- 電流プローブにはいくつか種類があるらしいけど、何が違うのかわからない
- 「ロゴスキーは直流が測れない」と聞いたが、なぜなのか理解できていない
- 自分の測定にCT・ホール素子・ロゴスキーのどれを選べばいいか判断できない
- 電流プローブの3つの種類(CT・ホール素子・ロゴスキー)の原理
- 「直流が測れるのはどれ?」など、決定的な使い分けの基準
- 精度・帯域・大電流など、それぞれの得意・不得意の真実
電流プローブの種類は主にCT(巻線)方式・ホール素子方式・ロゴスキーコイル方式の3つです。CT方式は交流専用で高精度、ホール素子方式は直流も交流も測れるためオシロ用電流プローブの主流です。ロゴスキーコイル方式は交流専用ですが、薄く柔軟で大電流や狭い場所、高速な過渡電流に強い反面、直流は原理上測れません。直流を測るならホール素子方式が必須です。
目次
そもそも電流プローブとは?「磁界」を使って測る
電流プローブとは、電線を切らずに、はさむだけで電流を測れるプローブです。電圧プローブのように回路に直接つなぐ必要がありません。
仕組みの土台は共通で、「電流が流れると、そのまわりに磁界(磁気)ができる」という性質を利用します。この磁界を検出することで、電線を切らずに電流の大きさを知るわけです。3つの方式は、この「磁界をどうやって検出するか」が違うだけです。
電流プローブは「電流→磁界→検出」という流れで測ります。磁界の検出方法の違いが、CT・ホール素子・ロゴスキーの3種類を生んでいます。
電流と磁界の関係そのものの基礎は 磁界Hと磁束密度Bの違いを完全理解 で解説しています。

①CT(巻線)方式|交流専用・高精度の定番
CT(カレントトランス=変流器)方式は、鉄心にコイルを巻いた「トランス」の仕組みで電流を測ります。電線に流れる交流電流が作る磁界の変化が、コイルに電圧を生み出し、それを読み取ります。
高精度で安定しているのが強みですが、原理上、交流(変化する電流)しか測れません。磁界が変化しないと(=直流だと)コイルに電圧が生まれないからです。クランプメーターなどでもおなじみの、もっとも基本的な方式です。
得意なこと
- 交流の高精度測定
- 安定していて扱いやすい
不得意なこと
- 直流は測れない
- 大電流だと鉄心が大型化

②ホール素子方式|直流も交流も測れる主流
ホール素子方式は、「ホール素子」という磁界を直接感じ取るセンサーを使う方式です。磁界の「変化」ではなく「強さそのもの」を読み取れるため、直流(変化しない電流)も交流も両方測れます。これが最大の強みです。
オシロスコープ用の電流プローブは、多くがCT方式とホール素子方式を組み合わせたハイブリッド型です。低い周波数〜直流はホール素子、高い周波数はCTが担当することで、直流から高周波まで幅広くカバーします(出典:HIOKI「電流センサーの種類」)。
直流(DC)を測りたいなら、ホール素子方式(または併用型)が必須。CTもロゴスキーも直流は測れません。
得意なこと
- 直流も交流も測れる
- オシロ用電流プローブの主流
不得意なこと
- クランプが厚く、狭い場所に入りにくい
- 大電流では大型・高価になりがち

③ロゴスキーコイル方式|薄く柔軟・大電流と高速に強い
ロゴスキーコイル方式は、鉄心のない「空芯(からしん)コイル」を電線に巻きつけて電流を測ります。鉄心がないので、コイルは細く・柔らかく・軽いのが特徴です。柔らかいベルトのように電線に巻きつけて使います。
この方式は、磁界の「時間的な変化」を検出する原理です。そのため磁界が変化しない直流は原理上測れません(出典:Panasonic技術解説)。一方で、変化の速い電流(高速な過渡電流)には抜群に強く、最大100MHz級の広帯域に対応します(出典:いわつ/SMFL技術解説)。
インバータの母線電流に直流分が含まれていたのに、ロゴスキーコイルで測ろうとして直流が表示されず混乱したことがあります。原因は「ロゴスキーは直流を測れない」という原理を知らなかったこと。ホール素子方式に替えて解決しました。原理を知らないと、測れない電流を測ろうとして悩むことになります。
また、鉄心がなく薄いので、パワー半導体の細い端子や、込み入った場所の電流も測れます。大電流でも軽量・小型なのも魅力です。
得意なこと
- 薄く柔軟で狭い場所に入る
- 大電流でも軽量・小型
- 高速な過渡電流に強い(広帯域)
不得意なこと
- 直流は原理上測れない
- 小さな電流の精度は他方式に劣ることも
なぜ「磁界の変化」が電圧を生むのか、その原理は 電磁誘導とファラデーの法則 で解説しています。ロゴスキーもCTも、この法則が土台です。

3方式を一覧比較|「精度の真実」も
| 方式 | 直流 | 特徴 |
|---|---|---|
| CT(巻線) | ✕ 不可 | 交流で高精度・安定。定番。 |
| ホール素子 | ◎ 可能 | 直流も交流も測れる主流。厚め・高価。 |
| ロゴスキー | ✕ 不可 | 薄く柔軟・大電流・高速に強い。 |
精度の真実|「高精度=万能」ではない
「精度が高い方式が一番いい」と思いがちですが、それは誤解です。精度の高さは測る条件によって変わります。たとえば、いくら高精度のホール素子でも、クランプが太くて測りたい場所に入らなければ意味がありません。逆にロゴスキーは小電流の精度では劣ることがありますが、大電流や狭い場所では唯一の選択肢になります。
「精度」より先に、まず①直流か交流か ②電流の大きさ ③測る場所の広さ を確認するのが、失敗しない選び方の真実です。

迷わない選び方|3ステップで決める
直流を測る?YESなら迷わずホール素子方式(または併用型)。CT・ロゴスキーは脱落。
大電流 or 狭い場所 or 高速な過渡電流?YESならロゴスキーコイルが有力(ただし交流のみ)。
交流を安定して高精度に測りたいだけ?ならCT(巻線)方式で十分。
電流プローブは、パワー半導体のスイッチング電流を測るときに大活躍します。何を測りたいのかのイメージは ゲート駆動回路とは? も合わせて読むと深まります。

よくある質問(FAQ)
まとめ
- 電流プローブは「電流→磁界→検出」で測る。検出方法の違いが3種類を生む。
- CT(巻線):交流専用・高精度の定番。直流は測れない。
- ホール素子:直流も交流も測れる主流。直流測定の必須選択肢。
- ロゴスキー:薄く柔軟・大電流・高速に強いが、直流は原理上測れない。
- 選び方は「①直流か交流か ②電流の大きさ ③測る場所」の順で考える。
「精度が高いから万能」ではありません。まず直流か交流かを確認すること。これさえ外さなければ、電流プローブ選びで大きく失敗することはありません。
実機(DSO-X 3024A+各種電流プローブ)でインバータやパワー半導体の電流波形を測定してきた経験をもとに執筆しています。ロゴスキーで直流を測ろうとして表示されず悩んだ失敗など、現場で実際に効いた使い分けを書いています。
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電圧プローブと電流プローブを同時に使うとき、遅延差をどう合わせるかを解説します。
CT・ロゴスキーが「磁界の変化」で電流を測る原理の土台を、基礎から学べます。