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第3章 - 第10回 / 全12回
シリーズ全体: 25 / 69記事
進捗 36%
こんなことで困っていませんか?
- 「光絶縁プローブ」という言葉を聞いたが、差動プローブと何が違うのかわからない
- SiCやGaNの高速スイッチングを測ったら、ノイズだらけで波形が読めない
- 数千Vが浮いた場所を、高速で、安全に測りたいが手段がわからない
○ この記事でわかること
- 光絶縁プローブとは何か、を一言で言えるようになる
- 「電気を光に変える」仕組みと、なぜ完全フローティング測定ができるのか
- 差動プローブとの違いと、SiC/GaN評価で究極の手段と呼ばれる理由
○ 結論(30秒で答え)
光絶縁プローブとは、測った電気信号を一度「光」に変換し、光ファイバーでオシロへ送ることで、測定対象とオシロを電気的に完全に切り離したプローブです。電気的につながっていないため、数千Vが浮いた状態でも安全に、しかも高速な信号をきれいに測れます。同相ノイズを捨てる能力(CMRR)が差動プローブより桁違いに高く、SiCやGaNの高速スイッチング評価で究極の手段とされます。弱点は非常に高価なことです。
光絶縁プローブとは?「電気を光に変えて測る」プローブ
光絶縁プローブ(オプティカル・アイソレーション・プローブ)とは、測った電気信号を一度「光」に変換して、光ファイバーでオシロスコープへ送るプローブです。「光アイソレーションプローブ」とも呼ばれます。
最大の特徴は、測定対象とオシロが電気的に一切つながっていないこと。間を光(光ファイバー)でつないでいるので、電気の道が完全に切れています。これが「完全フローティング測定」を可能にする決め手です。
イメージ
光ファイバーは、電気ではなく「光」で情報を運びます。だから、どんなに高い電圧が浮いていても、その電圧がオシロ側に伝わってきません。電気的に「無人島と本土を、電線ではなく光の橋でつなぐ」イメージです。
仕組み|なぜ完全フローティング測定ができるのか
光絶縁プローブの中身を、信号の流れに沿って見てみましょう。3つのステップでできています。
STEP 1
測る:プローブ先端(電池などで動く独立した小さな回路)が、測定対象の電圧を読み取る。
STEP 2
光に変える:読み取った電気信号を、レーザーなどで「光の強さ」に変換する。
STEP 3
光ファイバーで送る:光のまま離れた場所まで運び、オシロ側で再び電気に戻して表示する。
ポイントは、測定側とオシロ側が「光」でしかつながっていないこと。電気の道がないため、測定対象がどれだけ高い電圧で浮いていても、その電圧がオシロや人間に伝わってきません。だから数千Vのフローティング箇所でも安全なのです。
なぜ電気を切り離すと安全なのか、絶縁の基本的な考え方は フォトカプラはなぜ必要か? も参考になります。フォトカプラも「光で信号を渡す」絶縁の仲間です。
光絶縁プローブは光でつながり電気的な接続がない
差動プローブとの違い|「電気のまま」か「光に変える」か
高電圧差動プローブも「GNDに縛られない測定」ができます。では何が違うのでしょうか。最大の違いは信号の送り方です。差動プローブは電気のまま送り、光絶縁プローブは光に変えて送ります(出典:T&Mコーポレーション「光アイソレーションプローブの基礎」)。
高電圧差動プローブ
- 電気のまま「差」を送る
- 同相ノイズを完全には消せない
- 高周波でCMRRが悪化する
- 比較的安価で扱いやすい
光絶縁プローブ
- 光に変えて完全に切り離す
- 同相ノイズをほぼ完全に消せる
- 高周波でもCMRRが非常に高い
- 非常に高価
決定的な差は「CMRR(同相ノイズを消す力)」
CMRRとは、2点に共通して乗る邪魔なノイズ(同相電圧)をどれだけ捨てられるかの数値です。高電圧差動プローブは100MHzで約-25dBなのに対し、光絶縁プローブは約-120dBと、桁違いに高い除去能力を持ちます(出典:Tektronix「プローブ入門」)。電気の道を物理的に断っているので、ノイズが乗りようがないのです。
実際に起きること
SiCインバータのハイサイド・ゲート波形を高電圧差動プローブで測ったら、同相ノイズが波形に重なって判読できませんでした。光絶縁プローブに替えた途端、ノイズが消えてクリーンな波形が得られました。「差動プローブでもノイズだらけ」のときが、光絶縁プローブの出番です。
差動プローブそのものの仕組みは 差動プローブとは?GND共通の呪縛から解放される仕組み で解説しています。
電気のまま送るか光に変えて送るかの違い
