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火曜日の昼休み。田中さん(32歳・QA部)は電験三種の過去問を開いた。
「三相3線式送電線の電圧降下を近似式で求めよ」——cosθとsinθが混ざった式を見た瞬間、手が止まった。
「RIcosθ+XIsinθ」…この公式、どこから出てきたんだ?
こんな経験はありませんか?
「Rcosθ+Xsinθ」の公式が丸暗記で、なぜこの形になるのか わからない
cosθとsinθの位置がどっちか毎回迷って、結局間違える
「電圧降下」と「電力損失」は別モノだと聞くけど、何が違うの?
「電圧降下率」「電力損失率」の計算パターンが整理できていない
単相と三相で公式が変わって混乱する
○ この記事でわかること
電圧降下の近似式 v = √3 I (Rcosθ + Xsinθ) が「なぜこの形になるのか」をベクトル図で導出
電力損失の公式 PL = 3I²R の意味と「なぜ3倍なのか」
電圧降下率・電力損失率の計算パターンを途中式つきで解説
単相2線式・単相3線式・三相3線式の公式を比較表で一括整理
試験で出る4つの計算パターン を早見表で完全網羅
電験三種の電力科目で、ほぼ毎回出題される計算テーマ があります。
それが「送電線の電圧降下と電力損失」 の計算です。
公式自体はシンプルなのに、なぜか得点できない。その最大の原因は「cosθとsinθの公式を丸暗記しているだけで、なぜこの形なのか を理解していないから」です。意味がわかれば、cosとsinの位置を迷うことは二度となくなります。
この記事では、まず「ホースで水を送る比喩」で電圧降下と電力損失のイメージをつかみ、次にベクトル図を1ステップずつ描いて公式を導出し、最後に試験頻出の計算パターンを途中式つきで解いていきます。
結論|まず30秒でわかる答え
三相3線式の送電線では、電圧降下 v=√3I(Rcosθ+Xsinθ)[V] 、電力損失 PL=3I²R[W] です。電圧降下は送電端と受電端の電圧の差で、抵抗 R とリアクタンス X の両方が原因になります。電力損失は電線で熱になって消える電力で、原因は抵抗 R だけです(X はエネルギーを蓄えて返すだけ)。
そもそも「電圧降下」と「電力損失」とは何か?
専門用語が2つ並んでいますが、本質はとてもシンプルです。まずは「長いホースで水を送る」イメージで直感的に理解しましょう。
「長いホースで水を送る」イメージで理解する
あなたの家のベランダから、30m離れた花壇までホースで水を送る場面を想像してください。
水道の場合
蛇口の水圧 → 100
長いホースを通ると摩擦で水圧ダウン
→ ホースの先では水の勢いが弱い
→ ホース自体が摩擦熱でほんのり温かい
送電線の場合
発電所の電圧 → 高い
長い送電線を通ると抵抗・リアクタンスで電圧ダウン
→ 受電端では電圧が下がっている
→ 送電線が発熱して電力を失っている
この比喩から、2つの現象の違いが見えてきます。
2つの現象の違いを整理する
電圧降下
電力損失
何が起きる?
送電端と受電端で電圧の差 が生じる
送電線の抵抗で電力が熱になって消える
水道でいうと?
ホースの先の水圧が下がる
ホース自体が熱くなる(エネルギーのムダ遣い)
何に困る?
受電端の電圧が不足して機器が正常に動かない
発電した電力のうち、届かない分がムダになる
単位
V(ボルト)
W(ワット)
原因
抵抗R + リアクタンスX
抵抗R のみ
最大のポイント:原因が違う!
