- 三電圧計法・三電流計法って何?電力計があるのになぜ必要なの?
- 公式は覚えたけど「なぜこの式になるのか」がわからない
- 三電圧計法と三電流計法の違い(直列?並列?)が混乱する
- 電力計なしで電力を測れる「裏ワザ」の仕組み
- 三電圧計法・三電流計法の回路図と公式を完全図解
- 余弦定理を使った公式の導出(なぜこの式になるか)
- 2つの方法の違い・使い分け・電験三種での出題ポイント
「電力を測りたいのに、電力計がない…!」
そんな状況、現実にあるの?と思いますよね。でも実は、高周波回路や精密測定の現場では、電力計が使えないケースがあるんです。
そこで登場するのが「三電圧計法」と「三電流計法」。名前の通り、電圧計3つ、もしくは電流計3つだけで交流電力を測定できる方法です。
この記事では、初心者の方でも「なるほど!」と理解できるように、回路図・ベクトル図・公式の導出まで、ステップバイステップで丁寧に解説していきます。
目次
そもそもなぜ「電力計なし」で電力が測れるのか?
💡 交流電力の「厄介なポイント」をおさらい
直流回路なら、電力は「P = V × I」で一発です。電圧計と電流計の2つがあればOK。
ところが、交流回路では「力率 cosθ」という厄介者が登場します。
P = V × I × cosθ
θ = 電圧と電流の位相差(力率角)
つまり、電圧Vと電流Iだけでは電力がわからないんです。位相差θ(力率cosθ)も知る必要があります。
電力計は内部でVとIとcosθをまとめて計算してくれる便利な計器ですが、もし電力計がなかったら?
🔑 解決のカギは「余弦定理」
ここでポイントになるのが、中学・高校で習った「余弦定理」です。
c² = a² + b² − 2ab cosθ
三角形の3辺の長さがわかれば、角度θが求まる!
三角形の3辺の長ささえ測れれば、角度θを逆算できる。この性質を利用します。
交流回路では、電圧や電流はベクトル(大きさと向きを持つ矢印)で表されます。このベクトルが作る「三角形」の3辺を、3つの電圧計(または電流計)で測れば、力率cosθが計算できるというわけです。
「3辺を測れば角度がわかる」→「力率がわかる」→「電力が計算できる」
これが三電圧計法・三電流計法の原理です!

三電圧計法とは?|既知抵抗Rを「直列」に接続する
🔌 回路の接続方法
三電圧計法の回路は、以下のように構成します。
この回路に3つの電圧計を接続して、以下の3つの電圧を測ります。
| 電圧計 | 測定する場所 | 意味 |
|---|---|---|
| V₁ | R + 負荷の全体 | 電源電圧(全体電圧) |
| V₂ | 負荷の両端 | 負荷にかかる電圧 |
| V₃ | 抵抗Rの両端 | V₃ = R × I(電流がわかる!) |
V₃ = RI なので、電流 I = V₃/R と計算できます。既知抵抗Rは「電圧計で電流を間接的に測る」ための橋渡し役です。
📐 三電圧計法の公式
V₁:全体電圧、V₂:負荷電圧、V₃:抵抗Rの電圧、R:既知抵抗値
3つの電圧と1つの抵抗値だけで、負荷の消費電力が求まります。電力計も電流計も不要です!
分子は「全体² − 部品①² − 部品②²」の形。全体のV₁²から、負荷V₂²と抵抗V₃²を引くイメージです。三電圧計法は抵抗Rが直列なので、分母に2Rが来ます。

なぜこの公式になるのか?|余弦定理で導出する
📊 電圧のベクトル図を描いてみよう
三電圧計法の公式が「なぜこうなるのか」を理解するために、電圧のベクトル図を描いてみましょう。
直列回路なので、回路に流れる電流 I は共通です。この電流Iを基準にしてベクトル図を描くと、次のような「電圧の三角形」ができます。
・V₂(負荷の電圧):電流Iからθだけ進む(力率角θ)
・V₁(全体電圧):V₃ + V₂ のベクトル和
この3つのベクトルが作る三角形に余弦定理を適用します。
✏️ 導出の手順(4ステップ)
電圧の三角形に余弦定理を適用
V₂とV₃のなす角は(π − θ)です。余弦定理より:
V₁² = V₂² + V₃² − 2V₂V₃ cos(π − θ)
cos(π − θ) = −cosθ を使って整理
V₁² = V₂² + V₃² + 2V₂V₃ cosθ
→ 2V₂V₃ cosθ = V₁² − V₂² − V₃²
V₃ = RI を代入
2V₂ × RI × cosθ = V₁² − V₂² − V₃²
→ 2R × (V₂ I cosθ) = V₁² − V₂² − V₃²
P = V₂ I cosθ なので代入
2R × P = V₁² − V₂² − V₃²
→ P = (V₁² − V₂² − V₃²) / 2R ✅
ポイントは「V₃ = RI」という関係式。これのおかげで、V₂ I cosθ(= 電力P)がきれいに取り出せるんです。既知抵抗Rが「電圧」と「電流」の橋渡しをしてくれたわけですね。

