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フォトカプラとは?「電気を流さずに信号を渡す」部品
フォトカプラ(フォトカップラ、光結合素子)は、入力側と出力側を電気的に切り離したまま、オン・オフの信号を伝える部品です。
壁で仕切られた隣の部屋に、懐中電灯の光で合図を送るところを思いうかべてください。部屋どうしは電線でつながっていないのに、「光ったらスイッチを入れる」という情報だけは伝わります。フォトカプラの中では、LEDが懐中電灯、受光素子が隣の部屋の人です。
なぜ切り離す(絶縁する)のか
| 理由 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| ① 感電を防ぐ | コンセント側の危険な電圧が、人の触れる側に来ないようにする | ACアダプターの1次側と2次側 |
| ② 回路を守る | 高電圧の回路が壊れても、マイコンなどの弱い回路まで壊れないようにする | インバータの制御回路とパワー回路 |
| ③ ノイズを断つ | GNDを分けて、大電流のノイズが信号に乗らないようにする | 工場の機械とPLCの入出力 |
絶縁の種類、基礎・強化・二重絶縁

フォトカプラの仕組みと種類
1つのパッケージの中に、赤外LEDと受光素子が向かい合わせに入っていて、そのあいだは透明な絶縁材で仕切られています。
| 出力の種類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| フォトトランジスタ出力 | いちばん一般的で安い。速さはμs(マイクロ秒)単位 | 電源のフィードバック、一般の入出力 |
| ダーリントン出力 | CTRが大きく、小さなLED電流で動く。遅い | 電流を節約したい入力 |
| 高速(IC出力) | 受光側に増幅回路を内蔵。速い | 通信、ゲートドライバ内蔵品 |
| フォトトライアック出力 | 交流のスイッチ(トライアック)を駆動できる | AC負荷のON/OFF、SSR |
| フォトMOSリレー | 出力がMOSFET。機械式リレーのかわりになる | 計測器の切りかえ、信号のON/OFF |

フォトカプラが使われる3つの場面
① スイッチング電源のフィードバック
ACアダプターでは、2次側の出力電圧を見て、1次側のスイッチの動きを調整します。しかし1次側と2次側は絶縁しなければなりません。そこで、出力電圧が高すぎるとフォトカプラのLEDが強く光り、それを1次側の制御ICに伝える、という形で絶縁したまま電圧の情報を戻します。シャントレギュレータ(TL431など)と組み合わせるのが定番です。
フライバック方式とは?絶縁型電源の王道
② マイコンからパワー素子への信号
インバータでは、3.3Vのマイコンが数百Vの回路のMOSFETやIGBTをON/OFFします。マイコンとパワー回路のあいだにフォトカプラ(またはデジタルアイソレータ)を入れ、高電圧側の故障やノイズがマイコンに届かないようにします。ゲートを駆動する部分まで1つにしたフォトカプラ型ゲートドライバもあります。
高電圧の駆動回路は「信号→絶縁→駆動→保護」の4ブロック
③ PLC・産業機器の入出力
工場のセンサーやスイッチは24Vで動き、配線も長いのでノイズや雷サージを受けやすい環境です。PLCの入力回路の多くはフォトカプラで絶縁されていて、外の配線で何かあっても、内部の回路まで被害が及ばないようになっています。

CTR(電流伝達率)と寿命を見こんだ設計
フォトカプラの設計でいちばん大事なのが、CTRです。ばらつきと寿命で小さくなっても、確実にONするように抵抗を決めます。
CTRは、同じ型番でも個体差が大きく、温度でも変わり、さらにLEDの光が年々弱くなることで下がっていきます。どれくらい下がるかは、データシートの劣化特性(通電時間とCTRの変化のグラフ)で確かめます。設計の目安としては、寿命の終わりにはCTRが初期の半分くらいまで下がると見て、それでもONする回路にしておくのが一般的です。
例題:3.3Vのマイコンから5Vの回路へ信号を渡す
| 手順 | 計算 |
|---|---|
| ① LED側の抵抗 | (3.3V − 順電圧1.2V) ÷ 5mA = 420Ω → 430Ω(IF≒4.9mA) |
| ② 寿命の終わりに流せる出力電流 | 4.9mA × CTR最小50% × 寿命0.5 ≒ 1.22mA |
| ③ 出力側の負荷抵抗の下限 | (5V − 0.4V) ÷ 1.22mA ≒ 3.77kΩ → 3.9kΩ以上(温度の影響も見こむなら4.7kΩ) |
負荷抵抗が小さすぎると、寿命の終わりにトランジスタが十分ONせず、出力が中途半端な電圧になります。逆に大きすぎると、OFFに切りかわるのが遅くなります(電圧の立ち上がりがなまる)。下限の少し上を選ぶのがコツです。
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

フォトカプラ・デジタルアイソレータ・パルストランスの違い
「絶縁したまま信号を渡す」部品は、フォトカプラのほかにもあります。光・電界や磁界・磁気のどれで渡すかがちがいます。
| 項目 | フォトカプラ | デジタルアイソレータ | パルストランス |
|---|---|---|---|
| 渡し方 | 光 | 小さなコンデンサ(電界)か小さなコイル(磁界) | トランス(磁気) |
| 速さ | 遅め(μs単位。高速品もある) | 速い(ns単位) | 速い(パルスのみ) |
| 寿命による劣化 | LEDが弱りCTRが下がる | LEDがないので小さい | ほぼない |
| 直流(ずっとON) | 伝えられる | 伝えられる | 伝えられない |
| アナログ量 | 伝えられる(電源のフィードバック) | 基本はデジタル | 向かない |
| 値段・手軽さ | 安く、回路がかんたん | やや高い。両側に電源が要る | 大きく、回路の工夫が要る |
選び方の目安は、①安くて遅くてよい・電源のフィードバックならフォトカプラ、②速い通信やゲート信号、長く使う機器ならデジタルアイソレータ、③パルスだけでよく、2次側に電源を作りたくないならパルストランス、です。最近のインバータやモーター制御では、デジタルアイソレータに置きかえる例が増えています。
絶縁型と非絶縁型ゲートドライバの違い

フォトカプラでよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| CTRの標準値(代表値)で設計する | 最小値に、温度と寿命による低下を見こむ |
| LEDに抵抗なしでつなぐ | LEDは電流で動く。電流を決める抵抗が必ず要る |
| 負荷抵抗は小さいほど確実 | 小さいとONしきれない。大きいと遅い。計算で下限を出して少し上に |
| 1次側と2次側のGNDを基板でつないでしまう | つなぐと絶縁の意味がなくなる。パターンも沿面距離をとって分ける |
| LED電流を大きくするほど安心 | 電流が大きいほどLEDの劣化は早い。必要な分だけ流す |
沿面距離とは?空間距離との違い

よくある質問


