- 過去問でいきなり「Rを0から∞まで変化させたとき、電流ベクトルの軌跡は?」と聞かれて、選択肢の半円や直線を見て頭が真っ白になった
- 参考書を読んでも「軌跡は円になる」とサラッと書いてあるだけで、なぜ円になるのかがまったく腑に落ちない
- そもそも「軌跡」という日本語が抽象的すぎて、何を求めているのかイメージできない
- B問題で出題されると配点が大きいので、できれば捨てたくない
- 「ベクトル軌跡」とは何か、中学生でもわかる言葉で説明
- 電流軌跡が半円になる回路と直線になる回路の見分け方
- 試験本番で使える「軌跡を10秒で予測する」3ステップ
- RL直列・RC直列・RL並列の典型パターン4選
こんにちは、シラスです。電験三種の「理論」科目で、多くの受験者が黙って投げ捨てる単元があります。それが「ベクトル軌跡」です。
でも、結論から言います。ベクトル軌跡は、「式の意味」を捨てて「絵の意味」だけ覚えれば、本番で10秒で答えが出ます。この記事では、複素数の難しい式変形は最小限にして、「なぜ半円になるのか」を1枚の絵で理解できることを目指します。
目次
ベクトル軌跡とは「ベクトルの先端が描く絵」のこと
まず、難しい言葉を全部捨てます。ベクトル軌跡を一言で言うと、こうです。
回路のどこか1つ(抵抗R、周波数fなど)を0から∞まで変化させたとき、
電圧や電流のベクトルの先端が描く「絵」のこと。
たとえるなら、砂浜で棒を持ったまま歩く人を想像してください。Rの値を変えていくと、ベクトルという棒の長さや向きが変わります。その棒の先っぽが砂浜に残す足跡──これがベクトル軌跡です。
「軌跡=跡(あと)」と日本語訳すると一気にわかりやすくなります。
英語では「locus(ローカス)」と言い、「点が動いてできる図形」のこと。
RやLが変わると電流ベクトルの先端が動く。その動いた跡が軌跡です。

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なぜ電験三種で「軌跡」を出題するのか?
そもそも、なぜわざわざ「軌跡」なんて出題するのでしょうか。ここを理解しておくと、勉強のモチベーションが変わります。
答えはシンプルです。「現場では回路の値が常に変化するから」です。
現場の例:負荷の変化
工場のモータが起動したり停止したりすると、配電系統から見た「負荷の抵抗R」は刻々と変化します。そのとき電流がどう振る舞うかを予測したい。
現場の例:周波数の変化
フィルタ回路では、入力する信号の周波数fが変化します。fが変わったときに電流や電圧がどう変わるかを「設計時に」予測したい。
つまりベクトル軌跡は、「もし○○が変わったら、回路はどうなる?」というシミュレーションを、グラフ1枚で表現する技術です。エンジニアにとっては超実用的な道具なんです。
電験三種で問われるのは、ほぼ100%が「Rを0から∞に変化させたとき」か「周波数fを変化させたとき」のどちらか。
この2パターンを完璧にすれば、本番で困りません。

