管理図・工程指数

群内変動と群間変動の違い|X̄-R管理図での見分け方と分散の求め方

群内変動と群間変動。管理図で見る2種類のバラつき

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

こんな悩みはありませんか?
  • 「群内変動」と「群間変動」の違いがよくわからない
  • X̄-R管理図で、なぜ2つのチャートを使い分けるのか理解できていない
  • σ_within と σ_between って何が違うの?
  • 管理図でバラつきの「原因」をどう特定すればいいか迷う
○ この記事でわかること
  • 「群内変動」と「群間変動」の違いがクラスの身長でイメージできる
  • X̄管理図とR管理図がそれぞれ何を監視しているかがわかる
  • バラつきの原因を「短期的」と「長期的」に分けて考える方法が身につく
  • 管理図から改善アクションにつなげる考え方がわかる

管理図を学んでいると、必ず出てくるのが「群内変動」と「群間変動」という2つの言葉。

「なんとなく違うのはわかるけど、具体的に何が違うの?」「なぜ分けて考える必要があるの?」と疑問に思っていませんか?

この記事では、この2つの変動を「教室の身長」という身近な例で徹底的に図解します。この2つを区別できるようになると、管理図の見方が劇的に変わり、「どこを改善すればいいか」がピンポイントでわかるようになります。

この記事の核心
バラつきには「2種類の顔」がある。
それを見分けることが、管理図を使いこなす第一歩です。
結論|まず30秒でわかる答え

群内変動は、同じ群(同じ時間帯・同じロットなど)の中でのばらつきで、R管理図で見ます。群間変動は、群の平均値どうしのばらつき(時間やロットで平均がずれること)で、X̄管理図で見ます。大きさは数字でも求められ、群内は σw=R̄÷d2、群間は「群平均の分散 − σw²÷n」で推定します。

群内変動と群間変動とは?|「教室の身長」でイメージする

まず、「群内変動」と「群間変動」の違いを、学校の教室を例に考えてみましょう。

【たとえ話】3つのクラスの身長を調べる

ある中学校の3年生に、A組・B組・C組の3クラスがあるとします。各クラスから5人ずつ選んで身長を測りました。

クラス 生徒1 生徒2 生徒3 生徒4 生徒5 平均
A組 158 162 160 159 161 160
B組 163 167 165 164 166 165
C組 168 172 170 169 171 170

このデータには、2種類のバラつきが隠れています。

群内変動(Within-group variation)|同じクラス内のバラつき

群内変動とは、同じグループ(群)の中でのバラつきのことです。

例えば、A組の5人の身長を見てください。158cm〜162cmで、4cmの差があります。これが「群内変動」です。

群内変動のイメージ
「同じ条件下での、個体ごとのばらつき」

・同じクラスの生徒でも、身長は少しずつ違う
・同じ時間帯に作った製品でも、寸法は少しずつ違う
・同じロットの部品でも、重さは少しずつ違う

群間変動(Between-group variation)|クラス平均同士のバラつき

群間変動とは、グループの平均値同士のバラつきのことです。

A組の平均は160cm、B組は165cm、C組は170cmでした。この平均値の差 10cmが「群間変動」です。

群間変動のイメージ
「条件が変わったときの、平均値のシフト」

・クラスが変わると、平均身長も変わる
・時間帯が変わると、製品の平均寸法も変わる
・ロットが変わると、部品の平均重量も変わる

2つの変動を「分けて考える」意味

なぜ、わざわざ2つに分けるのでしょうか?

それは、原因が違うからです。

群内変動 群間変動
短期的・偶然的な原因
・測定のバラつき
・材料の微小な違い
・環境の微小な変動
長期的・系統的な原因
・時間の経過による変化
・作業者の交代
・設備の劣化・調整
核心ポイント
バラつきの原因が違えば、対策も違う。

群内変動が大きい → 「その場」の作業を見直す
群間変動が大きい → 「時間の流れ」で何が変わったか調べる
群内変動と群間変動をクラスの身長にたとえた図。群内変動は同じクラスの中のバラつき、群間変動はクラスの平均どうしのバラつき
群内変動はクラス内、群間変動はクラス平均どうしの差