電圧降下の原因は抵抗R とリアクタンスX の両方 です。一方、電力損失の原因は抵抗R だけ です。リアクタンスX はエネルギーを蓄えて返すだけなので、電力を「消費」しません。この違いがわかっていないと、公式を混同します。
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送電線の抵抗で受電端の電圧が下がる
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電力損失を減らす3つの方法|なぜ送電は高い電圧で行うのか
電力損失を電力 P で表した式 PL=RP²/(Vr²cos²θ) を見ると、同じ電力を送るときに損失を減らす方法が3つ読み取れます。
方法 式のどこが変わるか 損失の変わり方の例
電圧を上げる Vr² が分母 電圧を2倍にすると、電流が半分になり損失は4分の1
力率を上げる cos²θ が分母 力率を0.8から1.0にすると、損失は0.64倍(0.8²)
電線を太くする R=ρl/S が分子 断面積を2倍にすると、抵抗が半分になり損失も半分
数値例:66kVと33kVで同じ電力を送る
1線の抵抗 R=2Ω、負荷 P=6,000kW、力率 cosθ=1 とします。
33kV のとき :I=6,000×10³÷(√3×33×10³)≒105A、PL=3×105²×2≒66,100W(約66kW、損失率 約1.1%)
66kV のとき :I=6,000×10³÷(√3×66×10³)≒52.5A、PL=3×52.5²×2≒16,500W(約17kW、損失率 約0.28%)
電圧を2倍にしただけで、損失はちょうど4分の1になりました。送電線が数十万ボルトの高い電圧で電気を送るのは、電流を小さくして、この I² に比例する損失を減らすためです。
つまり 電力損失は電流の2乗に比例する。電圧を上げる・力率を上げる・電線を太くする、の3つで小さくできる。
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よくある質問
Q. 電圧降下と電力損失の違いは?
A. 電圧降下は送電端と受電端の電圧の差[V]で、抵抗とリアクタンスが原因です。電力損失は電線で熱になる電力[W]で、原因は抵抗だけです。
Q. 三相3線式の電力損失の公式は?
A. PL=3I²R[W]です。I は線電流、R は1線の抵抗です。電力 P で表すと PL=RP²/(Vr²cos²θ) になります。
Q. 送電電圧を2倍にすると電力損失はどうなる?
A. 同じ電力を同じ力率で送るなら、電流が半分になるので、電力損失は4分の1になります。送電に高い電圧を使うのはこのためです。
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公式に入る前に|登場する記号を全部先に整理する
電圧降下の公式には記号がたくさん出てきます。公式を見てから「あれ、R って何だっけ?」と戻るのは最悪です。先に全部確認して から進みましょう。
記号と用語の一覧表
記号
名前
単位
水道でいうと?
Vs
送電端電圧(線間電圧)
V
蛇口の水圧
Vr
受電端電圧(線間電圧)
V
ホース先端の水圧
v(ε)
電圧降下 = Vs − Vr
V
蛇口と先端の水圧差
I
送電線に流れる電流(線電流)
A
ホースを流れる水量
R
送電線1線の抵抗
Ω
ホース内壁の摩擦
X
送電線1線のリアクタンス
Ω
ホースの弾力による水圧変動(エネルギーを蓄えて返す)
cosθ
負荷の力率
(無次元)
「水を実際にどれだけ有効に使えているか」の割合
sinθ
力率の「相方」
(無次元)
「蓄えて返すだけで使えていない分」の割合
cosθとsinθの関係
cosθ = 0.8 のとき、sinθ = √(1 − 0.8²) = √(1 − 0.64) = √0.36 = 0.6 。この「cosθからsinθを求める計算」は電圧降下の問題で毎回 使います。三平方の定理と同じ原理です。
抵抗RとリアクタンスXの違い|ここがわかれば公式は怖くない
この2つを混同すると公式が一生理解できません。決定的な違いは「エネルギーを消費するか、しないか 」です。
抵抗 R
リアクタンス X
正体
電線の金属抵抗(純抵抗)
電線が持つコイル成分(誘導性リアクタンス)
エネルギー
熱に変えて消費する (不可逆)
蓄えて返すだけ (消費しない)
電圧降下に影響?
○ する
○ する
電力損失に影響?
