- 並列の合成インピーダンスを「Z = Z1×Z2 / (Z1+Z2)」で計算しようとしたら、分母に「3+j4」みたいな複素数が来てそこで完全にフリーズした
- 「複素数で割り算ってどうやるの?」と教科書を見ても、いきなり「共役を掛ける」と書いてあるだけで、なぜそれをするのか意味がわからない
- 並列計算は捨てて、いつもアドミタンスYで計算しているが、結局Yを Z に戻すときも同じ問題に直面する
- 本番ではB問題で並列回路が出るたびに、計算ミスで時間切れになる
- 「分母分子に共役を掛ける」テクニックがなぜ必要か、根本から理解できる
- 複素数の割り算を、中学で習った「分母の有理化」と同じ要領で解けるようになる
- RLC並列回路の合成インピーダンスを3ステップで電卓計算する方法
- 本番で時短になる「アドミタンス経由ルート」の使い分け
こんにちは、シラスです。電験三種「理論」の交流回路で、多くの受験者が計算の途中で完全に止まる場面があります。それが「複素インピーダンスの並列計算」。
結論から言います。複素数の割り算は、中学2年生で習った「ルートの有理化」と同じ手順で解けます。「j」が出てきても怖がる必要はありません。この記事では、分母に複素数が来たら一発で実数化する手順を、計算例つきで完全に解説します。
目次
なぜ並列計算でみんな詰まるのか?
直列回路なら、複素インピーダンスは足し算するだけです。Z = R + jωL のようにシンプル。でも並列になった瞬間、計算難易度が一気に跳ね上がります。
Z = Z1 × Z2 / (Z1 + Z2)
(電気抵抗の和分の積と同じ形)
公式自体はシンプル。問題は、Z1とZ2が複素数のとき、分母分子の両方が複素数になること。
Z = (3+j4)(5−j2) / (8+j2)
→分子は展開できるけど、分母の「8+j2」をどう処理する?
→複素数で「割る」って何?電卓で(8+j2)÷ をどう打つ?
→ここで思考停止
これを解決するのが、「共役複素数を分母分子に掛けて、分母を実数化する」テクニックです。次の章で、なぜそれが効くのかをじっくり説明します。
【電験三種・理論】複素数とjの意味|「なぜ交流で虚数が出てくるのか」を回転するベクトルで理解する →
「jって何だっけ?」がモヤッとしている方は、まずこちらから読むと並列計算の理解が一気に進みます。

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共役複素数とは「jの符号を反転したペア」
ここがこの記事のすべての出発点です。「共役(きょうやく)複素数」とは、何のことか?
ある複素数 a + jb に対して、
jの符号を反転させた a − jb を「共役複素数」と呼ぶ。
| 元の複素数 | 共役複素数 |
|---|---|
| 3 + j4 | 3 − j4 |
| 8 + j2 | 8 − j2 |
| 5 − j7 | 5 + j7 |
共役を掛けると魔法が起きる
共役複素数の何が嬉しいのか?元の複素数と共役を掛け算すると、jが消えて実数になるんです。これが計算の最重要トリックです。
(a + jb)(a − jb) = a² − (jb)²
= a² − j²b²
= a² − (−1)b² ← j²= −1
= a² + b²(実数!)
これは中学で習った「(a+b)(a−b) = a² − b²」(和と差の積)の公式そのまま。jが入っているだけで、本質は中学校レベルの展開です。
(3 + j4)(3 − j4)
= 3² − (j4)²
= 9 − j²×16
= 9 − (−1)×16
= 9 + 16
= 25(jが消えて実数になった!)

中学で習った「分母の有理化」と完全に同じ発想
ここで田中さんに、ぜひ思い出してほしいことがあります。中学2年生のとき、こんな計算を習いませんでしたか?
中学のルートの有理化
1 / (3 + √2)
↓ 分母分子に (3 − √2) を掛ける
= (3 − √2) / [(3+√2)(3−√2)]
= (3 − √2) / (9 − 2)
= (3 − √2) / 7
複素数の有理化
1 / (3 + j2)
↓ 分母分子に (3 − j2) を掛ける
= (3 − j2) / [(3+j2)(3−j2)]
= (3 − j2) / (9 + 4)
= (3 − j2) / 13
・√2が嫌だから、√2を消すために (3-√2) を掛ける
・jが嫌だから、jを消すために (3-j2) を掛ける
→ やっていることは、文字を √ から j に置き換えただけ。
つまり「複素数の割り算」とは、jを消すための有理化作業に他なりません。中学で習った技術の応用版なんです。怖がる必要はゼロ。

