✅ 結論から言います
クーロンの法則とは、「電気の量が多いほど強く、離れるほど2乗で急激に弱くなる力」を式にしただけのものです。そして電界は「坂の急さ」、電位は「地面からの高さ」。この3つのイメージさえ持てば、静電気の計算問題は解けるようになります。
⏱️ 読了目安10分。読み終わる頃には「距離2倍で力は1/4」が理屈で分かり、電界と電位を自分の言葉で説明できるようになっています。
電験三種の「理論」科目で、多くの方が最初にぶつかる壁が静電気です。目に見えない力を扱うので、どうしてもイメージが湧きにくいんですよね。
この記事では、すべての図が動きます。電荷が実際に反発する様子、距離が離れて力が消えていく様子を、目で見ながら理解していきましょう。文字で読むより何倍も早く腹落ちするはずです。
静電気は「公式に数字を入れるだけ」の問題が大半で、理論の中では最も得点しやすい分野です。ここを捨てるのは、あまりにもったいないですよ。
クーロンの法則とは?すべての出発点
電気にはプラス(+)とマイナス(-)があります。この2つが引き合ったり反発したりする力を静電力(クーロン力)と呼びます。その大きさを求める式が、クーロンの法則です。
COULOMB'S LAW
この1本の式が、静電気分野すべての土台です
引き合う? 反発する? まずは動きで見てください
符号が同じか違うかで、力の向きが変わります。磁石のN極とS極とまったく同じ考え方です。
同じ符号なら押しのけ合い、違う符号なら引き寄せ合います。セーターを脱ぐと髪が逆立つのも、この引力が原因です。
⚖️ 意外な事実:力の大きさは必ず等しい
Q₁がQ₂の100倍大きくても、お互いが受ける力はまったく同じ大きさです(向きだけが逆)。式のQ₁とQ₂は掛け算されているだけなので、どちら側から見ても値が変わらないからです。中学理科の「作用・反作用の法則」そのものですね。
記号の意味を「日本語」に翻訳する
数式を暗号のまま覚えようとすると、必ず忘れます。ひとつずつ日本語に置き換えてしまいましょう。
F [N]
静電力(クーロン力)
引き合う、または反発する力。単位はニュートン。
Q [C]
電荷=電気の量
たまっている電気の「かさ」。大きいほど力は強い。
r [m]
2つの電荷の距離
2乗して割ります。ここが最重要ポイント。
k
比例定数
真空中では 9×109。暗記でOKです。
💡 つまりこの式は
「電気の量をかければかけるほど強く、距離が離れれば離れるほど(しかも2乗で)弱くなる力」。たったこれだけのことを言っています。
「距離2倍で1/4」を動きで見る
「距離rが2倍になると、力Fはどうなるか?」。電験三種で本当によく問われます。答えは半分ではなく1/4。下のアニメーションで、電荷が遠ざかるにつれて力のバーがどう縮むかを見てください。
距離が2倍になると、力は半分ではなく2の2乗である4で割った1/4になります。分母のrに小さな2が乗っているだけで、これほど激しく減るのです。
⚠️ 逆パターンも必ず出ます
距離が半分(1/2倍)になったら? (1/2)²=1/4 で割るので、力は4倍です。近づけると急に強くなるわけですね。ドアノブに指が数ミリまで近づいた瞬間にバチッとくるのも、この急激さと関係しています。
🌍 この「2乗に反比例」は万有引力の法則とまったく同じ形です。太陽と地球の引力も、電荷どうしの力も、自然界は同じルールで動いています。少し不思議で、面白いところですね。
「k」の正体は誘電率|水の中では力が1/80に
比例定数kは、独立した数字ではありません。誘電率ε(イプシロン)という「その物質が電気をためやすい度合い」から作られています。
真空中では ε₀=8.854×10-12[F/m]。
代入すると k≒8.988×109、つまり約9×109 になります。
εが大きい物質の中では、kは小さくなります(分母にあるため)。つまり静電力が弱まるということです。水の中に沈めるとどうなるか、動きで確認してみましょう。
まわりの物質が変わるだけで、力の強さは大きく変わります。比誘電率εrの媒質中では、静電力は真空中の1/εr倍。水は約80なので、力はほとんど感じられないレベルまで弱まります。
| 物質 | 比誘電率 εr の目安 | 静電力はどうなる? |
|---|---|---|
| 真空 | 1(基準) | 基準 |
| 空気 | 約1.0006 | ほぼ真空と同じ扱いでOK |
| 紙 | 2〜4程度 | 2〜4分の1に弱まる |
| 水(20℃) | 約80 | 約80分の1に激減 |
💡 試験ではこう問われます
「比誘電率εrの媒質中では、静電力は真空中の1/εr倍」。この一文で解けます。問題文に「空気中」とあれば、遠慮なく真空扱い(k=9×109)で計算して構いません。
実際に手を動かす|例題を4ステップで
📝 例題
真空中に、2×10-6[C]と3×10-6[C]の点電荷が30cm離れて置かれています。はたらく静電力Fは何[N]でしょうか。
STEP 1
単位をそろえる(最大の関門)
30cm は 0.3m。公式に入れる長さは必ずメートルです。cmのまま計算すると答えが1万倍ずれます。
STEP 2
分子(電荷の掛け算)
2×10-6 × 3×10-6 = 6×10-12
数字どうしを掛け、10の肩の数字は足し算(-6と-6で-12)です。
STEP 3
分母(距離の2乗)
0.32 = 0.09
STEP 4
公式に入れる
F = 9×109 × 6×10-12 ÷ 0.09 = 0.054 ÷ 0.09
