機械科目の解説

インバータ(インバーター)とは?直流を交流に変える仕組みを図解|単相・三相ブリッジとPWM

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こんな経験はありませんか?
  • 「インバータはDC→ACに変換する」は知っているが、4つのスイッチがどの順番でON/OFFするか説明できない
  • インバータの出力波形(矩形波)を見ても、「正の半波」「負の半波」がどうやって作られるかイメージできない
  • PWM制御が「なぜ正弦波に近づくか」がわからず、問題を見た瞬間に思考停止してしまう
○ この記事でわかること
  • インバータ(逆変換器)とは何か:整流との対比
  • 単相フルブリッジインバータの4スイッチのON/OFF順序と出力波形の対応
  • 三相ブリッジインバータの6スイッチパターン(120°通電・180°通電)
  • PWM制御の原理と「なぜ正弦波に近づくか」
  • 電圧形・電流形の違い
結論|まず30秒でわかる答え

インバータ(逆変換器)とは、直流の電気を交流に変える装置です。IGBTやMOSFETなどのスイッチを決まった順番でON/OFFし、出力の向きを交互に入れ替えることで交流を作ります。切り替えの速さを変えれば周波数を、PWM制御でON時間の割合を変えれば電圧を自由に調整できるため、モーターの回転数制御(エアコン・電車・EV)や太陽光発電のパワーコンディショナに使われています。

インバータは電験三種の機械科目B問題でほぼ毎年出題される最頻出テーマです。EV・エアコン・工場の可変速ドライブなど、現代の産業機器のほぼすべてに使われています。「4つのスイッチの動き」を一度頭に入れれば、どんな問われ方にも対応できます。

インバータとは:「整流の逆」= DC→AC 変換

「インバータ(inverter)」は「逆変換器」とも呼ばれます。整流回路(コンバータ)がAC→DCに変換するのに対し、インバータはその逆のDC→AC変換を行います。

→
整流器(コンバータ)

AC → DC
サイリスタ・ダイオード整流
電源 → 直流機器

⇄
→
インバータ(逆変換器)

DC → AC
IGBT・MOSFET スイッチング
蓄電池・直流母線 → 交流機器

電圧形インバータと電流形インバータ

種類 電圧形インバータ(VSI) 電流形インバータ(CSI)
直流側 電圧源(コンデンサで平滑) 電流源(リアクトルで平滑)
出力波形 電圧が矩形波→電流は負荷依存 電流が矩形波→電圧は負荷依存
主な用途 誘導電動機ドライブ・UPS・太陽光パワコン(主流) 大容量同期電動機(一部)
スイッチ素子 IGBT・MOSFET+フリーホイールダイオード サイリスタ・IGBT
試験では「電圧形」が主役
電験三種の問題では、特記がない限り電圧形インバータ(VSI)について問われます。エアコン・EVモータ・インバータ溶接機など身近な製品のほぼすべてが電圧形です。この記事も電圧形を中心に解説します。

単相フルブリッジインバータ:4スイッチの配置

単相インバータの基本は4個のスイッチ(IGBT)をHブリッジ状に配置した回路です。この形から「Hブリッジ回路」とも呼ばれます。

単相フルブリッジインバータの回路
E DC + − C S1 S2 S3 S4 負荷 (Vout) A B P(正母線) N(負母線)

S1〜S4:スイッチ素子(IGBT)、D1〜D4:フリーホイールダイオード。出力は A-B 間に現れる

フリーホイールダイオードが必須な理由
誘導負荷(モータ・コイル)を接続するとき、スイッチOFF直後にコイルが逆電流を流そうとします。このとき各スイッチと逆並列に接続されたフリーホイールダイオードが電流の逃げ道を提供し、スイッチ素子の破損を防ぎます。

