回帰分析

繰り返しのある回帰分析|同じxで複数のyがあるときの処理法

繰り返しのある回帰分析。同じxで複数のyがあるときの処理法

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「同じ条件で複数回測定したデータ、どう扱えばいいの?」
「残差が大きいのは、測定誤差?それとも直線が合ってない?」
「Lack of Fit検定って何を検定しているの?」

こんな疑問、抱えていませんか?
実験データでは、同じxの値で複数回測定することがよくあります。この「繰り返しデータ」を活用すると、通常の回帰分析では見えなかった情報が得られます。

結論ファースト

繰り返しのある回帰分析では、残差を「純誤差(測定のバラつき)」と「当てはめの悪さ(モデルのズレ)」に分解できます。これにより「直線モデルで本当にいいのか?」を統計的に検定(Lack of Fit検定)できます。

この記事でわかること

  • 繰り返しのある回帰分析のメリット
  • 純誤差(Pure Error)と当てはめの悪さ(Lack of Fit)の違い
  • Lack of Fit検定で直線モデルの妥当性を判定する方法
  • 計算例で分散分析表を完成させる手順

前提知識:単回帰の分散分析表を理解している方向けです。まだの方は以下もどうぞ。
→ 単回帰の分散分析表|回帰・残差・全体の平方和

繰り返しのある回帰分析とは?

繰り返しのある回帰分析とは、同じxの値に対して複数のyが測定されているデータを扱う回帰分析です。

通常の回帰 vs 繰り返しのある回帰

通常の回帰データ

x 1 2 3 4 5
y 2 4 5 4 6

各xに対してyは1つだけ

繰り返しのあるデータ

x 1 1 2 2 3 3
y 2 3 4 5 5 7

同じxに対して複数のyがある!

なぜ繰り返しデータが重要なのか?

通常の回帰分析では、残差(y − ŷ)が大きいとき、その原因が2つ考えられます。

原因①:測定のバラつき

同じxでも測定するたびにyが違う。これは避けられない誤差(純誤差)。

原因②:モデルのズレ

本当は曲線なのに直線で近似している。これは当てはめの悪さ(Lack of Fit)。

イメージで理解:的当てゲーム

あなたが的を狙って矢を投げたとします。的の中心からズレた原因は2つ考えられます。

① 腕のブレ(純誤差):何度投げてもピッタリ同じ場所には当たらない
② 狙いのズレ(当てはめの悪さ):そもそも狙っている場所が中心からズレている

繰り返しデータがあれば、「腕のブレ」と「狙いのズレ」を分離して評価できます!

繰り返しデータがあると…

残差を「純誤差」と「当てはめの悪さ」に分解できる
→ 「直線モデルで本当にいいのか?」を検定できる

残差の分解:純誤差と当てはめの悪さ

繰り返しのある回帰分析では、残差平方和Seを2つに分解します。

残差分解の基本式

Se = SPE + SLOF

残差平方和 = 純誤差 + 当てはめの悪さ

各平方和の定義

記号の定義:
m = xの水準数(異なるxの種類)
ni = 水準iでの繰り返し数
N = 全データ数(= Σni)
ȳi = 水準iでのyの平均
ŷi = 水準iでの回帰による予測値

SPE:純誤差(Pure Error)

SPE = Σi Σj (yij − ȳi)²

意味:各グループ内でのバラつき(測定の繰り返し誤差)
自由度:N − m

SLOF:当てはめの悪さ(Lack of Fit)

SLOF = Σi ni(ȳi − ŷi)²

意味:グループ平均と回帰直線のズレ(モデルの不適合)
自由度:m − 2

図解イメージ

同じxの値に複数のyがあるとき…

SPE(純誤差)

各点 yij → グループ平均 ȳi
「同じxなのにバラつく」

SLOF(当てはめの悪さ)

グループ平均 ȳi → 予測値 ŷi
「平均が直線から外れる」

Lack of Fit検定(当てはめの妥当性検定)

「直線モデルで本当にいいのか?」を統計的に検定します。

Lack of Fit検定

帰無仮説 H₀:直線モデルは適切(当てはめの悪さは純誤差と同程度)
対立仮説 H₁:直線モデルは不適切(当てはめの悪さが大きい)

FLOF = VLOF/VPE = SLOF/(m−2)/SPE/(N−m)

FLOF > F(m−2, N−m; α) ならば 直線モデルは不適切

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回帰分析の学習ロードマップ

分散分析表の構造(繰り返しあり)

要因 平方和 S 自由度 φ 平均平方 V F値
回帰 R SR 1 VR FR = VR/VPE
残差 e Se N − 2 − −
 └ 当てはめの悪さ LOF SLOF m − 2 VLOF FLOF = VLOF/VPE
 └ 純誤差 PE SPE N − m VPE −
全体 T ST N − 1 − −

