- 「電熱」の範囲、加熱方式が多すぎて何を覚えればいいかわからない
- 「抵抗加熱」「誘導加熱」「誘電加熱」…名前は似てるけど違いがわからない
- 熱量の計算問題で、公式は知っているのに数値を代入する段階でミスする
- 過去問を見ても「何を問われているのか」が読み取れない
- 電気加熱の6種類を比較表で一発整理(正誤問題対策)
- 各加熱方式の原理・用途・キーワードを製造業の例でイメージ化
- 熱量計算の公式 Q = mcΔT を途中式付きで2パターン解説
- 電力と時間から熱量を求める Q = Pt との使い分け
電験三種の機械科目で、電熱は「覚えれば取れる」分野の代表格です。
変圧器やパワエレのような複雑な回路計算は出ません。出題パターンは大きく2つだけ。①加熱方式の正誤問題と②熱量の計算問題です。
つまり、6種類の加熱方式を「比較表」で整理し、熱量計算の公式を「パターン」で押さえれば、この分野は得点源に変わります。
この記事では、電気の知識ゼロからでも理解できるように、製造現場の具体例を交えながら解説していきます。「電熱って何から手をつければ?」という方は、このまま読み進めてください。
目次
そもそも「電熱」とは?|電気エネルギーを熱に変える技術
電熱(でんねつ)とは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、ものを加熱・溶融・乾燥させる技術の総称です。
身近な例で言えば、電気ストーブやIHクッキングヒーター、電気炉などはすべて電熱の応用です。
ガスバーナーや石油ボイラーでも加熱はできますが、電気加熱には①温度制御が精密、②排ガスが出ない、③局所加熱が可能というメリットがあります。自動車部品の焼入れ工程や半導体の製造では、温度を±1℃単位で制御する必要があるため、電気加熱が使われています。
電験三種での出題パターンは2つだけ
電熱分野で出題されるのは、次の2パターンに集約されます。
パターン①:正誤問題
「次の記述のうち、誤っているものはどれか」形式。各加熱方式の原理・特徴・用途を正確に覚えているかが問われる。
パターン②:計算問題
「水を◯℃から◯℃に加熱するために必要な電力量を求めよ」形式。Q = mcΔTとQ = Ptを使いこなせるかが問われる。
この記事では、まずパターン①に対応するために6種類の電気加熱方式を比較表で整理し、次にパターン②の熱量計算を途中式付きで解説します。

電気加熱の6種類|比較表で一発整理
電気加熱は、熱の発生場所(被加熱物の外か中か)と加熱原理で分類されます。電験三種で出題されるのは以下の6種類です。
まず全体を比較表で俯瞰してから、一つずつ解説していきます。
| 加熱方式 | 加熱原理 | 被加熱物 | 身近な例 | 試験での キーワード |
|---|---|---|---|---|
| ①抵抗加熱 | 電流によるジュール熱 | 金属・非金属 | 電気ストーブ、ニクロム線ヒータ | 間接抵抗炉 直接抵抗炉 |
| ②誘導加熱 | 交番磁界によるうず電流 | 導電性のもの(金属) | IHクッキングヒータ、高周波焼入れ | うず電流 表皮効果 |
| ③誘電加熱 | 高周波電界による誘電体損 | 絶縁物(木材・食品・プラスチック) | 電子レンジ、木材乾燥 | 誘電体損 マイクロ波 |
| ④赤外線加熱 | 放射(電磁波) | 広範囲(表面加熱) | 塗料乾燥、食品加熱 | 放射加熱 表面加熱 |
| ⑤アーク加熱 | 電極間のアーク放電 | 金属(高温溶融) | アーク溶接、電気製鋼 | アーク炉 直接式・間接式 |
| ⑥電子ビーム加熱 | 高速電子の衝突 | 高融点金属(チタン等) | 高融点金属の精錬、微細溶接 | 真空中 高エネルギー密度 |
自動車部品メーカーなら、②誘導加熱(高周波焼入れ)と⑤アーク加熱(アーク溶接)は毎日のように見る工程です。「あの溶接ロボットが出してる火花がアーク放電か」「ギアの表面が硬いのは高周波焼入れのおかげか」と結びつけると、一気に覚えやすくなります。
試験で最も間違えやすいのは「誘導加熱」と「誘電加熱」の混同です。名前が似ていますが、被加熱物がまったく違います。
・誘導加熱 → 金属(導体)を加熱する(IH)
・誘電加熱 → 絶縁物(誘電体)を加熱する(電子レンジ)
「誘導 = 導体」「誘電 = 電子レンジ」と語呂で覚えてしまいましょう。

