- データシートに「Tg 130℃」と書いてあるけど、何のことかわからない
- 「高Tg材」ってよく聞くけど、普通の基板と何が違うの?
- そもそもTgが高いと、何がうれしいの?
- Tg(ガラス転移温度)が何を表す数字なのか
- Tgを超えると、基板にどんな問題が起きるのか
- どんな用途で「高Tg材」が必要になるのか
基板の資料(データシート)を見ると、必ずといっていいほど「Tg」という数字が載っています。でも、これが何を意味するのか、最初はよくわからないですよね。はじめは戸惑って当然です。この記事では、身近なたとえを使って、ひとつずつやさしく解説していきます。
Tg(ガラス転移温度)とは、基板の樹脂(じゅし=プラスチックのような材料)が「硬いガラス状」から「柔らかいゴム状」に変わる境目の温度のことです。Tgを超えると基板が柔らかくなり、反りや層間剥離(層がはがれること)、寸法のズレが起きやすくなります。だから、機器の動作温度やはんだ付けの温度に対して、十分高いTgの材料を選ぶ必要があるのです。
目次
そもそもTg(ガラス転移温度)とは?
まず、Tgが何の温度なのかをはっきりさせましょう。Tgとは、基板の中身である樹脂(プラスチックのような材料)が「硬い状態」から「柔らかい状態」に切り替わる境目の温度のことです。
私たちがふだん使う基板は、ガラスの布にプラスチック(樹脂)をしみこませて、カチカチに固めて作られています。この硬い状態のときは、しっかりとした板でいてくれます。
ところが、温度が上がってTgを超えると、このプラスチックが急に柔らかくなります。カチカチだったものが、ぐにゃっと柔らかいゴムのような状態に変わるのです。
冷えたチョコレートはパキッと硬いですよね。でも、手で握って温めると、だんだん柔らかくなってベタッとしてきます。基板も同じで、ある温度(=Tg)を境に、硬い状態から柔らかい状態に変わるのです。Tgは「ここを超えると柔らかくなりますよ」という目印の温度だと考えてください。
Tg=基板が「硬いガラス状」から「柔らかいゴム状」に切り替わる温度。Tgより低ければ硬く、Tgを超えると柔らかくなる、と覚えておけば十分です。

Tgを超えると基板に何が起きる?
「柔らかくなるだけなら、別にいいんじゃない?」と思うかもしれません。でも、ここが大事なポイントです。Tgを超えると、基板にいくつかのトラブルが起きやすくなります。
いちばんの問題は「ふくらみ方が急に大きくなる」こと
モノは温めると、ふくらみます(膨張します)。基板も同じで、温まると少しずつ厚みが増していきます。この「温度が上がったときのふくらみやすさ」を、専門用語でCTE(熱膨張係数=ねつぼうちょうけいすう)と呼びます。難しい言葉ですが、要は「温めたときにどれだけふくらむか」を表す数字です。
ここで重要なのは、Tgを超えた瞬間に、このふくらみ方(CTE)が急に大きくなるということです。硬いうちはちょっとずつしかふくらまないのに、柔らかくなったとたん、グーンと一気にふくらむのです。
基板の中には、表と裏をつなぐ細い金属の筒(スルーホールという穴のめっき)が通っています。基板が急に厚み方向にふくらむと、この金属の筒が引っぱられて、ちぎれる(破断する)ことがあります。こうなると電気がつながらなくなり、故障します。
そのほかに起きるトラブル
| トラブル | どういうこと? |
|---|---|
| 反り(そり) | 板が柔らかくなって、ぐにゃっと曲がってしまう |
| 層間剥離(はくり) | 何枚も重ねた層が、はがれてしまう |
| スルーホール破断 | 表裏をつなぐ金属の筒がちぎれて、電気が切れる |
| 寸法のズレ | サイズが変わって、部品の位置が合わなくなる |
Tgを超えると基板が柔らかくなり、急にふくらんで、反り・剥離・断線などの故障につながります。だからTgは「ここを超えると危ない温度」でもあるのです。

標準FR-4と高Tg材の違い
基板の材料には、いろいろなTgのものがあります。よく使われる「FR-4(エフアールフォー)」という標準的な基板材料を例に、Tgの違いを見てみましょう。
FR-4は、ガラスの布に樹脂をしみこませて固めた、いちばん一般的な基板材料の名前です。スマホやパソコンなど、身の回りの電子機器のほとんどに使われています。「基板の標準モデル」と思ってください。
FR-4は、Tgの高さによって、ざっくり3つのグレード(等級)に分けられます。Tgが高いほど、熱に強い材料ということになります。
| グレード | Tgの目安 | イメージ |
|---|---|---|
| 標準FR-4 | 約130〜140℃ | 一般的な機器向け |
| 中Tg材 | 約150〜160℃ | 少し熱に強い |
| 高Tg材 | 約170℃以上 | かなり熱に強い |
上の数字はあくまで「目安」です。メーカーや製品(グレード)によって少しずつ違います。実際に設計するときは、必ずその材料のデータシート(仕様書)で正確なTg値を確認してください。
同じFR-4でも、Tgの低いものから高いものまで種類があります。「高Tg材」とは、おおむねTgが170℃以上の、熱に強い基板材料のことを指します。

