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- 単相半波・全波・三相で、どの係数を使えばいいかわからない
- 0.45・0.9・1.35がどこから出てくるのか知りたい
- 三相の問題で、相電圧と線間電圧をまちがえる
- 3つの整流回路の平均出力電圧と、その導き方
- ダイオードにかかる逆電圧・電流と、リップルの周波数
- 電験三種によく出るひっかけと例題
- 方式と電圧を入れるだけの計算ツール
ダイオード整流回路の平均出力電圧Edは、交流の実効値をEとして、単相半波が約0.45E、単相全波(ブリッジ)が約0.9E、三相全波(三相ブリッジ)が線間電圧VLの約1.35倍です。どれも「出力の波形の面積÷1周期の長さ」で求めた値で、サイリスタにすると、単相は(1+cosα)/2倍、三相はcosα倍になります。

整流回路とは?3つの方式をくらべる
整流回路は、交流を直流に変える回路です。ダイオードは電流を一方向にしか流さないので、これを組み合わせると、プラスとマイナスを行ったり来たりする交流を、プラスだけの電圧に変えられます。ダイオードの数とつなぎ方で、出力のなめらかさが変わります。
| 方式 | ダイオード | 出力の山(1周期あたり) | 平均出力電圧 | リップルの周波数(50Hz) |
|---|---|---|---|---|
| 単相半波 | 1個 | 1つ | √2E/π ≒ 0.45E | 50Hz |
| 単相全波(ブリッジ) | 4個 | 2つ | 2√2E/π ≒ 0.9E | 100Hz |
| 三相全波(三相ブリッジ) | 6個 | 6つ | 3√2VL/π ≒ 1.35VL | 300Hz |
Eは単相の交流電圧の実効値、VLは三相の線間電圧の実効値です。山の数が多いほど波がこまかくなり、平滑しやすい直流になります。工場のモーターを動かすインバータや大型の直流電源が三相ブリッジを使うのは、このためです。
0.45→0.9→1.35と0.45ずつ増えるので、「半波の2倍、3倍」と覚えると楽です。ただし1.35は線間電圧にかける係数で、単相の2つとは基準がちがいます。数字の並びは覚え方として使いましょう。

平均出力電圧の導き方|「面積÷周期」
平均出力電圧Edは、出力の波形の面積を、1周期の長さで割った値です。川の水が強くなったり弱くなったりしても、1時間に流れた量を1時間で割れば平均の流れがわかるのと同じです。交流の電圧を v=√2E sinωt として、3つの方式で計算します。
単相半波|0〜πだけ出て、周期は2π
Ed=(1/2π)∫0π √2E sinθ dθ = (√2E/2π)[−cosθ]0π = (√2E/2π)×2 = √2E/π ≒ 0.45E
単相全波|同じ山が毎回出るので、周期はπ
Ed=(1/π)∫0π √2E sinθ dθ = (√2E/π)×2 = 2√2E/π ≒ 0.9E (分母が2πからπになるので、半波のちょうど2倍)
三相ブリッジ|線間電圧のいちばん高いところが、60°ずつ出る
三相ブリッジの出力は、3つの線間電圧(最大値√2VL)のうち、いちばん高いものです。1つの山は60°(π/3)で、山の頂点を中心に置くと −π/6〜π/6 の区間になります。
Ed=(3/π)∫−π/6π/6 √2VL cosθ dθ = (3√2VL/π)[sinθ]−π/6π/6 = (3√2VL/π)×1 = 3√2VL/π ≒ 1.35VL
相電圧Eで書くと、VL=√3Eなので Ed=3√6E/π ≒ 2.34E です。電験三種では、ほとんど線間電圧の1.35VLの形で出ます。平均値と実効値のちがいそのものは、別の記事で説明しています。整流した波形の実効値は、下の節で求めます。
なぜ100Vの最大値は141V?実効値・最大値・平均値の意味