管理図で見る群内変動と群間変動|X̄-R管理図の役割分担

ここからが本題です。X̄-R管理図は、実は「群内変動」と「群間変動」を別々のチャートで監視しています。

R管理図 → 群内変動を監視する

R管理図は、各サブグループの範囲(Range)をプロットします。範囲とは「最大値 − 最小値」のことです。

先ほどの教室の例で言えば、A組の範囲は 162 − 158 = 4cm です。

R管理図が監視しているもの
「同じ群の中で、どれくらいバラついているか」

R(範囲)が大きい = 群内変動が大きい = 短期的なバラつきが大きい
R(範囲)が小さい = 群内変動が小さい = 短期的に安定している

X̄管理図 → 群間変動を監視する

X̄管理図は、各サブグループの平均値をプロットします。

A組の平均160cm、B組の平均165cm、C組の平均170cm…。この平均値の動きを追いかけます。

X̄管理図が監視しているもの
「群の平均値が、時間とともにどう変化しているか」

X̄が上下に振れる = 群間変動が大きい = 工程が時間とともに変化している
X̄が安定している = 群間変動が小さい = 工程が安定している

X̄-R管理図の「役割分担」を図解

項目 R管理図 X̄管理図
プロットする値 群の範囲 R 群の平均 X̄
監視する変動 群内変動 群間変動
時間スケール 短期(瞬間的) 長期(時間経過)
異常時の原因例 測定誤差、材料ロット 設備劣化、環境変化
試験で問われるポイント
「R管理図が安定していて、X̄管理図だけが異常」
→ 群内変動は安定しているが、群間変動に問題がある
→ 時間の経過で「何か」が変わっている

「R管理図が異常で、X̄管理図は安定」
→ 群内変動が不安定
→ 同じ条件でも製品のバラつきが大きい
X̄-R管理図の役割分担の図。X̄(平均)管理図で群間変動を、R(範囲)管理図で群内変動を見る
X̄管理図は群間変動、R管理図は群内変動を見る

分散の分解|なぜ「全体 = 群内 + 群間」になるのか

統計学では、データ全体のバラつき(分散)を「群内変動」と「群間変動」に分解できます。この考え方は、管理図だけでなく、分散分析(ANOVA)でも使われる超重要概念です。

分散の分解公式

分散の分解
σ²total = σ²within + σ²between

・σ²total:全データの分散(全変動)
・σ²within:群内分散(群内変動)
・σ²between:群間分散(群間変動)

【図解】なぜ「足し算」で分解できるのか?

この公式の意味を、イメージで理解しましょう。

ステップ1:全体の平均からのズレを考える
あるデータの「全体平均からのズレ」は、2つに分解できます。

ズレの分解

(全体平均からのズレ)=(群平均からのズレ)+(群平均と全体平均の差)

例:A組の生徒(身長158cm)の場合
・全体平均 = 165cm
・A組の平均 = 160cm

全体からのズレ(158 − 165 = −7)
= 群内のズレ(158 − 160 = −2)+ 群間のズレ(160 − 165 = −5)

ステップ2:ズレの2乗を足し合わせると…
このズレを2乗して全員分足し合わせると、「平方和」が計算できます。そして、平方和も同様に分解できます。

平方和の分解
SStotal = SSwithin + SSbetween

・SStotal:総平方和(全データの総バラつき)
・SSwithin:群内平方和(群内のバラつきの合計)
・SSbetween:群間平方和(群平均のバラつき)

平方和は、このように足し算でそのまま分けられます。上の分散の公式は、全体のばらつきが「群内のばらつきの成分」と「群間のばらつきの成分」の足し算になる、という意味です(成分の求め方は下の「群内変動と群間変動の大きさを数字で求める」の節)。

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分散の分解の図。全分散は群内分散(グループの中のばらつき)と群間分散(グループどうしの平均のばらつき)の和で、σ²total=σ²within+σ²between(例:全分散100=群内60+群間40)
全体のばらつき=群内変動+群間変動

【計算例】工場の製品データで群内・群間変動を計算

具体的な数値で、群内変動と群間変動を計算してみましょう。

問題設定

製品の寸法データ(単位:mm)

