機械科目の解説

成績係数(COP)とは?冷房と暖房で式が違う理由を図解|計算例つき

成績係数(COP)とは何か。冷房と暖房で式が違う理由

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

こんな経験はありませんか?
  • ヒートポンプの「COP」が何を表しているのか、実はよくわかっていない
  • 冷房COPと暖房COPの式が違うけど、なぜ違うのか説明できない
  • 「暖房COP = 冷房COP + 1」と丸暗記しているが、理屈がわからず不安
  • 過去問でCOPの計算が出るたび、どっちの式を使えばいいか迷う
○ この記事でわかること
  • ヒートポンプの仕組みを「熱の引っ越し」で直感的に理解
  • 冷房COPと暖房COPの式をエネルギー保存則から自力で導出できるようになる
  • 「暖房COP = 冷房COP + 1」の理由を図解で完全理解
  • 過去問頻出の2つの計算パターンを途中式付きで解説

ヒートポンプとCOP(成績係数)は、電験三種・機械科目の電熱分野でほぼ毎回出題される最頻出テーマです。

しかも、出題パターンは決まっています。「COP = 4.0のヒートポンプで水を◯℃加熱するのに必要な消費電力量は?」——このタイプの問題を確実に解けるかどうかで、合否が分かれます。

ところが、多くの受験生が「冷房COP = Q/W」「暖房COP = (Q+W)/W」を丸暗記して、なぜ式が違うのか理解していないのが実態です。丸暗記は本番のプレッシャーの下で公式を取り違えるリスクがあります。

この記事では、「なぜ暖房COPは冷房COP+1なのか」をエネルギー保存則から導出します。理屈で理解すれば、もう公式を間違えることはありません。

ヒートポンプとは?|「熱の引っ越し屋さん」

ヒートポンプを一言で言うと、「熱を低温側から高温側へ運ぶ装置」です。

自然界では、熱は高温→低温の方向にしか流れません(熱力学第二法則)。熱いコーヒーは放置すれば冷めますが、勝手に温め直されることはありません。

ヒートポンプは、電気エネルギー(仕事W)を使って、この「自然には起こらない方向」に熱を強制的に移動させます。

「熱の引っ越し」で理解する
ヒートポンプは「熱の引っ越し屋さん」です。引っ越し業者(圧縮機)がトラック代(電気エネルギーW)を使って、荷物(熱Q)を低温側の部屋から高温側の部屋に運んでくれる。ポイントは、運んだ荷物(熱)の量は、トラック代(電力)よりもはるかに大きいこと。100万円で500万円分の荷物を運べるようなものです。これがCOP = 5の状態です。

ヒートポンプの4つの構成要素

ヒートポンプの中では冷媒(フロン等)が循環しており、以下の4つの機器を順番に通ります。

圧縮機
冷媒を圧縮
→高温・高圧に
→
凝縮器
冷媒が熱を放出
→液化
→
膨張弁
冷媒を膨張
→低温・低圧に
→
蒸発器
冷媒が熱を吸収
→気化

この4つの機器をサイクル(循環)させることで、低温側から熱を「吸い上げ」、高温側に「吐き出す」のがヒートポンプの基本動作です。

試験でのポイント
正誤問題では「冷房時に室内機は蒸発器として機能する」「暖房時に室内機は凝縮器として機能する」の正誤が問われます。四方弁で冷媒の流れる方向を切り替えると、冷房↔暖房が切り替わることを理解しておきましょう。
ヒートポンプの4つの構成要素の図。圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を冷媒が循環し、高温・高圧と低温・低圧をくり返す
ヒートポンプの4要素:圧縮機・凝縮器・膨張弁・蒸発器
おすすめの本

「ヒートポンプとCOP(成績係数)」を試験の得点につなげるなら、機械科目の教科書で前後の単元とあわせて押さえておくと安心です。TAC出版『みんなが欲しかった!』シリーズの、電験三種「機械」の教科書と問題集です。フルカラーの教科書に重要な過去問が付いています。

核心|冷房と暖房で「エネルギーの流れ」が違う

ここがこの記事の最も重要なパートです。冷房と暖房でCOPの式が違う理由は、「何を得たいか」が違うからです。

冷房のエネルギーの流れ

冷房の目的は「室内から熱を奪うこと」です。

室内(低温側)
熱を奪われる
──Q→
蒸発器で吸熱
圧縮機
電力Wを消費
─Q+W→
凝縮器で放熱
室外(高温側)
熱を受け取る
エネルギー保存則(冷房時)

