- 同期機の理論は理解したつもりだが、計算問題になると手が止まる
- 「E₀を求めよ」と「Pを求めよ」で使う公式がどっちだったか迷う
- 短絡比と%Zsの変換が試験本番で混乱する
- 三相の問題で「1相分」と「三相分」を間違えて3倍ミスをしてしまう
- 同期機の計算問題を5パターンに完全分類
- 各パターンの「見分け方 → 公式選択 → 途中式 → 答え」を1問ずつ解説
- 「三相 ⇔ 1相分」の換算ルールを整理
- 試験直前に見返せる全公式チートシート
同期機シリーズ最終回です。第1回〜第6回で学んだ知識を「計算問題で使える状態」に仕上げます。
同期機の計算問題は、パターンが決まっています。5つのパターンを押さえれば、試験で出るほぼすべての計算問題に対応できます。
この記事では1問ごとに途中式を一切省略せず、「なぜその式変形をするのか」まで解説します。手を動かしながら読んでください。3問解き終わる頃には、公式の使い方が体に染み込んでいるはずです。
目次
計算の前に──「三相 ⇔ 1相分」の換算ルール
同期機の計算問題では「1相分の等価回路」で考えるのが基本です。問題文に三相の値が与えられた場合は、まず1相分に換算してから計算し、最後に三相に戻します。
この換算を間違えると、答えが3倍や√3倍ズレます。最初に確実に押さえましょう。
三相 → 1相分の換算表(Y結線の場合)
| 物理量 | 三相(問題文の値) | 1相分(計算に使う値) | 換算方法 |
|---|---|---|---|
| 電圧 | 線間電圧 VL | 相電圧 V = VL / √3 | ÷ √3 |
| 電流 | 線電流 IL | 相電流 I = IL | そのまま(Y結線) |
| 電力 | 三相電力 P3φ | 1相分 P = P3φ / 3 | ÷ 3 |
| リアクタンス | Xs | Xs(そのまま) | そのまま |
「問題文に線間電圧 6,600V と書いてあるのに、そのまま V = 6,600V として計算してしまう」──これが同期機の計算問題で最も多いミスです。Y結線なら V = 6,600 / √3 ≈ 3,810V に換算してください。
Y結線・Δ結線の特徴とメリット・デメリットを徹底比較 →

同期機の全公式チートシート──試験直前に見返す1枚
📐 同期機 公式一覧
| 公式名 | 公式 | 使うパターン |
|---|---|---|
| 同期速度 | Ns = 120f / P | パターン① |
| 等価回路(発電機) | E₀ = V + jXsI | パターン② |
| E₀ の大きさ(ra=0、遅れ) | E₀ = √[(Vcosφ)² + (Vsinφ + XsI)²] | パターン② |
| 出力(1相分) | P = (VE₀ / Xs) sinδ | パターン③ |
| 最大出力 | Pmax = VE₀ / Xs | パターン③ |
| 同期化力 | Ps = (VE₀ / Xs) cosδ | パターン③ |
| 短絡比 | Ks = If1 / If2 | パターン④ |
| Ks と %Zs の関係 | Ks = 100 / %Zs | パターン④ |
| 三相出力 | P₃φ = √3 × VL × IL × cosφ | パターン⑤ |
| 電圧変動率 | ε = (E₀ − V) / V × 100 [%] | パターン⑤ |
公式は多く見えますが、核になるのは「E₀ = V + jXsI」と「P = (VE₀/Xs)sinδ」の2本です。残りはこの2本の変形や応用にすぎません。

パターン①:同期速度の計算 ── Ns, f, P の相互変換
Ns = 120f / P
見分け方:問題文に「極数」「周波数」「回転速度」のうち2つが与えられたら、このパターンです。
例題1-1:極数を求める
周波数 60 Hz で同期速度 720 min⁻¹ の同期発電機の極数 P を求めよ。
【解答】
Ns = 120f / P を P について解くと:
P = 120f / Ns = 120 × 60 / 720 = 7,200 / 720
P = 10 極 ✅
例題1-2:周波数を求める
6極の同期発電機が 1,000 min⁻¹ で回転しているとき、発生する交流の周波数を求めよ。
【解答】
f = Ns × P / 120 = 1,000 × 6 / 120 = 6,000 / 120
f = 50 Hz ✅
P は必ず偶数です。答えが奇数になったら計算ミスを疑いましょう。また、日本の商用周波数は 50Hz か 60Hz のどちらか。答えがそれ以外なら見直しが必要です。

