理論科目の解説

【電験三種・理論】磁気回路のオームの法則|起磁力・磁束・磁気抵抗を「電気回路との対応表」で完全攻略

😣 こんな経験はありませんか?
  • 「環状ソレノイドの磁束を求めよ」と問題に出てきた瞬間、何から手を付ければいいかわからなくなる
  • 起磁力(NI)、磁束(Φ)、磁気抵抗(Rm)──聞いたことはあるけど、3つの関係性が頭の中でつながらない
  • テキストの「磁気回路はオームの法則と同じ」と書いてあるが、具体的にどう「同じ」なのかが腑に落ちない
  • R1やH26で出題されたが、毎回時間が足りなくて捨てている
✅ この記事でわかること
  • 磁気回路がなぜ「電気回路と同じ式」で解けるのか、根本から理解できる
  • 起磁力・磁束・磁気抵抗の「電気回路との対応表」を完全マスター
  • 環状ソレノイドの問題を、たった1つの公式で解く方法
  • 磁気回路の直列・並列の合成計算(過去問頻出パターン)

こんにちは、シラスです。電験三種「理論」の電磁気分野で、多くの受験者が壁にぶつかるのが「磁気回路」。とくに環状ソレノイドの問題はR1・H26・H20と過去問頻出。配点も大きいので、捨てるのは非常にもったいない。

でも結論から言います。磁気回路は「電気回路のオームの法則と全く同じ構造」で解けます。新しい公式を覚える必要はありません。すでに知っているV=IRを、文字を置き換えるだけ。この記事ではその「対応表」を完全にお見せします。

磁気回路とは「磁束が流れる道」のこと

まず大前提を確認します。磁気回路とは何か?

📌 磁気回路を一言で
電気回路が「電流が流れる道」なら、
磁気回路は「磁束(磁力線の束)が流れる道」のこと。

電気回路では、電池(電源)が電流を押し出し、銅線という「流れやすい道」を通って電流が流れます。途中に抵抗があると流れにくくなる──これがオームの法則。

磁気回路もまったく同じ構造です。コイル(電源)が磁束を押し出し、鉄心という「流れやすい道」を通って磁束が流れます。途中に「磁気的な抵抗(磁気抵抗)」があると流れにくくなる──これが磁気回路のオームの法則です。

🔧 現場の声(田中さんへの一言)
変圧器・モータ・リレー──これらの設計には磁気回路の理解が必須です。
あなたが品質保証部で「変圧器の磁気飽和が発生して効率が落ちている」という現象を聞いたとき、それを理解する基礎がこの磁気回路。
電験三種の出題はこの実務直結の知識を確認するためです。
📘 関連記事:そもそも磁気とは何か?
【電験三種・理論】磁気とは何か?|磁力線・磁束・磁束密度の基礎 →

磁束Φや磁束密度Bがピンとこない方は、まずこちらから読むことをオススメします。

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この記事の核心:電気回路と磁気回路の「完全対応表」

ここがこの記事のクライマックス、というより「ここさえ覚えれば終わり」の最重要ポイントです。電気回路と磁気回路は、文字が違うだけで構造が完全に同じです。

役割 電気回路 磁気回路 単位
「押し出す力」
(源)
電圧 V 起磁力 Fm = NI V → A(アンペア)
「流れるもの」 電流 I 磁束 Φ A → Wb(ウェーバ)
「流れにくさ」 電気抵抗 R 磁気抵抗 Rm Ω → A/Wb
「流れやすさ」 導電率 σ 透磁率 μ S/m → H/m
基本式 V = R × I NI = Rm × Φ
🎯 たった1つの式に集約
電気回路:V = R × I(ボルト=オーム×アンペア)
磁気回路:NI = Rm × Φ(起磁力=磁気抵抗×磁束)

形が完全に一緒。だから磁気回路の問題は、電気回路と同じ手順で解けます。

起磁力 NI:磁束を押し出す「磁気の電圧」

電気回路の電源(電圧V)に対応するのが、磁気回路の起磁力 Fm = NI。これは「磁束を押し出す力」のことです。

📐 起磁力の式
Fm = NI [A]
N:コイルの巻数
I:コイルに流れる電流 [A]

ポイントは2つ。「巻数Nが多いほど起磁力が大きい」「電流Iが大きいほど起磁力が大きい」。直感的にわかりますね。コイルをグルグル巻けば巻くほど磁石としての力が強くなるし、流す電流を増やせばさらに強くなる。