6種類の加熱方式を一つずつ解説(前半)
ここからは、正誤問題で問われる各方式の原理・特徴・用途を、イメージ重視で解説していきます。
① 抵抗加熱|電気ストーブの原理
最もシンプルな加熱方式です。電流が導体を流れるときに発生するジュール熱(I²R)を利用します。
水道管に例えると、細いパイプ(抵抗が大きい)に水を無理やり流すと、パイプが振動して熱くなるイメージです。ニクロム線ヒーターがまさにこれで、抵抗の大きいニクロム線に電流を流してわざと発熱させています。
間接抵抗加熱
ヒーター(発熱体)が被加熱物の外側にある。ヒーターの熱が伝導・対流・放射で伝わる。
例:電気炉、電気オーブン
直接抵抗加熱
被加熱物自体に電流を流して発熱させる。被加熱物が導体である必要がある。
例:黒鉛炉、塩浴炉
「間接」か「直接」かは、発熱する場所が被加熱物の外か中かの違いです。間接式は温度分布が均一になりやすい。直接式は加熱効率が高い。この対比が正誤問題で出ます。
② 誘導加熱|IHクッキングヒーターの原理
コイルに交流電流を流すと、周囲に交番磁界が発生します。この磁界の中に金属(導体)を置くと、金属内部にうず電流が誘導され、そのジュール熱で金属自身が発熱します。
IHクッキングヒーターが「鍋自体が熱くなる」のはこの原理です。ヒーター(コイル)は発熱していません。だからIHの天板は触っても(鍋を外せば)あまり熱くないのです。
・表皮効果:周波数が高いほど、うず電流は金属の表面付近に集中する現象。高周波焼入れでは、これを利用して表面だけを硬くする。
・浸透深さ:うず電流が流れる深さ。周波数が高いほど浅くなる。
自動車のギアやシャフトの「高周波焼入れ」は、表面だけを硬くして耐摩耗性を上げつつ、内部は靭性(粘り強さ)を保つ処理です。品質保証部で硬度検査を担当したことがある方なら、「表面硬度HRCが高いのに内部は低い」というデータを見たことがあるはず。あれが表皮効果の恩恵です。
③ 誘電加熱|電子レンジの原理
高周波の電界をかけると、誘電体(絶縁物)の内部で分子が激しく振動します。この振動による摩擦熱が誘電体損(誘電損失)であり、これが発熱の正体です。
電子レンジは2.45GHzのマイクロ波で水分子を振動させて食品を温めています。「内部から均一に加熱できる」のが最大の特徴です。
もう一度整理します。試験ではこの2つの混同を狙った選択肢が頻出です。
| 項目 | 誘導加熱 | 誘電加熱 |
|---|---|---|
| 被加熱物 | 金属(導体) | 絶縁物(誘電体) |
| 発熱の原因 | うず電流のジュール熱 | 分子の振動摩擦(誘電体損) |
| 身近な例 | IHヒーター | 電子レンジ |
| 覚え方 | 誘導 = 導体 | 誘電 = 電子レンジ |