なぜSiC・GaNの評価で「究極の手段」なのか
近年のパワー半導体であるSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)は、従来のシリコンよりはるかに速くスイッチングします。速いということは、電圧が一瞬で大きく動くということ。これが測定を非常に難しくします。
電圧が一瞬で数百〜数千V動くと、その変化が巨大な同相ノイズとして測定に乗ってきます。従来の差動プローブでは、この高速なノイズを捨てきれず、波形が汚れてしまいます。とくにGaNはSiCよりさらに速いため、より高いノイズ除去能力が求められます(出典:計測器検索「光アイソレーションプローブ」)。
光絶縁プローブは、電気の道を断っているので高速・高電圧のノイズに強く、しかも数千Vのフローティング測定もこなせます。「高電圧」「高速」「フローティング」という3つの難題を同時に解決できる、ほぼ唯一の手段。だから次世代パワー半導体の評価では「究極の手段」「必需品」と呼ばれます。
SiC/GaNを使うゲート駆動の世界は ゲート駆動回路とは? で解説しています。なぜ高速スイッチングが難しいのかが見えてきます。
あわせて読みたい
波形にリンギングが出る原因|配線とプローブGNDの共犯
波形にリンギングが出る原因
光絶縁プローブのCMRRは差動プローブより桁違いに高い
光絶縁プローブのメリットとデメリット
| メリット |
デメリット |
| 数千Vのフローティングも完全に安全 |
非常に高価(数百万円クラスも) |
| 同相ノイズをほぼ完全に除去(高CMRR) |
先端回路に電源(バッテリー)が必要 |
| 高周波・高速スイッチングに強い |
光ファイバーが繊細で取り扱いに注意 |
| 高電圧×高速×フローティングを同時に解決 |
一般的な測定にはオーバースペック |
ポイント
光絶縁プローブは「最強だが高価」な特殊兵器です。普通の測定では受動プローブやFETプローブで十分。差動プローブでもノイズが取れない高速・高電圧のフローティング測定で、初めて出番が来ます。
SiC・GaNの評価には光絶縁プローブが最適
4種類のプローブ|結局どれを使う?
この章で学んできたプローブを、用途で整理します。状況に応じて最適なものを選びましょう。
| プローブ |
こんなときに使う |
| 受動プローブ |
GND基準の一般的な信号。日常のほとんど。 |
| FETプローブ |
低電圧で速い信号を、鈍らせず見たい。 |
| 高電圧差動プローブ |
浮いた高電圧。一般的なパワエレ評価。 |
| 光絶縁プローブ |
高電圧×高速×フローティング。SiC/GaN評価。 |
FETプローブとの違いは FET(アクティブ)プローブとは? で詳しく解説しています。役割が見事に分かれていることがわかります。
受動・FET・高電圧差動・光絶縁プローブの使い分け
よくある質問(FAQ)
Q. 光絶縁プローブ とは何ですか?
A. 電気信号を光に変えて光ファイバーで送り、測定対象とオシロを完全に切り離したプローブです。
Q. オプティカルプローブと差動プローブの違いは?
A. 差動は電気のまま送り、光絶縁は光に変えて完全絶縁します。光絶縁の方がノイズ除去が桁違いです。
Q. なぜSiC・GaN評価に光絶縁プローブが必要?
A. 高速スイッチングが巨大な同相ノイズを生み、差動プローブでは捨てきれないからです。光絶縁なら除去できます。
Q. 光絶縁プローブの弱点は?
A. 非常に高価で、先端に電源が必要、光ファイバーが繊細な点です。一般測定にはオーバースペックです。
まとめ
この記事の要点
- 光絶縁プローブとは、電気を光に変えて送り、測定対象とオシロを完全に切り離したプローブ。
- 電気の道がないので、数千Vが浮いていても安全に完全フローティング測定できる。
- 同相ノイズを消す力(CMRR)が差動プローブより桁違いに高い。
- SiC/GaNの高速スイッチングという「高電圧×高速×フローティング」を同時に解決できる。
- 弱点は非常に高価で、一般測定にはオーバースペックなこと。
差動プローブでもノイズが取れない、高速で高電圧のフローティング測定。そんな最難関に直面したとき、光絶縁プローブが究極の答えになります。まさに「困ったときの最終兵器」です。
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
光絶縁プローブ:完全絶縁・高CMRR・高価
この記事の理解を深める本と道具
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