- 「光絶縁プローブ」という言葉を聞いたが、差動プローブと何が違うのかわからない
- SiCやGaNの高速スイッチングを測ったら、ノイズだらけで波形が読めない
- 数千Vが浮いた場所を、高速で、安全に測りたいが手段がわからない
- 光絶縁プローブとは何か、を一言で言えるようになる
- 「電気を光に変える」仕組みと、なぜ完全フローティング測定ができるのか
- 差動プローブとの違いと、SiC/GaN評価で究極の手段と呼ばれる理由
光絶縁プローブとは、測った電気信号を一度「光」に変換し、光ファイバーでオシロへ送ることで、測定対象とオシロを電気的に完全に切り離したプローブです。電気的につながっていないため、数千Vが浮いた状態でも安全に、しかも高速な信号をきれいに測れます。同相ノイズを捨てる能力(CMRR)が差動プローブより桁違いに高く、SiCやGaNの高速スイッチング評価で究極の手段とされます。弱点は非常に高価なことです。
目次
光絶縁プローブとは?「電気を光に変えて測る」プローブ
光絶縁プローブ(オプティカル・アイソレーション・プローブ)とは、測った電気信号を一度「光」に変換して、光ファイバーでオシロスコープへ送るプローブです。「光アイソレーションプローブ」とも呼ばれます。
最大の特徴は、測定対象とオシロが電気的に一切つながっていないこと。間を光(光ファイバー)でつないでいるので、電気の道が完全に切れています。これが「完全フローティング測定」を可能にする決め手です。
光ファイバーは、電気ではなく「光」で情報を運びます。だから、どんなに高い電圧が浮いていても、その電圧がオシロ側に伝わってきません。電気的に「無人島と本土を、電線ではなく光の橋でつなぐ」イメージです。
仕組み|なぜ完全フローティング測定ができるのか
光絶縁プローブの中身を、信号の流れに沿って見てみましょう。3つのステップでできています。
測る:プローブ先端(電池などで動く独立した小さな回路)が、測定対象の電圧を読み取る。
光に変える:読み取った電気信号を、レーザーなどで「光の強さ」に変換する。
光ファイバーで送る:光のまま離れた場所まで運び、オシロ側で再び電気に戻して表示する。
ポイントは、測定側とオシロ側が「光」でしかつながっていないこと。電気の道がないため、測定対象がどれだけ高い電圧で浮いていても、その電圧がオシロや人間に伝わってきません。だから数千Vのフローティング箇所でも安全なのです。
なぜ電気を切り離すと安全なのか、絶縁の基本的な考え方は フォトカプラはなぜ必要か? も参考になります。フォトカプラも「光で信号を渡す」絶縁の仲間です。

差動プローブとの違い|「電気のまま」か「光に変える」か
高電圧差動プローブも「GNDに縛られない測定」ができます。では何が違うのでしょうか。最大の違いは信号の送り方です。差動プローブは電気のまま送り、光絶縁プローブは光に変えて送ります(出典:T&Mコーポレーション「光アイソレーションプローブの基礎」)。
高電圧差動プローブ
- 電気のまま「差」を送る
- 同相ノイズを完全には消せない
- 高周波でCMRRが悪化する
- 比較的安価で扱いやすい
光絶縁プローブ
- 光に変えて完全に切り離す
- 同相ノイズをほぼ完全に消せる
- 高周波でもCMRRが非常に高い
- 非常に高価
決定的な差は「CMRR(同相ノイズを消す力)」
CMRRとは、2点に共通して乗る邪魔なノイズ(同相電圧)をどれだけ捨てられるかの数値です。高電圧差動プローブは100MHzで約-25dBなのに対し、光絶縁プローブは約-120dBと、桁違いに高い除去能力を持ちます(出典:Tektronix「プローブ入門」)。電気の道を物理的に断っているので、ノイズが乗りようがないのです。
SiCインバータのハイサイド・ゲート波形を高電圧差動プローブで測ったら、同相ノイズが波形に重なって判読できませんでした。光絶縁プローブに替えた途端、ノイズが消えてクリーンな波形が得られました。「差動プローブでもノイズだらけ」のときが、光絶縁プローブの出番です。
差動プローブそのものの仕組みは 差動プローブとは?GND共通の呪縛から解放される仕組み で解説しています。