○ する(P = I²R)
× しない
初心者が一番間違えるポイント
電力損失の計算で「I²R + I²X」としてしまう人が非常に多いです。しかし電力損失に X は関係しません 。X はエネルギーを蓄えて返すだけなので、「消費」はゼロです。電力損失は I²R のみ です。
送電線路の等価回路:R・X・送電端と受電端の電圧
電圧降下の近似式|ベクトル図で「なぜ Rcosθ + Xsinθ なのか」を導く
ここがこの記事の核心 です。「Rcosθ + Xsinθ」は天から降ってきた公式ではありません。ベクトル図を描けば自然に出てくる のです。
まず「1相分」の回路で考える(三相 → 単相に変換)
三相3線式の送電線を計算するときは、まず1相分の等価回路 で考えます。これは三相回路を単相として扱うテクニックです。
1相分の回路には、以下の要素があります。
• 送電端の相電圧 :Es = Vs / √3
• 受電端の相電圧 :Er = Vr / √3
• 1線の抵抗 :R [Ω]
• 1線のリアクタンス :X [Ω]
• 線電流 :I [A](力率 cosθ の遅れ負荷)
キルヒホッフの電圧則(閉回路の電圧の合計 = 0)から、1相分の関係は次のようになります。
1相分の電圧の関係(ベクトル式)
Ės = Ėr + (R + jX) × İ
送電端電圧 = 受電端電圧 + 電線のインピーダンスによる電圧降下
ベクトル図を5ステップで描く
ここからが導出の核心です。1ステップずつ丁寧に進みます。
STEP 1:基準として受電端電圧 Er を横向きに描く
ベクトル図の基準(横軸)として、受電端電圧 Er を右向きに描きます。これが出発点です。
STEP 2:電流 I を Er より θ だけ遅らせて描く
負荷の力率が cosθ(遅れ)なので、電流 I は受電端電圧 Er よりも角度 θ だけ時計回りに遅れた方向 に描きます。
STEP 3:Er の先端に RI(抵抗分の電圧降下)を加える
抵抗による電圧降下 RI は、電流 I と同じ方向 (同位相)に描きます。抵抗は電流に対して位相差を生じさせないからです。
STEP 4:RI の先端に XI(リアクタンス分の電圧降下)を加える
リアクタンス(コイル成分)による電圧降下 XI は、電流 I から90°進んだ方向 に描きます。コイルの電圧は電流より90°進むからです。
STEP 5:原点 O から最後の先端まで結ぶ → これが送電端電圧 Es
原点 O から、XI の先端までを結んだベクトルが送電端電圧 Es です。Es と Er の差が、電圧降下の「正体」です。
ベクトル図から近似式を導く|「補助線」がカギ
ベクトル図が描けたら、Er を延長した横軸に、Es の先端から垂線を下ろします 。すると、RI と XI のベクトルが横方向(水平成分)と縦方向(垂直成分)に分解されます。
RI の水平成分と垂直成分を三角関数で分解すると、次のようになります。
ベクトル
水平成分(Er 方向)
垂直成分
RI
RI cosθ
RI sinθ
XI
XI sinθ
XI cosθ
三平方の定理から、送電端電圧 Es は厳密には次のように表されます。
Es = √{ (Er + RIcosθ + XIsinθ)² + (XIcosθ − RIsinθ)² }
ここで、送電端と受電端の位相角(相差角δ)が十分に小さい と仮定すると、垂直成分 (XIcosθ − RIsinθ) は水平成分に比べて非常に小さいため、無視できます。すると……
近似式(1相あたり)
Es ≈ Er + RI cosθ + XI sinθ
1相あたりの電圧降下 = Es − Er = RI cosθ + XI sinθ
これが「Rcosθ + Xsinθ 」の正体です。ベクトル図の水平成分(Er 方向の成分)だけを取り出した近似式なのです。
1相 → 線間に変換|「√3倍する」だけ
上の式は1相あたり(相電圧ベース) の電圧降下です。三相3線式の線間電圧の降下 に変換するには、√3倍します。
三相3線式 送電線の電圧降下(近似式)
v = √3 I (R cosθ + X sinθ) [V]
v:電圧降下(Vs − Vr )[V] I:線電流 [A] R:1線の抵抗 [Ω] X:1線のリアクタンス [Ω]
cosθ:負荷力率 sinθ = √(1 − cos²θ)
なぜcosとsinの位置はこうなるの?
