電力科目の解説

変圧器の並行運転の条件とは?5条件の理由と負荷分担・循環電流の計算

変圧器の並行運転の条件とは何か。電力系統での結線と使い方

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😣 こんなふうに思っていませんか?
  • 「変圧器の並行運転の条件」が5つもあって覚えられない
  • なぜその条件が必要なのか、理由がわからず丸暗記になっている
  • 機械科目で習ったはずなのに、電力科目でも出てきて混乱する
✅ この記事でわかること
  • 並行運転の5つの条件と「なぜ必要か」(破ると何が起きるか)
  • 三相で大事な「結線の組み合わせ」と角変位の考え方
  • 負荷分担の計算(途中式つき)と、電力科目での出題角度

変圧器の並行運転は、条件が多くて丸暗記になりがちなテーマですよね。でも「なぜその条件が必要か」がわかると、するすると頭に入ります。この記事では、理由とセットで、図と途中式を使ってやさしく解説します。電力科目での出題のされ方にも触れていきます。

✅ 結論(まず30秒でわかる答え)

変圧器の並行運転(2台以上を並べてつなぐこと)には、主に5つの条件があります。「極性が一致」「変圧比(巻数比)が一致」「%インピーダンスが等しい」「抵抗とリアクタンスの比が等しい」、そして三相では「相順と角変位(位相のズレ)が一致」です。これらが守られないと、無駄な電流(循環電流=じゅんかんでんりゅう)が流れて変圧器が過熱したり、負荷が片方に偏ったりして危険になります。

そもそも変圧器の並行運転とは?

まず、並行運転が何なのかを確認しましょう。変圧器の並行運転とは、2台以上の変圧器を並べて(並列に)つなぎ、同じ負荷に電気を送ることです。

なぜ1台で済まさず、わざわざ複数台を並べるのでしょうか。理由は大きく2つあります。1つは、電気を使う量(負荷)が増えて、1台では足りなくなったとき。もう1つは、1台が故障しても、もう1台で電気を送り続けられるようにする(信頼性を上げる)ためです。

🚚 トラックでたとえると
荷物(電力)が増えたら、トラック(変圧器)を2台に増やして手分けして運びますよね。並行運転はこれと同じ発想です。ただし、2台のトラックがバラバラの速度で走ると荷物が片方に偏ってしまいます。だから「足並みをそろえる条件」が必要になるのです。

この「足並みをそろえる条件」こそが、並行運転の条件です。条件を守らないと、変圧器どうしがケンカして、無駄な電流が流れたり、負荷が片方に集中したりします。だから条件を理解することが、とても大切なのです。

💡 つまり
並行運転=複数の変圧器を並べて電気を分担すること。うまく分担させるために「足並みをそろえる条件」が要る、というのが大前提です。
変圧器の並行運転を2台のトラックで荷物を運ぶことにたとえた図。変圧器AとBで負荷を分担するには足並みをそろえる条件が必要
並行運転は2台の変圧器で負荷を分担すること

並行運転の5つの条件(なぜ必要かもセットで)

ここが試験で問われる中心です。並行運転の条件は、丸暗記より「破ると何が起きるか」で覚えるのがコツです。まず全体を表で見てみましょう。

条件 破ると何が起きる?
①極性が一致している大きな循環電流が流れ、巻線が焼損する
②変圧比(巻数比)が一致電圧差で循環電流が流れる
③%インピーダンスが等しい負荷が片方に偏り、過負荷になる
④抵抗とリアクタンスの比が等しい電流の位相がずれ、効率が落ちる
⑤(三相)相順と角変位が一致大きな循環電流が流れ非常に危険

①極性が一致している

極性(きょくせい)とは、変圧器の端子の+−の向きのようなものです。これがそろっていないと、2台の電圧が打ち消し合わずに足し算され、巨大な電流(循環電流)が流れます。電池を逆向きにつなぐようなもので、もっとも危険な条件です。

②変圧比(巻数比)が一致している

変圧比(へんあつひ=入力と出力の電圧の比)がそろっていないと、2台の出力電圧に差ができます。すると、その電圧差を埋めようとして、変圧器どうしの間に循環電流が流れてしまいます。

③%インピーダンスが等しい

%インピーダンス(%Z)とは、その変圧器の「電流の流れにくさ」を割合で表したものです。これが2台でそろっていないと、負荷が片方に偏ります。流れやすい(%Zが小さい)ほうにばかり電流が集まり、その変圧器だけが過負荷になってしまうのです。

