理論科目の解説

有効電力・無効電力・皮相電力の違いと計算|P・Q・Sを電力三角形で一発理解

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

😣 こんな悩みはありませんか?
  • P=VIcosθ、Q=VIsinθ、S=VI…公式が多すぎて覚えられない
  • 「電力三角形」と「インピーダンス三角形」の関係がわからない
  • 力率改善の計算問題で、進相コンデンサの容量が求められない
  • 有効電力・無効電力・皮相電力の「計算」になると手が止まる
✅ この記事でわかること
  • 電力三角形の「なぜそうなるか」を直角三角形で完全理解
  • P・Q・Sを求める全公式を「1つの三角形」で覚えるコツ
  • インピーダンス三角形との対応関係で「丸暗記不要」になる
  • 力率改善の計算を例題つきで解けるようになる

電験三種の交流回路で、避けて通れないのが交流電力の計算です。

有効電力P、無効電力Q、皮相電力S。さらに力率cosθ、sinθ、tanθ…。公式が多すぎて「もう無理」と感じていませんか?

でも、安心してください。実はたった1つの直角三角形(電力三角形)を描けるようになれば、すべての公式は「見ればわかる状態」になります。丸暗記は一切不要です。

この記事では、力率(cosθ)の記事と有効電力・無効電力・皮相電力の記事で学んだ知識を前提に、「計算で使いこなす」ことにフォーカスします。手を動かしながら一緒にマスターしていきましょう。

📘 前提知識(まだ読んでいない方はこちらから)
【完全図解】力率(cosθ)とは?|「電気を無駄遣いしている度合い」を解説 →

【完全図解】有効電力・無効電力・皮相電力の違い →
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結論|まず30秒でわかる答え

交流電力は、有効電力P・無効電力Q・皮相電力Sの3つを直角三角形(電力三角形)で考えると整理できます。P=VIcosθ[W]、Q=VIsinθ[var]、S=VI[V·A]で、S²=P²+Q²の関係があります。力率cosθ=0.8ならsinθ=0.6で、P:Q:S=4:3:5になります。

📐 交流電力の全公式を「電力三角形」1つに集約する

電力三角形とは?|P・Q・Sが作る直角三角形

交流電力の計算で最も大切な図が「電力三角形」です。有効電力P(底辺)、無効電力Q(高さ)、皮相電力S(斜辺)が直角三角形を作ります。

📐 電力三角形
底辺 → 有効電力 P [W](実際に仕事をする電力)
高さ ↑ 無効電力 Q [var](行ったり来たりする電力)
斜辺 ↗ 皮相電力 S [VA](送られる電力の総量)
角度 θ 位相角(電圧と電流のズレの大きさ)

この三角形から、三角関数の定義をそのまま当てはめるだけで、すべての公式が導けます。

📐 電力三角形から導ける公式

cosθ = P / S → P = S cosθ = VI cosθ

sinθ = Q / S → Q = S sinθ = VI sinθ

tanθ = Q / P → Q = P tanθ

S² = P² + Q²(三平方の定理)
💡 丸暗記が不要になる理由
直角三角形を描いて「底辺÷斜辺 = cosθ」「高さ÷斜辺 = sinθ」と読み取るだけ。三角関数の定義そのものなので、忘れようがないのです。試験本番では、まず電力三角形をメモ用紙に描くことから始めましょう。

インピーダンス三角形との「完全対応」が最強の武器

インピーダンスの計算の記事で登場した「インピーダンス三角形(R, X, Z)」を覚えていますか? 実は、電力三角形はインピーダンス三角形とまったく同じ構造をしています。

三角形の辺 インピーダンス三角形 電力三角形 変換の関係
底辺 R [Ω] P [W] P = I²R
高さ X [Ω] Q [var] Q = I²X
斜辺 Z [Ω] S [VA] S = I²Z
角度 θ cosθ = R/Z cosθ = P/S どちらも同じθ

