熱設計

ヒートシンクとは?仕組みと種類、選び方の基本を図解|必要な熱抵抗の計算ツール付き

ヒートシンクとは何かを表すアイキャッチ。トランジスタの熱がアルミのフィンに広がり、空気へ逃げていく

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • ヒートシンクは何をしている部品なのか、うまく説明できない
  • なぜギザギザのフィンがあると冷えるのかわからない
  • どのくらいの大きさのヒートシンクが要るのか、見当がつかない
この記事でわかること
  • ヒートシンクとは何か、なぜ必要か
  • フィンで冷える仕組みと、熱が逃げる3つの経路
  • 形状の種類、アルミと銅、黒いアルマイトの意味
  • 必要な熱抵抗の求め方(計算ツール付き)と取り付けの注意
結論|まず30秒でわかる答え

ヒートシンクとは、トランジスタやCPUなどが出す熱を、広い金属の表面から空気へ逃がすための放熱部品です。部品そのものを冷やす機械ではなく、小さな部品の熱を大きな面に広げて、空気に渡しやすくする「橋渡し役」です。フィンは、同じ材料の量で表面積を何倍にも増やすための形で、性能は熱抵抗(℃/W)で表します。

ヒートシンクとは何かを表すアイキャッチ。トランジスタの熱がアルミのフィンに広がり、空気へ逃げていく

ヒートシンクとは?なぜ必要なのか

パワー半導体は小さいので、そのままでは熱を空気に渡しきれません。ヒートシンクは、熱の出口の面積を何十倍にも広げる部品です。

「シンク(sink)」は、台所の流しのように「流しこむ先」という意味です。部品の中で生まれた熱をヒートシンクに流しこみ、表面から空気へ捨てます。最後に熱を運び去るのは空気なので、ヒートシンクは「冷やす機械」ではなく「空気に渡す橋渡し役」です。

例題:10Wの熱を出すトランジスタ

熱の伝わりにくさを熱抵抗(℃/W)で表すと、温度上昇=熱抵抗×発熱で計算できます。周囲50℃で10Wの熱を出すTO-220パッケージの部品を考えます。

条件熱抵抗の合計チップの温度Tj
ヒートシンクなし約62℃/W(パッケージから空気へ)50+10×62=約670℃(実際には途中で壊れる)
4℃/Wのヒートシンクあり1.0+0.5+4.0=5.5℃/W50+10×5.5=105℃

ヒートシンクがないと、10Wでも計算上は数百℃になり、使えません。熱抵抗の合計を小さくするのが、ヒートシンクの仕事です。TO-220の値は品種でちがうので、実際はデータシートで確かめます。

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ヒートシンクのありとなしの比較図。10Wの部品は、ヒートシンクなしでは計算上約670℃、4℃/Wのヒートシンクをつけると105℃

ヒートシンクの仕組み|なぜフィンがあると冷えるのか

空気に熱を渡せる量は、空気にふれている面積におおよそ比例します。フィンは、同じ材料の量で表面積を何倍にも増やすための形です。

じゃがいもを丸ごとゆでるより、千切りにしたほうが早く火が通るのと同じです。表面が広いほど、熱の出入りの窓口が増えます。ただし、フィンを詰めすぎると、すき間に空気が通らなくなり、かえって冷えません。フィンの数と間隔は、風の量とのつり合いで決まります。

熱が逃げる3つの経路

経路中身効かせ方
伝導部品の熱が、金属の中を通ってフィンの先まで広がる熱をよく通す金属・厚いベース
対流(いちばん大きい)フィンにふれた空気が温まって流れ、熱を運ぶ表面積・風の通り道・ファン
放射表面から赤外線として熱が出る黒い表面(放射率を上げる)

ファンのない自然空冷では、放射の割合が大きくなります。逆にファンで風を当てる強制空冷では、対流がほとんどを占めます。

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ヒートシンクから熱が逃げる3つの経路の図。金属の中を伝導でフィンへ広がり、空気の対流と赤外線の放射で外へ逃げる

ヒートシンクの種類|形状と材質

形状(作り方)の種類

種類特徴向いている用途
押出し型アルミをところてんのように押し出す。平行なフィン。安いいちばん一般的。風の向きが決まっている所
ピンフィン型細い棒が並ぶ。どの向きの風にも効く風向きが決まらない所、LED照明など
かしめ・スカイブ型薄いフィンを密に並べられる。高性能だが高いファン付きの高発熱品
ヒートパイプ付き中の液体の蒸発と凝縮で、熱を離れたフィンへ運ぶCPUクーラー、熱源の近くに場所がないとき

アルミと銅、どちらを選ぶ?

