- 「誤差率」と「補正率」の公式が似すぎて、どっちがどっちかわからなくなる
- 過去問で「次のうち正しいものを選べ」系の問題が出ると、符号の正負で迷って失点する
- そもそも「真の値」「測定値」「誤差」の関係がモヤモヤしている
- 誤差・誤差率・補正・補正率の定義と公式
- 誤差率と補正率の符号が逆になる理由を直感的に理解
- 具体的な計算例で手を動かして定着
- 試験で出る正誤問題の頻出パターンと対処法
計器で何かを測定すると、必ず「ズレ」が生じます。体重計に乗ったとき、実際は60.0kgなのに60.3kgと表示される——このズレが「誤差」です。
電験三種の理論科目では、この誤差を数値で扱う「誤差率」と「補正率」が出題されます。公式自体はシンプルなのですが、分母が「真の値」なのか「測定値」なのか、符号がプラスなのかマイナスなのかで受験生が混同しやすく、正誤問題で「ひっかけ」として頻出するテーマです。
この記事では、公式の丸暗記ではなく「なぜそうなるのか」を図解で理解することで、どんな問われ方をされても間違えない知識を身につけていただきます。
目次
まず「4つの用語」を整理する|誤差・誤差率・補正・補正率
いきなり公式に入る前に、登場する4つの用語の関係を整理しましょう。すべて「真の値」と「測定値」のズレを扱う概念ですが、「誰の視点か」が違うだけです。
📏 「真の値」と「測定値」の関係
まず大前提として、測定の世界には2つの値があります。
| 用語 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 真の値 | T | その物理量の「本当の値」。理想的な計器なら、この値が表示される |
| 測定値 | M | 計器が実際に示した値。誤差を含んでいる |
あなたの実際の体重が60.0kg(=真の値T)だとします。体重計に乗ったら60.3kg(=測定値M)と表示されました。この「0.3kgのズレ」が誤差であり、これを割合(%)で表したものが誤差率です。
🔀 「誤差」と「補正」は表裏一体
ここが最重要ポイントです。「誤差」と「補正」は同じズレを、逆方向から見たものです。
誤差(Error)
「計器はどれだけズレたか?」
= 測定値 − 真の値
= M − T
「ズレ」を見つける視点
(犯人探し)
補正(Correction)
「真の値に戻すにはいくら足す?」
= 真の値 − 測定値
= T − M
「修正」する視点
(治療する)
誤差 ε = M − T(測定値 − 真の値)
補正 c = T − M = −ε(真の値 − 測定値)
つまり、補正 = −誤差。符号が逆になるだけです。体重計の例でいえば、誤差は +0.3kg(多く表示している)、補正は −0.3kg(0.3kgを引けば真の値に戻る)ということです。

誤差率とは?|「真の値に対して何%ズレているか」
誤差率は、誤差を「割合(%)」で表した指標です。「真の値に対して、測定値がどれくらいズレているか」を百分率で示します。
📐 誤差率の公式
M:測定値、T:真の値
分子は「誤差(M − T)」、分母は「真の値 T」です。ここが最重要暗記ポイントで、分母を「測定値M」と間違える受験生が非常に多いです。
誤差率の分母は「真の値 T」です。「測定値 M」ではありません。
「ズレがどれくらいかを知りたい → 基準は"正しい値(真の値)"であるべき」と覚えましょう。
🧮 計算例で確認する
ある電圧計で測定したところ、指示値(測定値)は 102V であった。真の値が 100V のとき、この計器の誤差率を求めよ。
【解答】
誤差率 εr = (M − T) / T × 100
= (102 − 100) / 100 × 100
= 2 / 100 × 100
= +2%
→ 真の値より2%大きく表示している(計器が「盛っている」状態)
ある電流計の指示値が 4.9A、真の値が 5.0A のとき、誤差率はいくらか。
【解答】
誤差率 εr = (4.9 − 5.0) / 5.0 × 100
= −0.1 / 5.0 × 100
= −2%
→ 真の値より2%小さく表示している(計器が「少なめに」読んでいる状態)
誤差率がプラス → 計器が真の値より「大きく」表示(盛っている)
誤差率がマイナス → 計器が真の値より「小さく」表示(足りない)