6種類の加熱方式を一つずつ解説(後半)
④ 赤外線加熱|塗装ラインの乾燥
赤外線ランプから放射される電磁波(赤外線)が被加熱物の表面に吸収され、熱に変わります。太陽の光で体が温まるのと同じ原理です。
特徴は表面加熱であること。内部まで熱が届きにくいため、薄いものの乾燥に適しています。自動車の塗装ラインや食品の焼き上げに使われます。
「赤外線加熱は放射(輻射)による加熱」と覚えてください。熱の伝わり方は伝導・対流・放射の3種類ありますが、赤外線加熱は放射です。正誤問題で「赤外線加熱は対流による加熱である」は×です。
⑤ アーク加熱|溶接と製鋼の現場
電極間にアーク放電を発生させ、その超高温(3,000〜20,000℃)で金属を溶融・加熱する方式です。
アーク溶接はもちろん、製鉄所のアーク炉(電気炉)でスクラップ鉄を溶かして鋼を作る工程にも使われています。
直接アーク式
電極と被加熱物の間にアークを発生。被加熱物に直接アークが当たる。
例:アーク溶接、直接式アーク炉
間接アーク式
電極同士の間にアークを発生。その放射熱で被加熱物を加熱する。
例:間接式アーク炉
⑥ 電子ビーム加熱|特殊金属の精錬
高速に加速された電子ビームを被加熱物に衝突させ、運動エネルギーを熱エネルギーに変換する方式です。
最大の特徴は真空中で行われること。大気中では電子が空気分子と衝突してエネルギーを失ってしまうためです。チタンやタングステンなど、高融点で反応性の高い金属の精錬・溶接に使われます。
電子ビーム加熱のキーワードは2つだけ。「真空」と「高エネルギー密度」です。「電子ビーム加熱は大気中で行う」という選択肢が出たら即座に×と判断できます。
6種類を「被加熱物」で分類するフロー
正誤問題では「この加熱方式で加熱できる対象は何か?」が問われます。以下のフローで判断してください。
①抵抗加熱 ②誘導加熱 ⑤アーク加熱 ⑥電子ビーム加熱
③誘電加熱
④赤外線加熱

熱量計算の公式を整理|Q = mcΔT と Q = Pt
ここからは、計算問題の対策です。電熱の計算で使う公式は、基本的に2つだけです。
| Q | 必要な熱量 [J](ジュール) |
| m | 質量 [kg] |
| c | 比熱 [J/(kg·℃)] ※物質固有の値 |
| ΔT | 温度変化 [℃](= 加熱後の温度 − 加熱前の温度) |
「比熱」は物質1kgの温度を1℃上げるのに必要な熱量です。水の比熱は約4,186 J/(kg·℃)。水が温まりにくく冷めにくい理由は、この比熱が非常に大きいからです。
比熱は「温まりにくさ」を表す数値です。工場のラインで言えば、比熱が大きい材料=温めるのに時間とエネルギーがかかる。鉄(比熱:約460 J/(kg·℃))よりも水(比熱:約4,186 J/(kg·℃))のほうが約9倍温めにくい。だから電気ポットで水を沸かすには、結構な電力が必要なのです。
2つの公式の使い分け
計算問題では、この2つの公式をイコールで結ぶのが基本パターンです。
電気が供給する熱量 = 物質が吸収する熱量
Pt = mcΔT
「電力P [W] のヒーターで t [s] 間加熱したときの熱量」=「質量m [kg]、比熱c [J/(kg·℃)] の物質を ΔT [℃] 上げるのに必要な熱量」。これが等しいという式です。
実際のヒーターでは熱の一部が外部に逃げるため、効率η(0 < η ≤ 1)が与えられることがあります。その場合は:
η × Pt = mcΔT
左辺にηを掛けるだけです。「ヒーターが供給した熱量のうち、η(例えば80%なら0.8)だけが実際に物質を温めるのに使われる」という意味です。

計算例①|水を加熱するのに必要な電力量を求める
20℃の水 5 kg を、効率80%の電気ヒーターで100℃まで加熱したい。必要な電力量 [kWh] はいくらか。
ただし、水の比熱は 4.2 kJ/(kg·℃) とする。
STEP 1:何を求めるか整理する
まず、問題文から与えられた情報を書き出します。
| 質量 m | 5 kg |
| 比熱 c | 4.2 kJ/(kg·℃) = 4,200 J/(kg·℃) |
| 温度変化 ΔT | 100 − 20 = 80 ℃ |
| 効率 η | 80% = 0.8 |
| 求めるもの | 電力量 [kWh] |
STEP 2:水が吸収する熱量Qを求める
Q = 5 × 4,200 × 80
Q = 1,680,000 J = 1,680 kJ
STEP 3:効率を考慮して、ヒーターが供給すべき電力量を求める
効率80%ということは、ヒーターが供給した電力量のうち80%だけが水の加熱に使われます。つまり:
= 1,680,000 ÷ 0.8
= 2,100,000 J = 2,100 kJ
STEP 4:単位を [kWh] に変換する
ここが電験三種の計算問題でミスしやすいポイントです。J(ジュール)から kWh(キロワット時)への変換を正確にやりましょう。
1 kWh = 1,000 W × 3,600 s = 3,600,000 J = 3,600 kJ
= 2,100 ÷ 3,600
≒ 0.583 kWh
「0.58kWhって何のイメージだ?」と思ったら、電気代に換算してみてください。電気代を30円/kWhとすると、0.58 × 30 ≒ 約17円。5リットルのお湯を沸かすのに17円。電気ポットの消費電力が気になったことがある方なら、「まあそのくらいか」と体感が合うはずです。