4スイッチのON/OFF順序と出力波形:ここが試験の核心

単相フルブリッジインバータは、S1・S4を同時にON(正の半波)とS2・S3を同時にON(負の半波)を交互に繰り返すことで交流を作ります。

絶対に守るルール:上下同時ONは禁止
左アーム(S1とS2)や右アーム(S3とS4)で、上下のスイッチを絶対に同時にONにしてはいけません。これは電源(P母線とN母線)を直接短絡(ショート)させることになり、素子が瞬時に破損します。試験でも「短絡してはならない」という正誤問題が出ます。
図① 「S1とS2を同時にON」で起きること(左アームの拡大図)
P(+) N(−) E S1 S2 出力A → 負荷へ ○ 正常:S1だけON → 電流は負荷へ × S2もON → 負荷を通らず電源が直結 抵抗ほぼゼロ = 数千A
負荷を通らない=電流を制限するものが何もない。
IGBTは数μsで破壊されます。実機では、上をOFFしてから下をONするまでにデッドタイム(数μs)という「誰もONしていない時間」を必ず挟み、この事故を防いでいます。試験では「同側上下の同時ONは短絡」が正誤問題の定番です。

スイッチングパターンと出力電圧の対応

期間 S1 S2 S3 S4 出力電圧 Vout(A-B間) 電流の経路
正の半波
(第1期)
ON OFF OFF ON + E(正) P→S1→A→負荷→B→S4→N
負の半波
(第2期)
OFF ON ON OFF − E(負) P→S3→B→負荷→A→S2→N
ゼロ期間
(オプション)
OFF ON OFF ON 0(ゼロ) S2・S4が同側→出力短絡(ゼロ電圧)
単相ブリッジインバータの出力波形(矩形波)
t v +E -E S1・S4 ON S2・S3 ON T(周期 = 1/f)

図②:4スイッチのON/OFFと「電流の通り道」&出力波形

E + − 負荷 + − Vout = +E A → 負荷 → B − + Vout = −E B → 負荷 → A S1 OFF S2 OFF S3 OFF S4 OFF S1 ON S4 ON S3 ON S2 ON A B P(正母線) N(負母線) デッドタイム:4個すべてOFF → 出力 0 t +E 0 −E S1・S4 ON → +E S2・S3 ON → −E T(1周期)= このパターンの繰り返し → 周期を変えれば出力周波数が変わる

① 正の半波:S1・S4 ON

電流は P → S1 → A → 負荷 → B → S4 → N。左アームを下るルートで、負荷を A→B の向きに流れます。

② デッドタイム:全スイッチOFF

切り替えの瞬間に上下同時ON(短絡)を防ぐため、あえて全部OFFにする時間を挟みます。出力は 0 V。

③ 負の半波:S2・S3 ON

電流は P → S3 → B → 負荷 → A → S2 → N。今度は右アームを下るルートに変わり、負荷電流が B→A に逆転します。

赤い流れ=S1・S4 ON時の電流/ 青い流れ=S2・S3 ON時の電流。負荷を流れる向きが逆になる=交流ができているということです。 オレンジの点は出力波形上の「いまの瞬間」を示しています。

三相ブリッジインバータ:6スイッチで三相交流を作る

三相誘導電動機・三相同期電動機の駆動には三相インバータが使われます。上下各3個、合計6個のスイッチ素子(+6個のフリーホイールダイオード)で構成されます。

三相ブリッジの構成

P N E Su+ Su- U Sv+ Sv- V Sw+ Sw- W 三相 負荷

Su+〜Sw-:6個のスイッチ(IGBT)。U・V・W端子から三相交流を出力

180°通電方式のスイッチングパターン

試験で最もよく出るのは180°通電方式です。各スイッチが1周期(360°)のうち180°ずつONします。

区間 Su+ Su− Sv+ Sv− Sw+ Sw−
0°〜60° ON off off ON off ON
60°〜120° ON off ON off off ON
120°〜180° ON off ON off off ON
180°〜360° (上記と上下が入れ替わるパターンが続く)
180°通電の重要ポイント
① 常に上側3本のうち2本か1本がON(合計3本が必ずON)
② 同じ相の上下(例:Su+とSu-)は絶対に同時ONしない
③ 各スイッチのON期間は180°(半周期)
④ U・V・W各相の出力波形は互いに120°ずれた矩形波
図③ 6つのスイッチが60°ごとに切り替わる(180°通電方式)
P N E Su+ Su− Sv+ Sv− Sw+ Sw− U V W U・V・W → 三相モータへ 各相の出力(N基準):互いに120°ずれた矩形波 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ U相 V相 W相
① 0°〜60° Su+ / Sv− / Sw− がON → U相だけが+E
② 60°〜120° Su+ / Sv+ / Sw− がON → W相だけが 0V
③ 120°〜180° Su− / Sv+ / Sw− がON → V相だけが+E
④ 180°〜240° Su− / Sv+ / Sw+ がON → U相だけが 0V
⑤ 240°〜300° Su− / Sv− / Sw+ がON → W相だけが+E
⑥ 300°〜360° Su+ / Sv− / Sw+ がON → V相だけが 0V
チェックポイントは3つだけです。
どの瞬間もONは必ず3個(上側と下側の合計)。同じ相の上下は絶対に同時ONしない(=図①の短絡防止)。そして各スイッチのON期間はきっちり180°。この3つを満たしていれば、パターンは自動的に上の6通りに決まります。
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PWM制御:矩形波を「正弦波に近づける」技術

