- 「単相半波整流」「単相全波整流」「三相ブリッジ整流」…公式が多すぎて覚えられない
- 過去問で「平均出力電圧 Ed を求めよ」と出たけど、どの公式を使えばいいかわからない
- ダイオードとサイリスタで公式が変わる理由がピンとこない
- 積分で導出せよ、と言われると手が止まる
- 整流回路の平均出力電圧の公式を積分の導出付きで完全理解
- 単相半波・単相全波・三相ブリッジの3パターンを一覧比較
- ダイオードとサイリスタの波形の違いを図解で把握
- 試験で使える「係数の覚え方」で暗記が楽になる
整流回路の計算は、電験三種・機械科目のパワーエレクトロニクス分野でほぼ毎年出題される最頻出テーマです。
ところが「公式が多すぎてどれを使えばいいかわからない」「積分で導出と言われると思考停止する」という人がとても多い。
安心してください。整流回路の公式は、実は「たった1つの考え方」から全部導けるんです。その考え方とは——
Ed = (1周期のうち電圧が出力される区間の面積)÷(1周期の長さ)
つまり「波形の面積を期間で割って平均を出す」だけ。あとは積分区間が変わるだけです。
この記事では、この考え方をベースに、3種類の整流回路を段階的に、途中計算を一切省略せず解説していきます。
ダイオードとは?「駅の改札」で一発理解|整流作用の基本 →
サイリスタ(SCR)とは?「ゲート付き改札」で図解 →
ダイオードとサイリスタの動作が曖昧な方は、先にこちらを読んでおくとスムーズです。
目次
整流回路の全体像|3種類を「交通量」でイメージする
整流回路とは、交流(AC)を直流(DC)に変換する回路です。使うダイオードやサイリスタの数と接続方式によって、出力の「なめらかさ」が変わります。
工場の生産ラインで使うPLCの電源、モータードライバの入力段、溶接機の電源部——どれも整流回路が入っています。「なんであの電源は三相なの?」と聞かれたとき、この記事の知識があれば説明できます。
まずは3つの整流方式の違いを、一覧で把握しましょう。
| 方式 | ダイオード数 | 出力のイメージ | 係数(0.45系) | リップル |
|---|---|---|---|---|
| 単相半波 | 1個 | 🏔️ 山が1つだけ | 0.45 | 大(121%) |
| 単相全波 | 4個(ブリッジ) | 🏔️🏔️ 山が2つ | 0.90 | 中(48%) |
| 三相全波 | 6個(ブリッジ) | 🏔️🏔️🏔️🏔️🏔️🏔️ 山が6つ | 1.35 | 小(4%) |
0.45 → 0.90 → 1.35 と、0.45の等差数列になっています。半波の係数を覚えれば、全波は2倍、三相は3倍。これだけで暗記量が激減します。
計算の基本原理|「面積÷期間」で平均値を出す
整流回路の平均出力電圧 Ed は、すべて次の考え方で求めます。
T:1周期の長さ、v(t):出力電圧の波形
水道管でたとえましょう。蛇口から出る水が「波のように強弱を繰り返す」とします。1分間に出た水の合計量を1分で割れば「平均の水量」がわかりますよね。整流回路の平均電圧も同じ考え方です。
ここから先は、この式に具体的な波形を代入して積分するだけです。1つずつ見ていきましょう。

①単相半波整流回路(ダイオード)
回路と波形のイメージ
ダイオード1個で交流の「プラス側の山」だけを取り出す、最もシンプルな整流回路です。
入力(交流)
v = √2 E sinωt
プラスとマイナスが
交互に繰り返す
出力(半波整流後)
プラスの山だけ通過
マイナス側はゼロ
(ダイオードが遮断)
入力の交流電圧を v = √2 E sinωt とします(E は実効値)。ダイオードはプラス側(0 ≦ ωt ≦ π)だけ電流を流し、マイナス側(π ≦ ωt ≦ 2π)は遮断します。
平均出力電圧の導出(積分の途中計算あり)
1周期は 0 〜 2π ですが、出力が出るのは 0 〜 π の区間だけ。残りはゼロです。
Ed = (1/2π) × ∫0π √2 E sinωt d(ωt)
📐 Step 2:積分を実行する= (√2 E / 2π) × [-cosωt]0π
📐 Step 3:上限・下限を代入する
= (√2 E / 2π) × {(-cosπ) - (-cos0)}
= (√2 E / 2π) × {(-(-1)) - (-1)}
= (√2 E / 2π) × {1 + 1}
= (√2 E / 2π) × 2
= √2 E / π ≒ 0.45E
Ed = √2E / π ≒ 0.45E
√2 / π ≒ 1.414 / 3.14 ≒ 0.45。この数値は「交流実効値の45%が直流として取り出せる」という意味です。半波なので「半分しか使っていない」ぶん、効率は低めです。

