- P = √3 VIcosθ の「√3」がどこから来たのかわからない
- 公式を丸暗記しているけど、導出しろと言われたら無理…
- Y結線とΔ結線で同じ公式になるのが不思議でしょうがない
- 線間電圧・相電圧の変換で毎回混乱する
- 「√3」の正体を Y結線から導出する全過程
- 「√3」の正体を Δ結線から導出する全過程
- Y結線でもΔ結線でも「同じ公式」になる理由
- 三相電力の計算例を手を動かして解けるようになる
三相電力の公式 P = √3 VIcosθ。電験三種の受験者なら必ず使う、超重要公式です。
でも、こう思ったことはありませんか?
「なんで√3が出てくるの?」
単相交流の電力は P = VIcosθ でした。三相になった途端、√3 が突然現れる。しかもY結線でもΔ結線でも同じ公式。「なぜ?」と聞かれると、多くの人が答えられません。
この記事では、その「√3の正体」を、Y結線とΔ結線のそれぞれから一歩ずつ導出していきます。導出の過程を理解すれば、もう丸暗記は不要です。忘れても自分で導けるようになります。
【電験三種・理論】三相交流とは?|単相との違いと「3本の電線」の秘密を完全図解 →
【完全図解】スター結線とデルタ結線の違い|Y結線・Δ結線の特徴を徹底比較 →
【電験三種・理論】交流電力の計算|P・Q・Sを「電力三角形」で一発理解 →
目次
🔑 まず結論|三相電力の公式はこれだけ
三相電力の公式(Y結線でもΔ結線でも同じ!)
有効電力:P = √3 VL IL cosθ [W]
無効電力:Q = √3 VL IL sinθ [var]
皮相電力:S = √3 VL IL [VA]
VL:線間電圧 [V]、IL:線電流 [A]、θ:負荷の力率角
単相交流の P = VIcosθ に比べて、√3 が掛かっているだけ。形はほぼ同じです。
しかもこの公式は、Y結線でもΔ結線でも同じです。結線方式に関係なく使えます。なぜそうなるのか? これから一歩ずつ導出していきましょう。
導出の出発点|「1相分の電力 × 3」から始める
三相電力の導出のカギは、次のシンプルな考え方です。
P3φ = 3 × VP IP cosθ
VP:相電圧、IP:相電流
対称三相交流では、3つの相がまったく同じ電力を消費します。だから、1相分を計算して3倍するだけ。ここまでは簡単ですよね。
問題は、この「VP(相電圧)」と「IP(相電流)」を、計測しやすい「VL(線間電圧)」と「IL(線電流)」に置き換えるとき。ここで√3が登場するのです。
実務では、測定器で計測できるのは「電線と電線の間の電圧(線間電圧VL)」と「電線を流れる電流(線電流IL)」です。回路の内部にある相電圧VPや相電流IPは直接測れません。だから公式を「線間の値」で書き直す必要があるのです。

⭐ 導出①|Y結線(スター結線)からの導出
Y結線の電圧・電流の関係をおさらい
スター結線とデルタ結線の記事で学んだ通り、Y結線では次の関係が成り立ちます。
電圧の関係
VL = √3 × VP
線間電圧 = √3 × 相電圧
(相電圧が√3倍に拡大される)
電流の関係
IL = IP
線電流 = 相電流
(Y結線では電流はそのまま通過)
Y結線からの導出(4ステップ)
単相交流の電力の公式をそのまま使います。
対称三相では3相とも同じ電力なので、3倍するだけ。
Y結線の関係式 VL = √3 VP を変形すると VP = VL / √3。
また IP = IL(そのまま)。これを代入します。
3 / √3 = √3 なので…
「3(3相分を合計)」÷「√3(相電圧→線間電圧の変換)」= 3/√3 = √3。つまり、「3相分を足す」と「電圧の変換」の2つの操作が組み合わさって、結果的に√3が残るのです。

🔺 導出②|Δ結線(デルタ結線)からの導出
Δ結線の電圧・電流の関係をおさらい
電圧の関係
VL = VP
線間電圧 = 相電圧
(Δ結線では電圧はそのまま)
電流の関係
IL = √3 × IP
線電流 = √3 × 相電流
(相電流が√3倍に拡大される)
Y結線では電圧に√3が登場し、Δ結線では電流に√3が登場する。ちょうど逆の関係ですね。
Δ結線からの導出(4ステップ)
(Y結線のときと全く同じスタート)
(ここもY結線と同じ)
Δ結線では VP = VL(そのまま)。
IL = √3 IP を変形すると IP = IL / √3。
Y結線のときと同じく 3 / √3 = √3 なので…
Y結線では「電圧を変換して」√3が出る。Δ結線では「電流を変換して」√3が出る。変換する対象は違うのに、最終的にまったく同じ公式 P = √3 VLILcosθになる! これが三相電力の公式の美しさです。

