- リレーやモーターのスイッチを切ると「バチッ!」と火花が散るのはなぜ?
- コイルのエネルギーW=½LI²って結局どこに蓄えられているの?
- 「逆起電力」って言葉は聞くけど、何が逆なのか分からない
- フリーホイールダイオードを入れる本当の理由を理解したい
この記事を読めば、コイルのエネルギーが「磁界」という見えない場所に蓄えられること、そしてスイッチOFFの瞬間に超高電圧(逆起電力)が発生して火花を散らす仕組みが、図解だけで完全にわかります。
こんにちは、シラスです。前回は「コンデンサに蓄えられるエネルギー」を解説しました。今回はその対になるテーマ、コイル側のエネルギーと逆起電力です。
「リレーやモーターのスイッチを切った瞬間にバチッと火花が散る」現場でよく見るあの現象、実は過渡現象の最も劇的な例なんです。なぜ電源を切ったのに高電圧が出るのか?図解だけで腹落ちさせます。
目次
過渡現象マスターへの道|全7ステップの全体像
過渡現象の学習は、以下の7ステップで進めるのが最速です。順番を絶対に飛ばさないでください。前のステップを理解していないと、次でつまずきます。
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「電源を切ったのに、なぜ火花が散る?」がすべての出発点
工場の現場で、こんな経験はありませんか?
「設備の電源スイッチを切った瞬間、リレーのコイルからバチッ!と火花が散った…」
「モーターを止めたら、配線の接点が真っ黒に焦げていた…」
「電磁弁の制御回路で、トランジスタが何度も壊れる…」
これらは全部、同じ原因から起きています。それは…
⚡ コイルが「電流を維持しようとする力」
=逆起電力の正体
これを理解するには、まず「コイルの中に蓄えられているエネルギー」の正体を知る必要があります。
前回の記事で確認した「コイルの性格」は「電流を維持したがる」でしたよね。電源を切られて電流が止まりそうになると、コイルは「やめろ!」と抵抗します。その抵抗の正体が、この記事のテーマです。

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コイルのエネルギー公式 W=½LI²|形がコンデンサと「鏡写し」
コイルに蓄えられるエネルギーは、次の式で表されます。
🔄 コンデンサの公式と並べてみると
前回の記事で出てきたコンデンサのエネルギー公式と並べてみてください。驚くほどそっくりです。
🔋 コンデンサ(C)
蓄えるのは電圧Vのエネルギー。容量Cが大きいほど、電圧Vが高いほどたくさん蓄えられる。
🌀 コイル(L)
蓄えるのは電流Iのエネルギー。インダクタンスLが大きいほど、電流Iが大きいほどたくさん蓄えられる。
コンデンサが「電圧の2乗」でエネルギーを蓄えるのに対し、コイルは「電流の2乗」で蓄えます。電圧と電流が入れ替わっているだけで、構造は同じ。前の記事で「コンデンサは電圧、コイルは電流」と覚えたのと完全に一致します。

エネルギーは「磁界」という見えない場所に蓄えられている
「コイルにエネルギーが蓄えられる」と聞いても、ピンときませんよね。コンデンサでは「板と板の間の電界」に蓄えられました。コイルではどこでしょう?
答えは、コイルの周りにできる「磁界」の中です。コイルに電流が流れると、その周りに磁界(磁場)が作られ、その磁界そのものがエネルギーとして蓄えられているのです。
🚂 重い貨物列車でイメージする
前の記事で「コイル=重い水車」とたとえましたが、エネルギーの観点では「重い貨物列車」の方が分かりやすいです。
- 電流を流す=貨物列車を加速させる
- 蓄えられたエネルギー(½LI²)=走っている列車の運動エネルギー
- 急にブレーキをかける(スイッチOFF)=慣性で前に押し出される力=逆起電力
時速100kmで走っている貨物列車を、急に止められないですよね。同じように、コイルに流れている電流を急に止めることはできない。「動いているものを止めるには、それなりの時間とエネルギーが必要」という、すごく直感的な話なんです。
大型モーターほど「磁界エネルギー」が大きく、急停止すると逆起電力で配線・スイッチ・周辺機器を破壊します。だから工場では大型モーターに「ダイナミックブレーキ抵抗」を入れて、エネルギーを安全に逃がす設計をします。これは貨物列車の「制動装置」と全く同じ発想です。

