- ホイートストンブリッジは覚えたのに、「ケルビンダブルブリッジ」が出て固まった
- 過去問に「コンデンサやインダクタンスが入ったブリッジ」が出てきて、直流のブリッジしか知らなくて詰んだ
- ブリッジ回路の種類が多すぎて、「どれが何を測るブリッジか」を整理できていない
- 電験三種に出るブリッジ回路の全種類と平衡条件
- ホイートストン・ケルビンダブル・交流ブリッジの違いと使い分け
- 「何を測るブリッジか」が一発でわかる一覧表
- 試験で出る正誤問題のひっかけパターン
ブリッジ回路は、電験三種の理論科目「電気計測」分野でほぼ毎年出題される頻出テーマです。
多くの受験生は「ホイートストンブリッジの平衡条件 R₁R₄ = R₂R₃」だけ覚えて安心していますが、実際の試験では「ケルビンダブルブリッジ」や「交流ブリッジ」の知識問題が出ることがあります。ここを押さえているかどうかで、他の受験生と差がつきます。
この記事では、電験三種に登場するブリッジ回路を「直流ブリッジ」と「交流ブリッジ」に分類し、すべての種類を1記事で整理します。個々の平衡条件を丸暗記するのではなく、「なぜこのブリッジが必要なのか」という背景から理解することで、知識問題にも計算問題にも対応できる力を身につけましょう。
目次
ブリッジ回路とは?|すべてのブリッジに共通する原理
ブリッジ回路とは、4つのインピーダンス(抵抗やコンデンサなど)をダイヤモンド型に配置し、対角線上に検出器を接続した回路です。検出器に流れる電流がゼロになる(=平衡状態)とき、4つのインピーダンスの間に成り立つ関係式から、未知の値を高精度に求めることができます。
🎯 すべてのブリッジに共通する「たった1つの原則」
Z₁ × Z₄ = Z₂ × Z₃
Z₁〜Z₄:ダイヤモンドの各辺のインピーダンス
「対角線の積が等しい」——これがすべてのブリッジの出発点です。
直流ブリッジの場合は Z を R(抵抗)に置き換えるだけ。交流ブリッジの場合は Z にコンデンサのリアクタンス(1/jωC)やインダクタンス(jωL)が入ってきます。つまり、ブリッジの種類が違っても、やっていることは「平衡条件 Z₁Z₄ = Z₂Z₃ を成り立たせて未知の値を求める」ということなのです。
📊 ブリッジ回路の全体マップ
電験三種に登場するブリッジ回路は、大きく「直流ブリッジ」と「交流ブリッジ」に分かれます。
交流ブリッジ
電源:交流(発振器)
検出器:交流検出器 / ヘッドホン
測定対象:L, C, tanδ など
③ マクスウェルブリッジ
④ ウィーンブリッジ
⑤ シェーリングブリッジ
⑥ ヘイブリッジ
最優先で覚えるべき:①ホイートストンブリッジ(計算問題で頻出)
知識問題に備える:②ケルビンダブル、③〜⑥の交流ブリッジ(正誤問題で1問出ることがある)
計算問題の対策は①だけで十分ですが、②〜⑥の「何を測るか」「名前と特徴」は知識として持っておくと安心です。

① ホイートストンブリッジ|直流ブリッジの基本形
ブリッジ回路の中で最も基本的で、最も出題頻度が高いのがホイートストンブリッジです。4つの抵抗をダイヤモンド型に配置し、対角線に検流計(ガルバノメータ)を接続します。
📐 平衡条件と計算方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 測定対象 | 中程度〜大きめの抵抗(1Ω〜1MΩ程度) |
| 電源 | 直流電源(電池) |
| 検出器 | 検流計(ガルバノメータ) |
| 平衡条件 | R₁ × R₄ = R₂ × R₃ |
| 未知抵抗の求め方 | Rx = (R₂ × R₃) / R₁ |
| 覚え方 | 「対角線の積が等しい」 |
ホイートストンブリッジには「低抵抗の測定が苦手」という弱点があります。なぜなら、測定する抵抗値が小さい(1Ω以下など)場合、リード線(導線)の接触抵抗や配線抵抗が測定値に含まれてしまい、大きな誤差が生じるからです。この弱点を補うために開発されたのが、次に紹介する「ケルビンダブルブリッジ」です。
ホイートストンブリッジの原理|平衡条件と未知抵抗の測定方法 →