「R に cosθ」「X に sinθ」がつくのは、ベクトル図で RI のEr 方向成分が RI cosθ 、XI のEr 方向成分が XI sinθ だからです。cosθ は「力率=有効成分」、sinθ は「無効成分」。R は有効電力に関わるからcosθ、X は無効電力に関わるからsinθ。直感と一致する ので、ベクトル図を理解すれば二度と迷いません。
電圧降下のベクトル図:RIcosθ+XIsinθ
電力損失の公式|なぜ「3I²R」なのか?
電圧降下の公式がわかったところで、次は電力損失 の公式です。こちらは電圧降下よりずっとシンプルです。
電力損失の公式(三相3線式)
三相3線式の電力損失
PL = 3 I² R [W]
PL :電力損失 [W] I:線電流 [A] R:1線の抵抗 [Ω]
なぜ「3倍」なのか?
三相3線式は3本の電線 があります。それぞれの電線に同じ電流 I が流れ、それぞれの電線の抵抗は R です。
• 1本目の電力損失 = I² × R
• 2本目の電力損失 = I² × R
• 3本目の電力損失 = I² × R
→ 合計 = 3 × I²R
単純に「電線の本数分を足し算した」だけです。
「なぜ X が入らないのか?」を改めて確認
電圧降下の公式には R と X の両方が入っていました。しかし電力損失には R しか入りません 。
その理由をもう一度確認します。抵抗 R は電気エネルギーを熱に変換して消費 します(ジュール損)。一方、リアクタンス X は電気エネルギーを磁界として一時的に蓄えて、すぐに返す だけです。返ってくるので「損失」はゼロです。
覚え方
「電力損失は R だけ。X はタダ働き(蓄えて返すだけ) 」——これだけ覚えておけば、公式に X を入れるミスがなくなります。
電力損失を「電力P」で表す変形(超重要!)
試験では「電流 I」が直接与えられず、「負荷の有効電力 P」と「受電端電圧 Vr 」が与えられるパターンが多いです。そこで、PL = 3I²R を電力 P で表す変形が必要です。
三相の有効電力の公式 P = √3 Vr I cosθ から、I を求めると次のようになります。
I = P / (√3 Vr cosθ)
I² = P² / (3 Vr ² cos²θ)
これを PL = 3I²R に代入すると、
電力損失(電力Pで表した版)
PL = R P² / (Vr ² cos²θ) [W]
P:負荷の有効電力 [W] Vr :受電端線間電圧 [V] R:1線の抵抗 [Ω]
この変形が出題の本命
「力率が70%から91%に改善されると、電力損失は何倍になるか?」という問題が頻出です。PL ∝ 1/cos²θ なので、PL2 /PL1 = cos²θ1 / cos²θ2 で比を取れば瞬殺できます。
三相3線式の電圧降下v=√3I(Rcosθ+Xsinθ)
単相と三相の公式を比較表で一括整理
「単相2線式」「単相3線式」「三相3線式」で公式の係数が変わるため、混乱しやすいポイントです。ここで一気に整理しましょう。
電圧降下の公式比較(力率cosθ、遅れ負荷)
方式
電圧降下 v [V]
電力損失 PL [W]
有効電力 P [W]
単相2線式
2 I(Rcosθ + Xsinθ)
2 I²R
Vr Icosθ
三相3線式
√3 I(Rcosθ + Xsinθ)
3 I²R
√3 Vr Icosθ
係数の覚え方
• 単相2線式 :電線が「行き」と「帰り」の2本 あるから、電圧降下も電力損失も2倍
• 三相3線式 :相電圧ベースを線間電圧に換算するから電圧降下は√3倍 、電線が3本 だから電力損失は3倍
力率=1のときの簡略化|cosθ=1, sinθ=0
力率が1(純抵抗負荷)のときは、cosθ = 1, sinθ = 0 なので公式がぐっとシンプルになります。
方式
cosθ=1 のときの電圧降下
単相2線式
v = 2IR
三相3線式
v = √3 IR
力率=1 のときは Xsinθ の項が消えるので、リアクタンス X は無関係 になります。直流回路のオームの法則と同じ形です。
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試験では「電圧降下率」や「電力損失率」を求めさせる問題が多いです。これらは「受電端を基準にして何%か」を求めるだけです。
電圧降下率の公式
電圧降下率 ε = (Vs − Vr ) / Vr × 100 [%]