ある工場で、1日3回(朝・昼・夕)に5個ずつ製品をサンプリングしました。

時間帯 製品1 製品2 製品3 製品4 製品5 平均 X̄ 範囲 R
朝 50.2 49.8 50.0 50.1 49.9 50.0 0.4
昼 50.5 50.3 50.4 50.6 50.2 50.4 0.4
夕 50.9 50.7 50.8 51.0 50.6 50.8 0.4

群内変動の確認

各時間帯の範囲Rを見てください。すべて0.4mmで安定しています。

これは、「同じ時間帯に作った5個の製品のバラつきは、常に0.4mm程度」ということを意味します。群内変動は安定しています。

群間変動の確認

各時間帯の平均X̄を見てください。50.0 → 50.4 → 50.8 と、0.4mmずつ上昇しています。

これは、「時間が経つにつれて、製品の平均寸法が大きくなっている」ことを示しています。群間変動に問題ありです。

この管理図からわかること
R管理図は安定、X̄管理図は上昇トレンド

→ 群内変動(短期的なバラつき)は問題なし
→ 群間変動(時間経過による変化)に異常あり

推定される原因:工具の摩耗、機械の熱膨張、材料の経時変化など
朝・昼・夕の製品の重さで群内・群間のばらつきを見る例の図。朝の平均5.06g、昼の平均5.84g、夕の平均5.34gで、時間帯の中のばらつきが群内、時間帯の平均の差が群間、X̄管理図とR管理図で可視化
朝・昼・夕のデータで見る群内と群間のばらつき

群内変動と群間変動の大きさを数字で求める

管理図を見て「群間変動が大きそう」と感じたら、どのくらい大きいのかを数字で確かめられます。考え方は、次の2つの式だけです。

求めるもの式意味
群内変動の標準偏差 σwσw=R̄÷d2R管理図の範囲の平均から、群の中のばらつきを推定する(d2 は n で決まる係数。n=5 で2.326)
群平均のばらつきσX̄²=σw²÷n+σb²群平均の分散には、群内のばらつきが n で割られた分と、群間のばらつき σb² の両方が入っている
群間変動の分散 σb²σb²=σX̄²−σw²÷n群平均の分散から、群内のばらつきの分を引く

例題:上の工場のデータで計算する

朝・昼・夕に5個ずつ測ったデータで、R はどれも0.4mm、群平均は50.0・50.4・50.8mm でした。

手順1 群内:R̄=0.4、n=5 の d2=2.326 から、σw=0.4÷2.326≒0.172mm。σw²≒0.0296。

手順2 群平均の分散:50.0・50.4・50.8 の平均は50.4。ずれの2乗の和は0.16+0+0.16=0.32。群の数3から1を引いた2で割り、σX̄²=0.16。

手順3 群間:σb²=0.16−0.0296÷5=0.16−0.0059≒0.154。σb≒0.393mm。

手順4 全体:σT²=σw²+σb²≒0.0296+0.154=0.184。σT≒0.43mm。

群内の0.172mm に対して群間は0.393mm と2倍以上あり、「時間とともに平均がずれる」ことがばらつきの大部分を占めているとわかります。X̄管理図の限界も計算すると、UCL=50.4+0.577×0.4≒50.63、LCL≒50.17 で、朝の50.0と夕の50.8は限界の外です。

ここでは計算の流れを見るために群を3つにしましたが、実際には群の数を20〜25ほど集めてから推定します。群が少ないと σX̄² の推定がぶれるためです。

つまり

群内は σw=R̄÷d2、群間は σb²=σX̄²−σw²÷n。「全体の分散=群内の分散+群間の分散」は、この2つの成分を足すという意味。

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バラつきの原因を特定する|群内・群間で対策が変わる

管理図で異常を発見したら、次は「どこを改善すればいいか」を考えます。群内変動と群間変動で、疑うべき原因が違います。

群内変動が大きいとき|「短期的な原因」を探す

R管理図が異常(管理限界を超える、または不安定)な場合、同じ条件下でのバラつきが大きいことを意味します。

群内変動が大きいときの原因例
  • 測定のバラつき:測定器の精度不足、測定者の技量差
  • 材料の不均一:同じロット内でも材料特性にムラがある
  • 設備の振動・ガタ:加工中の微小な振動が寸法に影響
  • 作業のバラつき:手順が標準化されていない