補正率とは?|「測定値から真の値に戻すには何%足すか」
補正率は、誤差率とは「反対の視点」です。誤差率が「ズレの発見」なら、補正率は「ズレの修正」にあたります。
📐 補正率の公式
T:真の値、M:測定値
誤差率と2つの違いがあります。①分子の引き算の順番が逆(T − M)、②分母が「測定値 M」になっている点です。
🤔 なぜ分母が「測定値 M」なのか?
ここは「なぜ?」が自然に理解できるポイントです。補正率は「測定値を読んだ後に、真の値に戻すための操作」です。つまり、手元にあるのは「測定値」であり、そこから何%修正すればいいかを知りたい。だから基準(分母)は「測定値 M」になるのです。
誤差率の視点
「真の値を基準にして、
測定値がどれだけズレたか?」
→ 分母は T(真の値)
補正率の視点
「測定値を基準にして、
真の値に戻すにはどれだけ足す?」
→ 分母は M(測定値)
🧮 計算例で確認する
例題1と同じ条件。測定値 102V、真の値 100V のとき、補正率はいくらか。
【解答】
補正率 cr = (T − M) / M × 100
= (100 − 102) / 102 × 100
= −2 / 102 × 100
≈ −1.96%
→ 測定値から約1.96%を引けば、真の値(100V)に近づく
誤差率が +2% なのに、補正率は −1.96% と、絶対値がわずかに異なります。これは分母が違うから(誤差率の分母はT=100、補正率の分母はM=102)です。ただし電験三種の試験では、このわずかな差は無視して「誤差率と補正率は符号が逆で、絶対値はほぼ等しい」と覚えておけば十分です。

誤差率と補正率の関係を1枚の表で整理
ここまでの内容を、試験直前に見返せるよう1枚の表にまとめます。
| 誤差率 εr | 補正率 cr | |
|---|---|---|
| 意味 | ズレを「発見」する | ズレを「修正」する |
| 分子 | M − T(測定値 − 真の値) | T − M(真の値 − 測定値) |
| 分母 | T(真の値) | M(測定値) |
| 基準の考え方 | 正しい値(T)を基準に 「どれだけ外したか」 |
手元の値(M)を基準に 「どれだけ戻すか」 |
| 符号 | + なら「大きく表示」 − なら「小さく表示」 |
誤差率と常に逆符号 |
| 関係 | 補正率 ≈ −誤差率(誤差が小さいとき、絶対値はほぼ等しい) | |
🧠 覚え方のコツ|「誤差率は"真"、補正率は"測"」
分母を間違えないための語呂合わせです。
「誤(ゴ)は真(シン)、補(ホ)は測(ソク)」
誤差率の分母は真の値、補正率の分母は測定値。
五十音で「ゴ→シン」「ホ→ソク」と語感で覚えると試験中に思い出しやすいです。

計器の「階級」と誤差率の関係|精度はフルスケールで決まる
ここからは、電験三種で出題される計器の「精度」についてもう一歩踏み込みます。計器のカタログや盤面には「0.5級」「1.0級」などの「階級(Class)」が表示されています。これは「フルスケール(最大目盛値)に対する最大許容誤差の百分率」を表しています。
📐 階級の定義
例:1.0級の計器 → フルスケールの±1.0%までの誤差は「仕様内」
⚠️ 「読み値の誤差率」と「階級」は別物!
ここは試験で引っかかりやすいポイントです。階級が「1.0級」の計器は、どの読み値でも誤差が1%以内というわけではありません。階級はあくまで「フルスケールに対する割合」なので、読み値が小さくなるほど「読み値に対する誤差率」は大きくなります。
フルスケール150V、階級1.0級の電圧計がある。この計器で30Vを測定した場合、読み値に対する最大誤差率は何%か。
【解答】
STEP 1:最大許容誤差を求める
1.0級 → フルスケールの±1.0%
最大許容誤差 = 150 × 0.01 = ±1.5V
STEP 2:読み値に対する誤差率を求める
誤差率 = 1.5 / 30 × 100 = ±5.0%
→ 1.0級の計器でも、フルスケールの1/5しか使わないと、読み値に対する誤差率は5%にまで悪化する!
計器の精度を上げるには、測定値がフルスケールの2/3以上になるレンジを選ぶのが鉄則です。低いレンジで測るほど「読み値に対する誤差率」が増大するためです。この「レンジ選びのルール」は正誤問題で頻出です。

補正率を使って「真の値」を逆算する|実務的な使い方
実際の測定現場では、「真の値」は未知であり、分かっているのは「測定値」と「計器の誤差特性」だけです。そこで補正率を使って、測定値から真の値を推定する計算が重要になります。
📐 真の値の求め方
補正率 cr の定義式を変形すると、以下の式が得られます。
※ cr は小数で代入(例:+2%なら cr = 0.02)
同様に、誤差率 εr が分かっている場合は以下の式を使います。
※ εr は小数で代入(例:+2%なら εr = 0.02)
🧮 計算例で確認する
ある電圧計の誤差率が +3% であることがわかっている。この計器で測定したところ、指示値が 206V であった。真の電圧はおよそいくらか。
【解答】
T = M / (1 + εr)
= 206 / (1 + 0.03)
= 206 / 1.03
≈ 200V
→ 計器は+3%盛っていたので、真の値は指示値より小さい200V
ある計器の補正率が +1.5% であることがわかっている。測定値が 49.0A のとき、真の電流値を求めよ。
【解答】
T = M × (1 + cr)
= 49.0 × (1 + 0.015)
= 49.0 × 1.015
≈ 49.7A
→ 補正率が+1.5%ということは、計器が少なめに表示していたので、真の値は測定値より大きい