② ケルビンダブルブリッジ|低抵抗を正確に測る「二重構造」
ケルビンダブルブリッジ(ケルビン複ブリッジ)は、低抵抗(0.1Ω〜1Ω程度)を高精度に測定するために設計されたブリッジ回路です。名前に「ダブル」とつくのは、ホイートストンブリッジの4辺にもう1組の比率腕(内側の腕)を追加した「二重構造」になっているからです。
🤔 なぜホイートストンでは低抵抗が測れないのか?
たとえば、0.01Ωの抵抗を測りたいとします。リード線の接触抵抗が0.005Ωだとすると、実際に計器が「見ている」値は 0.01 + 0.005 = 0.015Ω になります。接触抵抗だけで50%もの誤差が入ってしまうのです。
⚙️ ケルビンダブルブリッジの仕組み
ケルビンダブルブリッジは、この接触抵抗の影響を「4端子法」で排除します。測定する低抵抗に電流端子と電圧端子を別々に接続することで、リード線の接触抵抗が測定に影響しないようにするのです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 測定対象 | 低抵抗(0.1Ω以下〜数Ω) |
| 電源 | 直流電源(大電流が流せるもの) |
| 特徴 | 4端子法で接触抵抗・リード線抵抗を排除 |
| 構造 | 外側の比率腕(P, Q)+ 内側の比率腕(p, q)の二重構造 |
| 平衡条件 | P/Q = p/q のとき、Rx = (P/Q) × Rs Rs:標準抵抗(既知の低抵抗) |
ケルビンダブルブリッジは、以下の3つの特徴を覚えておけば正誤問題に対応できます。
① 測定対象は「低抵抗」(ホイートストンでは誤差が大きい領域)
② 接触抵抗を排除する「4端子法」を使う
③ 比率腕が「二重(ダブル)」になっている
製造現場では、ケルビンダブルブリッジと同じ「4端子法」の考え方がテスター(ミリオームメーター)に応用されています。ケーブルの抵抗測定や接点の接触抵抗測定など、品質管理の場面で日常的に使われる技術です。

交流ブリッジとは?|L・C・tanδを測定する
ホイートストンブリッジとケルビンダブルブリッジは「直流」で「抵抗」を測るブリッジでした。しかし現実の電気回路には、抵抗だけでなくコイル(インダクタンスL)やコンデンサ(静電容量C)も存在します。これらの値を測定するには、ブリッジの電源を交流にする必要があります。
🤔 なぜ交流でないとL・Cが測れないのか?
コイルやコンデンサは、直流に対しては「ただの導線」か「開放(切断)」として振る舞います。コイルは直流を通し、コンデンサは直流を遮断するだけ。つまり直流を流してもL・Cの「値」は測定に現れません。しかし交流では、LやCは「リアクタンス」として電流の流れに影響を与えるため、ブリッジの平衡条件からその値を読み取ることができるのです。
📐 交流ブリッジの平衡条件
交流ブリッジでも、平衡条件は直流と同じ形をしています。ただし、抵抗Rがインピーダンス Z に置き換わる点が異なります。
Z₁ × Z₄ = Z₂ × Z₃
Z はインピーダンス(複素数)。この等式から「実数部の等式」と「虚数部の等式」の2つの条件が得られます。だから交流ブリッジでは、1回の平衡操作でL(またはC)とR(損失抵抗)の2つの値を同時に求められるのです。
電験三種では、交流ブリッジの複素数を使った平衡条件の導出計算が出ることはほぼありません。出題されるのは「どのブリッジで何を測るか」を問う知識問題(正誤選択)です。各ブリッジの「名前」と「測定対象」をセットで覚えるのが最も効率的です。

