機械科目の解説

直流チョッパ回路|降圧・昇圧・昇降圧の3パターンを完全攻略

😣 こんな経験はありませんか?
  • 「降圧チョッパ」「昇圧チョッパ」の名前は知っているが、式の導き方がわからず丸暗記になっている
  • 通流率γ(デューティ比)が何なのか、なぜ出力電圧がVd = γ×Eになるのか説明できない
  • B問題で「スイッチのON時間・OFF時間が与えられた」瞬間にどの式を使うか迷う
✅ この記事でわかること
  • 通流率γ(デューティ比)の定義と「なぜそれが出力電圧になるか」の直感的な説明
  • 降圧・昇圧・昇降圧それぞれの出力電圧の公式と導出
  • スイッチのON/OFFタイミング波形図の読み方
  • 試験B問題の計算パターン(ton・toff・T・γが与えられるパターン)

直流チョッパは電験三種の機械科目B問題(計算問題)でほぼ毎年出題される最重要テーマです。EVのモータ駆動・スマホの充電回路・工場の直流電動機制御など、現代の電子機器のほぼすべてに使われています。式は3本だけ。原理を理解すれば全パターン対応できます。

チョッパ回路とは:直流を高速ON/OFFして平均電圧を変える

「チョッパ(chopper)」は英語で「刻むもの」という意味です。直流電圧をスイッチで高速にON/OFFしてパルス状の電圧に「刻み」、その平均値を出力電圧として取り出す回路です。

チョッパの基本動作(降圧の場合)
t v E(電源電圧) 平均Vd ton toff T(周期) ON OFF
📐 通流率γ(デューティ比)の定義
γ = ton T = ton ton + toff (0 ≤ γ ≤ 1)
ton:スイッチON時間 [s または ms・μs]
toff:スイッチOFF時間 [s または ms・μs]
T = ton + toff:スイッチング周期 [s]
γ = 0:常にOFF(出力ゼロ)、γ = 1:常にON(出力 = 電源電圧)
💡 「蛇口を素早く開閉する」たとえ
製造ラインの水道管で、1秒のうち0.7秒だけ蛇口を開けると、平均の水量は全開の70%になります。チョッパ回路も同じです。γ = 0.7(70%の時間ON)なら、平均出力電圧は電源電圧の70%になります。

① 降圧チョッパ:出力が入力より低い

回路構成と動作

降圧チョッパの回路
E 電源 S(IGBT) L D Vd 負荷 iS

スイッチS(IGBT)→ インダクタL → 負荷 の直列回路。Dは還流ダイオード。

公式の導き方

ON期間(ton)

スイッチS がON → 電源電圧 E が負荷に印加。電圧 E が出力側に加わる。

OFF期間(toff)

スイッチS がOFF → 還流ダイオードDを通じてインダクタの電流が還流。負荷への電圧は 0(ダイオードのVFを無視)。

平均電圧

ON時間の割合 × E + OFF時間の割合 × 0 = γ × E

📐 降圧チョッパの出力電圧
Vd = γ × E
γ = ton / T(0 ≤ γ ≤ 1)なので Vd ≤ E(必ず入力より低い)
γ = 0.5 なら Vd = 0.5E(半分)、γ = 0.8 なら Vd = 0.8E
【計算例①】

電源電圧 E = 200 V、スイッチング周期 T = 1 ms、ON時間 ton = 0.6 ms の降圧チョッパ回路の出力電圧を求めよ。

γ = ton / T = 0.6 / 1 = 0.6
Vd = γ × E = 0.6 × 200 = 120 V
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② 昇圧チョッパ:出力が入力より高い

昇圧チョッパは出力が入力より高い電圧になる不思議な回路です。「なぜ電源より高い電圧が出るのか」が試験の正誤問題でよく問われます。

「なぜ電源より高い電圧が出るか」の原理

⚡ ON期間(ton)

スイッチSをONにすると、電源EがインダクタLに電流を流し込み、Lにエネルギーを蓄積する。この間、ダイオードDは逆バイアスでOFFのため出力側には電流が流れない。

⚡ OFF期間(toff)

スイッチSをOFFにすると、インダクタLが蓄積エネルギーを放出。このときLの電圧はON時とは逆向きになり、電源電圧EとLの電圧が直列に加算されて出力に現れる。→ Vd > E