フローチャート|問題を見たら「どの公式」を使うか一発判定
電験三種の試験で誤差率・補正率の問題が出たとき、以下のフローに沿えば迷いません。
問題文の「聞かれていること」を確認する
→「誤差率を求めよ」「補正率を求めよ」「真の値を求めよ」のどれか
分母を決める
| 誤差率を求める | 分母 = T(真の値) |
| 補正率を求める | 分母 = M(測定値) |
分子を決める
| 誤差率を求める | 分子 = M − T |
| 補正率を求める | 分子 = T − M |
真の値を逆算する場合
| 誤差率εrが既知 | T = M / (1 + εr) |
| 補正率crが既知 | T = M × (1 + cr) |
答えが出たら、「真の値と測定値の大小関係」が論理的に正しいか確認しましょう。
・誤差率が+(計器が盛っている)→ 真の値 < 測定値
・誤差率が−(計器が少なめに読む)→ 真の値 > 測定値

試験に出る!正誤問題の頻出パターン5選
誤差率と補正率のテーマは、計算問題だけでなく「正しいものを選べ」「誤っているものを選べ」形式の知識問題でも出題されます。以下の5パターンは必ず押さえておきましょう。
パターン① 分母のすり替え
❌ 誤った選択肢の例:
「誤差率は、誤差を測定値で割って百分率で表したものである」
✅ 正しくは:
「誤差率は、誤差を真の値で割って百分率で表したものである」
パターン② 符号の入れ替え
❌ 誤った選択肢の例:
「補正率の符号は、誤差率の符号と同じである」
✅ 正しくは:
「補正率の符号は、誤差率の符号と逆である」
パターン③ 「階級」の誤解
❌ 誤った選択肢の例:
「1.0級の計器は、どの測定値に対しても誤差率が1.0%以内である」
✅ 正しくは:
「1.0級の計器は、フルスケールに対して誤差が1.0%以内である。読み値が小さくなるほど、読み値に対する誤差率は増大する」
パターン④ 「補正」と「補正率」の混同
注意:「補正」は値(VやAの単位を持つ)、「補正率」は割合(%、無次元)です。
補正 = T − M(値)
補正率 = (T − M) / M × 100(割合)
パターン⑤ レンジ選定に関する記述
✅ 正しい記述:
「精度を高めるには、指示値がフルスケールの2/3以上となるレンジを選ぶのが望ましい」
→ これは「フルスケールに対する誤差」が一定なので、読み値が大きいほど「読み値に対する誤差率」が小さくなるため

公式チートシート|試験直前に見返す1枚
この記事で学んだ公式をすべてまとめます。試験直前に見返して、記憶を固めてください。
| 名称 | 公式 |
|---|---|
| 誤差 | ε = M − T |
| 補正 | c = T − M = −ε |
| 誤差率 | εr = (M − T) / T × 100 [%] |
| 補正率 | cr = (T − M) / M × 100 [%] |
| 真の値(誤差率既知) | T = M / (1 + εr) |
| 真の値(補正率既知) | T = M × (1 + cr) |
| 階級 | 最大許容誤差 / フルスケール × 100 [%] |
🔑 絶対に覚える3つのルール:
① 誤差率の分母は T(真の値)、補正率の分母は M(測定値)
② 誤差率と補正率の符号は逆
③ 階級はフルスケール基準。読み値が小さいほど、読み値に対する誤差率は大きくなる

まとめ
- 誤差 = M − T(測定値 − 真の値)、補正 = T − M で符号が逆
- 誤差率の分母は「真の値 T」、補正率の分母は「測定値 M」
- 「誤差率はズレの発見、補正率はズレの修正」と目的が違うから分母が違う
- 真の値の逆算は、誤差率既知ならT = M / (1 + εr)、補正率既知ならT = M × (1 + cr)
- 計器の「階級」はフルスケール基準。読み値が小さいほど誤差率は悪化する
- 精度を上げるには、指示値がフルスケールの2/3以上のレンジを選ぶ
誤差率と補正率は、公式自体はシンプルですが「分母がどっちか」「符号がどっちか」で混同しやすい厄介なテーマです。この記事で「なぜそうなるのか」を理解しておけば、試験でどんな角度から問われても確実に得点できます。
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