群間変動が大きいとき|「長期的な原因」を探す

X̄管理図が異常(トレンド、シフト、管理限界超え)な場合、時間の経過で何かが変化していることを意味します。

群間変動が大きいときの原因例
  • 工具の摩耗:切削工具が徐々にすり減る
  • 機械の熱膨張:稼働時間とともに温度が上昇
  • 材料ロットの切り替え:ロットが変わると特性も変わる
  • 作業者の交代:シフト交代で作業方法が微妙に変わる
  • 環境変化:気温・湿度の変化が製品に影響

診断フローチャート

R管理図 X̄管理図 診断 対策の方向性
安定 安定 工程は統計的管理状態 現状維持、定期監視
安定 異常 群間変動に問題 長期的原因を調査
異常 安定 群内変動に問題 短期的原因を調査
異常 異常 両方に問題 まずR管理図の安定化から
改善の順番
両方に問題がある場合は、まずR管理図(群内変動)を安定させるのが鉄則です。

なぜなら、群内変動が不安定なままでは、群間変動を正確に評価できないからです。X̄管理図の管理限界線は、R̄(範囲の平均)から計算されるため、Rが安定していないと信頼できません。
ばらつきの原因を探す診断フローチャート。群内変動が大きいなら機械振動・材料ロットのばらつき・測定誤差など短期的な原因、群間変動が大きいなら温度ドリフト・工具摩耗・シフト交代など長期的な原因を探す
群内が大きければ短期、群間が大きければ長期の原因

よくある質問

Q. 群内変動と群間変動の違いは?

A. 群内変動は同じ群の中のばらつき、群間変動は群の平均値どうしのばらつきです。R管理図とX̄管理図で分けて見ます。

Q. 群内変動の標準偏差はどう求める?

A. R管理図の範囲の平均R̄を係数d2で割って求めます。群の大きさが5なら d2=2.326 で、σw=R̄÷2.326 です。

Q. 「郡内変動」と「群内変動」はどちらが正しい?

A. 正しくは「群内変動」です。データをまとめた「群(サブグループ)」の中のばらつきという意味なので、群の字を使います。

まとめ|群内変動と群間変動の違い一覧表

最後に、群内変動と群間変動の違いを一覧表でまとめます。

項目 群内変動(Within) 群間変動(Between)
定義 同じ群の中でのバラつき 群の平均値同士のバラつき
教室の例 同じクラス内の生徒の身長差 クラス平均の身長差
監視する管理図 R管理図(範囲) X̄管理図(平均)
時間スケール 短期的(瞬間的なバラつき) 長期的(時間経過による変化)
原因の種類 偶然原因(避けられないバラつき) 異常原因(特定できる変化)
原因例 測定誤差、材料の微小差、振動 工具摩耗、温度変化、作業者交代
対策の方向性 作業標準化、設備の精度向上 定期点検、調整頻度の最適化
この記事のまとめ
  • 群内変動:同じ条件下でのバラつき。R管理図で監視
  • 群間変動:条件が変わったときの平均のシフト。X̄管理図で監視
  • 全分散 = 群内分散 + 群間分散(分散の分解)
  • 異常時は原因の時間スケールを考えて対策を打つ
  • 両方異常なら、まずR管理図の安定化から

「群内変動」と「群間変動」を区別できるようになると、管理図の見え方が変わります。単に「異常だ!」と騒ぐのではなく、「どんな原因が疑われるか」まで推測できるようになります。

ぜひ、職場の管理図を見るときに「これは群内?群間?」と意識してみてください。

群内変動と群間変動の比較表。群内変動は小さな要因の短期的な影響でR管理図で監視し即時的な処置、群間変動は大きな要因の長期的な影響でX̄管理図で監視し系統的な改善
群内変動と群間変動の違いの一覧表
この記事の理解を深める本と道具
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