計算例:繰り返しのあるデータ

データ(N = 6, m = 3水準, 各水準で繰り返し2回)

i 1 2 3 4 5 6
x 1 1 2 2 3 3
y 2 3 4 5 5 7

Step 1:グループ平均の計算

水準 xi y の値 グループ平均 ȳi
1 2, 3 2.5
2 4, 5 4.5
3 5, 7 6.0

全体平均:ȳ = (2+3+4+5+5+7)/6 = 26/6 ≈ 4.33

Step 2:回帰係数の計算

x̄ = (1+1+2+2+3+3)/6 = 2

Σ(x−x̄)(y−ȳ) = (−1)(−2.33) + (−1)(−1.33) + (0)(−0.33) + (0)(0.67) + (1)(0.67) + (1)(2.67) = 2.33 + 1.33 + 0 + 0 + 0.67 + 2.67 = 7

Σ(x−x̄)² = 1 + 1 + 0 + 0 + 1 + 1 = 4

傾き b = 7/4 = 1.75

切片 a = 4.33 − 1.75 × 2 = 0.83 → 回帰式:ŷ = 0.83 + 1.75x

Step 3:予測値の計算

水準 x ŷ = 0.83 + 1.75x ȳi ȳi − ŷ
1 2.58 2.5 −0.08
2 4.33 4.5 +0.17
3 6.08 6.0 −0.08

Step 4:各平方和の計算

ST(全体)= Σ(y−ȳ)² = (−2.33)² + (−1.33)² + (−0.33)² + (0.67)² + (0.67)² + (2.67)² = 5.43 + 1.77 + 0.11 + 0.45 + 0.45 + 7.13 = 15.33

SR(回帰)= b × Σ(x−x̄)(y−ȳ) = 1.75 × 7 = 12.25

Se(残差)= ST − SR = 15.33 − 12.25 = 3.08

SPE(純誤差)= Σグループ内変動
 = [(2−2.5)² + (3−2.5)²] + [(4−4.5)² + (5−4.5)²] + [(5−6)² + (7−6)²]
 = [0.25 + 0.25] + [0.25 + 0.25] + [1 + 1] = 0.5 + 0.5 + 2 = 3.0

SLOF(当てはめの悪さ)= Se − SPE = 3.08 − 3.0 = 0.08

完成した分散分析表

要因 S φ V F
回帰 R 12.25 1 12.25 FR = 12.25
残差 e 3.08 4 − −
 └ LOF 0.08 1 0.08 0.08
 └ PE 3.00 3 1.00 −
全体 T 15.33 5 − −

検定の判定

Step 1:Lack of Fit検定(直線モデルの妥当性)

FLOF = VLOF / VPE = 0.08 / 1.00 = 0.08

F分布表より:F(1, 3; 0.05) = 10.13

判定:FLOF = 0.08 < 10.13 → 直線モデルは適切(H₀を棄却できない)

○ 直線モデルは妥当!
当てはめの悪さは純誤差と同程度なので、直線で近似してOK

Step 2:回帰の有意性検定

FR = VR / VPE = 12.25 / 1.00 = 12.25

F分布表より:F(1, 3; 0.05) = 10.13

判定:FR = 12.25 > 10.13 → 回帰は有意(H₀を棄却)

最終結論

① 直線モデルは適切(Lack of Fit検定で有意でない)
② xはyに有意な影響を与える(回帰の有意性検定で有意)

→ 回帰式 ŷ = 0.83 + 1.75x は妥当で、予測に使える

検定の手順フローチャート

繰り返しデータがある

↓

Step 1:Lack of Fit検定
FLOF = VLOF / VPE

FLOF > F表

↓

直線モデル不適切
曲線モデルを検討

FLOF ≤ F表

↓

直線モデルOK
Step 2へ

↓

Step 2:回帰の有意性検定
FR = VR / VPE

まとめ

  • 繰り返しデータがあると、残差を「純誤差」と「当てはめの悪さ」に分解できる
  • SPE:グループ内のバラつき(測定誤差)
  • SLOF:グループ平均と回帰直線のズレ(モデルの不適合)
  • Lack of Fit検定で「直線モデルでいいか?」を判定
  • LOF検定が有意でなければ、回帰の有意性検定へ進む

試験対策のポイント

QC検定では「繰り返しのある回帰分析」の分散分析表を埋める問題が出題されます。自由度の分解(N−2 = (m−2) + (N−m))と2段階の検定(①LOF検定→②回帰の検定)を確実に押さえましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました!
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S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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