室外に排出される熱 = 室内から吸収した熱 + 圧縮機の消費電力

Q高温側 = Q + W

冷房で「得たいもの」は「室内から奪った熱Q」です。これがどれだけ効率的に得られたかを示すのが冷房COPです。

暖房のエネルギーの流れ

暖房の目的は「室内に熱を与えること」です。冷媒の流れが冷房と逆になります。

室外(低温側)
熱を奪われる
──Q→
蒸発器で吸熱
圧縮機
電力Wを消費
─Q+W→
凝縮器で放熱
室内(高温側)
熱を受け取る

暖房で「得たいもの」は「室内に供給される熱Q + W」です。

ここが決定的に重要です。暖房時は、室外から運んできた熱Qに加えて、圧縮機が消費した電力Wも熱に変わって室内に放出されるのです。冷房時にはこの電力Wは室外に捨てていましたが、暖房時には「おまけの暖房」として室内で活用されます。

これがすべてのカギ

冷房で得たいもの = Q(室内から奪った熱)
暖房で得たいもの = Q + W(室外の熱 + 圧縮機の電力も熱になる)
冷房時のエネルギーの流れの図。室内(低温側)から蒸発器で熱Qを吸収し、圧縮機の仕事Wを加え、凝縮器でQ+Wを室外(高温側)へ放熱し、得たいものはQ
冷房で得たいものは室内から奪う熱Q

COP(成績係数)の公式を「自力で導出」する

COP(Coefficient of Performance:成績係数)とは、ヒートポンプの効率を示す指標です。定義は非常にシンプルです。

COPの定義

COP = 得たい熱エネルギー ÷ 消費した電力

「1の電力で、何倍の熱を得られたか?」を表す数値

あとは、前のセクションで確認した「得たいもの」を代入するだけです。

冷房COPの導出

冷房で得たいもの = 室内から奪った熱 Q

COP冷房 = Q ÷ W

暖房COPの導出

暖房で得たいもの = 室内に供給された熱 Q + W

COP暖房 = (Q + W) ÷ W

「暖房COP = 冷房COP + 1」の証明

暖房COPの式を変形してみましょう。

COP暖房 = (Q + W) ÷ W

            = Q/W + W/W

            = Q/W + 1

            = COP冷房 + 1
COP暖房 = COP冷房 + 1

暖房COPは冷房COPより必ず「1」大きい

これで「暖房COP = 冷房COP + 1」が証明されました。丸暗記ではなく、エネルギー保存則から2行で導出できるのです。

なぜ暖房COPのほうが大きいのか?直感的な説明
暖房のときは、室外から運んできた熱Qに加えて、圧縮機を動かすために使った電力Wも最終的に熱に変わって室内を温めます。つまり「電力Wが丸ごと暖房のボーナスになる」のです。冷房時はこのWが室外に捨てられるだけなので、ボーナスはゼロ。だから暖房COPのほうが「+1」だけ大きいのです。

冷房COPと暖房COPの比較まとめ

項目 冷房COP 暖房COP
目的 室内を冷やす 室内を温める
得たい熱 Q Q + W
COP の式 Q / W (Q + W) / W
関係式 COP暖房 = COP冷房 + 1
COPの値 常に1以上 常に2以上(冷房COP+1なので)
COP=4の場合 1kWの電力で4kW分の冷房 1kWの電力で5kW分の暖房
試験で最も多い間違い
問題文に「COP = 4.0」とだけ書いてあったとき、それが冷房COPなのか暖房COPなのかを読み違えるミスが頻発します。「ヒートポンプ式給湯器」「暖房」と書いてあれば暖房COP、「冷凍機」「冷房」と書いてあれば冷房COPです。必ず問題文を確認してください。
暖房時のエネルギーの流れの図。室外(低温側)の熱Qに圧縮機の仕事Wを加え、室内(高温側)へQ+Wを送り、得たいものはQ+W
暖房で得たいものは室内に送る熱Q+W

計算例①|ヒートポンプ式給湯器の消費電力量を求める

【問題】
ヒートポンプ式電気給湯器の消費電力は1.5 kW、COP(成績係数)は4.5である。
17℃の水 460 L を 65℃ まで加熱するのに何時間かかるか。
ただし、水の比熱は 4.2 kJ/(kg·℃)、水の密度は 1 kg/L とし、熱損失は無視する。

STEP 1:情報を整理する

消費電力 P 1.5 kW
COP(暖房) 4.5 ※給湯器=暖房用途
水の質量 m 460 L = 460 kg
比熱 c 4.2 kJ/(kg·℃) = 4,200 J/(kg·℃)
温度変化 ΔT 65 − 17 = 48 ℃
求めるもの 加熱時間 t [h]
ポイント:これは「暖房COP」
給湯器は「水を温める」のが目的。つまり暖房用途です。COPの式は COP暖房 = (Q+W)/W ですが、ここでは「COP = 得た熱÷消費電力」と直接使えます。