⚠️ ④と⑤はやや上級
④の「抵抗とリアクタンスの比が等しい」は、負荷の分担が電流の向き(位相)まで含めてきれいにそろうための条件です。⑤の相順と角変位は三相だけの条件で、結線の組み合わせと深く関わります。次のブロックでくわしく見ていきます。
💡 つまり
①②⑤を破ると「循環電流で焼損」、③④を破ると「負荷が偏って過負荷」。この2グループで覚えると、5条件がスッと整理できます。
変圧器の並行運転の5条件の図。破ると循環電流が流れる極性・変圧比・角変位の一致と、破ると負荷が偏る%Zと抵抗とリアクタンスの比の一致
並行運転の5条件:循環電流の組と負荷の偏りの組

なぜ循環電流が危ないのか?

条件を破ったときに出てくる「循環電流」。これが何なのか、もう少しかみくだきましょう。循環電流とは、負荷に流れるわけではなく、変圧器どうしの間でぐるぐる回ってしまう、無駄な電流のことです。

🌊 水路でたとえると
2つの水路(変圧器)の水位(電圧)が違うと、高いほうから低いほうへ水が流れ込みますよね。この水は、田んぼ(負荷)に届くわけではなく、ただ水路の間を行き来するだけ。電気の循環電流もこれと同じで、仕事をしないのにエネルギーだけを消費します。

循環電流が問題なのは、何も役に立たないのに変圧器の巻線(コイル)に電流を流し続けるからです。電流が流れれば熱が出ます。大きな循環電流が流れると、巻線が過熱して、最悪の場合は焼け焦げて壊れます(焼損=しょうそん)。

だから、極性・変圧比・角変位といった「電圧をそろえる条件」がとても重要なのです。これらがそろっていれば、変圧器どうしの電圧がぴったり打ち消し合い、無駄な循環電流は流れません。

💡 つまり
循環電流=負荷に届かず、変圧器の間をぐるぐる回る無駄な電流。熱を出して焼損につながるので、電圧をそろえる条件で防ぎます。
変圧器を並列運転したときに起こる循環電流の図。わずかな電圧差やインピーダンスの違いで、負荷に届かない電流が変圧器どうしの間を流れて過熱・焼損の原因になる
循環電流は負荷に届かず変圧器を過熱させる

三相変圧器の結線の組み合わせと角変位

三相変圧器(3本の電線で電気を送る変圧器)を並行運転するときは、さきほどの条件に加えて「相順」と「角変位」が一致していなければなりません。ここが電力科目でよく問われるポイントです。

📖 角変位ってなに?
角変位(かくへんい)とは、変圧器の一次側と二次側で生じる「電圧の位相のズレ(角度のズレ)」のことです。結線のしかた(Y結線かΔ結線か)によって、このズレが変わります。2台の角変位がそろっていないと、二次側の電圧の山と谷の位置がずれて、やはり循環電流が流れます。

並行運転できる結線の組み合わせ

結線には、Y結線(スター結線)とΔ結線(デルタ結線)があります。並行運転できるのは、角変位が一致する組み合わせだけです。代表的なものを整理します。

✅ 並行運転できる

  • Δ-Δ と Δ-Δ
  • Y-Y と Y-Y
  • Δ-Δ と Y-Y
  • Δ-Y と Y-Δ

❌ 並行運転できない

  • Δ-Δ と Δ-Y
  • Y-Y と Δ-Y
  • (角変位がそろわない組み合わせ)
⚠️ 覚え方のコツ
Δ-ΔやY-Yは角変位ゼロ、Δ-YやY-Δは角変位が30°ずれる、という性質があります。だから「角変位ゼロどうし」か「30°ずれどうし」の組み合わせはOK、混ざるとNG、と考えると整理しやすくなります。
🔗 結線そのものをおさらいしたい方へ
Y結線・Δ結線のしくみは 三相変圧器の結線|Y結線とΔ結線の違いを完全攻略 でくわしく解説しています。あわせて読むと角変位の理解が深まります。
💡 つまり
三相では角変位(位相のズレ)がそろう結線どうししか並行運転できません。「角変位ゼロどうし」か「30°ずれどうし」で組む、と覚えればOKです。
三相変圧器の結線の組み合わせと並行運転の可否の図。Δ-ΔとΔ-Δ、Y-YとY-Y、Δ-ΔとY-Y、Δ-YとY-Δはでき、Δ-ΔとΔ-Yなど角変位が違う組み合わせはできない
並行運転できる結線とできない結線(角変位の違い)