サイリスタに置き換えると?|制御角αで出力を絞る
ダイオードは「勝手にON」しますが、サイリスタはゲート信号を入れるまでONしません。
ゲート信号を入れるタイミング(角度)を制御角 α(アルファ)と呼びます。ωt = α でONし、ωt = π で電流がゼロになりOFFします。
ダイオード(α = 0)
0 〜 π の山を
全部出力
サイリスタ(α > 0)
α 〜 π の山を
途中から出力
(α分だけカットされる)
積分区間が「0 → π」から「α → π」に変わるだけです。導出してみましょう。
Ed = (1/2π) × ∫απ √2 E sinωt d(ωt)
📐 Step 2:積分を実行
= (√2 E / 2π) × [-cosωt]απ
= (√2 E / 2π) × {(-cosπ) - (-cosα)}
= (√2 E / 2π) × {1 + cosα}
Ed = (√2E / 2π)(1 + cosα)
α = 0 を代入すると (√2E/2π)×2 = √2E/π ≒ 0.45E → ダイオードと一致!✅
サイリスタの公式は「抵抗負荷(R負荷)」の場合です。誘導性負荷(RL負荷)の場合は、電流が π を超えても流れ続ける(フリーホイールダイオード経由)ため、波形と公式が変わります。試験問題では必ず「負荷の種類」を確認してください。

②単相全波整流回路(ブリッジ整流)
半波と全波の違い|マイナス側も「折り返す」
半波整流は「山の上半分だけ使って、下半分は捨てる」方式でした。もったいないですよね。
全波整流は、4つのダイオードをブリッジ接続することで、マイナス側の山も折り返してプラスにする方式です。
出力波形は |sinωt|(sinの絶対値)の形になります。半波に比べて山が2倍あるので、平均電圧も2倍になるはずです。確認してみましょう。
ダイオード全波整流の平均出力電圧(導出)
全波整流の場合、出力波形の1周期は0 〜 π(半分の周期で1つの山が完結)です。
Ed = (1/π) × ∫0π √2 E sinωt d(ωt)
※ 全波なので1周期が「π」になる点がポイント。分母が 2π → π に変わる。
📐 Step 2:積分実行(半波と同じ)
= (√2 E / π) × [-cosωt]0π
= (√2 E / π) × {1 + 1}
= 2√2 E / π ≒ 0.90E
Ed = 2√2E / π ≒ 0.90E
半波(0.45E)のちょうど2倍!✅
サイリスタ全波整流の平均出力電圧
サイリスタに置き換えると、積分の下限が 0 → α になります。
Ed = (1/π) × ∫απ √2 E sinωt d(ωt)
= (√2 E / π) × {1 + cosα}
Ed = (√2E / π)(1 + cosα)
α = 0 で 2√2E/π = 0.90E → ダイオードと一致!✅
溶接電源やDCモーターの速度制御では、サイリスタの制御角αを変えて出力電圧を調整します。α = 0°なら最大出力、α = 90°なら半分、α = 180°ならゼロ。「αのツマミで電圧を絞れる」イメージです。

③三相全波整流回路(三相ブリッジ整流)
なぜ三相が使われるのか?
単相全波でもリップル(脈動)は48%もあります。工場の大型モーターや電気炉に供給する直流電源としては、まだ「波打ちすぎ」です。
三相ブリッジ整流は、3つの相(120°ずつずれた波形)を6個のダイオードで整流します。1周期に6回の山ができるため、リップルがわずか4%まで下がり、ほぼ平坦な直流が得られます。
三相ブリッジの平均出力電圧(導出)
三相ブリッジの出力波形は、常に「3つの線間電圧のうち最も大きいもの」が出力されます。線間電圧の最大値は √2 × √3 E = √6 E(E は相電圧の実効値)です。
1つの山の区間は 60°(= π/3)です。この区間の中心を基準にすると、積分区間は -π/6 〜 +π/6 となります。
Ed = (1/(π/3)) × ∫-π/6π/6 √6 E cosθ dθ
※ 山の頂点を θ = 0 に置くと cosθ で表現できます。
📐 Step 2:積分実行
= (3/π) × √6 E × [sinθ]-π/6π/6
= (3/π) × √6 E × {sin(π/6) - sin(-π/6)}
= (3/π) × √6 E × {1/2 + 1/2}
= (3/π) × √6 E × 1
= 3√6 E / π ≒ 2.34E
※ 線間電圧の実効値 VL = √3 E で表すと、Ed = 3√2 VL / π ≒ 1.35 VL
Ed = 3√6E / π ≒ 2.34E(相電圧基準)
Ed = 3√2VL / π ≒ 1.35VL(線間電圧基準)
サイリスタの場合は、ダイオードの公式に cosα を掛けるだけです。
Ed = 1.35 VL cosα
電験三種では三相ブリッジの出題頻度が最も高く、「Ed = 1.35 V cosα を用いて平均出力電圧を求めよ」のように公式を適用するだけの問題が多いです。V には線間電圧の実効値が入ります。