= v / Vr × 100 = √3 I(Rcosθ + Xsinθ) / Vr × 100
電力損失率の公式
電力損失率 = PL / P × 100 [%]
= 3I²R / (√3 Vr I cosθ) × 100 = √3 IR / (Vr cosθ) × 100
電圧降下率と電力損失率の関係
力率 cosθ ≈ 1(力率がほぼ1)かつ X が小さい場合、電圧降下率 ≈ 電力損失率 になります。これは試験でも出る知識です。ただし力率が低い場合は両者は一致しません。
単相2線式と三相3線式の係数の違い
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計算例①|電流と電圧降下から有効電力を求める(基本パターン)
例題
こう長 5km の三相3線式1回線送電線路がある。送電端線間電圧が 22,200 V、受電端線間電圧が 22,000 V、負荷力率が 85%(遅れ)であるとき、負荷の有効電力 [kW] を求めよ。
ただし、1km あたりの電線1線の抵抗は 0.182 Ω、リアクタンスは 0.355 Ω とし、近似式を用いて解くこと。
解法
STEP 1:送電線全体の R と X を求める
R = 0.182 × 5 = 0.910 Ω
X = 0.355 × 5 = 1.775 Ω
STEP 2:電圧降下 v を求める
v = Vs − Vr = 22,200 − 22,000 = 200 V
STEP 3:sinθ を求める
cosθ = 0.85
sinθ = √(1 − 0.85²) = √(1 − 0.7225) = √0.2775 ≈ 0.527
STEP 4:近似式に代入して電流 I を求める
v = √3 I (Rcosθ + Xsinθ)
200 = √3 × I × (0.910 × 0.85 + 1.775 × 0.527)
200 = √3 × I × (0.7735 + 0.9354)
200 = √3 × I × 1.7089
200 = 2.9590 × I
I = 200 / 2.9590 ≈ 67.6 A
STEP 5:有効電力 P を求める
P = √3 × Vr × I × cosθ
= √3 × 22,000 × 67.6 × 0.85
= 38,105 × 67.6 × 0.85
≈ 2,189,000 W
≈ 2,189 kW
試験のコツ
この問題のポイントは「v から I を逆算する」 という流れです。電圧降下 v が与えられている → 近似式に代入して I を求める → P = √3VIcosθ で有効電力を算出。この「逆算パターン」は非常に頻出です。
電圧降下から受電電力を求める計算手順
計算例②|力率改善で電力損失が何倍になるか(比の計算)
例題
三相3線式送電線で、力率70%で W₁ [kW] の電力を送電していたところ、力率を91%に改善して W₂ [kW] を送電した。電力損失を同じにするとき、W₂ / W₁ はいくらか。
解法
電力損失を PL = RP² / (Vr ² cos²θ) の形で使います。電力損失 PL 、抵抗 R、電圧 Vr は同じ条件なので、比を取ります。
STEP 1:電力損失が同じという条件を式にする
PL1 = PL2
R W₁² / (Vr ² cos²θ₁) = R W₂² / (Vr ² cos²θ₂)
→ W₁² / cos²θ₁ = W₂² / cos²θ₂
STEP 2:W₂/W₁ を求める
W₂ / W₁ = cosθ₂ / cosθ₁ = 0.91 / 0.70 = 1.3
答え:W₂ / W₁ = 1.3(力率改善で同じ損失のまま30%多く送電可能)
現場での意味
力率を70%→91%に改善するだけで、同じ送電線・同じ損失で30%も多く電力を送れる 。工場で力率改善用のコンデンサを設置する理由がここにあります。力率改善は「電気代の割引」だけでなく「送電設備の有効活用」にも直結しているのです。
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力率を改善すると同じ損失で多く送電できる
計算例③|電力損失率5%以下にする電線断面積を求める
例題
こう長 20km の三相3線式2回線送電線路で、受電端電圧 33kV、負荷 6,600kW、力率 0.9(遅れ)の電力を送電する。電力損失率を5%以下にするには、電線断面積を何 mm² 以上にすればよいか。 ただし、1mm² で 1m あたりの抵抗は 1/35 Ω とし、リアクタンスは無視する。