【最頻出パターン①】RL直列でRを変化させると、電流軌跡は「半円」になる
電験三種で最もよく出るパターンがこれです。抵抗RとコイルLが直列に繋がった回路で、電源電圧V(一定)のとき、Rだけを0から∞まで動かすと──電流Iの先端は下向きの半円(おわん型)を描きます。
電流の大きさ:|I| = V / √(R² + (ωL)²)
→ Rが大きくなるほど分母が大きくなる → 電流|I|は小さくなる
→ R=0なら|I|=V/ωL(最大)、R=∞なら|I|=0(ゼロ)
ここまでは「式の上」の話。問題は「I の先端が、最大値からゼロまで、どんなルートで動くのか?」です。直線で動くのか、曲線で動くのか。これが軌跡問題の本質です。
まずは「両端の値」だけで動きをイメージする
複雑なことを考える前に、「Rが極端に小さいとき」と「極端に大きいとき」──この2つの極端な状況だけ想像してみましょう。これだけで軌跡の「始点」と「終点」が決まります。
| Rの値 | 回路の状態 | 電流Iの大きさ | 電流Iの位相 |
|---|---|---|---|
| R = 0 | Lだけの回路 (純誘導性) |
V / ωL (最大) |
電圧Vより 90°遅れ |
| R = ∞ | Rが無限大なので 電流が流れない |
0 (ゼロ) |
― (電流ゼロ) |
つまり電流ベクトルの先端は、「電圧Vから90°遅れた位置(最大点)」から出発して、「原点(ゼロ)」まで動く。これが確定しました。
問題は「2点の間をどう結ぶか」──直線?曲線?
ここでほとんどの初心者が止まります。「始点と終点はわかった。でもその間を、どう動くんだ?」と。
直感の予想(ハズレ)
「最大点から原点まで、まっすぐ直線で動くんじゃないの?」
→ これは不正解です。
実際の動き(正解)
電源電圧Vを直径とする円の上を、カーブを描いて滑っていく。
結果、下半円になる。
「なんで直線じゃなくて、わざわざ円になるの?」
この疑問に答えられるかどうかが、ベクトル軌跡を「暗記モノ」で終わらせるか、「理解した道具」にできるかの分かれ目です。
→ 次の章で、中学校で習った図形の定理だけを使って完全に説明します。
【電験三種・理論】インピーダンスの計算方法|RLC直列回路を「直角三角形」で完全攻略 →
「Rが変わるとインピーダンスZがどう変わるか」のイメージを先に固めると、軌跡の理解が一気に進みます。

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「半円になる理由」を中学数学だけで完全理解する
ここがこの記事のクライマックスです。「なぜ電流軌跡が半円なのか?」を、中学校で習う図形の性質だけで説明します。
カギは中学数学の「タレスの定理」
「円の直径に対して、円周上の任意の点から見た角度は必ず90°になる」
逆に言えば、「ある2点から見て直角を保ち続ける点の軌跡は、その2点を直径とする円」になる。
RL直列回路で、電圧V(一定)が抵抗にかかる電圧V_RとコイルにかかるV_Lに分かれます。重要なのは、V_RとV_Lは「常に直角の関係」だということ。
電源電圧Vを「直径」、電流Iの先端を「円周上の点」と見立てると、Rがどんな値であってもV_RとV_Lがピッタリ直角を保つ。これってまさに、タレスの定理そのものです。
電圧Vを直径とする円があり、Rが変わるたびに電流Iの先端はその円周の上をスーッと滑っていく。
R=0で「90°遅れた最下点」、R=∞で「原点」──この2点を結ぶ下半分の半円が電流軌跡になる。

【パターン②】RC直列なら「上半円」になる
RL直列が「下半円」なら、RC直列は逆で「上半円」になります。理由はシンプルで、コンデンサは電流が電圧より90°「進む」からです。
| 回路 | R=0のとき | R=∞のとき | 電流軌跡の形 |
|---|---|---|---|
| RL直列 | 電流が90°遅れる | 電流ゼロ | 下半円 |
| RC直列 | 電流が90°進む | 電流ゼロ | 上半円 |
【パターン③】RL並列でRを変化させると、軌跡は「直線」になる
ここで多くの人が混乱します。「直列なら半円、なら並列も半円かな?」と思いきや、並列回路では軌跡が「直線」になります。
並列回路では、各枝に流れる電流が独立に決まります。
・抵抗R側の電流I_R = V/R → Rが変わると大きさだけが変化(電圧と同位相)
・コイルL側の電流I_L = V/(ωL) → R変化の影響を受けない(一定)
→ 全体電流 I = I_R + I_L のうち、I_Rだけが横方向に伸び縮みするので軌跡は水平な直線になる
・直列で1つ動かす → 半円(タレスの定理)
・並列で1つ動かす → 直線(独立に動くから)
この対比だけ覚えれば、本番で迷わなくなります。
【電験三種・理論】複素数とjの意味|「なぜ交流で虚数が出てくるのか」を回転するベクトルで理解する →
「なんでjが90°回転なの?」がスッキリわかります。

