- コイル(インダクタ)って名前は聞くけど結局何?
- 「電流の変化を嫌がる」ってどういう意味?
- コンデンサは電気を溜めるけど、コイルは何を溜めるの?
- 身近な家電のどこに使われているの?
- コイルの仕組みを「水車」のたとえ話で完全理解
- 「電流の変化を嫌がる」性質の正体(レンツの法則)
- インダクタンスとは何か?(溜める力の大きさ)
- コンデンサとの決定的な違いを比較表で整理
- 身近な家電でのコイルの4つの役割
電子回路には「3大受動部品」と呼ばれる基本パーツがあります。抵抗(R)、コンデンサ(C)、そして今回の主役コイル=インダクタ(L)です。
抵抗は「電流の流れを邪魔する」部品。コンデンサは「電気を一時保管する倉庫」。では、コイルは?
電流の「変化」を嫌がり、今の状態を維持しようとする部品
いきなり「電流の変化を嫌がる」と言われてもピンとこないですよね。大丈夫です。これから順番に、図解でやさしく解説していきます。
目次
コイルの構造|導線をグルグル巻いただけ
コイルの構造は驚くほどシンプルです。導線(銅線)をグルグルと巻いたもの。それだけです。
まっすぐな導線
電流を流すと
弱い磁界が発生
グルグル巻く=コイル
磁界が重なり合って
強力な磁界が発生!
まっすぐな導線に電流を流すと、導線の周りにわずかな磁界(磁石の力の場)が生まれます。これをグルグル巻くと、1巻き分の磁界が何十回、何百回と重なり合い、まるで磁石のように強い磁界を作ることができるのです。
実際のコイル(インダクタ)には、導線の内側に鉄やフェライトなどの磁性体の芯(コア)が入っています。コアを入れると磁界がさらに強くなり、少ない巻き数でも大きなインダクタンス(後述)を得られます。
コイルの最大の特徴|「電流の変化を嫌がる」とはどういう意味?
コイルの性格をひと言で表すなら「頑固者」です。今の状態を変えたくない。電流が増えようとすると「増えるな!」と抵抗し、電流が減ろうとすると「減るな!」と引き止めます。
🌊 水車のたとえ話で理解する
コイルを「水路に置かれた大きな水車」にたとえるのが一番わかりやすいです。
① 水を流し始めるとき(電流ON)
重い水車はすぐには回りません。最初は水車が抵抗になって、水の流れ(電流)はゆっくりとしか増えません。
② 水車が回り始めた後(定常状態)
一度回り始めると、水車は慣性で勢いよく回り続けます。水はスムーズに流れます。
③ 水を止めようとするとき(電流OFF)
蛇口を閉めても、水車は慣性で回り続けようとします。水車の回転力が水を押し出し、すぐには流れが止まりません。
コイルもまったく同じです。電流が流れ始めると「磁界」というエネルギーを蓄え始めます。この磁界が「水車の慣性」の役割を果たし、電流の変化を嫌がるのです。
電流が増えようとすると
「増えるな!」と
逆向きの電圧を発生させて
増加を妨げる
電流が減ろうとすると
「減るな!」と
同じ向きの電圧を発生させて
減少を妨げる
⚖️ これが「レンツの法則」
コイルが「変化を嫌がって逆らう」現象には、ちゃんとした物理法則の名前がついています。「レンツの法則」です。
難しく聞こえますが、要するに「変化に逆らう方向に力が生まれる」ということです。電流が増える→磁束が増える→「増えるな!」と逆向きの電圧が発生。これがコイルの基本性格です。

「インダクタンス」とは?|コイルの「頑固さ」を数値化したもの
コイルの「変化を嫌がる強さ」には大小があります。この強さを数値で表したものが「インダクタンス」です。単位はH(ヘンリー)。
コイルが「電流の変化をどれだけ嫌がるか」を表す値
インダクタンスが大きい = 頑固度が高い = 変化を強く嫌がる
水車のたとえに戻ると、インダクタンスは「水車の重さ」に相当します。重い水車ほど動き出しにくいし、止まりにくい。つまり変化を嫌がる力が強いのです。
📏 インダクタンスを大きくする3つの方法
| やること | 効果 | たとえ話 |
|---|---|---|
| 巻き数を増やす | L大幅UP ⬆️⬆️ | 水車の羽根を増やす (巻き数の2乗に比例!) |
| コアに鉄を入れる | L大幅UP ⬆️⬆️ | 水車を重い鉄製にする |
| コイルの断面積を 大きくする |
L UP ⬆️ | 水車を大きくする |
巻き数を2倍にするとインダクタンスは4倍に。3倍にすると9倍に。巻き数が最もインダクタンスに影響するパラメータです。
⚡ コイルは「磁気エネルギー」を溜める
コンデンサが「電気エネルギー(電荷)」を溜めるのに対し、コイルは「磁気エネルギー」を溜めます。電流が流れている間、コイルの中には磁界が発生し、そこにエネルギーが蓄えられています。
電流を止めると、このエネルギーが電圧として放出されます。これが「電流が減るのを嫌がる」メカニズムの正体です。蓄えたエネルギーを使って、電流を流し続けようとするのです。