解法
STEP 1:線電流 IL を求める
P = √3 Vr IL cosθ
IL = 6,600 × 10³ / (√3 × 33 × 10³ × 0.9) = 128.3 A
STEP 2:2回線なので1回線あたりの電流 I を求める
I = IL / 2 = 128.3 / 2 = 64.15 A
「2回線」の意味
「2回線」とは、同じ経路に三相送電線を2組(合計6本の電線) 張っているということです。電流は2組に分かれるので、1回線あたりの電流は半分になります。
STEP 3:断面積 S を含んだ抵抗 R の式を立てる
R = ρ × l / S = (1/35) × 20,000 / S = 571.4 / S [Ω]
STEP 4:2回線合計の電力損失を立式する
2回線の合計損失 PL = 2 × 3 I² R = 6 × (64.15)² × (571.4 / S)
= 6 × 4115.2 × 571.4 / S = 14,110,000 / S [W]
STEP 5:損失率 ≤ 5% の条件からS を求める
PL ≤ 0.05 × P
14,110,000 / S ≤ 0.05 × 6,600,000
14,110,000 / S ≤ 330,000
S ≥ 14,110,000 / 330,000
S ≥ 42.8 mm²
答え:S ≥ 42.8 mm²(43 mm² 以上必要)
断面積が大きいほど抵抗が小さく損失が減る
試験に出る4つの計算パターン|早見表
電圧降下・電力損失の問題は、大きく4パターン に分類できます。どのパターンが出ても対応できるように、ここで整理しておきましょう。
パターン
問われること
解法の流れ
① 電圧降下→電流→有効電力
Vs 、Vr 、R、X、cosθ が与えられ → P を求める
v = Vs −Vr sinθ = √(1−cos²θ) v = √3I(Rcosθ+Xsinθ) から I P = √3Vr Icosθ
② 電力損失率の制約→断面積
P、Vr 、cosθ が与えられ → 損失率5%以下の断面積S
I を求める R = ρl/S の式を立てる PL = 3I²R ≤ 0.05P S ≥ ○○ mm²
③ 力率改善の比較
力率が変化したときの → 電力損失の比、送電可能電力の比
PL = RP²/(Vr ²cos²θ) を使う 比を取って cosθ の比だけ残す
④ 電圧降下率の計算
R、X、I、cosθ が与えられ → 電圧降下率 ε [%]
v = √3I(Rcosθ+Xsinθ) ε = v/Vr × 100
問題文を読んだら最初にやること
「何を求めよ?」を確認 → 上の4パターンのどれかに分類 → 使う公式が決まる。パターンを特定してから計算を始める のが、時間切れを防ぐ最大のコツです。
電圧降下と電力損失の計算4パターン
まとめ|電圧降下と電力損失の全公式と試験直前チェックリスト
この記事で学んだ公式一覧
求めるもの
公式(三相3線式)
電圧降下 v [V]
v = √3 I (Rcosθ + Xsinθ)
電力損失 PL [W]
PL = 3I²R
電力損失(P版)
PL = RP² / (Vr ²cos²θ)
電圧降下率 [%]
ε = v / Vr × 100
電力損失率 [%]
= PL / P × 100
有効電力 P [W]
P = √3 Vr I cosθ
sinθ の求め方
sinθ = √(1 − cos²θ)
試験直前チェックリスト
電圧降下の近似式 v = √3 I(Rcosθ + Xsinθ) の「R に cos、X に sin」の理由をベクトル図で説明できる
電力損失は PL = 3I²R であり、リアクタンス X は関係ない
cosθ から sinθ を求める計算 sinθ = √(1−cos²θ) が即座にできる
力率改善問題では PL = RP²/(Vr ²cos²θ) を使い、比を取る
単相2線式は係数「2 」、三相3線式は電圧降下が「√3 」・損失が「3 」
力率 cosθ ≈ 1 のとき、電圧降下率 ≈ 電力損失率
「2回線」のときは1回線あたりの電流を半分にして計算する
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。
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