計算例②|加熱に必要な時間を求める
2 kW の電気ヒーター(効率100%)で、15℃の水 10 kg を 85℃まで加熱するのに何分かかるか。
ただし、水の比熱は 4.2 kJ/(kg·℃) とする。
STEP 1:情報の整理
| 電力 P | 2 kW = 2,000 W |
| 質量 m | 10 kg |
| 比熱 c | 4.2 kJ/(kg·℃) = 4,200 J/(kg·℃) |
| 温度変化 ΔT | 85 − 15 = 70 ℃ |
| 効率 η | 100% = 1.0(今回は省略可能) |
| 求めるもの | 加熱時間 t [分] |
STEP 2:Pt = mcΔT を t について解く
t = mcΔT ÷ P
t = (10 × 4,200 × 70) ÷ 2,000
t = 2,940,000 ÷ 2,000
t = 1,470 s
STEP 3:秒を分に変換する
t = 24.5 分
計算問題の解法パターンまとめ
電熱の計算問題は、何を求めるかによって以下の3パターンに分かれます。すべてPt = mcΔTの変形です。
| 求めるもの | 公式の変形 | 典型的な問題文 |
|---|---|---|
| 電力量 Q | Q = mcΔT ÷ η | 「◯kgの水を加熱するのに必要な電力量は?」 |
| 時間 t | t = mcΔT ÷ (ηP) | 「◯kWのヒーターで加熱するのにかかる時間は?」 |
| 電力 P | P = mcΔT ÷ (ηt) | 「◯分以内に加熱するのに必要な電力は?」 |
どのパターンでも、やることは同じです。①情報を整理 → ②Pt = mcΔT を立式 → ③求めたい変数について解く → ④単位変換。この4ステップを機械的にこなせば、電熱の計算問題は確実に得点できます。

計算問題で落とさないための「単位変換」チートシート
電熱の計算で一番多い失点原因は単位変換のミスです。kJとJ、kWとW、分と秒を混ぜたまま計算してしまうと、桁が1,000倍ズレて不正解になります。
以下のチートシートを丸暗記してしまいましょう。
| 変換 | 関係式 | よくあるミス |
|---|---|---|
| kJ → J | ×1,000 | 比熱が「kJ」で与えられている場合の変換忘れ |
| kW → W | ×1,000 | 電力が「kW」で与えられている場合 |
| 分 → 秒 | ×60 | 答えを「分」で求める問題で秒のまま答える |
| J → kWh | ÷3,600,000 | 変換係数を間違える(3,600と混同) |
| kJ → kWh | ÷3,600 | kJ単位なら÷3,600でOK(J→kWhとの混同) |
| 1 cal → J | ≒ 4.186 J | cal(カロリー)で出題されることは稀だが念のため |
迷ったら、最初にすべての数値を「J」「W」「s」「kg」「℃」に変換してから立式してください。途中でkJとJが混ざった状態で計算すると、ほぼ確実に桁を間違えます。

まとめ|電熱は「覚えれば取れる」得点源
この記事の内容を振り返ります。
| 1 | 電熱の出題パターンは「正誤問題」と「計算問題」の2種類だけ |
| 2 | 電気加熱は6種類(抵抗・誘導・誘電・赤外線・アーク・電子ビーム) |
| 3 | 最頻出の引っかけ:誘導加熱(金属)と誘電加熱(絶縁物)の混同 |
| 4 | 計算問題はPt = mcΔTの1本で解ける |
| 5 | 効率ηが入ったらη × Pt = mcΔT |
| 6 | 最大の落とし穴は単位変換(kJ↔J、kW↔W、分↔秒、J↔kWh) |
電熱は機械科目の中でも、最も短い勉強時間で最も確実に得点できる分野です。
6種類の加熱方式は、この記事の比較表を3回読めば自然と頭に入ります。計算問題は、公式が1本しかないので迷いようがありません。
「機械科目は範囲が広くて何から手をつければいいかわからない」という方ほど、まず電熱から始めてみてください。「やればできる」という手応えが、他の分野への勉強モチベーションにつながります。
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