STEP 2:水に必要な熱量Qを求める

Q = mcΔT

Q = 460 × 4.2 × 48 [kJ]

Q = 92,736 kJ

(今回は比熱がkJ単位なので、そのまま掛け算すればkJで出ます)

STEP 3:消費電力量Wを求める(COPを使う)

暖房COPの定義より:

COP暖房 = 得た熱Q ÷ 消費電力量W

4.5 = 92,736 ÷ W

W = 92,736 ÷ 4.5

W = 20,608 kJ

STEP 4:加熱時間を求める

消費電力量W [kJ] = 消費電力P [kW] × 時間t [s] なので:

W = P × t

20,608 [kJ] = 1.5 [kW] × t [s]

t = 20,608 ÷ 1.5 = 13,739 s

t = 13,739 ÷ 3,600

t ≒ 3.8 時間(約3時間49分)
答え:約 3.8 時間
現場の声
エコキュート(ヒートポンプ式給湯器)が「深夜電力で約4時間かけてお湯を沸かす」のは、まさにこの計算の通りです。460LはJIS規格の大型タンクの標準容量。電験三種の問題は、実在の製品仕様をそのまま出題することが多いです。
電池の種類一覧|一次電池・二次電池・燃料電池の違いと特徴を比較表で図解
あわせて読みたい
電池の種類一覧|一次電池・二次電池・燃料電池の違いと特徴を比較表で図解

電池の種類と特徴。一次電池・二次電池・燃料電池を比較表で完全整理

COPの公式の導出の図。COP冷房=Q/W、COP暖房=(Q+W)/W=Q/W+1で、COP暖房=COP冷房+1
COP暖房=COP冷房+1の導出

計算例②|冷房COPから暖房能力を求める

【問題】
あるヒートポンプの冷房時のCOPが4.0、圧縮機の消費電力が2.0 kWである。
このヒートポンプを暖房に使用した場合、暖房能力 [kW] はいくらか。
ただし、熱損失は無視する。

STEP 1:情報を整理する

冷房COP 4.0
消費電力 P 2.0 kW
求めるもの 暖房能力 [kW]

STEP 2:暖房COPを求める

COP暖房 = COP冷房 + 1

COP暖房 = 4.0 + 1 = 5.0

STEP 3:暖房能力を求める

暖房COP = 暖房能力 ÷ 消費電力 なので:

暖房能力 = COP暖房 × 消費電力

暖房能力 = 5.0 × 2.0

暖房能力 = 10.0 kW
答え:10.0 kW
検算してみよう
冷房能力 = COP冷房 × P = 4.0 × 2.0 = 8.0 kW
暖房能力 = 冷房能力 + 消費電力 = 8.0 + 2.0 = 10.0 kW ○

別ルートでも同じ答えになります。「暖房能力 = 冷房能力 + 消費電力」という関係はエネルギー保存則そのもの。検算に使えるので覚えておきましょう。
給湯器の加熱時間の計算例の図。P=1.5kW、COP=4.5で水460Lを17℃から65℃にするとき、Q=mcΔT=92,736kJ、W=Q÷COP、t=W÷Pで約3.8時間
給湯器の加熱時間の計算例:約3.8時間

COP計算問題の「解法フローチャート」

ヒートポンプの計算問題は、以下のフローで機械的に解けます。

STEP 1

冷房 or 暖房を判定する
「給湯器」「暖房」「加熱」→ 暖房COP
「冷凍機」「冷房」「冷却」→ 冷房COP

STEP 2

必要な熱量Qを求める
Q = mcΔT (水の加熱問題の場合)

STEP 3

COPの定義式から消費電力量Wを求める
W = Q ÷ COP

STEP 4

求めるもの(時間・電力量など)を算出
W = P × t から t を求める、またはW自体が答え

STEP 5

単位変換
kJ → kWh(÷3,600)、秒 → 時間(÷3,600)など

出題パターンの整理

出題パターン 与えられるもの 求めるもの
パターンA COP、消費電力P、水の量・温度 加熱時間 t
パターンB COP、水の量・温度、時間 消費電力 P
パターンC 冷房COP、消費電力P 暖房能力
パターンD COP、消費電力量 [kWh] 得られた熱量 [kJ]