つまり、インピーダンス三角形の各辺にI²を掛けると、電力三角形に変身するのです。逆に言えば、回路のR・X・Zがわかれば、I²を掛けるだけでP・Q・Sも即座に求まります。

📐
インピーダンス三角形
R, X, Z [Ω]
→ ×I² →
⚡
電力三角形
P, Q, S [W, var, VA]
おすすめの本

「交流電力」を試験の得点につなげるなら、前後の単元とあわせて教科書で押さえておくと安心です。TAC出版『みんなが欲しかった!』シリーズの、電験三種「理論」の教科書と問題集が1冊になった本です。

🔢 交流電力の公式を「全パターン」整理する

V・I・θがわかるとき(基本パターン)

電圧V、電流I、位相角θ(または力率cosθ)が与えられたときの公式です。最も基本的で、最も出題頻度が高いパターンです。

📐 基本公式(V・I・θ型)

皮相電力:S = VI [VA]
有効電力:P = VI cosθ [W]
無効電力:Q = VI sinθ [var]

R・X・Z・Iがわかるとき(回路定数パターン)

回路のインピーダンス要素(R, X, Z)と電流Iが与えられるパターンです。P = I²R は超頻出なので必ず覚えてください。

📐 回路定数型の公式

皮相電力:S = I²Z = V²/Z [VA]
有効電力:P = I²R = V²R/Z² [W]
無効電力:Q = I²X = V²X/Z² [var]
⚠️ なぜ P = I²R なのか?
P = VI cosθ に、V = IZ と cosθ = R/Z を代入すると…

P = (IZ) × I × (R/Z) = I² × Z × R/Z = I²R

この導出を理解しておけば、公式を忘れても自力で導けます。「Z が約分で消える」のがミソです。

力率改善で使う公式(tanθパターン)

力率改善の問題では、tanθ = Q/Pを使う場面が多く出てきます。改善前と改善後のtanθの差から、必要なコンデンサ容量を求めます。

📐 力率改善に必要なコンデンサ容量

QC = P (tanθ₁ − tanθ₂) [var]

θ₁:改善前の位相角、θ₂:改善後の位相角
P:有効電力(改善前後で変わらない)
💡 なぜ有効電力Pは変わらないのか?
進相コンデンサはあくまで「無効電力Qを打ち消す」ための装置です。実際に仕事をする有効電力Pは、コンデンサを追加しても変化しません。だから「改善前のP」と「改善後のP」は同じ値を使えるのです。

✏️ 計算例①|電圧・電流・力率からP・Q・Sを求める

例題:V=200V、I=10A、cosθ=0.8(遅れ)の負荷

📝 問題
単相交流回路で、電圧 V = 200V、電流 I = 10A、力率 cosθ = 0.8(遅れ)の負荷があります。
有効電力P、無効電力Q、皮相電力Sをそれぞれ求めなさい。
STEP 1 ─ 皮相電力S

S = VI = 200 × 10 = 2000 VA = 2 kVA
cosもsinも付かない一番シンプルな計算です。

STEP 2 ─ 有効電力P

P = VI cosθ = 200 × 10 × 0.8 = 1600 W = 1.6 kW
実際に仕事をする電力です。電気代に直結します。

STEP 3 ─ sinθを求める

cosθ = 0.8 → sinθ = 0.6
sin²θ + cos²θ = 1 より sinθ = √(1 − 0.64) = √0.36 = 0.6

STEP 4 ─ 無効電力Q

Q = VI sinθ = 200 × 10 × 0.6 = 1200 var = 1.2 kvar
電源と負荷を行ったり来たりするだけの電力です。

✅ 検算(三平方の定理)
S² = P² + Q²
2000² = 1600² + 1200²
4,000,000 = 2,560,000 + 1,440,000 = 4,000,000 ✅
💡 試験テクニック:cosθ = 0.8 → sinθ = 0.6 は暗記!
cosθ = 0.8(力率80%)のとき、P:Q:S = 1600:1200:2000 = 4:3:5。おなじみのピタゴラス数です。電験三種では「cosθ = 0.8 → sinθ = 0.6」のセットが最も頻出するので、丸暗記しておきましょう。
おすすめの本