💡 「コイルのキックバック」たとえ
懐中電灯の「昇圧回路」で乾電池1本(1.5V)から白色LED点灯(3V必要)を実現しているのがこの原理です。コイルが電流を遮断されるとき、蓄えたエネルギーを高電圧パルスとして放出します(「キック」)。この現象を制御して安定した高電圧を作るのが昇圧チョッパです。
📐 昇圧チョッパの出力電圧
Vd = E 1 − γ
γ が大きいほど(1に近いほど)分母が小さくなり Vd が大きくなる
γ = 0.5 なら Vd = E / 0.5 = 2E(2倍)
γ = 0.8 なら Vd = E / 0.2 = 5E(5倍)
⚠️ γ → 1 で Vd → ∞(理論上)。実際は損失・定格で制限される
【計算例②】

電源電圧 E = 100 V、通流率 γ = 0.6 の昇圧チョッパ回路の出力電圧を求めよ。

Vd = E / (1 − γ) = 100 / (1 − 0.6) = 100 / 0.4 = 250 V
⚠️ 試験頻出の正誤問題
「昇圧チョッパではγを大きくするほど出力電圧が低くなる」→ 誤り。γ大→(1-γ)小→Vd大。γを大きくすると出力電圧は高くなります。

③ 昇降圧チョッパ:γで昇圧にも降圧にもなる

昇降圧チョッパ(バック-ブーストコンバータ)は、通流率γの値によって出力が入力より高くも低くもなる回路です。ただし出力電圧の極性が入力と逆転します(反転型)。

📐 昇降圧チョッパの出力電圧
Vd = γ 1 − γ × E
γ = 0.5 のとき:Vd = 0.5/0.5 × E = E(同じ)
γ < 0.5 のとき:γ/(1-γ) < 1 → Vd < E(降圧動作
γ > 0.5 のとき:γ/(1-γ) > 1 → Vd > E(昇圧動作
⚠️ 出力電圧の極性が入力と逆(反転型)
【計算例③-A 降圧側:γ = 0.4】

E = 100 V、γ = 0.4 の昇降圧チョッパの出力電圧を求めよ。

Vd = (γ / (1-γ)) × E = (0.4 / 0.6) × 100 = 0.667 × 100 ≈ 66.7 V(降圧)
【計算例③-B 昇圧側:γ = 0.7】

E = 100 V、γ = 0.7 の昇降圧チョッパの出力電圧を求めよ。

Vd = (0.7 / 0.3) × 100 = 2.33 × 100 ≈ 233 V(昇圧)
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3種類の比較表:試験直前の最終確認に使う

種類 出力電圧の式 VdとEの関係 極性 主な用途
① 降圧
(バック)
Vd = γE Vd ≤ E
(常に低い)
同極性 直流電動機の速度制御
② 昇圧
(ブースト)
Vd = E / (1−γ) Vd ≥ E
(常に高い)
同極性 EV回生・太陽電池昇圧
③ 昇降圧
(バック-ブースト)
Vd = γE / (1−γ) γ<0.5→Vd<E
γ>0.5→Vd>E
反転
(逆極性)
フライバック電源
📐 3式の関係性(導き方)
降圧の式 Vd = γE ← 「ON時間の割合 × E」そのまま
昇圧の式 Vd = E/(1-γ) ← 「OFF時間の割合 = (1-γ) で割る」
昇降圧の式 Vd = γE/(1-γ) ← 「降圧 × 昇圧 = γ × 1/(1-γ) × E」
昇降圧は降圧チョッパと昇圧チョッパを「組み合わせた」ものと覚える

γ(通流率)とVdの関係グラフ

グラフで3種類の特性を視覚的に比較しておくと、正誤問題で迷わなくなります。

γ vs Vd/E のグラフ(概念図)
γ Vd/E 0 0.5 1.0 0 1 2 3 ① 降圧 Vd=γE ② 昇圧 Vd=E/(1-γ) ③ 昇降圧 γ=0.5で Vd=E
γ→1では昇圧・昇降圧ともVd→∞(実際は損失・定格で制限)
💡 グラフから読み取る3つのポイント
① 降圧はγに比例する直線
② 昇圧はγが大きくなるにつれ急激に上昇(γ=0でVd=E)
③ 昇降圧はγ=0.5でVd=Eの交点がある(0.5より小さければ降圧、大きければ昇圧)
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試験B問題の解き方パターン