コイル vs コンデンサ|「真逆の性格」を比較表で整理
コイルとコンデンサは、電子回路の3大部品のうちの2つ。でも性格はまったく正反対です。この違いを理解すると、回路の仕組みが一気に見えてきます。
| 比較項目 | 🌀 コイル(L) | 📦 コンデンサ(C) |
|---|---|---|
| 溜めるもの | 磁気エネルギー | 電気エネルギー(電荷) |
| 嫌がるもの | 電流の変化 | 電圧の変化 |
| 直流に対して | ✅ スルスル通す (ただの導線) |
❌ 完全にブロック (充電後に電流ゼロ) |
| 交流に対して | ❌ 通しにくい (高周波ほどブロック) |
✅ 通しやすい (高周波ほどスルー) |
| たとえ話 | 重い水車 | 仕切り付きのプール |
コイルは直流を通し、交流をブロックする。
コンデンサは直流をブロックし、交流を通す。
この「真逆の性格」を組み合わせることで、ノイズ除去や信号のフィルタリングなど、さまざまな回路が作れるのです。
🔄 なぜコイルは「交流を通しにくい」のか?
交流は電流の向きが常に変化しています。コイルは「変化を嫌がる」部品なので、変化が激しい交流ほど強く抵抗します。この交流に対する抵抗のことを「誘導性リアクタンス(XL)」と呼びます。
XL = 2π × f × L
XL:リアクタンス(オーム[Ω]) f:周波数(ヘルツ[Hz]) L:インダクタンス(ヘンリー[H])
公式を見ると、周波数fが高いほどXLが大きくなるのがわかりますね。つまり、コイルは高周波(変化が速い交流)ほど強くブロックするのです。逆に、直流(f=0Hz)ではXL=0Ω。つまり抵抗ゼロ=ただの導線として振る舞います。

コイルの4つの役割|身近な家電で何をしている?
役割① 🛡️ ノイズをブロックする(チョークコイル)
コイルは「高周波をブロック」する性質がありましたね。この性質を使って、回路に侵入する高周波ノイズをせき止める役割を果たします。スマホの充電器やACアダプタの中にはこの「チョークコイル」が入っていて、電源ノイズから精密な電子回路を守っています。
役割② 🔄 電圧を変換する(トランス=変圧器)
2つのコイルを近くに配置して、電磁誘導を利用すると、電圧を上げたり下げたりできます。これが「トランス(変圧器)」です。コンセントの100Vをスマホの5Vに変換するACアダプタの中核部品です。電柱の上にある灰色の箱(柱上変圧器)もトランスです。
役割③ ⚡ 電源回路のエネルギー貯蔵(DC-DCコンバータ)
スイッチング電源(DC-DCコンバータ)では、コイルがエネルギーの一時貯蔵庫として働きます。スイッチがONのときに磁気エネルギーを溜め、OFFのときに放出する。この繰り返しで電圧を効率よく変換します。パソコンのマザーボード上でCPUの横に並んでいるのがこのコイルです。
役割④ 📻 特定の周波数だけ通す(フィルタ回路)
コイル(交流をブロック)とコンデンサ(交流を通す)を組み合わせると、特定の周波数の信号だけを通す「フィルタ回路」が作れます。ラジオのチューニングは、まさにこのL-Cフィルタで特定の放送局の周波数だけを選び出す仕組みです。
ノイズ除去+電圧変換
CPU電源のエネルギー貯蔵
周波数の選別(フィルタ)
6,600V→100Vに変圧
よくある疑問Q&A
❓ Q1. コイルの「逆起電力」って何?怖いの?
コイルに流れる電流を急に遮断すると、蓄えた磁気エネルギーが行き場を失い、非常に高い電圧(逆起電力)が一瞬だけ発生します。これがリレーやモーターの回路で部品を壊す原因になることがあります。対策として「フライバックダイオード」を並列に入れ、逆起電力を吸収するのが定番の設計手法です。
❓ Q2. 「力率」って何?コイルと関係あるの?
コイルに交流を流すと、電圧と電流に「ズレ(位相差)」が生じます。このズレのせいで「電力として使えない無駄な部分」が生まれてしまう。電力のうち本当に仕事をしている割合を示すのが「力率(cosθ)」です。工場などでコイル(モーター)をたくさん使うと力率が下がり、電気代が余計にかかることがあります。

3大受動部品を一覧で比較|R・L・Cの完全整理
最後に、電子回路の3大受動部品(抵抗・コイル・コンデンサ)を横並びで整理しましょう。この表を頭に入れておくと、回路の動きが直感的にわかるようになります。
| 抵抗(R) | コイル(L) | コンデンサ(C) | |
|---|---|---|---|
| やること | 電流を邪魔する | 電流の変化を嫌がる | 電気を溜める |
| 溜めるもの | なし (熱に変換) |
磁気エネルギー | 電気エネルギー |
| 直流 | 一定の抵抗 | ✅ 通す | ❌ 通さない |
| 交流 | 一定の抵抗 | ❌ 高周波ほどブロック | ✅ 高周波ほど通す |
| たとえ話 | 細い水道管 | 重い水車 | 仕切り付きプール |
まとめ|コイル(インダクタ)の仕組みを総復習
導線をグルグル巻く
磁界が発生
(レンツの法則)
- コイルの正体 = 導線をグルグル巻いて、電流の変化を嫌がる性質を生む部品
- 性格 = 頑固者。電流が増えると「増えるな!」、減ると「減るな!」と逆らう
- レンツの法則 = 変化を打ち消す方向に電圧(起電力)が発生する
- インダクタンスL = 頑固さの度合い。巻き数の2乗に比例。単位はH(ヘンリー)
- 直流はスルー、交流はブロック = コンデンサとは真逆の性格
- 4つの役割 = ノイズ除去、電圧変換(トランス)、エネルギー貯蔵、フィルタ回路
コイルは「電流の変化を嫌がる」という一風変わった性格の部品ですが、この性格があるからこそ、ノイズ除去・電圧変換・電源回路など、あらゆる場面で活躍しています。抵抗・コンデンサと合わせて「3大受動部品」を理解すれば、電子回路の基本は完成です。
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