- 「インピーダンスZって何?抵抗Rと何が違うの?」
- 「RとXLを足すだけじゃダメなの?なぜ√が出てくる?」
- 「公式 Z=√(R²+X²) は覚えたけど、意味がわからない…」
- 「電験三種のRLC直列回路の問題が手も足も出ない」
- インピーダンスZ=「交流回路における電流の妨げやすさ」の全体像
- RとXを「なぜ単純に足せないのか」を直角三角形で完全理解
- Z=√(R²+X²) の公式が「ピタゴラスの定理」だったという衝撃の事実
- 具体的な数値を使った計算例で、試験問題が解けるようになる
電験三種の理論科目で、交流回路の計算問題を解くには「インピーダンス(Z)」の理解が絶対に必要です。
でも、多くの初心者がここでつまずきます。「抵抗R=30Ω、リアクタンスXL=40Ωなら、合計70Ωでいいんじゃないの?」と思いますよね。
実は、答えは50Ωです。70Ωではありません。
「え、なんで?」と思ったあなた、大丈夫です。この記事を読み終わる頃には、なぜ30+40=50になるのかが、スッキリ腑に落ちているはずです。
カギは「直角三角形」。中学校で習ったピタゴラスの定理が、まさかここで活躍するんです。
この記事は、以下の内容を理解している方を対象にしています。まだの方は先にこちらをどうぞ。
- リアクタンス(XL・XC)とは? ← コイルとコンデンサの「交流抵抗」
- R-L-C素子の性質 ← 位相が「進む」「遅れる」の意味
目次
そもそもインピーダンスとは?|交流回路の「総合的な抵抗」
🧱 直流と交流で「電流を妨げるもの」が違う
直流回路で電流を妨げるものは抵抗Rだけです。オームの法則 V=IR で、すべて計算できましたよね。
ところが交流回路では、抵抗Rに加えてリアクタンスX(コイルやコンデンサの「交流抵抗」)も電流を妨げます。
このRとXを「合成」したものが、インピーダンスZです。
インピーダンス Z [Ω] = 抵抗R と リアクタンスX を「合成」した、交流回路における電流の妨げやすさ
交流のオームの法則は、直流とまったく同じ形で書けます。
直流:V = I × R
交流:V = I × Z
RがZに置き換わっただけ!形は同じです。
つまり、Zさえ求められれば、あとは直流と同じ計算で電圧や電流を求められるのです。だからインピーダンスの計算は、交流回路の「核心中の核心」なんですね。
🤔 でも、なぜ R + X = Z にならないの?
ここが最大のポイントです。なぜ R=30Ω と X=40Ω を足して 70Ω にならないのか。
答えは、RとXが「同じ方向」に電流を妨げているわけではないからです。
たとえ話で説明しましょう。
あなたが公園のスタート地点に立っています。
・東に30歩歩きました(これが抵抗R)
・次に北に40歩歩きました(これがリアクタンスX)
合計「70歩」歩きましたが、スタート地点からの直線距離は何歩でしょうか?
70歩ではありませんよね。斜めの距離を計算する必要があります。
そう、ピタゴラスの定理で √(30² + 40²) = √(900 + 1600) = √2500 = 50歩 です。
これがまさに、インピーダンスの計算で起きていることです。抵抗R(東方向)とリアクタンスX(北方向)は90°違う方向に電流を妨げているため、単純に足し算はできず、直角三角形の斜辺として合成する必要があるのです。

