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- カイ二乗分布の式を見ても、何を表しているのかわからない
- 自由度で形がどう変わるのか、表をどう読むのかあやふや
- 母分散の検定や区間推定で、どう使えばいいか知りたい
- カイ二乗分布とは何か(2乗して足す)
- 自由度と形、期待値φ・分散2φ
- χ²分布表の読み方と、母分散の検定・推定の例題
- 自由度と値から確率を出す計算ツール
カイ二乗分布(χ²分布)とは、標準正規分布にしたがう値を2乗して、自由度の数だけ足し合わせた値がしたがう分布です。値は0以上で右にすそが長く、自由度φが大きくなるほど右に広がり、左右対称に近づきます。期待値は φ、分散は 2φ です。品質管理では、ばらつき(母分散)の検定・推定や、適合度・独立性の検定に使います。

カイ二乗分布とは?正規分布の値を「2乗して足す」
標準正規分布(平均0・標準偏差1)から値を1つ取り出して2乗します。これを何回かくり返して足した合計が、カイ二乗(χ²)の値です。この合計がどんなふうに散らばるかを表したのがカイ二乗分布で、足した個数を自由度φと呼びます。
| 回 | 取り出した値 | 2乗 |
|---|---|---|
| 1 | −1.2 | 1.44 |
| 2 | 0.8 | 0.64 |
| 3 | −0.3 | 0.09 |
| 4 | 1.5 | 2.25 |
| 5 | −0.7 | 0.49 |
| 合計(自由度5) | 4.91 |
なぜ2乗するのか
ずれをそのまま足すと、+5と−5が打ち消し合って0になり、ばらつきが消えてしまいます。2乗すれば (+5)²+(−5)²=50 となり、ずれの大きさが正しく積み上がります。カイ二乗分布は、ずれ(ばらつき)の大きさを表す分布だと考えるとわかりやすくなります。
標準正規分布と標準化

自由度と形、期待値φ・分散2φ
| 性質 | 内容 |
|---|---|
| 値の範囲 | 0以上(2乗の合計なのでマイナスにならない) |
| 形 | 右にすそが長い。自由度が大きいほど右に移り、なだらかで左右対称に近づく |
| 期待値(平均) | φ(自由度と同じ) |
| 分散 | 2φ |
自由度1や2では0の近くに山がよって急に下がる形ですが、自由度が大きくなると山が右に移り、正規分布に近い形になります。期待値がφになるのは、標準正規分布の値の2乗の期待値が1で、それをφ個足すからです。
不偏分散とのつながり
正規分布にしたがう母集団からn個とって不偏分散s²を出すと、(n−1)s²÷σ² が自由度n−1のカイ二乗分布にしたがいます。自由度がnではなくn−1になるのは、平均を使った分だけ自由に動ける値が1つへるからです。この性質を使って、母分散(ばらつき)の検定や推定ができます。
n−1で割る理由と自由度

χ²分布表の読み方
χ²分布表は、自由度φと上側確率Pから、その確率になる値χ²(φ, P)を引く表です。上側確率は、その値より右側の面積です。
| 自由度φ | P=0.975 | P=0.95 | P=0.05 | P=0.025 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 0.001 | 0.004 | 3.841 | 5.024 |
| 5 | 0.831 | 1.145 | 11.07 | 12.83 |
| 9 | 2.700 | 3.325 | 16.92 | 19.02 |
| 10 | 3.247 | 3.940 | 18.31 | 20.48 |
カイ二乗分布は左右対称ではないので、下側(左端)の値は上側の値から引き算で出せません。下側の確率5%の値は、表の「P=0.95」の列で引きます。上側と下側のどちらを見るかの迷いどころは、棄却域の記事でくわしく説明しています。
0.05と0.95どっちを見る?