三電流計法とは?|既知抵抗Rを「並列」に接続する
🔌 回路の接続方法
三電流計法は、三電圧計法の「双子の兄弟」のような存在です。考え方は同じですが、既知抵抗Rの接続が「並列」に変わります。
三電圧計法
- 既知抵抗Rは直列
- 電圧計3つで測定
- 分母に 2R
三電流計法
- 既知抵抗Rは並列
- 電流計3つで測定
- 分子に R
今度は3つの電流計で以下の電流を測ります。
| 電流計 | 測定する場所 | 意味 |
|---|---|---|
| I₁ | 回路全体の電流 | I₂ + I₃ のベクトル和 |
| I₂ | 抵抗Rに流れる電流 | I₂ = V/R(電圧がわかる!) |
| I₃ | 負荷に流れる電流 | 負荷の電流 |
📐 三電流計法の公式
I₁:全体電流、I₂:抵抗Rの電流、I₃:負荷電流、R:既知抵抗値
並列回路なので電圧Vは共通。電流のベクトル三角形に余弦定理を適用し、V = RI₂ を使って整理すると、この公式が導けます。
三電圧計法と形が「双子」であることに注目してください。分子と分母でRの位置が入れ替わっているだけです!

2つの方法を一覧で比較!|試験で混乱しないために
📋 三電圧計法 vs 三電流計法 完全比較表
| 比較項目 | 三電圧計法 | 三電流計法 |
|---|---|---|
| 使う計器 | 電圧計 × 3 | 電流計 × 3 |
| 既知抵抗Rの接続 | 直列 | 並列 |
| 公式 | P = (V₁²−V₂²−V₃²) / 2R | P = R(I₁²−I₂²−I₃²) / 2 |
| Rの位置 | 分母(割る) | 分子(掛ける) |
| ベクトル三角形 | 電圧の三角形 | 電流の三角形 |
| 原理 | どちらも余弦定理で力率cosθを求めて電力を計算する | |
| 欠点 | 既知抵抗Rで電力損が発生する | |
| 主な用途 | 小電力の測定、高周波電力の測定 | |
① 電圧計 → 直列、電流計 → 並列(計器と逆の接続と覚える)
② Rの位置:直列なら「Rで割る(分母)」、並列なら「Rを掛ける(分子)」
③ 分子の形は両方とも「全体² − 部品①² − 部品②²」で同じ
三電圧計法なら cosθ = (V₁² − V₂² − V₃²) / 2V₂V₃ で力率を算出できます。
三電流計法なら cosθ = (I₁² − I₂² − I₃²) / 2I₂I₃ です。
電力だけでなく力率の計算も問われることがあるので要チェックです。

電験三種での出題ポイント|ここを押さえれば得点できる
🎯 よく出る問題パターン3つ
V₁, V₂, V₃, R の数値が与えられて「電力Pを求めよ」
→ 公式 P = (V₁² − V₂² − V₃²) / 2R に代入するだけ。最も基本的な問題です。
「力率cosθを求めよ」
→ cosθ = (V₁² − V₂² − V₃²) / 2V₂V₃ に代入。三電流計法でも同じ形で出題されます。
「回路図を見て接続方法を選べ」
→ 三電圧計法=直列+電圧計、三電流計法=並列+電流計。回路図の識別問題です。
✏️ 計算例で確認しよう
【例題】三電圧計法
既知抵抗 R = 10Ω を負荷に直列接続し、3つの電圧計で以下の値を得た。
V₁ = 130V、V₂ = 100V、V₃ = 50V
負荷の消費電力Pを求めよ。
P = (V₁² − V₂² − V₃²) / 2R
P = (130² − 100² − 50²) / (2 × 10)
P = (16900 − 10000 − 2500) / 20
P = 4400 / 20
P = 220 W
電流 I = V₃/R = 50/10 = 5A
力率 cosθ = P / (V₂ × I) = 220 / (100 × 5) = 0.44
ちゃんと力率も計算できますね!

まとめ|三電圧計法・三電流計法のポイント整理
📝 この記事のポイント
✅ 原理は余弦定理。3辺を測って角度(力率)を逆算する
✅ 三電圧計法:Rを直列接続 → P = (V₁²−V₂²−V₃²) / 2R
✅ 三電流計法:Rを並列接続 → P = R(I₁²−I₂²−I₃²) / 2
✅ 力率cosθも同時に求められる
✅ 欠点は既知抵抗Rで電力損が発生すること
公式の丸暗記だけでなく、「なぜ余弦定理を使うのか」「なぜ既知抵抗Rが必要なのか」という理由を理解しておくと、試験で応用問題が出ても対応できます。
電気計測の分野は覚えることが多いですが、一つひとつの計測法が「何を測りたくて」「どんな工夫をしているか」を理解していけば、必ず得点源になります。一緒に頑張りましょう!
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