パターン②:誘導起電力 E₀ の算出 ── ベクトル図の計算
E₀ = √[(Vcosφ)² + (Vsinφ + XsI)²]
見分け方:V, I, Xs, cosφ が与えられて「E₀を求めよ」と言われたら、このパターンです。
例題2:E₀ を求める(三相・遅れ力率)
三相同期発電機(Y結線)。線間電圧 VL = 6,600 V、線電流 I = 200 A、同期リアクタンス Xs = 10 Ω、力率 cosφ = 0.8(遅れ)。電機子抵抗は無視する。1相分の誘導起電力 E₀ を求めよ。
【解答】
STEP 1:1相分の相電圧に換算
V = VL / √3 = 6,600 / √3 ≈ 3,810 V
STEP 2:sinφ を求める
cosφ = 0.8 → sinφ = 0.6
STEP 3:横成分と縦成分を計算
横成分 = Vcosφ = 3,810 × 0.8 = 3,048 V
縦成分 = Vsinφ + XsI = 3,810 × 0.6 + 10 × 200 = 2,286 + 2,000 = 4,286 V
STEP 4:三平方の定理で E₀ を算出
E₀ = √(3,048² + 4,286²) = √(9,290,304 + 18,369,796) = √27,660,100
E₀ ≈ 5,259 V(1相分) ✅
進み力率のときは、縦成分が Vsinφ − XsI(引き算)になります。遅れ=足し算、進み=引き算。力率の「遅れ」「進み」を確認してから計算を始めてください。
同期発電機の等価回路とベクトル図|E₀の求め方を5ステップで完全マスター →

パターン③:出力 P・負荷角 δ・最大出力の計算
P = (VE₀ / Xs) sinδ [W](1相分)
見分け方:V, E₀, Xs, δ のうち3つが与えられて残り1つを求める問題。または「最大出力」を求める問題。
例題3-1:三相出力を求める
三相同期発電機(Y結線)。線間電圧 VL = 6,600 V、1相分の誘導起電力 E₀ = 5,000 V、同期リアクタンス Xs = 8 Ω、負荷角 δ = 30°。三相出力 P₃φ [kW] を求めよ。
【解答】
STEP 1:相電圧に換算
V = 6,600 / √3 ≈ 3,810 V
STEP 2:1相分の出力を計算
P = (V × E₀ / Xs) × sinδ
= (3,810 × 5,000 / 8) × sin30°
= 2,381,250 × 0.5
= 1,190,625 W
STEP 3:三相出力に変換
P₃φ = 3 × P = 3 × 1,190,625 = 3,571,875 W
P₃φ ≈ 3,572 kW ✅
例題3-2:最大出力と負荷角を求める
上と同じ発電機の1相分の最大出力 Pmax [kW] を求めよ。また、1相分の出力が 1,500 kW のときの負荷角 δ を求めよ。
【解答①:Pmax】
Pmax = VE₀ / Xs = 3,810 × 5,000 / 8 = 2,381,250 W
Pmax ≈ 2,381 kW ✅
【解答②:δ を求める】
sinδ = P × Xs / (V × E₀) = 1,500,000 × 8 / (3,810 × 5,000)
= 12,000,000 / 19,050,000 ≈ 0.630
δ = sin⁻¹(0.630)
δ ≈ 39° ✅
同期発電機の出力と負荷角δ|P=(VE₀/Xs)sinδの意味を完全図解 →