⚠️ 単位の注意点
起磁力の単位は「A(アンペア)」です。
「N×I」を計算したらアンペア×回数のように見えるかもしれませんが、巻数Nは無次元(単なる回数)なので、結果はAになります。
教科書によっては「アンペアターン[AT]」と書かれることもありますが、正式な単位はA。

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磁気抵抗 Rm:磁束の流れにくさ

電気抵抗Rに対応するのが、磁気抵抗Rm。「磁束がどれだけ流れにくいか」を表します。

📐 磁気抵抗の式
Rm = ℓ / (μS) [A/Wb]
ℓ:磁路の長さ [m]
μ:透磁率 [H/m]
S:磁路の断面積 [m²]

これも電気抵抗の式 R = ρℓ/S(抵抗率×長さ÷断面積)と完全に同じ構造です。

電気抵抗 磁気抵抗
R = ρ × ℓ / S Rm = ℓ / (μS)
分子:抵抗率ρ × 長さ 分子:長さのみ
分母:断面積 分母:透磁率μ × 断面積
💡 暗記のコツ
電気抵抗は「抵抗率ρが分子(抵抗を増やす)」
磁気抵抗は「透磁率μが分母(抵抗を減らす)」
→ 透磁率は「磁束の流れやすさ」だから、大きいほど抵抗は小さくなると覚える。

なぜ鉄心を使うのか?──透磁率の差

変圧器やモータの鉄心が「鉄」でできている理由は、ここにあります。鉄は空気よりも透磁率μが数千倍大きいため、磁気抵抗が圧倒的に小さくなる。つまり「磁束を流しやすい道」として機能します。

🌬️

空気

透磁率μ ≈ μ₀(真空とほぼ同じ)
→ 磁気抵抗がとても大きい

⚙️

鉄(軟鉄)

透磁率μ ≈ μ₀ × 数千
→ 磁気抵抗が圧倒的に小さい

📘 関連記事:磁界HとB(磁束密度)の違い
【電験三種・理論】磁界Hと磁束密度Bの違いを完全理解|HとBを混同しないための実践ガイド →

透磁率μが「HとBをつなぐ係数」だと理解できると、磁気回路がもっとクリアになります。

磁束 Φ:磁気回路に「流れるもの」

電流Iに対応するのが、磁束Φ。つまり「磁気回路の中を実際に流れているもの」です。

📐 磁気回路のオームの法則
Φ = NI / Rm [Wb]
または
NI = Rm × Φ(電気のV=IRと同じ形)

電気回路で「電圧÷抵抗=電流」(I = V/R)と考えるのと同様に、磁気回路では「起磁力÷磁気抵抗=磁束」(Φ = NI/Rm)。これだけです。

⚠️ よくある混乱:磁束Φと磁束密度Bの違い
磁束Φ [Wb]:磁気回路を流れる「総量」(電流Iと同じイメージ)
磁束密度B [T]:単位面積あたりの磁束(電流密度Jと同じイメージ)
→ 関係式:B = Φ / S(断面積で割る)

試験本番では、まず「磁束Φを求めるのか、磁束密度Bを求めるのか」を最初に確認しましょう。Φが求まったら、断面積Sで割ればBが出ます。

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【過去問頻出】環状ソレノイドの計算例

それでは実際に、環状ソレノイド(ドーナツ型の鉄心にコイルを巻いたもの)の計算問題を解いてみましょう。R1(令和元年)・H26・H20と何度も過去問に出ている定番です。

📝 例題
平均磁路長 ℓ = 0.4 m、断面積 S = 4×10⁻⁴ m²、巻数 N = 1000、透磁率 μ = 2×10⁻³ H/m の環状ソレノイドに、電流 I = 0.5 A を流したとき、磁束 Φ はいくらか?