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並列インピーダンスを電卓で解く「3ステップ手順」
それでは実戦の手順を説明します。たった3ステップで、どんな並列回路も計算できます。
分子と分母を展開(FOIL法)
Z = Z1×Z2 / (Z1+Z2) の分子(積)と分母(和)をそれぞれ計算。
j² = −1 を忘れずに。中学で習った展開公式(FOIL法)と同じです。
分母分子に「分母の共役」を掛ける
分母が a + jb なら、共役 a − jb を分母分子の両方に掛ける。
分母は (a+jb)(a−jb) = a² + b² で必ず実数になる。
実部と虚部に分けて整理
分子は複素数のまま。分母が実数なので、分子の実部と虚部をそれぞれ分母で割る。
最終形:Z = (実数) + j(実数)
分子の展開でj² = −1を忘れると、実部と虚部が逆転してミスります。
たとえば (3+j4)(2+j5) = 6 + j15 + j8 + j²20 = 6 + j23 − 20 = −14 + j23
「j²=−1」のひと手間を忘れずに。

【計算例①】RL並列の合成インピーダンス
抵抗 Z1 = 3 [Ω] と、誘導性リアクタンス Z2 = j4 [Ω] が並列に接続されている。
合成インピーダンス Z を求めよ。
STEP 1:分子と分母を展開
= (3)(j4) / (3 + j4)
= j12 / (3 + j4)
STEP 2:分母の共役(3 − j4)を分母分子に掛ける
分子:j12 × (3 − j4) = j36 − j²48 = j36 + 48 = 48 + j36
分母:(3 + j4)(3 − j4) = 9 − j²16 = 9 + 16 = 25
STEP 3:実部と虚部に分けて整理
= 1.92 + j1.44 [Ω]
|Z| = √(1.92² + 1.44²) = √(3.69 + 2.07) ≈ √5.76 = 2.4 [Ω]
→ 並列なので合成インピーダンスは3Ωより小さい。妥当な値です。
この計算ができるようになると、変圧器の等価回路や送電線の充電容量を含む並列回路がスラスラ解けます。電気設計の人と話すときも「あ、共役掛けて有理化したやつね」と分かるようになります。

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【計算例②】R・L・Cすべて並列の場合
3つ以上の素子が並列に接続されている場合は、そのまま「Z1×Z2×Z3 / Z1+Z2+Z3」で解こうとすると沼にハマります。こういうときはアドミタンスY経由で解くのが圧倒的に速い。
R = 5 [Ω]、誘導性リアクタンス XL = 4 [Ω]、容量性リアクタンス XC = 2 [Ω] が並列に接続されている。合成インピーダンスを求めよ。
並列ではアドミタンスYで足し算するのが鉄則
Y = 1/Z(インピーダンスの逆数)
並列なら:Y(合成)= Y1 + Y2 + Y3(足し算でOK!)
並列ではインピーダンスを掛けたり割ったりしなくていい。アドミタンスを足すだけ。最後にYをZに戻すときに、共役掛けの有理化を1回やるだけです。
Y_L = 1/(j4) = −j0.25 (1/jの計算は次の章で詳説)
Y_C = 1/(−j2) = j0.5
Y(合成)= 0.2 + (−j0.25) + j0.5 = 0.2 + j0.25
最後にZ = 1/Y で戻す(ここで共役掛け)
↓ 分母分子に共役 (0.2 − j0.25) を掛ける
= (0.2 − j0.25) / [(0.2)² + (0.25)²]
= (0.2 − j0.25) / (0.04 + 0.0625)
= (0.2 − j0.25) / 0.1025
≈ 1.95 − j2.44 [Ω]
3つ以上の並列なら、アドミタンス経由のほうが計算ステップが半分以下に減ります。
「並列ならまずY」を口グセにしましょう。
【電験三種・理論】アドミタンスとは?|並列回路の計算が10倍ラクになる「逆数の魔法」 →
並列計算でアドミタンスを使う理由を、もっと深く理解できます。