項目アルミ銅
熱の通しやすさ(熱伝導率)約200〜240 W/(m·K)約400 W/(m·K)
重さ(密度)2.7 g/cm³(軽い)8.9 g/cm³(約3.3倍重い)
値段・加工安く、押出しで形を作りやすい高く、加工しにくい

ふつうはアルミで十分です。銅は、熱源の真下で熱を素早く広げたいところ(CPUクーラーの受熱部やヒートパイプ)に使い、フィンはアルミにする組み合わせがよく見られます。

なぜ黒いのか|アルマイトと放射率

黒いヒートシンクの多くは、アルミの表面に酸化膜をつける「アルマイト処理」をして黒く染めたものです。光ったアルミの放射率は0.05前後ですが、黒アルマイトは0.8〜0.9程度まで上がり、赤外線で熱を出しやすくなります。効果が大きいのは自然空冷で、強制空冷では差が小さくなります。さびにくくなる利点もあります。

ヒートシンクの種類と材質の図。押出し型・ピンフィン型・ヒートパイプ付きがあり、アルミは軽くて安く、銅は熱をよく通すが重い

ヒートシンクの選び方|必要な熱抵抗を求める

ヒートシンクは「熱抵抗Rth(s-a)がいくつ以下なら足りるか」を計算し、それを満たす品をカタログから選びます。

公式

Rth(s-a) ≦(Tj目標 − Ta)÷ P − Rth(j-c) − Rth(c-s)

Tj:チップの温度、Ta:周囲の温度、P:損失(発熱)、Rth(j-c):チップ→ケース、Rth(c-s):ケース→ヒートシンク(グリスやシート)、Rth(s-a):ヒートシンク→空気

例題:P=10W、Tjの目標125℃(上限150℃に余裕をもたせる)、Ta=50℃、Rth(j-c)=1.0℃/W、Rth(c-s)=0.5℃/W なら、(125−50)÷10−1.0−0.5=6.0℃/W以下のヒートシンクが必要です。

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

必要な熱抵抗が出たら、自然空冷で足りるか、ファンが要るかを決め、大きさや重さの制約の中でカタログから候補を選びます。最後は必ず実機で温度を測って確かめます。細かい手順は選定手順の記事で解説しています。

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熱抵抗の直列の図。チップからケース、グリス、ヒートシンク、空気まで熱抵抗が直列につながる。10Wで周囲50℃、Tj125℃なら6.0℃/W以下のヒートシンクが必要

取り付けで性能が変わる|向き・すき間・グリス

同じヒートシンクでも、取り付け方しだいでカタログどおりの性能が出ません。

ポイント理由
自然空冷はフィンを縦に温まった空気は上に昇る。フィンのすき間が縦だと、煙突のように空気が流れる
強制空冷は風の向きにそろえるフィンのすき間を風が通り抜けないと、表面積が生きない
まわりをふさがないほかの部品やケースの壁で空気の通り道が消えると、熱がこもる
すき間にグリスやシート金属どうしの間の小さなすき間は空気で、熱を通しにくい。TIMで埋める
絶縁は絶縁シートで部品の裏面が電極のことがある。アルマイト膜に絶縁をたよらない
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ヒートシンクの取り付けの注意の図。自然空冷はフィンを縦にして煙突のように空気を流す、まわりをふさがない、すき間はグリスで薄く埋める

ヒートシンクでよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
ヒートシンクが熱を消してくれる熱を空気に渡すだけ。空気が動かなければ冷えない
フィンは多いほどよい詰めすぎると空気が通らない。風の量に合った間隔がある
銅のほうが必ずよい重さと値段を考えると、ふつうはアルミで十分
カタログの熱抵抗どおりに冷える条件つきの値。2〜3割の余裕を見て、実機で測る
グリスはたっぷり塗るほどよいすき間を埋める薄い層でよい。厚いとかえって熱抵抗が増える
ヒートシンクのよくある間違いの図。熱を空気に渡すだけ、フィンの詰めすぎは逆効果、カタログ値には余裕を見る、グリスは薄く

よくある質問

Q. ヒートシンクとは簡単にいうと?

A. 半導体などの熱を、広い金属の表面から空気へ逃がす放熱部品です。小さな部品の熱を大きな面に広げます。

Q. なぜフィンがあると冷えるの?

A. 空気にふれる表面積が増えるからです。空気に渡せる熱の量は、表面積にほぼ比例します。

Q. ヒートシンクの性能は何で比べる?

A. 熱抵抗Rth(s-a)(℃/W)です。1Wの熱で何℃上がるかを表し、小さいほど冷えます。

Q. アルミと銅はどちらがいい?

A. 銅は熱をよく通しますが重く高価です。ふつうはアルミで十分で、銅は熱源の近くに使います。

Q. ヒートシンクが黒いのはなぜ?

A. 黒アルマイトで放射率を上げ、赤外線で熱を出しやすくするためです。特に自然空冷で効きます。

まとめ
  • ヒートシンクは、熱を広い面から空気へ渡す橋渡し役
  • フィンは表面積を増やす形。詰めすぎは逆効果
  • ふつうはアルミ、熱源の近くに銅。黒アルマイトは自然空冷で効く
  • 必要なRth(s-a)=(Tj目標−Ta)÷P−Rth(j-c)−Rth(c-s)
  • 向き・すき間・グリスで性能が変わる。最後は実機で測る
ヒートシンクのまとめの図。熱を空気へ渡す橋渡し役、フィンで表面積を増やす、性能は熱抵抗、向きとすき間とグリスで性能が変わる
キャリア
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電験三種 / QC検定1級 / パワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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