パターン④:短絡比 Ks と %Zs の計算
Ks = If1 / If2 Ks = 100 / %Zs
見分け方:無負荷飽和曲線や三相短絡曲線のグラフが与えられたら、または「%Zsからの変換」問題。
例題4-1:グラフから短絡比を求める
無負荷飽和曲線より、定格電圧を発生する界磁電流 If1 = 200 A。三相短絡曲線より、定格電流を流す界磁電流 If2 = 160 A。短絡比 Ks と %Zs を求めよ。
【解答】
STEP 1:短絡比を計算
Ks = If1 / If2 = 200 / 160 = 1.25
STEP 2:%Zs に変換
%Zs = 100 / Ks = 100 / 1.25 = 80%
Ks = 1.25、%Zs = 80% ✅
例題4-2:%Zs から同期リアクタンスを求める
定格容量 10 MVA、定格線間電圧 6,600 V(Y結線)、%同期インピーダンス %Zs = 80% の三相同期発電機の同期リアクタンス Xs [Ω] を求めよ(ra ≈ 0 とする)。
【解答】
STEP 1:定格電流を求める
定格容量 = √3 × VL × In より
In = 10 × 10⁶ / (√3 × 6,600) = 10,000,000 / 11,431 ≈ 875 A
STEP 2:定格相電圧を求める
Vn = 6,600 / √3 ≈ 3,810 V
STEP 3:%Zs の定義式から Xs を求める
%Zs = (Xs × In / Vn) × 100 より
Xs = %Zs × Vn / (100 × In)
= 80 × 3,810 / (100 × 875)
= 304,800 / 87,500
Xs ≈ 3.48 Ω ✅
同期発電機の特性|短絡比・%同期インピーダンス・無負荷飽和曲線 →

パターン⑤:電圧変動率と三相出力の計算
ε = (E₀ − V) / V × 100 [%]
見分け方:「電圧変動率を求めよ」と書いてあるか、E₀ と V の両方が求められている場合。パターン②の延長問題として出ることが多いです。
例題5:E₀ から電圧変動率を求める(複合問題)
パターン②の例題2で求めた E₀ ≈ 5,259 V(1相分)、V = 3,810 V とする。この発電機の電圧変動率 ε [%] を求めよ。
【解答】
ε = (E₀ − V) / V × 100
= (5,259 − 3,810) / 3,810 × 100
= 1,449 / 3,810 × 100
ε ≈ 38.0% ✅
「無負荷にしたら端子電圧が何%上がるか」を示す指標です。ε が小さいほど電圧が安定。第4回で学んだ通り、短絡比が大きい発電機ほど ε が小さい(電圧安定)です。

パターン分類フローチャート──問題を見た瞬間の判別法
確認
選択
| 求めるもの | パターン | 核となる公式 |
|---|---|---|
| Ns, f, P のどれか | ① | Ns = 120f / P |
| E₀(誘導起電力) | ② | E₀ = √[(Vcosφ)² + (Vsinφ ± XsI)²] |
| P, Pmax, δ のどれか | ③ | P = (VE₀/Xs)sinδ |
| Ks, %Zs, Xs | ④ | Ks = If1/If2 = 100/%Zs |
| 電圧変動率 ε | ⑤ | ε = (E₀ − V)/V × 100 |
計算ミス防止チェックリスト
⚠️ 提出前にチェック!
| ☐ | 線間電圧を相電圧に換算したか?(V = VL / √3) |
| ☐ | 力率が「遅れ」か「進み」か確認したか?(足し算 or 引き算) |
| ☐ | 1相分で計算し、三相に戻したか?(× 3) |
| ☐ | 単位を確認したか?(W ⇔ kW ⇔ MW) |
| ☐ | 極数が偶数になっているか?(パターン①) |

同期機シリーズ 全7記事のロードマップ──Complete!
まとめ
| 計算パターンは5つ | ①同期速度 ②E₀算出 ③出力・負荷角 ④短絡比・%Zs ⑤電圧変動率 |
| 核となる公式は2本 | E₀ = V + jXsI と P = (VE₀/Xs)sinδ |
| 最頻出ミス | 線間電圧 → 相電圧の÷ √3 を忘れる |
| 計算の手順 | ① 三相を1相分に換算 → ② 公式に代入 → ③ 三相に戻す → ④ 単位チェック |
同期機シリーズ全7回、お疲れさまでした。第1回の構造から始まり、ベクトル図、出力公式、短絡比、V曲線、並行運転、そしてこの計算パターンまで──試験に出る同期機の知識はこの7本ですべてカバーしています。
計算問題は「慣れ」が命です。この記事の例題をもう一度自分の手で解き直してみてください。2回目は途中式を見ずに、3回目はタイマーをかけて。3回解けば、試験本番で「あ、これパターン②だ」と一瞬で見分けられるようになります。
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