単純な矩形波出力では、基本波以外に多くの高調波が含まれます。モータに高調波を流すと効率低下・発熱・騒音の原因になります。PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御を使うと、高周波スイッチングで正弦波に近い出力が得られます。

PWM制御の原理

PWMは「目標の正弦波(変調波)」と「高周波の三角波(搬送波・キャリア)」を比較して、スイッチのON/OFFを決める方式です。

PWM制御の波形(概念図)
v 変調波(正弦波) 搬送波(三角波・高周波) v PWM出力パルス (パルス幅が正弦波の振幅に比例して変化) 基本波成分
変調波 > 搬送波のとき

スイッチをON → 出力に正の電圧が現れる。正弦波が大きいほどON時間が長くなる。

変調波 < 搬送波のとき

スイッチをOFF → 出力はゼロ(またはフリーホイール経路)。正弦波の谷付近ではOFF時間が長くなる。

図④ PWMパルスが生まれる瞬間(変調波 vs 搬送波)
① 変調波(正弦波)と 搬送波(三角波)を比べる 変調波(目標の正弦波) 搬送波(三角波・高周波) ② PWM出力パルス(幅が正弦波の高さに比例) +E 0 −E ○ ならすと、この基本波(正弦波)が残る
やっていることは「背比べ」だけです。
正弦波が三角波より高い区間はON、低い区間はOFF。ただそれだけで、正弦波の山では太いパルス、谷では細いパルスが自動的にできあがります。パルスの高さは常に±Eのままなのに、平均すれば正弦波──これがPWMの発明です。変調度 m(正弦波の背の高さ)を上げれば全パルスが太くなり、出力電圧が上がります。

変調度(振幅変調率)と出力電圧

変調度 m と出力電圧の関係
変調度:m = 変調波の振幅 Vref 搬送波の振幅 Vtri  (0 ≤ m ≤ 1)
出力電圧の基本波実効値:Vout = m × E/√2(単相)
または:線間電圧 = m × E × √3/2(三相)
PWM制御の3つのメリット
① 出力電圧の基本波成分を連続的に変えられる(m を変えるだけ)
② 高調波の次数が搬送波周波数の周辺に集中するため、フィルタで除去しやすい
③ 周波数と電圧を独立して制御できる → VVVF(可変電圧可変周波数)制御が可能

インバータの主な用途とVVVF制御

インバータが最も重要な用途は誘導電動機の可変速制御です。電車(VVVF)・エアコン・工場の可変速ドライブはすべてインバータで動いています。

VVVF電車

インバータで周波数と電圧を同時制御。加速時はf・V両方を上げ、減速時はf・Vを下げる。回生制動も実現。

インバータエアコン

コンプレッサの回転数を連続制御。定速ON/OFFより省エネ。温度に合わせて細かく出力調整。

太陽光パワコン

直流の太陽電池出力を系統連系交流に変換。PWMで高品質な正弦波を生成。

EV・HEVドライブ

蓄電池の直流をPMSM(永久磁石同期電動機)に供給。三相インバータが数百アンペアを制御。

VVVF制御:V/f一定制御の仕組み

V/f一定制御の条件
誘導電動機のトルクを一定に保ちながら速度を変えるには、V(電圧)/ f(周波数)= 一定を保つ必要があります。
→ f を2倍にするとき、V も2倍に(磁束Φ = V/fを一定に保つ)
→ f = 50Hz、V = 200V で定格運転 → f = 25Hz に落とすなら V = 100V に
おすすめの本