解き方は3ステップだけ

STEP 1

起磁力 NI を計算

NI = 1000 × 0.5 = 500 A

STEP 2

磁気抵抗 Rm を計算

Rm = ℓ / (μS)
  = 0.4 / (2×10⁻³ × 4×10⁻⁴)
  = 0.4 / (8×10⁻⁷)
  = 5×10⁵ A/Wb

STEP 3

オームの法則で磁束 Φ を求める

Φ = NI / Rm
  = 500 / (5×10⁵)
  = 1×10⁻³ Wb = 1 mWb

💡 解答
磁束 Φ = 1 mWb

たったこれだけです。NI を計算 → Rm を計算 → 割り算。電気回路でV÷Rで電流を求めるのと、まったく同じ手順です。

🔧 現場の声
本番ではSTEP 2のRm計算で「指数の処理」でミスりやすいので注意。
μS = 2×10⁻³ × 4×10⁻⁴ = 8×10⁻⁷ のように、指数の足し算(-3+(-4)=-7)を落ち着いて計算しましょう。

磁気抵抗の直列・並列合成も「電気と同じ」

ここまで来たら、残りも電気回路の知識がそのまま使えます。磁気回路に「途中で材料が変わる部分」(鉄心の途中に空気のすきまなど)があったとき、磁気抵抗の合成計算が必要になります。

🔗

直列の合成

Rm(合成)= Rm1 + Rm2 + ...
(電気抵抗の直列と同じ)

並列の合成

1/Rm(合成)= 1/Rm1 + 1/Rm2 + ...
(電気抵抗の並列と同じ)

ギャップ(空隙)がある磁気回路の典型問題

変圧器やモータでは、鉄心の一部に意図的にギャップ(空隙)を設けることがあります。これは「直列接続」になるので、磁気抵抗を単純に足し算すればOK。

📝 ギャップありの計算例
鉄心部分の磁気抵抗:Rm(鉄)= ℓ鉄 / (μ鉄 × S)
空隙部分の磁気抵抗:Rm(空気)= ℓ空気 / (μ₀ × S)
合成磁気抵抗:Rm(合成)= Rm(鉄)+ Rm(空気)
→ 磁束 Φ = NI / Rm(合成)
⚠️ ギャップの罠
鉄の透磁率は空気の数千倍。だからたった1mmの空隙でも、磁気抵抗の主要部分は空気側になります。
「鉄心が長くて空隙が短いから空隙の影響は小さい」と思いがちですが、透磁率の差で逆転するんです。

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磁気回路と電気回路の「違う点」3つ

ここまで「電気と同じ!」と説明してきましたが、完全に同じというわけではありません。試験で減点されやすい違いを3つ押さえておきましょう。

違い①:磁束は「漏れる」
電気回路では電流は導線を100%流れますが、磁束は鉄心の外にも一部漏れます(漏れ磁束)。だから理論計算と実測値に若干のズレが出ます。
違い②:磁気抵抗は「磁束に依存」する
電気抵抗Rは温度以外で変わりませんが、磁気抵抗Rmは磁束が大きすぎると「磁気飽和」を起こして急増します。これがB-H曲線の非線形性の原因です。
違い③:磁束には「保存則」がある
キルヒホッフの電流則(流れ込んだ電流=流れ出る電流)と同じ法則が、磁気回路でも成立します。分岐点で磁束は保存される──ここを使う問題が並列磁気回路で頻出。
📘 関連記事:アンペールの周回積分の法則も復習
【電験三種・理論】アンペールの周回積分の法則|ソレノイドの磁界計算を完全マスター →

「なぜ起磁力が NI なのか?」の根拠は、アンペールの周回積分にあります。深く理解したい方はぜひ。

まとめ:磁気回路は「文字を置き換えるだけのオームの法則」

磁気回路は「新しい単元」と思いがちですが、実はすでに知っている電気回路のオームの法則を流用するだけ。最後に要点を整理しましょう。

電気回路 磁気回路
電圧 V 起磁力 NI
電流 I 磁束 Φ
電気抵抗 R = ρℓ/S 磁気抵抗 Rm = ℓ/(μS)
V = R × I NI = Rm × Φ
💡 試験本番の3ステップ攻略法
起磁力 NI を計算(巻数×電流)
磁気抵抗 Rm = ℓ/(μS) を計算(指数計算に注意)
Φ = NI/Rm で磁束を求める
→ 直列接続なら Rm を足し算、並列接続なら逆数を足し算。電気回路と同じ手順。

磁気回路は「電気回路ですでに分かっていることの再利用」です。新しい公式を覚える必要はありません。電気回路でV=IRが解けるなら、磁気回路の問題も100%解けるようになります。今日からはR1・H26のような環状ソレノイド問題は、5分以内に確実に得点できる単元です。

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