🔍 なぜ同じ公式になるのか?|「3/√3 = √3」の数学的カラクリ
Y結線とΔ結線の導出を並べて比較する
| ステップ | ⭐ Y結線 | 🔺 Δ結線 |
|---|---|---|
| 出発点 | 3 VP IP cosθ | 3 VP IP cosθ |
| VPの変換 | VP = VL / √3 | VP = VL(そのまま) |
| IPの変換 | IP = IL(そのまま) | IP = IL / √3 |
| 代入結果 | 3 × (VL/√3) × IL × cosθ | 3 × VL × (IL/√3) × cosθ |
| 最終結果 | √3 VL IL cosθ | √3 VL IL cosθ |
ご覧の通り、「/ √3」が電圧に入るか電流に入るかの違いだけで、掛け算の結果は同じになります。掛け算は順番を入れ替えても結果が変わらない(交換法則)ので、当然同じ答えになるわけです。
Y結線:3 × (VL/√3) × IL = (3/√3) × VL IL = √3 VL IL
Δ結線:3 × VL × (IL/√3) = (3/√3) × VL IL = √3 VL IL
どちらも「3 / √3 = √3」という計算が核心。これが√3の正体です。

✏️ 計算例|三相電力を実際に求めてみよう
例題①:線間電圧と線電流が与えられた場合
三相交流回路で、線間電圧 VL = 200V、線電流 IL = 10A、力率 cosθ = 0.8(遅れ)。
有効電力P、無効電力Q、皮相電力Sを求めなさい。
S = √3 × VL × IL = √3 × 200 × 10 = 1.732 × 2000 ≈ 3464 VA ≈ 3.46 kVA
P = √3 × VL × IL × cosθ = 3464 × 0.8 ≈ 2771 W ≈ 2.77 kW
cosθ = 0.8 → sinθ = 0.6
Q = √3 × VL × IL × sinθ = 3464 × 0.6 ≈ 2078 var ≈ 2.08 kvar
例題②:1相分の値から三相電力を求める場合
Y結線の平衡三相負荷に線間電圧 VL = 400V を印加したところ、1相あたりのインピーダンスが Z = 20Ω(力率角θ = 37°、cosθ = 0.8)であった。三相電力Pを求めなさい。
Y結線なので VP = VL / √3 = 400 / √3 ≈ 231 V
IP = VP / Z = 231 / 20 ≈ 11.55 A(= IL)
方法A:P = √3 × VL × IL × cosθ = √3 × 400 × 11.55 × 0.8 ≈ 6400 W
方法B:P = 3 × IP² × R = 3 × 11.55² × (20 × 0.8) = 3 × 133.4 × 16 ≈ 6403 W ✅
方法A(√3VLILcosθ)と方法B(3IP²R)で同じ答えが出れば、計算は正しいと確信できます。交流電力の記事で学んだダブルチェック法は、三相でもそのまま使えます。

📝 まとめ|三相電力の「√3」をもう忘れない
この記事の要点を総整理
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 出発点 | 三相電力 = 1相分の電力 × 3 = 3VPIPcosθ |
| Y結線の変換 | VP = VL/√3 を代入 → 3/√3 = √3 |
| Δ結線の変換 | IP = IL/√3 を代入 → 3/√3 = √3 |
| √3 の正体 | 「3相合計」÷「線間⇔相の√3変換」= 3/√3 = √3 |
| 最終公式 | P = √3 VLILcosθ(Y結線でもΔ結線でも同じ) |
| ダブルチェック | √3VLILcosθ と 3IP²R の2つで検算 |
VPIPcosθ を書く
三相電力にする
VL,ILに変換
が自動的に登場
「√3はどこから来るのか?」に答えられるようになったあなたは、三相電力の公式を「理解して使える」レベルに到達しました。もう丸暗記に頼る必要はありません。忘れたら「1相分 × 3 → 線間に変換 → 3/√3 = √3」のステップを踏めば、自力で導出できます。この「導出できる力」こそが、電験三種の合格に直結する真の実力です。

📚 次に読むべき記事
三相交流の基礎。120°位相差の意味と電線3本の理由を解説。
3つの条件と「va+vb+vc=0」の証明。√3導出の前提知識です。
VL=√3VPとIL=√3IPの導出元。√3変換の根拠記事。
単相交流の電力計算と電力三角形。三相電力の公式の土台です。
力率の基礎をビールの泡で解説。三相電力にもcosθは登場します。
P・Q・Sの意味の違いを深掘り。三相の公式でもP・Q・Sの構造は同じです。
cosθ=1.0になる特別な状態。三相でも共振は出題されます。
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