パワーエレクトロニクスの全体を、図でつかみたいときに向いています。パワーエレクトロニクスを、カラーの図解で解説した本です。

試験の穴埋め・正誤問題パターン集

穴埋めパターン① ─ 基本動作

「単相フルブリッジインバータで正の半波を出力するには、( )と( )を同時にONにする」

→ S1 / S4(対角線上の2個)

穴埋めパターン② ─ PWM

「PWM制御では( )波と( )波を比較してスイッチのON/OFFを決める。変調度mを大きくすると出力電圧は( )」

→ 変調(正弦)波 / 搬送(三角)波 / 大きくなる

正誤問題パターン
「単相フルブリッジインバータでS1とS2を同時にONにすると正の半波が出力される」 × 誤 S1とS2は同側(左アーム)の上下→短絡事故。正の半波はS1・S4
「電圧形インバータの直流側にはコンデンサが接続されている」 ○ 正 電圧を一定に保つため平滑コンデンサを使用
「インバータの出力周波数を上げると誘導電動機の同期速度は下がる」 × 誤 Ns=120f/P。f↑→Ns↑。上がる。
「PWM制御では搬送波周波数を高くすると出力波形の高調波がより高次に移動する」 ○ 正 高周波搬送波→高調波が高次に→フィルタ除去が容易
「フリーホイールダイオードは誘導性負荷の電流を還流させるために設ける」 ○ 正 コイルの電流を遮断するときの過電圧防止と電流還流が目的

パワエレ回路の全体像:AC→DC→AC の電力変換チェーン

整流・チョッパ・インバータは独立した回路ではなく、現実の設備では一連の電力変換チェーンとして組み合わされます。

商用交流
(AC 200V 50Hz)
→
整流器
(AC→DC)
サイリスタ・ダイオード
→
直流母線
(DC 283V)
平滑コンデンサ
→
インバータ
(DC→AC)
IGBT・PWM制御
→
三相誘導電動機
(可変速制御)

インバータは、データセンターの無停電電源装置(UPS)の中でも、直流を交流に作り直す役目をしています。一瞬の電圧低下からAIの計算を守るしくみや、ラックを直流で給電する新しい動きは、同じ筆者が運営する半導体とAIデータセンターのブログ AIインフラLab の瞬低とはと800VDC給電とはで詳しく解説しています。

まとめ:「S1・S4でON→正、S2・S3でON→負」が核心

この記事のまとめ
インバータとは DC → AC 変換(整流の逆)。電圧形が主流。IGBT+フリーホイールDで構成
単相ブリッジの動作 S1・S4 ON → +E(正の半波)。S2・S3 ON → −E(負の半波)。同側上下は絶対禁止
三相ブリッジ 6スイッチ。180°通電で常に3本がON。各相出力は120°ずれた矩形波
PWM制御 変調波(正弦波)vs搬送波(三角波)の比較でON/OFF決定。m大→Vout大。高調波を高次に移動
VVVF制御 V/f = 一定を保ちながらf・Vを同時変化。誘導電動機の可変速制御の基本

インバータの核心は「4個(または6個)のスイッチを正しい順番でON/OFFする」ただそれだけです。試験では「どのスイッチの組み合わせで正・負の電圧が出るか」を問うパターンが最頻出です。回路図を頭に描けるようになれば、どんな問われ方にも対応できます。

S
シラス
電験三種 / QC検定1級 / パワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

よくある質問

Q. インバータとは何をする装置ですか?

A. 直流を交流に変える装置です。スイッチのON/OFFで電流の向きを入れ替え、周波数と電圧を自由に変えられます。

Q. インバータとコンバータの違いは?

A. コンバータ(整流器)は交流を直流に、インバータは直流を交流に変えます。変換の向きが逆の関係です。

Q. インバータエアコンはなぜ省エネなの?

A. モーターの回転数を細かく変えられるので、必要な分だけ運転できます。ON/OFFをくり返すより電力のむだが減ります。

Q. PWM制御とは?

A. スイッチのON時間の割合(パルス幅)を変えて、出力電圧の平均を調整する方法です。正弦波に近い出力を作れます。

Q. 電圧形インバータと電流形インバータの違いは?

A. 直流側をコンデンサで電圧源にするのが電圧形、リアクトルで電流源にするのが電流形です。今の主流は電圧形です。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

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