時短テクニック:1/j = −j という裏技
並列計算で「1/j ってどうなる?」と止まる人が多いです。これにも有理化が使えますが、結論を覚えておくと一瞬で済みます。
・1/j = −j
・1/(−j) = j
・j × j = −1(j² = −1)
なぜ 1/j = −j になるのか?(証明)
1/j = (1×j) / (j×j)
= j / j²
= j / (−1)
= −j
・コイル:Y_L = 1/(jωL) = −j/(ωL) (=−j × サセプタンス)
・コンデンサ:Y_C = 1/(1/jωC) = jωC
→ 並列のRLC回路では、YL(−jの方向)とYC(+jの方向)が打ち消し合うことで共振が起きる。

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直列ならZ・並列ならY:使い分けまとめ
ここまでの内容を、本番で迷わない判断フローに整理しましょう。
| 回路 | 使う量 | 計算方法 | 有理化の必要性 |
|---|---|---|---|
| 直列 | インピーダンス Z | 単純に足し算 Z = Z1 + Z2 |
不要 |
| 並列 (2素子) |
インピーダンス Z または アドミタンス Y |
和分の積 Z = Z1Z2/(Z1+Z2) |
必要(共役掛け) |
| 並列 (3素子以上) |
アドミタンス Y (断然オススメ) |
単純に足し算 Y = Y1 + Y2 + Y3 |
最後の Z = 1/Y で1回必要 |
・「直列」と書いてあったら → Zで足し算
・「並列」と書いてあったら → まずYに直して足し算
・最後にZが必要なら、1回だけ共役を掛けて有理化
→ これで並列回路の計算ミスが激減します。

受験者がハマる「3つの典型ミス」
ミス①:j² = −1 の処理を忘れる
最頻発のミスです。展開しただけで終わらせて、j²を−1に変換し忘れる。
たとえば (1+j2)(3+j) = 3 + j + j6 + j²2 を、最後の j²2 = −2を忘れて
「3 + j7 + j²2」のまま計算するとアウト。必ず最後にj² → −1 の置換を確認しましょう。
ミス②:共役を「分子だけ」に掛けてしまう
共役は分母「だけ」または分子「だけ」に掛けるのではなく、分母分子の両方に同時に掛けるのがルールです。片方だけだと値が変わってしまいます。
「分数の値を変えずに、分母を実数化したい」のが目的だと意識しましょう。
ミス③:コンデンサの符号を間違える
コンデンサの容量性リアクタンスは「−j/(ωC) または 1/(jωC)」です。マイナスが付くことを忘れて、L と同じ符号で計算してしまう人が多い。
・コイル:jωL(+j=上向き=電圧進み)
・コンデンサ:−j/(ωC) = 1/(jωC)(−j=下向き=電圧遅れ)
→ ベクトル図で「LとCは逆方向」のイメージを最初に固めると、符号ミスが減ります。
【電験三種・理論】インピーダンスの計算方法|RLC直列回路を「直角三角形」で完全攻略 →
直列なら共役掛けは不要。先に直列のシンプルな世界を確実にしてから、並列に挑むのが正攻法です。

まとめ:並列計算は「中学の有理化」と同じ
複素インピーダンスの並列計算は、最初は壁に見えますが、中学で習った技術の応用に過ぎません。最後に要点を整理します。
① 共役複素数 = jの符号を反転したペア。掛け算するとjが消えて実数になる
② 分母に複素数が来たら、共役を分母分子に掛けて有理化(中学のルートと同じ発想)
③ 3素子以上の並列なら、アドミタンスY経由のほうが計算が圧倒的に速い
| 場面 | 解き方 |
|---|---|
| 直列回路 | Zを足し算するだけ |
| 並列回路(2素子) | 和分の積 + 共役掛け有理化 |
| 並列回路(3素子以上) | Yに直して足し算 → 最後にZに戻す |
今日からはB問題で並列回路が出てきても、「ハイ、共役掛けるだけね」と冷静に処理できます。複素数の有理化は、単なる計算テクニックではなく、本番で得点を1問増やすための武器です。電卓を叩く速さも、確実に上がります。

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