交流ブリッジ4種類を総整理|名前と測定対象をセットで覚える
電験三種で問われる交流ブリッジは主に4種類です。それぞれの「何を測るか」「どんな構成か」を整理していきます。
③ マクスウェルブリッジ|インダクタンスLを測定
マクスウェルブリッジは、コイルのインダクタンスL と損失抵抗Rを測定するブリッジです。ブリッジの4辺の1つにコンデンサC を配置し、平衡条件からLとRを求めます。
| 測定対象 | インダクタンス L(コイル)と損失抵抗 R |
| 構成の特徴 | 既知のコンデンサCを使ってLを間接的に測定 (標準インダクタンスは高価で不安定なため、安定なCで代用する) |
| 覚え方 | 「マクスウェル → L(コイル)を測る」 |
④ ウィーンブリッジ|周波数fを測定
ウィーンブリッジは、交流信号の周波数fを測定するブリッジです。RとCの直列接続とRとCの並列接続を組み合わせた構造で、平衡条件から周波数が求まります。
| 測定対象 | 周波数 f |
| 構成の特徴 | RとCの直列組み合わせ + RとCの並列組み合わせ |
| 覚え方 | 「ウィーン → 周波数fを測る」 (ウィーンの発振器回路としても有名) |
⑤ シェーリングブリッジ|コンデンサのCとtanδを測定
シェーリングブリッジは、コンデンサの静電容量Cと誘電正接tanδ(損失角)を測定するブリッジです。電力ケーブルや変圧器の絶縁材料の品質を評価する場面で使われます。
| 測定対象 | 静電容量 C と tanδ(誘電正接) |
| 構成の特徴 | 2つのコンデンサを含む構成。高電圧下での測定が可能 |
| 覚え方 | 「シェーリング → C とtanδを測る」 (電力設備の絶縁診断に使われるブリッジ) |
⑥ ヘイブリッジ|高Qコイルのインダクタンスを測定
ヘイブリッジも、マクスウェルブリッジと同じくインダクタンスLを測定するブリッジです。違いは「損失が小さい(Q値が高い)コイル」に適している点です。マクスウェルブリッジがQ値の低いコイル向きなのに対し、ヘイブリッジはQ値の高いコイルで精度が良くなります。
| 測定対象 | インダクタンス L(Q値が高いコイル向き) |
| 構成の特徴 | マクスウェルブリッジの変形。RとCの直列接続を含む |
| 覚え方 | 「ヘイ → 高QのLを測る」 |
どちらもインダクタンスLを測りますが、Q値が低い(損失が大きい)コイル → マクスウェル、Q値が高い(損失が小さい)コイル → ヘイと使い分けます。試験では「マクスウェルブリッジは高Qコイルの測定に適する」という誤った選択肢がたまに出ます。

全ブリッジ一覧表|この1枚で試験に対応
ここまでの内容を1枚の表にまとめます。試験直前に見返せるよう、スクリーンショットで保存しておくことをおすすめします。
| No. | ブリッジ名 | 電源 | 測定対象 | 特徴・キーワード | 頻出度 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① | ホイートストン | 直流 | 抵抗 R(中〜高抵抗) | 対角線の積が等しい R₁R₄ = R₂R₃ |
★★★ |
| ② | ケルビンダブル | 直流 | 低抵抗 R(0.1Ω以下) | 4端子法・二重構造 接触抵抗を排除 |
★★ |
| ③ | マクスウェル | 交流 | インダクタンス L (低Qコイル向き) |
CでLを間接測定 Q値10以下が得意 |
★★ |
| ④ | ウィーン | 交流 | 周波数 f | RC直列+RC並列 発振回路にも応用 |
★★ |
| ⑤ | シェーリング | 交流 | 静電容量 C tanδ(誘電正接) |
高電圧下での絶縁診断 電力ケーブルの試験 |
★★ |
| ⑥ | ヘイ | 交流 | インダクタンス L (高Qコイル向き) |
マクスウェルの変形 Q値10以上が得意 |
★ |
🔌 ホイートストン → R(抵抗)を測る(王道・基本形)
🔗 ケルビンダブル → 低Rを測る(4端子でダブル構造)
🧲 マクスウェル → L(コイル)を測る(低Q向き)
🎵 ウィーン → f(周波数)を測る(ウィーン発振器でおなじみ)
⚡ シェーリング → C+tanδを測る(絶縁診断)
🧲 ヘイ → L(コイル)を測る(高Q向き)