なぜ高Tg材が必要なのか?はんだ付けの熱がカギ
ここまでで「Tgを超えると危ない」とわかりました。では、なぜわざわざ高Tg材が必要になるのでしょうか。その大きな理由が「はんだ付けの熱」です。
基板に部品をつけるとき、はんだ(金属を溶かして接着する材料)を使います。このとき、基板全体を炉(ろ=大きなオーブンのようなもの)に通して、高温で一気にはんだを溶かします。これをリフローはんだ付けといいます。
鉛フリーはんだは、とにかく熱い
最近のはんだは、環境への配慮から「鉛フリーはんだ(鉛を使わないはんだ)」が主流です。ところが、この鉛フリーはんだは、溶ける温度が高いという特徴があります。
鉛フリーはんだをしっかり溶かすには、基板を一番熱いところで約250℃前後まで加熱する必要があります。材料には260℃くらいまで耐えられることが求められることもあります。
標準FR-4のTgは約130〜140℃です。一方、鉛フリーはんだのリフロー温度は約250℃前後。つまり、はんだ付けの最中に、基板は余裕でTgを超えてしまうのです。Tgを超えた状態でグッと加熱されると、先ほどの反りや剥離、スルーホール破断が起きやすくなります。
そこで活躍するのが高Tg材です。Tgが高い材料なら、加熱されても柔らかくなりにくく、急なふくらみも抑えられます。だから、鉛フリーはんだを使う製品や、多くの層を重ねた厚い基板では、高Tg材が選ばれることが多いのです。
はんだ付けの熱は基板にとってかなり過酷です。とくに鉛フリーはんだは高温なので、熱に強い高Tg材を使って、故障を防ぐというわけです。

どんな用途で高Tg材が必要になる?
では、実際にどんなときに高Tg材を選べばいいのでしょうか。ポイントは「使われる場所が熱いかどうか」と「製造のときに熱がきびしいかどうか」です。判断の目安を早見表にまとめました。
| こんなとき | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 常温で使う一般機器 | 標準FR-4でOK | 熱の負担が小さい |
| 車載(エンジンルームなど) | 高Tg材 | 使用環境が高温 |
| 電源・パワー機器 | 高Tg材 | 部品の発熱が大きい |
| 層が多い・厚い基板 | 高Tg材 | はんだ熱で壊れやすい |
高Tg材を選ぶときの考え方(実務のコツ)
材料を選ぶときは、「その基板がさらされる一番高い温度」を考えます。これには2つあります。1つは製造のときのはんだ付け温度(約250℃前後)、もう1つは実際に使うときの動作温度です。
製造のはんだ付け温度を確認する(鉛フリーなら約250℃前後)。
実際に使うときの最高温度を確認する(車載や電源なら高くなる)。
それらに対して余裕のあるTgの材料を選ぶ。熱がきびしいなら高Tg材。
「製造の熱」と「使用中の熱」の両方を見て、それに負けないTgの材料を選ぶ。これが基本の考え方です。熱がきびしい用途ほど、高Tg材が必要になります。

よくあるつまずき:Tgと「分解温度」を混同しない
データシートには、Tgのほかにも似たような温度の数字が載っています。とくに混同しやすいのが「Td(分解温度)」です。ここを区別できると、ぐっと理解が深まります。
Tg(ガラス転移温度)
- 硬い → 柔らかいの境目
- まだ材料は壊れていない
- 戻れば元の硬さに戻る
Td(分解温度)
- 樹脂が壊れ始める温度
- Tgよりずっと高い(例:300℃以上)
- こうなると元に戻らない
かんたんに言うと、Tgは「柔らかくなる温度」、Tdは「焦げて壊れ始める温度」です。バターでたとえるなら、Tgが「溶けてやわらかくなる」段階、Tdが「焦げて黒くなる」段階のイメージです。
「Tgは高ければ高いほど良い」と思いがちですが、必ずしもそうではありません。高Tg材は値段が高く、加工もしにくくなります。だから、必要な熱に耐えられるTgがあれば十分で、過剰に高くする必要はありません。用途に合ったTgを選ぶのが正解です。

よくある質問(FAQ)
まとめ:Tgは「基板が柔らかくなる境目の温度」
- Tg(ガラス転移温度)=基板が「硬いガラス状」から「柔らかいゴム状」に変わる境目の温度。
- Tgを超えると急にふくらみやすく(CTE増大)なり、反り・剥離・スルーホール破断が起きる。
- 標準FR-4は約130〜140℃、中Tgは約150〜160℃、高Tgは約170℃以上(具体値はデータシートで確認)。
- 鉛フリーはんだは約250℃前後で加熱するため、高Tg材で故障を防ぐ。
- 車載・電源・厚い基板など、熱がきびしい用途ほど高Tg材が必要。
これで、データシートの「Tg」という数字の意味がわかりましたね。Tgは基板の熱への強さを表す、とても大切な物性です。次の一歩として、基板そのものの基礎や、基板材料の選び方を知りたい方は、下の記事へどうぞ。

自動車部品メーカーで電気設計・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて電気を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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Tgと合わせて知りたい、基板材料そのものの選び方です。
はんだ付けを含む、基板ができるまでの流れがわかります。