- 「FETプローブ」「アクティブプローブ」という言葉は聞くけど、普通のプローブと何が違うのかわからない
- 速い信号を測ったら波形がなまって(鈍って)しまい、本当の姿が見えない
- 高いプローブを買う前に、自分の測定に本当に必要なのか判断したい
- FET(アクティブ)プローブとは何か、を一言で言えるようになる
- なぜ高周波・低容量の測定にFETプローブが必要なのか(受動プローブとの違い)
- FETプローブのメリット・デメリットと、いつ使うべきかの判断基準
FET(アクティブ)プローブとは、先端にFET(電界効果トランジスタ)を使った増幅回路を内蔵し、入力容量を1pF前後まで小さくしたプローブです。受動プローブは入力容量が10〜20pFあり、速い信号を測ると波形を鈍らせてしまいます。FETプローブは容量が小さく回路への負荷が少ないため、高周波信号を歪ませずに測れます。ただし測れる電圧範囲が狭く、電源が必要で高価という弱点があります。
目次
FET(アクティブ)プローブとは?
FETプローブとは、プローブの先端にFET(電界効果トランジスタ)を使った小さな増幅回路を内蔵したプローブです。この内蔵回路が信号を一度受け止めてから送り出すため、「アクティブ(能動的)プローブ」とも呼ばれます。
対して、私たちが普段使う付属のプローブは「受動(パッシブ)プローブ」といい、抵抗とコンデンサだけでできた電源のいらないシンプルなものです。FETプローブはここに能動部品(FET)を加えることで、受動プローブにはできない測定を可能にしています。
「FETプローブ」「アクティブプローブ」「能動プローブ」はほぼ同じものを指します。先端にFETを使った能動回路を持つプローブ、と覚えればOKです。
そもそも受動プローブの仕組みや限界については 受動プローブの構造と補償調整 で解説しています。両者を比べると違いがよくわかります。
なぜFETプローブが必要?「プローブが波形を壊す」問題
実は、プローブを当てるだけで、測りたい波形が変わってしまうことがあります。これを「プローブローディング(プローブによる負荷)」といいます。FETプローブが必要になる最大の理由がこれです。
犯人は「入力容量」
どんなプローブにも、先端に小さな「入力容量(コンデンサ成分)」があります。受動プローブはこれが10〜20pFあります。たった十数pFですが、速い信号(高周波)になるほど、この容量が信号の足を引っ張ります。
イメージは「シャープな立ち上がりの信号に、おもり(容量)をぶら下げる」感じです。おもりが重い(容量が大きい)と、信号がキビキビ動けず、立ち上がりがなまって(鈍って)しまいます。ゆっくりした信号なら問題ありませんが、高速な信号ほど影響が大きくなります。
高速なクロック信号を受動プローブで測ったら、立ち上がりが鈍ってリンギングが消えてしまったことがあります。FETプローブに替えた途端、本来のシャープな波形とリンギングがはっきり見えました。波形が「きれいすぎる」とき、それはプローブが真実を隠している可能性があります。
FETプローブは「おもり」が極めて軽い
FETプローブの入力容量は1pF前後(製品によっては1pF以下)と、受動プローブの10分の1以下です(出典:T&Mコーポレーション「プローブの種類と特徴」)。おもりが極めて軽いので、速い信号でも足を引っ張らず、本来の波形をそのまま測れます。これが「高周波・低容量測定にFETプローブが必要」と言われる核心です。

FETプローブの仕組み|なぜ容量を小さくできるのか
受動プローブは、長いケーブル自体が信号の通り道です。このケーブルにも容量があり、それがプローブ全体の容量を大きくしてしまいます。一方FETプローブは、先端のFET回路で信号を一度受け止めてから、改めてオシロへ送り出します。
ポイントは、信号を測る部分とケーブルを切り離していること。測定対象から見えるのは小さなFETの入力だけなので、ケーブルの容量が測定に悪さをしません。だから入力容量を1pF前後まで小さくできるのです。
また、FETは入力抵抗(入力インピーダンス)が非常に高いため、測定対象から電流をほとんど奪いません。電圧も電流も乱さない、つまり「そっと触れて、本来の波形を見る」のが得意なプローブです。
先端のFET回路でケーブルを切り離す → 入力容量が極小(約1pF)→ 高速信号を鈍らせない → 本来の波形が見える
FETがなぜ高入力インピーダンスなのか、その原理は FET(電界効果トランジスタ)の種類と動作原理 で詳しく解説しています。