全公式まとめ|1枚の表で完全整理
ここまで導出した公式を、一覧表にまとめます。試験直前の最終確認用に使ってください。
| 整流方式 | ダイオード(α = 0) | サイリスタ(R負荷) | |
|---|---|---|---|
| 公式 | 係数 | 公式 | |
| 単相半波 | Ed = √2E/π | ≒ 0.45E | Ed = (√2E/2π)(1+cosα) |
| 単相全波 | Ed = 2√2E/π | ≒ 0.90E | Ed = (√2E/π)(1+cosα) |
| 三相全波 | Ed = 3√2VL/π | ≒ 1.35VL | Ed = 1.35VL cosα |
0.45 × 1倍 = 0.45(半波:山1つ)
0.45 × 2倍 = 0.90(全波:山2つ)
0.45 × 3倍 = 1.35(三相:山3倍分)
この等差数列を覚えれば、あとは「サイリスタなら cosα か (1+cosα)/2 を掛ける」だけ。6つの公式がたった1つの数列に集約されます。
単相の公式の E は交流電源の実効値。
三相の公式の VL は線間電圧の実効値。
問題文で「相電圧 100V」と書いてあるのに、線間電圧の公式にそのまま代入すると不正解になります。三相の場合は VL = √3 × V相 の変換を忘れずに。

練習問題|手を動かして定着させよう
【問題1】単相全波・ダイオード
問:交流電源の実効値 E = 100V の単相全波ダイオード整流回路がある。負荷の抵抗 R = 10Ω のとき、平均出力電圧 Ed と平均出力電流 Id を求めよ。
Ed = 0.90 × E = 0.90 × 100 = 90 V
Id = Ed / R = 90 / 10 = 9 A
【問題2】三相全波・サイリスタ(頻出パターン)
問:線間電圧 VL = 200V の三相電源に接続されたサイリスタ三相ブリッジ整流回路がある。制御角 α = 30° のとき、平均出力電圧 Ed を求めよ。
Ed = 1.35 × VL × cosα
= 1.35 × 200 × cos30°
= 1.35 × 200 × 0.866
= 233.8 V ≒ 234 V
【問題3】「相電圧」で与えられた場合のひっかけ
問:相電圧 E = 100V の三相電源に接続されたダイオード三相ブリッジ整流回路の平均出力電圧 Ed を求めよ。
まず線間電圧に変換する
VL = √3 × E = √3 × 100 ≒ 173.2 V
Ed = 1.35 × VL = 1.35 × 173.2 = 233.8 V ≒ 234 V
「相電圧100V」を公式にそのまま代入すると Ed = 1.35 × 100 = 135V と間違った答えが出ます。三相ブリッジの 1.35 は線間電圧基準の係数です。相電圧が与えられたら、必ず √3 倍してから代入してください。

試験対策|よくある質問と出題パターン
Q1:公式は暗記すべき?それとも導出できるべき?
電験三種では公式の導出そのものを問う問題は出ません。ただし、空欄穴埋めで「積分の結果として得られる式を選べ」という形式はあります。係数(0.45, 0.90, 1.35)と cosα の使い方を正確に覚えておけば、ほとんどの問題に対応できます。
Q2:「R負荷」と「RL負荷」で公式が変わるのはなぜ?
R(抵抗)負荷の場合、電圧がゼロになった瞬間に電流もゼロになります。一方、RL(誘導性)負荷では、インダクタンスが電流を流し続けようとするため、電圧がゼロを超えても電流が流れ続けます。これにより波形が変わり、公式も変わります。
試験では問題文に「純抵抗負荷」「誘導性負荷」と明記されるので、負荷の種類を必ず確認してから公式を選んでください。
Q3:三相半波整流の公式は覚えなくていい?
電験三種では三相ブリッジ(全波)の出題がほとんどです。三相半波は電験二種で出題されることがありますが、三種の対策としてはブリッジの 1.35 cosα を確実に押さえておけば十分です。
頻出の出題パターン3選
| パターン | 出題内容 | 使う公式 |
|---|---|---|
| ① 平均電圧の計算 | 「Ed を求めよ」(α と V が与えられる) | Ed = 係数 × V × cosα |
| ② 制御角の逆算 | 「Ed = ○○V となる α を求めよ」 | cosα = Ed / (係数 × V) |
| ③ 波形選択 | 「出力波形として正しいものを選べ」 | α の位置と導通区間を波形で判断 |