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本番で使える「軌跡を10秒で予測する」3ステップ
ここまでの理屈がわかったら、本番で使える実戦テクニックを身につけましょう。3ステップで考えるだけで、選択肢を即座に絞り込めます。
「直列か並列か」を確認する
回路図を見て、変化させる素子(多くはR)が他の素子と直列に繋がっているか並列に繋がっているかを確認。
・直列 → 軌跡は半円
・並列 → 軌跡は直線
この時点で選択肢が半分に絞れます。
「LかCか」で上下を判断する
回路にあるリアクタンス素子がコイルLか、コンデンサCかを確認。
・Lあり → 電流は電圧より遅れる → 軌跡は下側(実軸の下)
・Cあり → 電流は電圧より進む → 軌跡は上側(実軸の上)
これで選択肢がさらに半分に絞れます。
「両端の値」で大きさを決める
変化させる素子(R)が0のときと∞のときの2点だけ計算。
・R=0でI=V/(ωL)、R=∞でI=0
この2点を結ぶ半円・直線を選択肢から探せば一発で決まる。
複素数の式変形でゴリ押そうとすると5分以上かかります。
でも上記の3ステップなら、10秒〜30秒で答えが出ます。
「式は捨てて、絵で考える」が攻略のカギです。
【電験三種・理論】インピーダンスの計算方法|RLC直列回路を「直角三角形」で完全攻略 →
直角三角形のイメージが固まれば、ベクトル軌跡の理解も加速します。

ベクトル軌跡で受験者がハマる3つの落とし穴
落とし穴①:「インピーダンス軌跡」と「電流軌跡」を混同する
ここがB問題で最大の罠です。問題文を読まずに「半円!」と決めつけると、反対の答えを選んでしまうことがあります。
インピーダンス軌跡(Z)
RL直列でRを変化させると、Zの先端は水平方向の直線を描く(jωLの位置から右へ伸びる)
電流軌跡(I)
同じRL直列でRを変化させると、Iの先端は下半円を描く(I = V/Z だから「逆数」の関係)
問題文に「電流のベクトル軌跡を答えよ」と書いてあるか「インピーダンスのベクトル軌跡を答えよ」と書いてあるかで、答えが直線か半円か正反対になります。試験本番では、まず問題文の主語を丸で囲む癖をつけましょう。
落とし穴②:周波数fを変化させる問題と混同する
変化させる対象が「R」ではなく「周波数f」になることもあります。この場合、L側のリアクタンスωL自体が変わるので、軌跡の形が変わります。基本はRを変化させる問題が大半ですが、フィルタ回路や共振回路ではfを動かすパターンも出題されます。
落とし穴③:「半円の中心」を勘違いする
RL直列の電流軌跡が描く半円の中心は「電源電圧Vの中点」です。決して「原点」ではありません。電源Vが直径なので、その中点が中心、半径は|V|/2になります。選択肢を見るときに、半円の中心位置に注目するとミスを防げます。
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まとめ:ベクトル軌跡は「絵」で覚えれば10秒で解ける
ベクトル軌跡は、複素数の式変形で攻略しようとすると沼にハマります。でも「絵のパターン」として覚えれば、本番で確実に得点できる単元になります。最後にこの記事の要点を整理しましょう。
| 回路パターン | 変化させる素子 | 電流軌跡の形 |
|---|---|---|
| RL直列 | R | 下半円 |
| RC直列 | R | 上半円 |
| RL並列 | R | 水平直線(下方向) |
| RC並列 | R | 水平直線(上方向) |
① 直列なら半円・並列なら直線(タレスの定理 vs 独立変化)
② Lなら下・Cなら上(位相の遅れ進み)
③ R=0と∞の2点を計算すれば確定
この3つを覚えれば、ベクトル軌跡の問題は「捨て問」から「サービス問題」に変わります。
ベクトル軌跡を「式」で攻略するのは、はっきり言って初心者には不可能です。でもこの記事のように「絵」で攻略すれば、中学校の図形の知識だけで本番得点に直結します。今日からベクトル軌跡は怖い単元ではなくなりました。

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