どのパターンでも、COP = 得た熱 ÷ 消費電力(量)を立式して、求めたい変数について解くだけです。

冷房COPから暖房能力を求める計算例の図。冷房COP=4.0、P=2.0kWなら暖房COP=5.0で暖房能力=5.0×2.0=10.0kW、検算は冷房能力8.0+電力2.0=10.0
冷房COP4.0から暖房能力10.0kWを求める計算例

正誤問題で狙われるポイント5選

COP計算だけでなく、ヒートポンプの原理に関する正誤問題も出題されます。引っかけやすいポイントを整理しておきましょう。

○ 正しい記述
「ヒートポンプは少ない電気エネルギーで、それ以上の熱エネルギーを得ることができる」
→ COPが1以上なので正しい。「エネルギー保存則に反する」わけではなく、外部(空気中)から熱を汲み上げているから。
○ 正しい記述
「四方弁を切り替えることで冷房と暖房を切り替えられる」
→ 冷媒の流れる方向を逆にすることで、蒸発器と凝縮器の役割が入れ替わる。
× 誤りの記述(頻出の引っかけ)
「暖房時のCOPは冷房時のCOPより小さい」
→ 逆。暖房COP = 冷房COP + 1 なので、暖房COPの方が大きい。
× 誤りの記述(頻出の引っかけ)
「冷房時、室内の熱交換器は凝縮器として動作する」
→ 誤り。冷房時、室内の熱交換器は蒸発器(冷媒が室内の熱を吸収して気化する)。凝縮器は室外機側。
× 誤りの記述(頻出の引っかけ)
「ヒートポンプのCOPは常に1未満である」
→ 誤り。ヒートポンプのCOPは通常3〜6程度。1以上が当たり前。COPが1を下回るなら電気ヒーターと同じなので、ヒートポンプの意味がない。
現場の声
エアコンのカタログスペックには「暖房COP 5.0」「冷房COP 4.0」のように記載されています。暖房COPの方が1大きいことを確認してみてください。実際にはカタログ値は理想条件の数値で、外気温が下がるとCOPは低下します。だから真冬に暖房効率が落ちるのです。
ヒートポンプの正誤問題で狙われるポイント5選の図。外部の熱を集めて利用する、COPは消費電力に対する加熱・冷却能力の比率、給湯・暖房・冷房に活用は正しく、熱そのものを作り出す、COPが低いほど効率が良いは誤り
ヒートポンプとCOPの正誤問題5選

まとめ|COPは「丸暗記」ではなく「導出」で覚える

この記事の内容を振り返ります。

○ この記事のポイント
1 ヒートポンプは「熱の引っ越し屋さん」。低温側→高温側に熱を運ぶ
2 COP = 得たい熱 ÷ 消費電力(効率を示す指標)
3 冷房COP = Q/W、暖房COP = (Q+W)/W
4 暖房COP = 冷房COP + 1(圧縮機の電力がボーナスになるから)
5 計算問題はQ = mcΔTで必要熱量を出し、COP = Q/Wで消費電力を出す
6 問題文で「給湯器」「暖房」→暖房COP、「冷凍機」「冷房」→冷房COPと判定する

ヒートポンプとCOPは、機械科目の電熱分野で最も出題頻度が高いテーマです。しかし、原理を理解すれば公式は自力で導出できますし、計算パターンも限られています。

この記事を読んで「COP暖房 = COP冷房 + 1」の理由が腑に落ちた方は、もう本番で公式を間違えることはないはずです。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

電験三種の試験でどう問われるかは、過去問で確かめるのがいちばんの近道です。電験三種の過去10年分の試験問題をまとめた過去問題集です(2026年度版)。

独学に不安があるなら、通信講座という選び方も

「どこから手をつければいいかわからない」「計算問題で手が止まる」と感じたら、講義と問題演習がセットになった通信講座を使う方法もあります。SATの電験三種講座(第三種電気主任技術者講座)は、フルカラーのテキストと講義動画で学べて、メールなどで質問もできます。料金や内容は公式サイトで確かめてください。

SATの電験三種講座(第三種電気主任技術者講座)を見る

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

次に読むべき記事

この記事の内容がわかったら、電気応用の次のテーマに進みましょう。続けて読むと、現場でそのまま使える知識になります。

電気化学の基礎|ファラデーの法則と電気分解の計算を完全図解
まずはここから
電気化学の基礎|ファラデーの法則と電気分解の計算を完全図解

電気化学の基礎。ファラデーの法則と電気分解の計算。

記事を読む →
この記事の続きはこちら

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。

つまずきやすい「違い」を一気に解決
計算力アップ・資格対策

タグ

-機械科目の解説
-