入力電圧と出力電圧の対応表|AC100Vを整流すると何Vになる?
「入力が何Vなら出力は何Vか」を、よく使う電圧で表にしました。平均値は 0.45E・0.9E・1.35VL の式どおり(ダイオードの電圧降下は無視)、平滑コンデンサをつけたときは、軽い負荷で最大値 √2E からダイオードの順方向電圧(1個あたり約0.7V)を引いた値に近づきます。
| 入力(実効値) | 単相半波の平均 | 単相全波(ブリッジ)の平均 | 最大値 √2E | 平滑したとき(軽い負荷の目安) |
|---|---|---|---|---|
| AC100V | 45V | 90V | 141V | 半波 約140V/ブリッジ 約140V |
| AC200V | 90V | 180V | 283V | 約281〜282V |
| AC24V(変圧器の二次側) | 10.8V | 21.6V | 33.9V | 半波 約33.2V/ブリッジ 約32.5V |
| AC12V(変圧器の二次側) | 5.4V | 10.8V | 17.0V | 半波 約16.3V/ブリッジ 約15.6V |
| 三相 線間200V | ― | 三相ブリッジの平均 270V | 283V | 約280V |
つまり、電験三種の計算では平均値(0.45E・0.9E・1.35VL)を使い、実際の電源回路で平滑コンデンサをつけると、出力は最大値の √2E 近くまで上がります。負荷が重いほど、コンデンサの電圧は放電で下がり、平均値に近づきます。平滑のしくみとリップルの計算は 平滑コンデンサとは で説明しています。
電圧が低いほど、ダイオードの電圧降下が効きます。AC12Vのブリッジでは、ダイオード2個ぶんの約1.4Vが引かれるので、17.0Vではなく約15.6Vになります。

整流した波形の実効値|半波はVm/2、全波はVm/√2
直流電圧計が示すのは平均値、抵抗で出る熱(電力)を決めるのは実効値です。整流した電圧でも、2つを使い分けます。交流の最大値をVm(=√2E、Eは実効値)とします。
実効値は「2乗して平均し、平方根をとった値」です。全波整流は、マイナス側の山を折り返しただけなので、2乗すると元の正弦波と同じ形になります。だから実効値も、元の交流と同じVm/√2(=E)です。半波整流は、2乗した波の半分(マイナス側)が0になるので、2乗の平均は正弦波の半分のVm²/4になり、実効値はVm/2です。
| 波形 | 平均値 | 実効値 |
|---|---|---|
| 正弦波(整流しない) | 0(1周期では打ち消し合う) | Vm/√2 ≒ 0.707Vm(=E) |
| 単相半波 | Vm/π ≒ 0.318Vm(≒0.45E) | Vm/2 = 0.5Vm(≒0.707E) |
| 単相全波 | 2Vm/π ≒ 0.637Vm(≒0.9E) | Vm/√2 ≒ 0.707Vm(=E) |
最大値100Vの正弦波を単相全波整流し、50Ωの抵抗につないだ。抵抗の消費電力は?
答え:電力は実効値で計算します。Vrms=100/√2≒70.7V、P=70.7²÷50≒100W。平均値の2×100/π≒63.7Vを使って63.7²÷50≒81Wとするのは、まちがいです。同じ条件で半波整流なら、Vrms=100/2=50V、P=50²÷50=50W(全波のちょうど半分)です。
ダイオードにかかる逆電圧・電流と、リップル
電圧の式だけでなく、ダイオードにかかる逆電圧と電流も、部品を選ぶときと試験の両方で問われます。出力の平均電流をId(=Ed÷R)とします。
| 方式 | 逆電圧の最大値 | ダイオード1個の平均電流 | リップル率(抵抗負荷) |
|---|---|---|---|
| 単相半波 | √2E | Id | 約121% |
| 単相全波(ブリッジ) | √2E | Id/2 | 約48% |
| 単相全波(センタタップ) | 2√2E(Eは片側の巻線) | Id/2 | 約48% |
| 三相ブリッジ | √2VL | Id/3 | 約4% |
ブリッジ形とセンタタップ形のちがい
単相全波には、ダイオード4個のブリッジ形と、中点のある変圧器(センタタップ)とダイオード2個を使う形があります。出力の波形は同じですが、センタタップ形はダイオードの数が半分のかわりに、止めている側のダイオードに巻線2つ分の電圧(2√2E)がかかります。ブリッジ形はダイオードが4個いるかわりに逆電圧が√2Eですみ、変圧器もかんたんです。いまの電源ではブリッジ形がふつうです。
半波・全波・ブリッジ整流の違い