なぜSiC・GaNの評価で「究極の手段」なのか
近年のパワー半導体であるSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)は、従来のシリコンよりはるかに速くスイッチングします。速いということは、電圧が一瞬で大きく動くということ。これが測定を非常に難しくします。
電圧が一瞬で数百〜数千V動くと、その変化が巨大な同相ノイズとして測定に乗ってきます。従来の差動プローブでは、この高速なノイズを捨てきれず、波形が汚れてしまいます。とくにGaNはSiCよりさらに速いため、より高いノイズ除去能力が求められます(出典:計測器検索「光アイソレーションプローブ」)。
光絶縁プローブは、電気の道を断っているので高速・高電圧のノイズに強く、しかも数千Vのフローティング測定もこなせます。「高電圧」「高速」「フローティング」という3つの難題を同時に解決できる、ほぼ唯一の手段。だから次世代パワー半導体の評価では「究極の手段」「必需品」と呼ばれます。
SiC/GaNを使うゲート駆動の世界は ゲート駆動回路とは? で解説しています。なぜ高速スイッチングが難しいのかが見えてきます。

光絶縁プローブのメリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 数千Vのフローティングも完全に安全 | 非常に高価(数百万円クラスも) |
| 同相ノイズをほぼ完全に除去(高CMRR) | 先端回路に電源(バッテリー)が必要 |
| 高周波・高速スイッチングに強い | 光ファイバーが繊細で取り扱いに注意 |
| 高電圧×高速×フローティングを同時に解決 | 一般的な測定にはオーバースペック |
光絶縁プローブは「最強だが高価」な特殊兵器です。普通の測定では受動プローブやFETプローブで十分。差動プローブでもノイズが取れない高速・高電圧のフローティング測定で、初めて出番が来ます。

4種類のプローブ|結局どれを使う?
この章で学んできたプローブを、用途で整理します。状況に応じて最適なものを選びましょう。
| プローブ | こんなときに使う |
|---|---|
| 受動プローブ | GND基準の一般的な信号。日常のほとんど。 |
| FETプローブ | 低電圧で速い信号を、鈍らせず見たい。 |
| 高電圧差動プローブ | 浮いた高電圧。一般的なパワエレ評価。 |
| 光絶縁プローブ | 高電圧×高速×フローティング。SiC/GaN評価。 |
FETプローブとの違いは FET(アクティブ)プローブとは? で詳しく解説しています。役割が見事に分かれていることがわかります。

よくある質問(FAQ)
まとめ
- 光絶縁プローブとは、電気を光に変えて送り、測定対象とオシロを完全に切り離したプローブ。
- 電気の道がないので、数千Vが浮いていても安全に完全フローティング測定できる。
- 同相ノイズを消す力(CMRR)が差動プローブより桁違いに高い。
- SiC/GaNの高速スイッチングという「高電圧×高速×フローティング」を同時に解決できる。
- 弱点は非常に高価で、一般測定にはオーバースペックなこと。
差動プローブでもノイズが取れない、高速で高電圧のフローティング測定。そんな最難関に直面したとき、光絶縁プローブが究極の答えになります。まさに「困ったときの最終兵器」です。
実機でSiCインバータの高電圧・高速波形を測定してきた経験をもとに執筆しています。差動プローブでノイズに埋もれた波形が、光絶縁プローブでクリーンに見えた経験など、現場で実際に効いた使い分けを書いています。

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光絶縁プローブと比較される差動プローブの仕組みを、基礎から図解します。
光絶縁プローブの出番が多いSiC/GaNゲート駆動の世界を、回路設計の視点から学べます。