熱設計

TIMとは?熱伝導グリス・シートの役割と種類、正しい塗り方を図解|熱抵抗の計算ツール付き

TIMとは何かを表すアイキャッチ。パワー半導体とヒートシンクのあいだに熱伝導グリスを入れて、熱を通す

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 「グリスをちゃんと塗っておいて」と言われたが、なぜ要るのか説明できない
  • 金属どうしをねじで強くしめれば、グリスはいらないのでは?
  • グリス・シート・パッドの違いと、塗る量の正解がわからない
この記事でわかること
  • TIMとは何か、なぜグリスやシートが必要なのか
  • グリス・シート・パッド・相変化材の違いと選び方
  • 「薄く・均一に」塗る理由と手順
  • 厚さと面積からTIMの熱抵抗を出す計算ツール
結論|まず30秒でわかる答え

TIMとは、熱伝導グリスやシートの総称です。TIM(Thermal Interface Material、熱伝導材料)とは、パワー半導体やCPUなどの発熱部品とヒートシンクのあいだに入れる、熱伝導グリスや熱伝導シートのことです。金属の面は平らに見えても細かな凸凹があり、すき間に入った空気が熱をほとんど通しません。TIMはその空気を追い出して、熱の通り道をつなぐ役目をします。

TIMとは何かを表すアイキャッチ。パワー半導体とヒートシンクのあいだに熱伝導グリスを入れて、熱を通す
TIMはパワー半導体とヒートシンクのすき間に熱を通す

TIMとは?すき間の空気を追い出す材料

熱は「チップ → ケース → TIM → ヒートシンク → 空気」と、直列につながった道を流れます。TIMはケースとヒートシンクのつなぎ目にあたります。

金属の面は「平らに見えて凸凹」

部品の裏もヒートシンクの面も、目で見るとつるつるです。しかし顕微鏡で見ると、数μm〜数十μmの山と谷があります。2枚を重ねても、本当にふれ合っているのは山のてっぺんだけで、見かけの面積のほんの数%といわれます。残りのすき間は空気です。ねじを強くしめても、この凸凹はなくなりません。

材料熱伝導率[W/(m·K)]空気の何倍
銅約400約16,000倍
アルミ約200〜240約1万倍
熱伝導グリス約1〜5(高性能品はそれ以上)約40〜200倍
水約0.6約24倍
空気約0.0251倍

空気はアルミの約1万分の1しか熱を通さない、ほぼ断熱材です。家の断熱材が空気の泡を閉じこめて熱を止めるのと同じことが、部品とヒートシンクのすき間で起きています。TIMは、凸凹に流れこんで空気を追い出します。ただしTIMそのものも金属よりずっと熱を通しにくいので、「空気よりはずっとまし」な材料を、できるだけ薄く入れるのが基本です。

TIMが必要な理由の図。金属の面は凸凹で、TIMがないとすき間の空気が熱を止める。TIMで埋めると熱が通る
金属面の凸凹のすき間の空気が熱を止める

TIMの熱抵抗を計算する

公式

熱抵抗 R = 厚さ t ÷(熱伝導率 λ × 面積 A)

温度上昇 ΔT = R × 発熱 P。薄く、熱を通しやすく、面積が広いほど熱抵抗は小さくなります。

例:面積2cm²の部品で、すき間0.05mmがすべて空気なら R=0.00005÷(0.025×0.0002)=10℃/W。同じ0.05mmを熱伝導率3のグリスで埋めれば約0.08℃/W、熱伝導率1.5で厚さ0.3mmのシートなら1.0℃/Wです。20Wの部品なら、空気では200℃、グリスでは約2℃、シートでは20℃の温度差になります(実際は金属の山どうしもふれ合うので、空気の値はここまで悪くはなりませんが、桁のちがいはこのとおりです)。

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

TIM層の熱抵抗の比較図。面積2cm²で、厚さ0.05mmの空気は10℃/W、0.3mmのシートは1.0℃/W、0.05mmのグリスは約0.08℃/W
TIM層の熱抵抗の比較:空気・シート・グリス

TIMが必要な理由|接触熱抵抗とは

平らに見える部品とヒートシンクの面も、拡大すると細かい凹凸があり、実際に触れているのは見かけの面積のごく一部です。残りのすき間には熱を伝えにくい空気が入り、接触熱抵抗(面と面の境目で生まれる熱抵抗)になります。TIMは、このすき間の空気を追い出すための材料です。

接触熱抵抗を左右するもの小さくする方向
面の粗さ・平面度(反り)なめらかで平らなほど小さい
押し付ける力(ねじの締付トルク)強いほど小さい。ただし締めすぎは部品やパッケージの割れ・反りの原因
すき間を埋める材料(TIM)空気より熱を伝える材料で、できるだけ薄く埋める
時間の経過グリスのポンプアウト(押し出し)・乾き、ねじのゆるみで大きくなる

接触熱抵抗はデータシートの Rth(c-s)(ケース−ヒートシンク間)に表れますが、面の状態・締付トルク・TIMで大きく変わる値です。推奨の締付トルクとTIMはメーカーの資料で確かめ、重要な製品では実機で温度を測って確かめます。