電気回路の基本があいまいなときは、入門書で土台を固めておくと理解が進みます。電気回路の基本を、つまずいている人向けにやさしく解説した入門書です(オーム社)。

✏️ 計算例②|回路定数(R, X, Z)からP・Q・Sを求める

例題:R=30Ω、XL=40ΩのR-L直列回路にV=100Vを印加

📝 問題
R = 30Ω、XL = 40Ω が直列に接続された回路に、V = 100V の交流電圧を加えた。
(1) インピーダンスZ、(2) 電流I、(3) 力率cosθ、(4) P・Q・S を求めなさい。
STEP 1 ─ Z を求める

Z = √(R² + XL²) = √(30² + 40²) = √(900 + 1600) = √2500 = 50Ω
※ 3:4:5 のピタゴラス数パターンです!

STEP 2 ─ I を求める

I = V / Z = 100 / 50 = 2A

STEP 3 ─ cosθ を求める

cosθ = R / Z = 30 / 50 = 0.6(遅れ)

STEP 4 ─ P・Q・S を求める

P = I²R = 2² × 30 = 120 W
Q = I²X = 2² × 40 = 160 var
S = I²Z = 2² × 50 = 200 VA

✅ 検算(2つの方法で確認)
① S² = P² + Q² → 200² = 120² + 160² → 40000 = 14400 + 25600 = 40000 ✅

② P = VIcosθ = 100 × 2 × 0.6 = 120 W ✅(STEP4と一致)
💡 2つの解法を持つことが合格のカギ
P = VIcosθ でも P = I²R でも同じ答えが出ます。片方の公式で解いて、もう片方で検算すれば、計算ミスを即座に発見できます。電験三種はマークシート方式なので、計算ミス1つが致命傷になります。必ずダブルチェックの習慣をつけましょう。

✏️ 計算例③|力率改善に必要なコンデンサ容量を求める

例題:cosθを0.6から0.9に改善するために必要なQCは?

📝 問題
有効電力 P = 150 kW、力率 cosθ₁ = 0.6(遅れ)の工場がある。
力率を cosθ₂ = 0.9(遅れ)に改善するには、何 kvar の進相コンデンサが必要か。
STEP 1 ─ 改善前のtanθ₁を求める

cosθ₁ = 0.6 → sinθ₁ = 0.8(3:4:5 の比率)
tanθ₁ = sinθ₁ / cosθ₁ = 0.8 / 0.6 = 4/3 ≈ 1.333

STEP 2 ─ 改善後のtanθ₂を求める

cosθ₂ = 0.9 → sinθ₂ = √(1 − 0.81) = √0.19 ≈ 0.436
tanθ₂ = 0.436 / 0.9 ≈ 0.484

STEP 3 ─ 必要なQCを求める

QC = P (tanθ₁ − tanθ₂)
= 150 × (1.333 − 0.484)
= 150 × 0.849
≈ 127.4 kvar

電力三角形の変化を図で確認する

😰

改善前(cosθ=0.6)

P = 150 kW

Q = P × tanθ₁ = 150 × 1.333 ≈ 200 kvar

S = P / cosθ₁ = 150 / 0.6 = 250 kVA

三角形が「縦長」= 無駄が多い

→
😊

改善後(cosθ=0.9)

P = 150 kW(変わらない)

Q = 200 − 127.4 ≈ 72.6 kvar

S = 150 / 0.9 ≈ 166.7 kVA

三角形が「横長」= 無駄が少ない

⚠️ 力率改善の効果は「皮相電力Sの減少」に表れる
改善前 S = 250 kVA → 改善後 S ≈ 167 kVA。約33%も減少しました。これは「電線を流れる電流が33%減った」ことを意味します。電線の損失(I²R)は電流の2乗に比例するので、損失は 約55%減少 する計算です。力率改善の効果がいかに大きいかがわかりますね。