サイリスタにすると|制御角αで出力をしぼる
ダイオードをサイリスタにかえると、点弧するタイミング(制御角α)をおくらせて、出力電圧を下げられます。抵抗負荷のときの式は次のとおりです。
| 方式 | ダイオード(α=0) | サイリスタ(抵抗負荷) |
|---|---|---|
| 単相半波 | 0.45E | 0.45E × (1+cosα)/2 |
| 単相全波 | 0.9E | 0.9E × (1+cosα)/2 |
| 三相ブリッジ | 1.35VL | 1.35VL × cosα(α≦60°) |
α=0を入れると、どれもダイオードの式にもどります。三相ブリッジの cosα の式は、抵抗負荷ではα≦60°の範囲で成り立ちます(それより大きいと電流がとぎれ、式が変わります)。誘導性の負荷で電流が流れ続ける場合や、波形の見方は、サイリスタ整流回路の記事でくわしく説明しています。
制御角αで出力電圧はどう変わる?
例題|電験三種の出方で解く
例題1:単相全波(ダイオード)
実効値100Vの交流を単相ブリッジで整流し、10Ωの抵抗につないだ。平均出力電圧と平均電流は?
Ed=0.9×100=90.0V、Id=90÷10=9.0A。ダイオード1個の平均電流は9.0÷2=4.5A、逆電圧の最大値は√2×100≒141Vです。
例題2:三相ブリッジ(サイリスタ)
線間電圧200Vの三相電源につないだサイリスタ三相ブリッジで、制御角α=30°のときの平均出力電圧は?(抵抗負荷)
Ed=1.35×200×cos30°=270.1×0.866≒234V。α=30°は60°以下なので、cosαの式が使えます。
例題3:相電圧で与えられたら
相電圧100Vの三相電源につないだダイオード三相ブリッジの平均出力電圧は?
先に線間電圧にする。VL=√3×100≒173.2V、Ed=1.35×173.2≒234V。100Vをそのまま入れて135Vとするのが、いちばん多いまちがいです。

整流回路の計算ツール
方式と交流電圧を選んで入れてください。サイリスタなら制御角α、抵抗をつなぐなら抵抗値も入れると、電流まで出します(抵抗負荷として計算します)。
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
整流回路の計算でよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 三相に相電圧をそのまま入れる | 1.35は線間電圧の係数。相電圧なら√3倍してから |
| 全波も周期2πで割る | 全波は同じ山がπごとにくり返すので、πで割る |
| サイリスタの単相に cosα をかける | 単相は (1+cosα)/2、三相は cosα |
| センタタップも逆電圧は√2E | 止めている側には2√2Eがかかる |
| 平均値と実効値をまぜる | 直流電圧計が示すのは平均値。0.45・0.9・1.35は平均値の係数 |
整流したあとの波を、コンデンサでなめらかにすると、出力電圧は平均値より高く、ピーク値(√2E)に近づきます。実際の電源回路の電圧が0.9Eより高くなるのはこのためです。
平滑コンデンサが必要な理由

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よくある質問
- 単相半波0.45E、単相全波0.9E、三相ブリッジ1.35VL(線間電圧)
- どれも「出力の波形の面積÷1周期」で導ける
- 三相に相電圧が出たら、√3倍して線間電圧にしてから
- サイリスタは、単相が(1+cosα)/2倍、三相がcosα倍
- 逆電圧はセンタタップだけ2√2E。リップルは50・100・300Hz

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三相全波整流の 1.35 は、三相の線間電圧に掛ける係数です。単相と三相の違いは次の記事で確かめられます。
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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