 5:「遮蔽角」→ 小さいほど効果が高い。

まとめ|この記事の要点を30秒で振り返る
| 異常電圧の2種類 | 雷サージ(外部・高電圧・短時間)と開閉サージ(内部・低電圧・長時間) |
| 架空地線 | 鉄塔最上部。電力線への直撃雷を防ぐ。遮蔽角は小さいほど効果大 |
| アークホーン | がいし両端。放電場所をホーン間に限定してがいし損傷を防ぐ。電圧制限機能はなし |
| 避雷器(LA) | 変電所入口。ZnO素子で異常電圧を制限電圧以下にクランプ。直撃雷は防げない |
| 逆フラッシオーバ | 鉄塔への落雷→鉄塔電位上昇→鉄塔側から電線方向へ放電。塔脚接地抵抗の低減が対策 |
| 自動再閉路 | 雷事故は一過性が多いため、遮断後に自動再投入して送電を復旧する |
雷害対策は「架空地線=直撃を防ぐ」「避雷器=電圧を抑える」「アークホーン=がいしを守る」の3つの役割分担を明確にすることがすべてです。試験では特に「避雷器が直撃雷を防ぐ」という引っかけが定番なので、ここだけは絶対に間違えないようにしてください。
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