実務での活用|電気代と設備容量に直結する知識

電気代は「有効電力P」の積算量(kWh)で決まる

家庭の電気代は、有効電力Pを時間で積算した電力量(kWh)で計算されます。無効電力Qが多かろうが少なかろうが、家庭の電気メーターには影響しません。

電気料金の計算式(家庭用)

電気料金 = 有効電力P [kW] × 使用時間 [h] × 単価 [円/kWh]

単価は約27〜30円/kWh(家庭用の目安)

工場の電気代は「力率」で変わる|無効電力Qも間接的に影響

ただし、高圧契約(6600Vで受電する工場など)では話が変わります。電力会社は力率割引・割増制度を設けているため、無効電力Qが多い(=力率が悪い)と基本料金が最大15%割増になります。

力率による電気代の変化(基本料金100万円/月の工場の場合)

力率 割引/割増 実際の基本料金 年間差額
100% 15%割引 85万円 −180万円/年
85%(基準) ±0 100万円 基準
70% 15%割増 115万円 +180万円/年

力率100% vs 70% で年間360万円の差!

設備容量は「皮相電力S」で決まる

変圧器の容量が「◯◯kVA」と表記されるのは、変圧器にとって重要なのは流れる電流の総量だからです。有効電力か無効電力かに関係なく、電流が多ければ巻線が発熱します。

たとえば、有効電力800kWの負荷であっても、力率が0.8なら皮相電力は1000kVA。1000kVAの変圧器が必要です。力率を改善して0.95にすれば、皮相電力は約842kVA。一回り小さい変圧器で済むのです。

関連記事
【電験三種】変圧器の損失と効率|鉄損・銅損・最大効率条件を完全マスター →

変圧器の容量(kVA)と損失の関係を深く理解できます。

三相交流での電力計算(予告)

この記事では単相交流を前提に解説してきましたが、実務で最も多い三相交流では、公式にすべて √3 が付きます。

三相交流の電力公式(予告)

P = √3 × VL × IL × cosθ [W]
Q = √3 × VL × IL × sinθ [var]
S = √3 × VL × IL [VA]

VL:線間電圧、IL:線電流

√3 が付く理由は三相交流の記事で詳しく解説します。まずはこの記事で単相交流のP・Q・Sを完璧にマスターしてから進みましょう。

📝 まとめ|交流電力の計算を得点源にする3つのステップ

この記事の要点を総整理

項目 ポイント
電力三角形 P(底辺)、Q(高さ)、S(斜辺)の直角三角形。全公式はここから導出できる
基本公式 P = VIcosθ、Q = VIsinθ、S = VI、S² = P² + Q²
回路定数型 P = I²R、Q = I²X、S = I²Z(インピーダンス三角形×I²)
力率改善 QC = P(tanθ₁ − tanθ₂)。Pは改善前後で不変
暗記必須 cosθ = 0.8 → sinθ = 0.6(比率 4:3:5)
検算の習慣 VIcosθ と I²R の2つの解法でダブルチェック
📐
STEP 1
電力三角形を
メモ用紙に描く
→
🔢
STEP 2
三角関数の定義で
公式を読み取る
→
✅
STEP 3
2つの解法で
ダブルチェック
🌸 最後にひとこと
交流電力の計算は、一見すると公式が多くて圧倒されます。でも、「電力三角形を1つ描けば全部わかる」という事実を知ったあなたは、もう大丈夫。この記事の3つの計算例を3回ずつ解き直せば、電力計算は確実に得点源になります。次は三相交流の電力計算に挑戦してみましょう。あなたの合格を応援しています。
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シラス
電験三種 / QC検定1級 / パワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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