受動プローブとアクティブプローブの違い
両者の違いを一覧でまとめます。「どちらが優れている」ではなく、用途が違うと理解するのが正解です。
受動(パッシブ)プローブ
- 抵抗・コンデンサだけ/電源不要
- 入力容量 大(10〜20pF)
- 測れる電圧範囲 広い(数百V)
- 安価・頑丈・付属品
- 高速信号には弱い
FET(アクティブ)プローブ
- FET回路を内蔵/電源が必要
- 入力容量 極小(約1pF)
- 測れる電圧範囲 狭い(数V〜数十V)
- 高価・繊細
- 高周波信号に強い
| 比較項目 | 受動プローブ | FETプローブ |
|---|---|---|
| 入力容量 | 10〜20pF | 約1pF(10分の1以下) |
| 電源 | 不要 | 必要(オシロから供給) |
| 電圧範囲 | 広い(数百V) | 狭い(数V〜数十V) |
| 価格 | 安い | 高い |
| 得意な信号 | 一般的な信号・高電圧 | 高速・高周波・微小容量 |

FETプローブのメリットとデメリット
メリット
- 高速信号を歪ませない:入力容量が小さいので、立ち上がりの速い波形も本来の姿で見える。
- 回路への負荷が少ない:入力抵抗が高く、測定対象から電流をほとんど奪わない。
- 広い帯域:高い周波数まで正確に追従できる。
デメリット
- 電圧範囲が狭い:内蔵回路が壊れるため、測れる電圧が数V〜数十Vと小さい(高電圧は測れない)。
- 電源が必要:FETを動かす電源が要る(多くはオシロから供給)。
- 高価で繊細:受動プローブの何倍もする。過電圧や静電気で壊れやすい。
「高性能だから何でもFETプローブで測ればいい」は危険です。電圧範囲が狭いので、うっかり高い電圧に当てると一瞬で壊れます。高電圧は受動プローブや高耐圧差動プローブ、高速・低電圧はFETプローブ、と使い分けます。
高電圧側の選び方は 高耐圧差動プローブの選び方 で解説しています。FETプローブと役割がはっきり分かれていることがわかります。

FETプローブはいつ使う?判断の目安
FETプローブを使うべきかどうかは、次の順番で考えると迷いません。
速い信号か?クロック信号や高速スイッチングなど、高周波(数十MHz以上)を測るなら候補に入る。
波形がなまっていないか?受動プローブで測って立ち上がりが鈍る・リンギングが見えないなら、FETプローブの出番。
電圧は低いか?数V〜数十Vの低電圧であることを確認。高電圧なら別のプローブを選ぶ。
逆に言えば、ゆっくりした信号や高電圧を測るだけなら、わざわざ高価なFETプローブは不要です。「速くて・低電圧で・正確に波形を見たい」とき、FETプローブが真価を発揮します。具体例としては、マイコンの高速クロック、メモリのデータ信号、ゲート駆動の立ち上がり波形などです。
ゲート駆動の波形測定については ゲート駆動回路とは? も合わせて読むと、どんな波形を見たいのかのイメージがつかめます。

よくある質問(FAQ)

まとめ
- FET(アクティブ)プローブとは、先端にFET回路を内蔵し入力容量を約1pFに抑えたプローブ。
- 受動プローブは入力容量が10〜20pFあり、速い信号を鈍らせてしまう(プローブローディング)。
- FETプローブは容量が極小なので、高速・高周波の波形を本来の姿で測れる。
- 弱点は電圧範囲が狭い・電源が必要・高価。高電圧には使えない。
- 「速くて・低電圧で・正確に波形を見たい」ときがFETプローブの出番。
波形が「きれいすぎる」と感じたら、それはプローブが真実を隠しているサインかもしれません。高速信号を本気で見たいときは、FETプローブを思い出してください。
実機(DSO-X 3024A+アクティブFETプローブ)で高速信号の波形を測定してきた経験をもとに執筆しています。受動プローブで波形が鈍り、FETプローブに替えて本来の波形が見えた経験など、現場で実際に効いた使い分けを書いています。
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