ANSWER
F = 0.6 [N]
符号が同じなので、互いに反発する向きです
試験前に必ず見返したい単位換算
| 見かけの単位 | 計算に使う値 | ひとこと |
|---|---|---|
| 1 μC | 10-6 C | 最頻出。μを見たら-6 |
| 1 nC | 10-9 C | nは-9 |
| 1 pC | 10-12 C | pは-12 |
| 1 cm | 0.01 m | 2乗すると1万分の1 |
| 1 mm | 0.001 m | コンデンサ問題で頻出 |
電界と電位の違いは「坂」と「高さ」
ここでつまずく方が本当に多いです。ですが山の景色にたとえれば一瞬で腹落ちします。+1Cの電気をボールだと思って、転がる様子を見てください。
高い所にあるほど大きなエネルギーを持ち、坂が急なほど強く押されて転がります。電位V=高さ、電界E=傾きです。
② 電位 V
= 地面からの「高さ」
その場所が持つエネルギーの高さ。これが電圧の正体です。
単位:[V](=J/C)
性質:向きを持たない(スカラー)
| 項目 | 点電荷が作る式 | 距離の効き方 |
|---|---|---|
| 電界 E | E = kQ / r2 | 2乗に反比例 |
| 電位 V | V = kQ / r | 1乗に反比例 |
👉 見分け方は分母のrが2乗か1乗か。迷ったら「力(E)は2乗、高さ(V)は1乗」と唱えてください。
⚠️ 混同したままだと必ず詰まります
電界は「力の強さ」、電位は「エネルギー」。単位が違う=そもそも別物です。足したり比べたりはできません。この区別は第2回の記事で完全に固めておきましょう。
最重要公式 V=Ed|コンデンサ問題の土台
2枚の板ではさまれた空間では、電界がどこでも同じ強さ・同じ向きになります。これを平等電界と呼びます。オレンジの線が流れる様子を見てください。
高さ(V)= 傾き(E)× 距離(d)。坂の急さに距離をかければ、たどり着く高さが決まる。ただそれだけの式です。
🧮 ミニ演習
間隔2mmの平行平板に100Vをかけたとき、内部の電界の強さは?
E = V ÷ d = 100 ÷ 0.002
→ E = 50,000[V/m](=50kV/m)
※ 2mm=0.002m。ここが最頻出のミスです。
🔗 ちなみに空気は約3,000V/mmを超えると耐えきれず電気を通します。これが絶縁破壊。冬にドアノブでバチッとくる現象の正体そのものです。
線の混み具合が、そのまま電界の強さです。遠ざかるほど線がまばらになるので、力が弱まることが見た目で分かります。
📘 覚えておきたい電気力線の性質
+から出て-で終わる。途中で交わることはない。
線の密度が高いほど、その場所の電界は強い。
Q[C]の電荷からは、Q/ε 本の電気力線が出る。
この考え方が、第3回のガウスの法則にそのままつながります。
失点の9割はここ|よくある間違いワースト5
❌ 第1位:距離を2乗し忘れる
「2倍だから半分」は典型的な誤答です。2²=4で割るので1/4。分母のrに小さな2が乗っていることを、答案でも指差し確認してください。
❌ 第2位:cm・mmをそのまま代入する
10cmを10のまま入れると、答えは1万倍ずれます。問題文の長さに丸を付け、真っ先にmへ直す。この習慣だけで正答率が変わります。
❌ 第3位:μCを10-3だと思っている
μ(マイクロ)は10-6です。10-3はm(ミリ)。取り違えると答えが1000倍変わります。
❌ 第4位:電界と電位を混ぜる
単位がV/mとVで違います。単位が違うものは足せないと覚えておけば、計算の途中で気づけます。
❌ 第5位:媒質の指定を読み飛ばす
「比誘電率2の油の中で」の一文を見落とすと、答えがちょうど2倍ずれます。問題文の「〜中に」には必ず線を引きましょう。
✅ 対策はたった一つ
計算に入る前に、問題文の数値をすべて「C」と「m」に書き換えてしまうこと。この30秒の手間が、本番の5点を守ります。
よくある質問
まとめ|3つのイメージだけ持ち帰ってください
⚡ クーロンの法則:F=k×Q₁Q₂/r²。電気の量に比例、距離の2乗に反比例。
📏 距離2倍で力は1/4。半分ではありません。最頻出の引っかけです。
🧪 kの正体は誘電率。k=1/(4πε)。媒質中では力が1/εr倍に弱まります。
⛰️ 電界=坂の急さ[V/m]、電位=高さ[V]。Eは2乗、Vは1乗。
📐 V=Ed。平等電界で使う最重要式。コンデンサ問題の土台です。
静電気が難しく感じるのは、目に見えないからです。でも「電気の量」「距離」「坂と高さ」という3つのイメージさえ持っていれば、あとは公式に数字を入れるだけ。焦らず一歩ずつで大丈夫ですよ。
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冬にバチッとくる理由 ▶📕 参考書選びで迷っている
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独学ロードマップ ▶この記事を書いた人
シラス|メーカーエンジニア
メーカーで設計・品質保証に携わる現役エンジニア。統計学・信頼性工学・電気主任技術者の知識を、専門用語をかみ砕いて発信しています。「組織に依存せず、静かに強く生きる」がモットー。
📚 参考・出典:JIS C 60050(国際電気用語)第121部 電磁気学/オーム社『電験三種 完全攻略』理論編/電気技術者試験センター 過去問題