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スイッチOFFの瞬間|なぜ高電圧が発生するのか
いよいよ核心です。スイッチを切った瞬間、コイルの中で何が起きているのか、ステップで見ていきましょう。
コイルに電流Iが流れていて、磁界エネルギー ½LI² が蓄えられている。コイルの周りには、電流に応じた磁界が安定して存在する。
電流の通り道が突然なくなる。電流が瞬時に0Aになろうとする。でも、コイルは「電流を維持したい」。
磁界エネルギーを使って、コイル自身が高電圧(逆起電力)を発生させる。これは「電流を流し続けるための、自家発電」のようなもの。
高電圧でスイッチの隙間の空気が絶縁破壊され、火花(アーク放電)として電流が流れる。蓄えていたエネルギーが熱と光に変わる。
🚂 貨物列車のたとえで再確認
時速100kmで走っている貨物列車の前に、突然壁が出現したらどうなるか想像してください。列車は壁をぶち破ろうとします。それが「逆起電力で空気の絶縁を破る=火花」と全く同じ現象です。
電流を急に止められない
↓
コイルが超高電圧を発生させる
↓
空気を絶縁破壊して電流を流す
↓
バチッ!火花が散る

逆起電力の大きさは何で決まる?|キーワードはdI/dt
コイルに発生する逆起電力の大きさは、次の式で決まります。
この式の主役は dI/dt。「電流が、どれだけ急激に変化したか」を表します。
🚗 車のブレーキで例えると
dI/dt は、車を運転中に「どれだけ急ブレーキをかけたか」と思ってください。
😌 緩やかに止まる
dI/dt が小さい=電流をゆっくり下げる
→ 逆起電力 v は小さい
→ 火花は出ない、または小さい
⚡ 急に止める
dI/dt が大きい=電流を瞬時に下げる
→ 逆起電力 v は超巨大
→ 派手に火花が散る、機器が壊れる
🤯 衝撃の事実:12V電源で1000Vが出る
具体的な数値で見てみましょう。インダクタンス L=10mH のコイルに、電流 1A が流れている状態で、スイッチを0.0001秒で切ったらどうなるか?
dI/dt の計算:
逆起電力 v の計算:
これでも100Vですが、もっと急激に切ると(例えば1μs=0.000001秒)、なんと10,000Vもの電圧が発生します。電源は12Vでも、逆起電力で1000倍以上の電圧が出るのです。
トランジスタやMOSFETの耐圧は通常50V〜600V程度。そこに数千Vの逆起電力が来たら、一発でアウトです。「リレーをトランジスタで制御したら、トランジスタがすぐ壊れる」というトラブルは、9割がこの逆起電力が原因です。

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そもそも「逆起電力」って、何が"逆"なの?
「逆起電力」という言葉、参考書ではよく出てくるけど、何が逆なのか説明されないことが多いですよね。ここで整理します。
🔄 電源電圧と「逆向き」だから逆起電力
スイッチがONで電流が流れているとき、電源の電圧は「電流を流す方向」に向いています。コイルにかかる電圧も同じ向き。
ところが、スイッチを切った瞬間、コイルが発生させる電圧は「電流を維持しようとする方向」=元の電源と逆向きになるのです。
🔥 スイッチOFFの瞬間
電源「もう流さない(切られた)」
コイル「いや、流すんだよ←」
逆方向に電圧が発生=逆起電力
公式 v = -L × (dI/dt) の「マイナス」は、まさに「電源と逆向き」を表しています。レンツの法則「誘導起電力は、変化を妨げる方向に発生する」の数式版です。
現場で「サージ電圧」「キックバック電圧」「フライバック電圧」と呼ばれているのも、すべてこの逆起電力のことです。呼び方が違うだけで、原理は全部同じ。コイルが電流を維持しようとした結果、発生する高電圧のことです。