TIMの種類と使い分け

種類厚さの目安よいところ弱いところ向く場面
熱伝導グリス数十μmいちばん薄くでき、熱抵抗が小さい。安い塗る手間とばらつき。長く使うと押し出される(ポンプアウト)パワーモジュール、CPU
熱伝導シート0.2〜2mmはさむだけで量産しやすい。絶縁を兼ねるものもあるグリスより厚く、熱抵抗が大きい量産品、絶縁が必要な所
ギャップフィラー(厚いパッド)1〜5mmやわらかく、高さのちがう部品をまとめて冷やせる厚いぶん熱抵抗は大きい基板上の部品と筐体のあいだ
相変化材(PCM)数十〜200μm常温では固体で扱いやすく、温まるとやわらかくなってグリスに近い性能高い。種類が少ない高い信頼性が要る量産品

選ぶときは、熱伝導率の数字だけでなく、「どれだけ薄くできるか(すき間の大きさ)」「絶縁が要るか」「量産で塗りやすいか」「長く使って性能が落ちないか」をあわせて考えます。グリスの選び方は別の記事でくわしく解説しています。

熱伝導グリスの選び方|熱伝導率だけで選んではいけない理由を完全図解
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熱伝導グリスの選び方、熱伝導率だけで選ばない

TIMの種類の図。いちばん薄くできるグリス、量産と絶縁に向くシート、大きなすき間を埋めるギャップフィラー、温まると軟らかくなる相変化材
TIMの種類:グリス・シート・ギャップフィラー・相変化材

正しい塗り方|「薄く・均一に」

TIMの役目は凸凹を埋めることだけです。それより厚い分は、熱の通り道をじゃまするだけになります。

量起きること
塗りすぎ層が厚くなって熱抵抗が増える。はみ出して周りを汚し、導電性グリスならショートの原因に
少なすぎ凸凹を埋めきれず空気が残る。場所によってむらができる
ちょうどよいしめた後、面全体にうっすら広がり、はみ出しはわずか
手順(グリスの場合)

① 両方の面を、イソプロピルアルコール(IPA)などで油・ほこり・古いグリスを落とす
② 決めた量を中央にのせる(量産ではシリンジで定量、またはスクリーン印刷)
③ ヒートシンクをのせ、ねじを対角に少しずつしめる
④ データシートの規定トルクで本締めする

量産では、塗る量・しめるトルク・清掃のやり方を作業標準書で決め、1台ずつばらつかないように管理します。試作で「なんとなく塗っていた」感覚のまま量産に入ると、ロットで温度がばらつく原因になります。

絶縁が必要な場合のグリス選定|熱伝導と絶縁の両立を完全図解
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絶縁が必要な場合のグリス選定

熱伝導グリスの塗り方の図。面を清掃し、中央に決めた量をのせ、ねじを対角に少しずつしめ、規定トルクで本締めする
熱伝導グリスの塗り方:中央に盛り対角にしめる

TIMでよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
強くしめればグリスはいらない凸凹は消えない。空気を追い出せるのはTIMだけ
たくさん塗るほど冷える厚いほど熱抵抗が増える。薄く・均一に
熱伝導率が高いTIMほどよい厚さ・なじみやすさ・絶縁・長期の安定もあわせて見る
グリスは電気を通さない銀などを含む導電性のものもある。絶縁が要る所は絶縁タイプに
一度塗れば一生もつ温度の上下でグリスが押し出されたり乾いたりする。寿命試験で確かめる
ヒートシンクとは?仕組みと種類、選び方の基本を図解|必要な熱抵抗の計算ツール付き
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ヒートシンクとは?仕組みと種類

TIMのよくある間違いの図。強くしめても凸凹は消えない、薄く均一に塗る、導電性のグリスもある、押し出しや乾きで性能が落ちる
TIMのよくある間違い:強くしめても凸凹は消えない

よくある質問

Q. TIMとは簡単にいうと?

A. 発熱部品とヒートシンクのすき間に入れて、空気を追い出し熱を伝えやすくするグリスやシートのことです。

Q. なぜグリスを塗る必要があるの?

A. 金属の面には凸凹があり、すき間の空気が熱をほとんど通さないからです。グリスがその空気を追い出します。

Q. グリスとシートはどちらがいい?

A. 熱抵抗の小ささはグリス、量産のしやすさと絶縁はシートが有利です。すき間の大きさと用途で選びます。

Q. グリスはどのくらい塗ればいい?

A. しめた後に面全体へうっすら広がり、はみ出しがわずかな量です。厚く塗るほど熱抵抗が増えます。

Q. TIMの熱抵抗はどう計算する?

A. 厚さ÷(熱伝導率×面積)です。温度差は熱抵抗×発熱で求めます。実際は接触の抵抗も加わります。

まとめ
  • TIM=発熱部品とヒートシンクのすき間の空気を追い出す材料
  • 空気の熱伝導率はアルミの約1万分の1。すき間の空気が熱を止める
  • 熱抵抗=厚さ÷(熱伝導率×面積)。薄いほどよい
  • グリス・シート・ギャップフィラー・相変化材を用途で選ぶ
  • 清掃→定量→対角にしめる→規定トルク
TIMのまとめの図。すき間の空気を追い出す、熱抵抗は厚さ÷(熱伝導率×面積)、グリス・シート・パッドを使い分け、薄く均一に塗る
TIMのまとめ:すき間の空気を追い出し薄く均一に
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

熱設計を、基礎から体系立てて学びたいときに向いています。電子機器の熱設計を、基礎から学べる入門書です(日刊工業新聞社、国峯尚樹 著)。

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パワーエレクトロニクスの全体を、図でつかみたいときに向いています。パワーエレクトロニクスを、カラーの図解で解説した本です。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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