負荷分担はどう決まる?計算してみる

条件のうち③で「%インピーダンスが等しいこと」が出てきました。これは負荷の分担(どちらの変圧器が、どれだけ電気を受け持つか)に直結します。計算で確かめてみましょう。

📐 負荷分担の考え方
各変圧器は「定格容量 ÷ %Z」の大きさに比例して負荷を受け持つ

ポイントは、%Z(電流の流れにくさ)が小さいほど、たくさんの負荷を受け持つということです。流れやすい変圧器に電流が集まる、と考えれば自然ですね。具体的な数字で計算してみます。

📝 例題

変圧器A(定格容量 100kV・A、%Z=4%)と変圧器B(定格容量 100kV・A、%Z=5%)を並行運転し、合計90kV・Aの負荷をかけました。それぞれの分担はいくらでしょう?

STEP 1

それぞれの「容量÷%Z」を計算します。
A:100 ÷ 4 = 25 / B:100 ÷ 5 = 20

STEP 2

合計を出します。
25 + 20 = 45

STEP 3

この比で90kV・Aを分けます。
A:90 ×(25÷45)= 50kV・A
B:90 ×(20÷45)= 40kV・A

答えは、変圧器Aが50kV・A、変圧器Bが40kV・Aです。%Zの小さいA(流れやすいほう)が、より多くの負荷を受け持っているのがわかりますね。

⚠️ ここで間違えやすい
「%Zが小さいほど分担が大きい」を逆に覚えてしまう人が多いです。流れやすい=電流が集まる=分担が大きい、と理由で覚えましょう。なお、定格容量が違うときは、必ず「容量÷%Z」で計算します(%Zだけで比べてはいけません)。
💡 つまり
負荷分担は「容量÷%Z」の比で決まります。%Zがそろっていないと分担が偏り、片方が過負荷になる——だから条件③が大切なのです。
%Zによる負荷の按分計算の流れの図。容量÷%ZでA=1.25・B=1.00(比25:20)、合計45で90kV·Aを按分し、A=50kV·A、B=40kV·Aになり%Zが小さいAが多く負担する
負荷分担の計算:%Zが小さい変圧器が多く負担する

循環電流と台数制御を数字で確かめる

変圧比が1%違うと、循環電流はどのくらい?

変圧比がわずかに違うと、2台の二次電圧の差が2台のインピーダンスを通って、負荷と関係なくぐるぐる流れます。同じ容量の2台なら、循環電流は電圧差(%)÷(%Z1+%Z2)で見積もれます。

例:同じ容量の2台(%Z が4%と5%)で、二次電圧が1%違うとき

循環電流 = 1 ÷(4+5)= 0.111 → 定格電流の約11%

電圧がたった1%違うだけで、負荷がなくても定格の1割ほどの電流が流れ続けます。%Z は数%と小さいので、少しの電圧差でも大きな循環電流になる、というのが「変圧比の一致」が条件になる理由です。

台数制御:負荷が軽いときは1台のほうが損失が小さい

2台を並行運転すると、無負荷でも2台分の鉄損がかかります。負荷が軽いときは1台に減らしたほうが、損失の合計が小さくなります。同じ定格の2台で、1台の鉄損を Pi、1台の全負荷銅損を Pc、負荷を1台の定格に対する割合 x で表すと、

運転のしかた損失の合計
1台Pi+Pc×x²
2台(半分ずつ分担)2Pi+2×Pc×(x/2)²=2Pi+Pc×x²/2

2つが等しくなる x は、Pc×x²/2=Pi より x=√(2Pi/Pc) です。銅損が鉄損の4倍(Pc/Pi=4)なら x=√0.5≒0.707。これは1台の定格の約71%、2台の合計容量の約35%にあたり、負荷がこれより軽ければ1台運転のほうが有利です。

過去問:角変位の組み合わせ(令和5年度上期 問8・平成24年度 問8)

電験三種 機械では、三相変圧器の並行運転の記述から誤りを選ぶ問題が繰り返し出ています。どちらの年度も誤りは「角変位」の記述で、Δ-Y と Y-Y は角変位が30°違うので並行運転できない、Δ-Δ と Y-Y はどちらも0°なのでできる、という点が問われました。