対策:フリーホイールダイオードを並列に入れる
逆起電力で電子部品が壊れるなら、対策はどうすればいいか?答えは「コイルが暴れないように、エネルギーを逃がす道を作っておく」こと。これがフリーホイールダイオードの役割です。
🛣️ 「逃げ道」を作ってあげる発想
前述の貨物列車のたとえに戻ります。壁にぶつかる代わりに、横に「ループ状の引き込み線」を用意してあげればどうでしょう?列車は壁にぶつからず、ループの中をぐるぐる回って、ゆっくり減速できます。
🌀 コイル + ダイオード の場合:
- スイッチON中:ダイオードは逆方向なので電流は流れない(普通の動作)
- スイッチOFFの瞬間:コイルが発生させた逆起電力でダイオードが順方向になる
- 電流はダイオードを通ってループ内を循環する
- 抵抗成分でゆっくり減衰(火花も逆起電力も発生しない!)
📊 ダイオードあり vs なし の比較
| 項目 | ❌ ダイオードなし | ✅ ダイオードあり |
|---|---|---|
| 逆起電力の大きさ | 数百V〜数千V | 約0.6V(ダイオードのVf) |
| スイッチの火花 | バチッ!と派手に | 出ない |
| トランジスタの寿命 | すぐ壊れる | 長持ちする |
| コイルのエネルギー行先 | 空気の絶縁破壊(火花) | ダイオードと配線で熱に |
直流(DC)回路でリレー・モーター・電磁弁・ソレノイドなどの「コイル負荷」を制御するなら、フリーホイールダイオードは絶対に入れるべき部品です。たった数十円のダイオードを入れるだけで、トランジスタ・MOSFET・マイコンが壊れる事故を防げます。
フリーホイールダイオードとは?|モータ・リレー駆動で逆起電力を逃がす仕組み →
パワエレ設計の現場で使う、ダイオードの選び方・配置のポイントまで詳しく解説しています。

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エネルギーの行方|½LI²はどこへ消えた?
最後に、エネルギーの観点でまとめましょう。コイルに蓄えられていた½LI²のエネルギーは、スイッチOFFの後、どこへ消えるのでしょうか?
❌ ダイオードなしの場合
蓄えた ½LI² のエネルギーは…
- スイッチ接点でのアーク放電(火花)として光と熱に
- 接点の金属を溶かし、接点摩耗の原因に
- 電磁波(ノイズ)として周囲にばら撒かれる
→ 制御不能に放出される
✅ ダイオードありの場合
蓄えた ½LI² のエネルギーは…
- ダイオードと配線の抵抗成分で熱に
- コイルの巻線抵抗でも一部熱に
- すべて回路内のループ電流として安全に消費
→ コントロールされて消費される
どちらの場合も、エネルギー保存則は守られる
違うのは「どこで」「どんな速さで」消費されるか
エネルギーは消えません(エネルギー保存則)。問題は「制御不能に放出されるか、コントロールして消費するか」の違いだけです。だからエンジニアは「逃げ道(ダイオード)」を用意するのです。

まとめ:5つのポイントで完全理解
この記事で押さえるべきポイントを5つに圧縮します。
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① W=½LI² は「電流の運動エネルギー」
コイルに蓄えられるエネルギーは、走っている貨物列車の運動エネルギーと同じイメージ。電流が大きいほど、L が大きいほど、たくさん蓄えられる。
-
② エネルギーは「磁界」に蓄えられる
コンデンサが「電界」に蓄えるのに対し、コイルは「磁界」に蓄える。コイルの周りにできる目に見えない磁場こそがエネルギーの正体。
-
③ 逆起電力 v = -L × (dI/dt)
電流を急に止めるほど(dI/dtが大きいほど)、逆起電力は超巨大になる。12V電源でも数千Vの電圧が一瞬発生することがある。
-
④ 火花の正体は「絶縁破壊」
逆起電力でスイッチの隙間の空気が絶縁破壊され、アーク放電(火花)が発生。コイルが「電流を流し続けたい」というワガママの結果。
-
⑤ フリーホイールダイオードで安全に逃がす
コイルと並列にダイオードを入れると、エネルギーがループ内で安全に消費される。DC回路でコイル負荷を扱うなら必須の対策。
コイルとコンデンサ、両方のエネルギーを理解すれば、過渡現象は怖くなくなります。あとは過去問で計算パターンを身につけるだけ。次回の電験で得点源にしていきましょう。

📚 次に読むべき記事
本記事の対になる「コンデンサ側」のエネルギーを徹底解説。両方読むと過渡現象の理解が完成します。
本記事で出てきたダイオード対策を、パワエレ実務の視点で詳しく解説。回路設計に直結する知識。
逆起電力の根本原理「電磁誘導」を、ファラデーの法則から徹底解説。電験三種の頻出テーマ。
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