例題|母分散の検定と区間推定
これまでばらつきが母分散σ0²=0.25だった工程で、10個とったら不偏分散s²=0.5でした。ばらつきは大きくなったといえるか(有意水準5%)。
| 手順 | 計算 |
|---|---|
| ① 検定統計量 | χ²=(n−1)s²÷σ0²=9×0.5÷0.25=18.0 |
| ② 棄却域(ばらつきが大きくなったか=上側) | χ²(9, 0.05)=16.92 より大きければ有意 |
| ③ 判定 | 18.0>16.92 なので有意。ばらつきは大きくなったといえる |
母分散の95%信頼区間
(n−1)s²÷χ²(φ, 0.025) 〜 (n−1)s²÷χ²(φ, 0.975) で求めます。例題なら 4.5÷19.02=0.237 〜 4.5÷2.700=1.667 です。分母が大きいほうの値が下限になる点に気をつけます。
ほかの使い道
| 検定 | 何を確かめる? |
|---|---|
| 適合度の検定 | 観測した度数が、考えている分布(サイコロが公平かなど)に合っているか |
| 独立性の検定(分割表) | 2つの分類(ラインと不良の種類など)に関係があるか |
どちらも Σ(観測度数−期待度数)²÷期待度数 がカイ二乗分布にしたがうことを使います。2つの分散をくらべるときはF分布を使います。
2つの分散はF検定、3つ以上はバートレット。分散比の計算例つき

カイ二乗分布を使う2つの検定|適合度の検定と独立性の検定
カイ二乗分布は、母分散の検定のほかに、数えたデータ(度数)の検定にも使います。どちらも「実際の度数 O と、仮説から計算した期待度数 E のずれ」を次の式で測ります。
χ₀² = Σ (O − E)² ÷ E χ₀² が χ²表の上側α点以上なら、仮説を棄却します。
適合度の検定|度数が想定どおりの割合か
サイコロを60回投げて、1〜6の目が 8・12・9・11・6・14 回出たとします。公平なら各目の期待度数は 60÷6=10回。χ₀²=(4+4+1+1+16+16)÷10=4.2。自由度は 目の数−1=5 で、χ²(5, 0.05)=11.07。4.2 < 11.07 なので「公平でない」とは言えません。
独立性の検定|2つの分類に関係があるか
ライン(A・B)と良否の関係を、200個のデータで調べます。期待度数は「行の合計×列の合計÷総数」です。
| 良品(期待度数) | 不良(期待度数) | 合計 | |
|---|---|---|---|
| ラインA | 90(85) | 10(15) | 100 |
| ラインB | 80(85) | 20(15) | 100 |
| 合計 | 170 | 30 | 200 |
χ₀²=25÷85+25÷15+25÷85+25÷15≒3.92。自由度は (行の数−1)×(列の数−1)=1 で、χ²(1, 0.05)=3.84。3.92 ≧ 3.84 なので「ラインと良否は無関係」を棄却し、関係があると判断します。
期待度数が5未満のマスが多いと、カイ二乗分布での近似が悪くなる。2×2表で度数が少ないときは、イェーツの補正やフィッシャーの正確確率検定を使う。
カイ二乗分布の計算ツール
自由度を入れて、「χ²の値から確率」か「確率からχ²の値」を選んでください。χ²分布表のかわりに使えます。
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
カイ二乗分布のよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 左右対称だと思って、下側を引き算で出す | 非対称。下側は表の P=0.95(0.975)の列で引く |
| 自由度にnをそのまま使う | 不偏分散を使う検定・推定では n−1 |
| 検定統計量を s²÷σ0² とする | (n−1)s²÷σ0²。(n−1)をかける |
| 信頼区間の上限と下限を逆にする | χ²の大きい値で割ったほうが下限 |
| 期待値は0 | 期待値は自由度φ、分散は2φ |
上側と下側で値がちがう理由

よくある質問
- カイ二乗分布=標準正規分布の値を2乗して自由度φ個足した値の分布
- 0以上で右にすそが長い。期待値φ、分散2φ
- (n−1)s²÷σ²は自由度n−1のカイ二乗分布にしたがう
- 表は上側確率で引く。下側はP=0.95・0.975の列
- 母分散の検定・推定、適合度・独立性の検定に使う

「カイ二乗分布」の土台になる統計学を、本でじっくり学び直したいときに向いています。統計学を独学で学べるように書かれた入門書です(ダイヤモンド社、小島寛之 著)。
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メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
次に読むべき記事
カイ二乗分布がわかったら、検定と推定の全体の地図で、t分布・F分布との使い分けを確かめましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。