つまり

循環電流 ≒ 電圧差(%)÷(%Z1+%Z2)。台数制御の切り替え点は x=√(2Pi/Pc)。角変位は「0°どうし・30°どうし」だけ並行運転できる。

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電力科目では「系統運用」の視点で問われる

同じ変圧器の並行運転でも、機械科目と電力科目では問われ方が少し違います。ここを意識すると、得点しやすくなります。

機械科目では

  • 変圧器そのものの原理
  • 並行運転の5条件
  • %Zと負荷分担の計算

電力科目では

  • 変電所での変圧器の使い方
  • 系統全体での信頼性・運用
  • 過負荷や事故時の挙動

電力科目では、変圧器を「変電所(電圧を変えて電気を中継する施設)に置かれた、系統を支える機器」として見ます。たとえば「片方が故障したとき、残った1台でどこまで電気を送れるか」「過負荷になるとどうなるか」といった、運用の視点で問われることがあります。

とはいえ、土台になる知識は同じです。5条件と負荷分担の計算をしっかり押さえておけば、機械でも電力でも対応できます。出題の“切り口”が違うだけ、と考えてください。

🔗 変圧器の基礎から固めたい方へ
並行運転の前提となる変圧器そのものは 変圧器の完全攻略マップ で体系的に学べます。
💡 つまり
機械は「変圧器の中身と計算」、電力は「系統での使い方と運用」。切り口は違っても、5条件と負荷分担の知識が両方の土台になります。
機械科目と電力科目での変圧器の扱いの図。機械科目は構造・電圧比・電流比・損失の計算、電力科目は変電所での系統の運用で、土台の知識は同じ
変圧器は機械科目でも電力科目でも土台は同じ

よくある質問(FAQ)

Q. 変圧器の並行運転の条件は?

A. 極性一致・変圧比一致・%Zが等しい・抵抗とリアクタンスの比が等しい・三相では相順と角変位の一致、の5つです。

Q. %インピーダンスが違うとどうなる?

A. 負荷が偏ります。%Zの小さい変圧器に電流が集中し、その変圧器だけが過負荷になり危険です。

Q. Δ-ΔとY-Yは並行運転できる?

A. できます。どちらも角変位がゼロなので組み合わせ可能です。Δ-YとΔ-Δのような混在はできません。

Q. 負荷分担はどう計算する?

A. 各変圧器の「定格容量÷%Z」の比で負荷を按分します。%Zが小さいほど分担が大きくなります。

まとめ:5条件は「理由」で覚える

📌 この記事の要点
  • 並行運転=複数の変圧器を並べて負荷を分担すること。
  • 5条件:極性一致・変圧比一致・%Zが等しい・抵抗とリアクタンスの比が等しい・(三相)相順と角変位の一致。
  • ①②⑤を破ると循環電流で焼損、③④を破ると負荷が偏って過負荷。
  • 三相は角変位がそろう結線どうし(ゼロ同士/30°ずれ同士)だけ並行運転できる。
  • 負荷分担は「容量÷%Z」の比で決まり、%Zが小さいほど多く負担する。

並行運転は条件が多くて大変に見えますが、「破ると何が起きるか」で覚えれば一気にラクになります。電力科目では系統運用の視点で問われますが、土台は同じ。次の一歩として、変圧器の基礎や結線をおさらいすると、知識がしっかり定着します。下の記事へどうぞ。

変圧器の並行運転のまとめの図。5条件は理由で覚える、破ると循環電流・過負荷、分担は容量÷%Z
並行運転のまとめ:5条件の理由と分担の求め方
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

変圧器の並行運転を試験の得点につなげるなら、機械科目の教科書で変圧器の単元とあわせて押さえておくと安心です。TAC出版『みんなが欲しかった!』シリーズの、電験三種「機械」の教科書と問題集です。フルカラーの教科書に重要な過去問が付いています。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

おすすめの本

電験三種の試験でどう問われるかは、過去問で確かめるのがいちばんの近道です。電験三種の過去10年分の試験問題をまとめた過去問題集です(2026年度版)。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて電気を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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📘 変圧器の完全攻略マップ|電験三種・機械科目を1記事で制覇 →

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📘 三相変圧器の結線|Y結線とΔ結線の違いを完全攻略 →

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📘 変電所の役割と主要機器|変圧器・遮断器・断路器・保護継電器 →

電力科目での変圧器の使われ方が、系統の中で見えてきます。

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