チョッパ回路のB問題は、問題文に ton・toff・T・γ・E などが与えられ、出力電圧や電流を求める形式です。

B問題典型例:降圧チョッパの電流・電力計算

【過去問タイプ】

電源電圧 E = 300 V の降圧チョッパ回路がある。スイッチング周期 T = 2 ms のうち、ON時間 ton = 1.2 ms である。負荷抵抗 R = 10 Ω とする。
(1)通流率γを求めよ。
(2)出力電圧 Vd を求めよ。
(3)出力電流の平均値 Id を求めよ。
(4)入力電流の平均値 Is(電源から見た電流)を求めよ。

(1)γを求める

γ = ton / T = 1.2 / 2 = 0.6

(2)Vdを求める

Vd = γ × E = 0.6 × 300 = 180 V

(3)出力電流Idを求める

Id = Vd / R = 180 / 10 = 18 A

(4)入力電流Isを求める

電源から電流が流れるのはON期間だけ(ton / T = γの割合)。
Is = γ × Id = 0.6 × 18 = 10.8 A
※ 別解:電力保存 P = E × Is = Vd × Id → Is = Vd × Id / E = 180 × 18 / 300 = 10.8 A

💡 入力電流の求め方2通りを覚える
「Is = γ × Id」と「Is = Vd × Id / E(電力保存)」は同じ答えになります。試験ではどちらも使えますが、電力保存(P入力 = P出力)の式の方が汎用的です。是非どちらも書けるようにしておきましょう。

よくある計算ミスと試験の正誤問題パターン

# やりがちなミス 正しい考え方 防止策
1 昇圧チョッパでVd = γEと計算する 昇圧はVd = E/(1-γ)。γEは降圧の式 「降圧=γE」「昇圧=1/(1-γ)×E」と唱えてから代入
2 γ = toff/T と計算する(分子をtoffにする) γ = ton/T。「ON時間の割合」がγ 「γはON時間÷周期」と声に出して確認
3 昇降圧の極性が「同じ」と思って計算する 昇降圧は出力電圧が入力と逆極性(反転型) 「昇降圧だけ極性逆」と別途メモする
4 γ=0.8のとき昇圧Vd = 0.8E と計算する 昇圧:Vd = E/(1-0.8) = E/0.2 = 5E。分母に注意 「1-γ」が分母にくることを意識
5 入力電流Is = 出力電流Id と置く Is = γ × Id(電源から電流が流れるのはON期間のみ) 電力保存 E×Is = Vd×Id でも検算
📋 正誤問題の定番パターン
「降圧チョッパではγを大きくすると出力電圧が低くなる」 ❌ 誤 γ大→Vd=γE大→電圧は高くなる
「昇圧チョッパの出力電圧は電源電圧より低くなることはない」 ✅ 正 Vd=E/(1-γ)≥E(γ≥0なので)
「昇降圧チョッパではγ=0.5のとき出力電圧は電源電圧に等しい」 ✅ 正 Vd=0.5E/(1-0.5)=0.5E/0.5=E
「昇降圧チョッパの出力電圧は入力と同極性である」 ❌ 誤 昇降圧は出力極性が逆転(反転型)

まとめ:3式と通流率γさえ押さえれば全問対応できる

📝 この記事のまとめ
通流率γ γ = ton/T = ton/(ton+toff)。0≤γ≤1
① 降圧 Vd = γE。Vd≤E。同極性。還流ダイオード必須。
② 昇圧 Vd = E/(1-γ)。Vd≥E。同極性。γ大→Vd大(γ→1で∞)
③ 昇降圧 Vd = γE/(1-γ)。γ=0.5でVd=E。極性反転に注意。
入力電流 Is = γ×Id または E×Is = Vd×Id(電力保存)で求める

チョッパ回路は「γ(通流率)という一つの量で出力電圧を決める」シンプルな仕組みです。3本の式の形(γE、E/(1-γ)、γE/(1-γ))を正確に覚え、B問題では ton/T から γ を求めてから代入する流れを体に染み込ませてください。

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