なぜ「90°ズレる」のか?|位相差が直角三角形を作る理由
🔑 Rは「同相」、Xは「90°ズレ」── これがすべての根源
前提知識として、R-L-C素子の性質の記事で学んだことを思い出してください。
| 素子 | 電圧と電流の関係 | 方向のイメージ |
|---|---|---|
| 抵抗 R | 電圧と電流が同じタイミング(同相) | → 横方向(東) |
| コイル XL | 電流が電圧より90°遅れる | ↑ 縦方向(北) |
| コンデンサ XC | 電流が電圧より90°進む | ↓ 縦方向(南) |
抵抗Rが電流を妨げる「方向」を横(東)とすると、リアクタンスXは縦(北 or 南)の方向に電流を妨げます。この2つは常に90°ずれた方向を向いているのです。
90°ズレた2つのベクトルを合成すると、必ず直角三角形ができる。だからピタゴラスの定理が使えるわけです。
📐 インピーダンス三角形|R, X, Z の関係を図で理解
RとXとZの関係を「インピーダンス三角形」と呼びます。これは力率の「電力三角形」と同じ考え方です。
(リアクタンス)
↑
・Z:インピーダンス [Ω](斜辺)
・R:抵抗 [Ω](底辺)
・X:リアクタンス [Ω](高さ)= XL − XC
RLC直列回路で、コイル(XL)とコンデンサ(XC)が両方ある場合、
リアクタンスXは「引き算」で求めます。
X = XL − XC(XL > XC のとき:誘導性、電流が遅れる)
X = XC − XL(XC > XL のとき:容量性、電流が進む)
なぜ引き算? → XLは「北方向」、XCは「南方向」で、逆向きだからです。逆向きのベクトルは打ち消し合います。

【計算例①】R-L直列回路のインピーダンス
📝 問題:R=30Ω、XL=40Ω のR-L直列回路
抵抗 R = 30 Ω とコイルの誘導性リアクタンス XL = 40 Ω が直列に接続された回路があります。
(1) インピーダンス Z を求めなさい。
(2) 回路に 100V の交流電圧を加えたとき、流れる電流 I を求めなさい。
(3) 力率 cosθ を求めなさい。
コンデンサがない(XC = 0)ので、X = XL = 40 Ω です。
Z = √( R² + X² )
= √( 30² + 40² )
= √( 900 + 1600 )
= √2500
= 50 Ω
交流のオームの法則 V = I × Z を使います。
I = V / Z
= 100 / 50
= 2 A
インピーダンス三角形で cosθ = R / Z です。
cosθ = R / Z
= 30 / 50
= 0.6(遅れ)
R=30, X=40, Z=50 は「3:4:5」の比率です。電験三種では3:4:5、5:12:13、8:15:17のピタゴラス数がよく出ます。
これを見た瞬間に「Z=50だ」と反射的にわかれば、計算時間を大幅に短縮できますよ。
【計算例②】R-L-C直列回路のインピーダンス
📝 問題:R=8Ω、XL=20Ω、XC=14Ω のRLC直列回路
R = 8 Ω、XL = 20 Ω、XC = 14 Ω のRLC直列回路があります。
(1) 合成リアクタンス X を求めなさい。
(2) インピーダンス Z を求めなさい。
(3) 回路に 100V の交流電圧を加えたとき、電流 I を求めなさい。
XL と XC は逆方向なので引き算します。
X = XL − XC
= 20 − 14
= 6 Ω(XL > XC なので「誘導性」=電流が遅れる)
Z = √( R² + X² )
= √( 8² + 6² )
= √( 64 + 36 )
= √100
= 10 Ω
I = V / Z
= 100 / 10
= 10 A
Z = √(R² + XL² + XC²) と、3つの値をそのまま二乗して足してしまうミスが非常に多いです。
正しくは「まずXL−XCでリアクタンスXを求めてから」二乗する、という2ステップを踏むこと。
✅ Z = √( R² + (XL − XC)² )← これが正解!
❌ Z = √( R² + XL² + XC² )← これは間違い!