判定フローチャート|「何を測りたいか」で使うブリッジが決まる
試験で「このブリッジは何を測定するものか」と問われたとき、以下のフローで即答できます。
電源は直流?交流?
| 直流 → Q2へ | 抵抗Rの測定(ホイートストン or ケルビン) |
| 交流 → Q3へ | L, C, f, tanδ の測定(4種類のうちどれか) |
【直流の場合】測定する抵抗値は?
| 1Ω以上の通常抵抗 | → ホイートストンブリッジ |
| 0.1Ω以下の低抵抗 | → ケルビンダブルブリッジ(4端子法) |
【交流の場合】何を測定する?
| インダクタンスL (低Qコイル) |
→ マクスウェルブリッジ |
| インダクタンスL (高Qコイル) |
→ ヘイブリッジ |
| 周波数 f | → ウィーンブリッジ |
| 静電容量 C 誘電正接 tanδ |
→ シェーリングブリッジ |

試験に出る!正誤問題の頻出ひっかけパターン
ブリッジ回路はホイートストンの計算問題だけでなく、「各ブリッジの特徴に関する正誤問題」としても出題されます。過去問で出たパターンを整理しておきましょう。
パターン① ブリッジ名と測定対象の入れ替え
❌「マクスウェルブリッジは静電容量Cの測定に用いられる」
✅「マクスウェルブリッジはインダクタンスLの測定に用いられる」
(Cの測定はシェーリングブリッジ)
パターン② ホイートストンの適用範囲の誤記
❌「ホイートストンブリッジは低抵抗(0.01Ω以下)の精密測定に適する」
✅「低抵抗の精密測定にはケルビンダブルブリッジ(4端子法)が適する」
(ホイートストンは接触抵抗の影響で低抵抗測定には不向き)
パターン③ マクスウェルとヘイのQ値の入れ替え
❌「マクスウェルブリッジはQ値の高いコイルの測定に適する」
✅「マクスウェルブリッジはQ値の低いコイルの測定に適する。Q値の高いコイルにはヘイブリッジが適する」
パターン④ ブリッジの平衡条件に関する記述
✅ 正しい記述:
「ブリッジが平衡しているとき、検出器に流れる電流はゼロであり、平衡条件は電源の電圧に依存しない」
→ これはすべてのブリッジに共通する性質。電源電圧が変わっても平衡条件は変わりません。
① ケルビンダブルブリッジ = 「低抵抗」「4端子法」
② シェーリングブリッジ = 「C+tanδ」「絶縁診断」
③ ウィーンブリッジ = 「周波数」
この3つが知識問題で問われる確率が最も高いです。

まとめ
- すべてのブリッジの共通原理は「Z₁Z₄ = Z₂Z₃(対角線の積が等しい)」
- 直流ブリッジは「抵抗R」を測定。ホイートストン(通常抵抗)とケルビンダブル(低抵抗)の2種類
- ケルビンダブルブリッジは「4端子法」で接触抵抗を排除する二重構造
- 交流ブリッジは「L, C, f, tanδ」を測定。マクスウェル・ウィーン・シェーリング・ヘイの4種類
- マクスウェルは低Qコイル向き、ヘイは高Qコイル向き
- ウィーンは「周波数」、シェーリングは「C+tanδ」を測定
- 計算問題はホイートストンだけでOK。他は「名前 → 測定対象」の知識問題に備える
ブリッジ回路はホイートストンだけ覚えて安心する受験生が多い分野ですが、実際の試験では「ケルビンダブルブリッジは何を測るか」「シェーリングブリッジの測定対象は」といった知識問題が出ることがあります。この記事の一覧表で全種類を頭に入れておけば、あと1問取れるかもしれません。
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