機械科目の解説

【図解で完全理解】三相誘導電動機の原理|回転磁界から同期速度までイメージでマスター

💭 こんな悩みはありませんか?

  • 「三相誘導電動機」って、名前だけで難しそう...
  • 回転磁界って何?なんで磁界が回転するの?
  • 同期速度の公式 Ns = 120f/p を丸暗記したけど意味がわからない

✅ この記事の結論

三相誘導電動機は「回転する磁石を追いかける鉄の塊」です。たった4ステップで動作原理が理解でき、同期速度の公式も「なぜそうなるか」がわかります!

📚 誘導機シリーズ(全8回)

2-1 原理 → 2-2 滑り → 2-3 比例推移 → 2-4 トルクと出力 → 2-5 等価回路 → 2-6 始動法 → 2-7 速度制御 → 2-8 単相誘導電動機

🏭 三相誘導電動機とは?

三相誘導電動機(さんそうゆうどうでんどうき)は、世界で最も多く使われているモーターです。

工場のベルトコンベア、電車、エアコン、エレベーター...私たちの身の回りで動いている機械の多くが、このモーターで動いています。

なぜこんなに人気なの?

理由はシンプル。「壊れにくくて、安くて、メンテナンスが楽」だからです。

特徴 理由
壊れにくい ブラシ(摩耗部品)がない
安い 構造がシンプルで大量生産できる
メンテナンスが楽 消耗部品が少ない
頑丈 過酷な環境でも動作する

でも、「誘導」って何?「三相」って何?ここからイメージで理解していきましょう!

🎯 動作原理は「たった4ステップ」

三相誘導電動機の動作原理は、以下の4ステップで完全に理解できます。

🌀

Step 1

回転磁界の発生

Step 2

誘導作用

💪

Step 3

電磁力の発生

🏃

Step 4

回転!

この4ステップを順番に見ていきましょう!

🌀 Step 1:回転磁界の発生

「三相」って何?

家庭のコンセントは「単相(たんそう)」交流。プラスとマイナスが交互に入れ替わる、1本の波です。

一方、「三相」は3本の波が120°ずつずれて流れる交流です。

💡 イメージしてみよう!

3人が手をつないで円になり、順番に「せーの!」でジャンプしていると想像してください。

Aさんがジャンプ → 少し遅れてBさんがジャンプ → 少し遅れてCさんがジャンプ → またAさん...

この「順番にずれる」ことが超重要なんです!

回転磁界が生まれる仕組み

120°ずつずれた3つのコイルに三相交流を流すと、不思議なことが起きます。

合成された磁界がグルグル回転するのです!

🎪 電光掲示板をイメージ!

野球場の電光掲示板で、文字が右から左に流れて見えますよね。

実際には電球が順番に点滅しているだけなのに「動いて見える」。

回転磁界もこれと同じ原理です!

物理的に何かを回しているわけではなく、電気的に磁界の向きが回転しているのです。

⚡ Step 2:誘導作用

なぜ「誘導」電動機なの?

回転磁界の中に、導体(電気を通すもの)を置くとどうなるでしょう?

ファラデーの電磁誘導の法則により、導体に電流が誘導されます。

📖 電磁誘導とは?

磁界の中で導体が動く(または磁界が変化する)と、導体に電圧が発生して電流が流れる現象。

回転磁界が回転子の導体を「横切る」ので、回転子に電流が誘導されます。

だから「誘導」電動機なのです!

💪 Step 3:電磁力の発生

磁界+電流=力!

回転子に電流が流れました。その電流は、回転磁界の中にあります。

磁界の中を流れる電流には力が働く—これがフレミング左手の法則です。

✋ フレミング左手の法則(FBI)

👆 👉 🖕
親指 = F(力) 人差し指 = B(磁界) 中指 = I(電流)

回転子の導体に流れる電流と回転磁界の相互作用で、回転子に力が働きます。

この力が回転トルクになります!

🏃 Step 4:回転!

追いかけるけど、追いつけない!

電磁力によって、回転子は回転磁界と同じ方向に回り始めます。

ここで超重要なポイントがあります。

⚠️ 超重要!誘導電動機の本質

回転子は絶対に回転磁界に追いつけない!

なぜなら、追いついた瞬間に相対速度がゼロになり、電磁誘導が起きなくなり、電流が流れず、力も発生しなくなるからです。

🐕 犬と飼い主でイメージ!

飼い主(回転磁界)が走ると、犬(回転子)は追いかけます。

でも追いつくと「あ、もういいや」と止まってしまう。すると飼い主が先に行くので、また追いかける。

常に少しだけ遅れて回転し続ける。この「少しだけ遅れる」ことを滑り(すべり)といいます!

📐 同期速度 Ns の公式

回転磁界の速さを求める公式

回転磁界が1分間に何回転するかを表すのが同期速度 Nsです。

📐 同期速度の公式

Ns = 120f / p [min⁻¹]

Ns 同期速度 [min⁻¹](1分間の回転数)
f 電源周波数 [Hz](東日本50Hz、西日本60Hz)
p 極数(磁極の数。2極、4極、6極...)

なぜ「120」なの?

この「120」がどこから来るのか、イメージで理解しましょう。

周波数 f は「1秒間の波の数」です。1分間なら 60 × f 回ですね。

しかし、極数によって1周期あたりの回転数が変わります。

極数 p 1周期で回転する角度 1周期で何回転?
2極 360° 1回転
4極 180° 1/2 回転
6極 120° 1/3 回転

つまり、1周期で 2/p 回転します。

1分間の回転数は 60 × f × (2/p) = 120f/p となり、公式が導かれます!

計算例:50Hz、4極の場合

📝 計算してみよう

Ns = 120 × 50 / 4 = 6000 / 4 = 1500 min⁻¹

→ 回転磁界は1分間に1500回転します。

よく出る同期速度(暗記推奨!)

極数 p 50Hz(東日本) 60Hz(西日本)
2極 3000 3600
4極 1500 1800
6極 1000 1200

💡 覚え方:「4極50Hzで1500」を基準に覚えると便利!極数が半分なら速度2倍、周波数が1.2倍なら速度も1.2倍。

🔧 三相誘導電動機の構造

固定子(ステータ)と回転子(ロータ)

三相誘導電動機は、大きく2つの部品で構成されています。

🔵 固定子(ステータ)

外側の固定された部分。三相交流を流すコイルが巻かれている。ここで回転磁界を作る。

🔴 回転子(ロータ)

内側の回転する部分。回転磁界から電流を誘導され、電磁力で回転する。

回転子の種類

種類 特徴 用途
🐿️ かご形 アルミ棒を「かご」状に配置。シンプルで安価 最も一般的
🎸 巻線形 回転子にもコイルを巻き、外部抵抗接続可能 クレーンなど

📝 まとめ

🏆 これだけ覚えて帰ろう!

原理 回転磁界を追いかける(でも追いつけない)
回転磁界 三相交流 × 120°配置のコイル
誘導 ファラデーの電磁誘導の法則
電磁力 フレミング左手の法則(FBI)
同期速度 Ns = 120f / p [min⁻¹]

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回転子は回転磁界に「追いつけない」と言いましたね。この「どれくらい遅れているか」を表すのが滑り(すべり)sです。計算問題で超頻出!

2-2. 滑り(すべり)を学ぶ →
📘 機械科目の基礎はこちら
機械科目の全体像|学習ロードマップ →

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