【計算例③】各素子にかかる電圧を求める
⚡ 各素子の電圧もオームの法則で求まる
RLC直列回路では、電流Iが各素子に共通で流れます。各素子にかかる電圧は以下のようにオームの法則で求められます。
・抵抗にかかる電圧:VR = I × R
・コイルにかかる電圧:VL = I × XL
・コンデンサにかかる電圧:VC = I × XC
計算例②の回路(R=8Ω、XL=20Ω、XC=14Ω、I=10A)で計算してみましょう。
| 素子 | 計算式 | 電圧 |
|---|---|---|
| 抵抗 R | VR = 10 × 8 | 80 V |
| コイル XL | VL = 10 × 20 | 200 V |
| コンデンサ XC | VC = 10 × 14 | 140 V |
🤯 「え?各素子の電圧の合計が電源電圧を超えてる!」
VR + VL + VC = 80 + 200 + 140 = 420V。電源電圧は100Vなのに、合計が420V?おかしくない?
いいえ、おかしくありません。これは交流ならではの現象です。
各電圧は位相(タイミング)がズレているため、同時に最大値にはなりません。映画館で全員が同時に立ち上がるわけではなく、バラバラのタイミングで立つようなイメージです。
電源電圧Vも、インピーダンスと同じように直角三角形で合成する必要があります。
V = √( VR² + (VL − VC)² )
= √( 80² + (200 − 140)² )
= √( 6400 + 3600 )
= √10000
= 100 V ✅ ぴったり合いました!
直列回路では電流が共通、電圧はベクトル合成。
・VR は電流と同相(横方向)
・VL は電流より90°進む(上方向)
・VC は電流より90°遅れる(下方向)
→ VL と VC は逆方向なので打ち消し合い、V = √(VR² + (VL−VC)²) で合成します。

インピーダンスの公式まとめ|これだけ覚えれば試験は怖くない
🎯 回路パターン別のインピーダンス一覧
| 回路の種類 | インピーダンス Z | 力率 cosθ |
|---|---|---|
| R のみ | Z = R | 1.0 |
| R-L 直列 | Z = √(R² + XL²) | R / Z(遅れ) |
| R-C 直列 | Z = √(R² + XC²) | R / Z(進み) |
| R-L-C 直列 | Z = √(R² + (XL−XC)²) | R / Z |
🧠 位相角θの判定方法
| 条件 | 回路の性質 | 電流は電圧より |
|---|---|---|
| XL > XC | 誘導性 | 遅れる |
| XL < XC | 容量性 | 進む |
| XL = XC | 共振(特別な状態) | 同相(Z=R、cosθ=1) |
XLとXCが完全に打ち消し合うと、X = 0 となり、Z = R だけになります。
このとき電流が最大になり、力率は1.0(完全同相)になります。
この特別な状態を「直列共振」と呼びます。次回の記事で詳しく解説します。

まとめ|インピーダンス計算の3ステップ
お疲れ様でした。最後に、この記事で学んだことを整理しましょう。
(引き算!)
(ピタゴラス!)
cosθ = R/Z
- インピーダンスZ = 交流回路で電流を妨げる「総合的な抵抗」
- RとXは90°違う方向に作用するため、単純に足し算できない
- Z = √(R² + X²) ← これはピタゴラスの定理そのもの
- RLC直列回路では、まずX = XL − XC(引き算)してからZを求める
- 交流のオームの法則 V = IZ で、あとは直流と同じように計算できる
- 力率は cosθ = R / Z で即座に求まる
「インピーダンスの計算」は、電験三種の理論科目における交流回路の最も基本的な計算技術です。この記事で解いた3つの計算例のパターンをマスターすれば、試験の交流回路の問題の約半分は解けるようになります。
何度も手を動かして計算練習を重ねてくださいね。「東に30歩、北に40歩」のたとえを思い出せば、もう迷うことはないはずです。

📚 次に読むべき記事
XL = 2πfL、XC = 1/(2πfC) の公式と周波数特性を復習したい方はこちら
「なぜコイルで電流が遅れるのか?」を位相差の基礎から理解したい方はこちら
インピーダンス三角形のθと力率の関係を、ビールの泡で理解する
交流の基本(正弦波、実効値、角周波数ω)を最初から学びたい方はこちら
直流回路の直列・並列の基礎を復習したい方はこちら
直流回路の全体像を把握して交流回路に備えたい方はこちら
勉強効率を最大化するグッズを知りたい方はこちら
電験三種の全体像と学習戦略を知りたい方はこちら